一般社団法人の代表理事の選び方|権限・責任・登記を解説

一般社団法人法
代表理事は、誰がどの会議で選ぶのか。選んだあと、何を登記して、どんな責任を負うのか。設立のときと交代のときに迷う点を、条文と法務局の記載例に沿って説明します。

結論から申し上げます。

代表理事とは、一般社団法人を代表する理事です(一般法人法21条1項)。

選び方は、理事会を置いているかどうかで決まります。

理事会を置く法人では、理事会が理事の中から代表理事を必ず選びます(90条3項)。

理事会のない法人では、定款・理事の互選・社員総会の決議のいずれかで定めます(77条3項)。置かないこともできます。

選んだら、代表理事の氏名と住所を2週間以内に登記します(301条2項6号・303条)。

POINT 代表理事を選ぶ会議は機関設計で決まります。どの会議で選んだかによって、登記に付ける議事録や印鑑証明書の範囲が変わります。

代表理事と理事の違い

一般社団法人には、理事を1人以上置かなければなりません(60条1項)。

理事は、原則として各自が法人を代表します(77条1項本文・2項)。

ただし、代表理事など法人を代表する者を定めたときは、ほかの理事は代表しません(同条1項ただし書)。

つまり代表理事を置くと、対外的に法人の名前で行動できる人が代表理事に絞られます。

代表理事は、法人の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を持ちます(77条4項)。

代表理事になれるのは理事だけです。条文がどれも「理事の中から」選ぶと定めているためです(77条3項・90条3項)。

項目 理事 代表理事
選ぶ機関 社員総会 理事会(理事会なしは定款・互選・社員総会)
法人を代表するか 代表理事がいなければ各自代表 代表する(77条4項)
登記事項 氏名(301条2項5号) 氏名と住所(同6号)
辞めさせる方法 社員総会の解任決議(70条1項) 理事会の解職(90条2項3号)など
責任の一部免除の上限計算 報酬等の2年分または4年分 報酬等の6年分(113条1項2号イ)

肩書き(理事長・会長)と代表理事の関係は、一般社団法人の代表者の肩書きで詳しく扱っています。

代表理事は必ず置くのか|機関設計別の早見表

代表理事は必ず置くのか|機関設計別の早見表
図:代表理事は必ず置くのか|機関設計別の早見表

代表理事を置く義務があるかどうかは、理事会の有無で分かれます。

理事会を置く法人では、理事会は理事の中から代表理事を選定しなければなりません(90条3項)。

理事会を置く法人の理事は3人以上が必要です(65条3項)。

理事会のない法人では、代表理事を定めることができるという規定です(77条3項)。

定めなければ、理事全員が各自で法人を代表します(77条2項)。

一般財団法人は理事会が必ず置かれるため(170条1項)、代表理事も必ず選びます。

機関設計 代表理事 選ぶ方法 根拠
理事会あり 必ず置く 理事会の決議(定款の定めがあれば社員総会でも可) 90条3項・35条2項
理事会なし・理事1人 その理事が法人を代表 ― 77条1項
理事会なし・理事2人以上で代表理事を定める 置く 定款/定款に基づく理事の互選/社員総会の決議 77条3項
理事会なし・代表理事を定めない 置かない(理事が各自代表) ― 77条2項
一般財団法人 必ず置く 理事会の決議 170条1項・197条

理事会を置く法人で社員総会でも代表理事を選べるのは、定款にその定めがあるときです(35条2項)。

法務局の記載例も、この場合は登記に定款の添付が必要としています。

機関設計の選び方は一般社団法人の機関設計で説明しています。

選び方1|理事会を置く法人は理事会の決議で選ぶ

選び方1|理事会を置く法人は理事会の決議で選ぶ
図:選び方1|理事会を置く法人は理事会の決議で選ぶ

理事会の職務には「代表理事の選定及び解職」が含まれています(90条2項3号)。

理事会は各理事が招集できます。定款や理事会で招集権者を決めていればその理事が招集します(93条1項)。

招集通知は、理事会の日の1週間前までに各理事と各監事へ発します(94条1項)。定款でこの期間を短くできます。

理事と監事の全員が同意すれば、招集手続を省いて開けます(94条2項)。

決議は、議決に加われる理事の過半数が出席し、その過半数の賛成で成立します(95条1項)。

議事録を書面で作るときは、出席した理事と監事が署名または記名押印します(95条3項)。

定款で、署名する者を「出席した代表理事」とする定めも置けます(同項かっこ書き)。

1
候補者が理事であることを確かめる
理事でない人は、先に社員総会で理事に選任する(63条1項)
▼
2
理事会を招集する
理事会の日の1週間前までに各理事・各監事へ通知(94条1項)
▼
3
理事会で代表理事を選定する
議決に加われる理事の過半数が出席し、その過半数で決議(95条1項)
▼
4
就任承諾を得る
席上で承諾し議事録に書くか、就任承諾書をもらう(320条1項)
▼
5
議事録を作り押印する
登記に使う議事録は、印鑑証明書との対応を意識して押印する
▼
6
2週間以内に変更登記
主たる事務所の所在地で申請(303条)

定款に定めがあれば、理事全員が書面や電磁的記録で同意する書面決議も使えます(96条)。

ただし、監事がその提案に異議を述べたときは、決議があったとはみなされません(同条かっこ書き)。

理事会の運営は理事会の招集と運営、議事録は理事会議事録の作り方で説明しています。

選び方2|理事会のない法人は3つの方法から選ぶ

理事会のない法人は、次の3つのどれかで代表理事を定めます(77条3項)。

1つ目は定款で直接定める方法です。定款に「代表理事は〇〇とする」と氏名を書きます。

2つ目は定款の定めに基づく理事の互選です。定款に「代表理事は理事の互選によって定める」と書いておきます。

3つ目は社員総会の決議です。理事を選ぶ総会で、代表理事もあわせて選ぶ形がよく使われます。

定款で直接定める方法は、交代のたびに定款変更が必要です。

定款変更は社員総会の特別決議で、総社員の半数以上かつ総社員の議決権の3分の2以上の賛成が要ります(146条・49条2項4号)。

方法 決める人 交代のときの手間 登記の主な添付書類(法務局記載例)
定款で直接定める 社員総会(定款変更) 定款変更の特別決議が必要 定款変更の社員総会議事録・議長と出席理事の印鑑証明書
定款に基づく理事の互選 理事 理事だけで決められる 定款・互選書・各理事の印鑑証明書・就任承諾書
社員総会の決議 社員 総会を開く必要がある 社員総会議事録・議長と出席理事の印鑑証明書
定めない(各自代表) ― ― 理事選任の社員総会議事録・議長と出席理事の印鑑証明書

印鑑証明書は、議事録などに変更前の代表理事が法務局に届け出た印鑑が押されていれば不要です(法務局記載例)。

定款の記載例(理事会を置かない法人・互選型)

第〇条(役員の設置)この法人に、理事〇名以上〇名以内を置く。

2 理事のうち1名を代表理事とする。

第〇条(役員の選任)理事は、社員総会の決議によって選任する。

2 代表理事は、理事の互選によって理事の中から選定する。

附則 この法人の設立時代表理事は、設立時理事の互選によって選定する。

法務局の設立登記申請書の記載例(理事会及び監事を設置しない一般社団法人)に沿った形です。実際の定款は法人の機関設計に合わせて作ります。

設立のときの代表理事の選び方

設立の段階では、まだ理事会も社員総会もありません。そのため選び方の規定が別にあります。

理事会を置く法人では、設立時理事の過半数で設立時代表理事を選定します(21条1項・3項)。

設立時理事は、法人が成立するまでの間、設立時代表理事を解職することもできます(21条2項)。

理事会を置かない法人では、定款に定めておくか、定款の定めに基づく設立時理事の互選で選ぶ形が使われます(法務局記載例)。

設立登記の申請書には、設立時代表理事を選定した書面と、就任承諾書を添付します(318条2項2号・3号)。

設立登記は、法人を代表すべき者が申請します(318条1項)。

設立時代表理事について用意するもの

  • 定款(選び方の定め・附則での選定方法)
  • 設立時代表理事の選定書(互選書)(318条2項2号)
  • 設立時理事・設立時代表理事の就任承諾書(318条2項3号)
  • 就任承諾書に押した印鑑の印鑑証明書(法務局記載例)
  • 法務局に届け出る印鑑と印鑑届書(法務局記載例)

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

誰を選べるか|資格と選ぶ前の確認

代表理事は理事の中から選ぶので、まず理事になれる人であることが前提です。

法人は役員になれません(65条1項1号)。代表理事は個人に限られます。

一般法人法・会社法などに違反して刑に処せられ、執行が終わってから2年を経過しない者もなれません(同項3号)。

それ以外の法令違反で拘禁刑以上の刑に処せられ、執行が終わるまでの者もなれません(同項4号。執行猶予中の者は除く)。

成年被後見人・被保佐人は欠格事由から外れました。就任には成年後見人や保佐人の関与が必要です(65条の2)。

監事は、その法人の理事を兼ねられません(65条2項)。

監事が代表理事になるには、監事を辞めて理事に選ばれる必要があります。

選ぶ前に本人と確認しておくこと

  • 住所が登記され、登記事項証明書で誰でも見られること(301条2項6号)
  • 印鑑証明書の提出と、法務局への印鑑の届出が必要になること
  • 理事会のある法人では、3か月に1回以上の職務報告の義務があること(91条2項)
  • 法人や第三者に対して損害賠償責任を負う場面があること(111条・117条)
  • 利益相反取引や競業には承認が要ること(84条・92条)
  • 理事としての任期が、原則2年で切れること(66条)

理事の人選の考え方は一般社団法人の理事の選び方で説明しています。

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NPO法人について詳しく

一般社団法人の代表理事についてよくある質問

Q. 代表理事は誰が選びますか?

A. 理事会を置く法人では理事会が理事の中から選びます(一般法人法90条2項3号・3項)。理事会のない法人では、定款・定款に基づく理事の互選・社員総会の決議のいずれかで定めます(77条3項)。

Q. 理事会のない一般社団法人は代表理事を置かなくてもよいですか?

A. 置かなくても構いません。その場合、理事が2人以上いれば各自が法人を代表します(77条2項)。

Q. 理事でない人を代表理事にできますか?

A. できません。代表理事は理事の中から選ぶと定められています(77条3項・90条3項)。先に社員総会で理事に選任します(63条1項)。

Q. 代表理事の任期は何年ですか?

A. 代表理事だけの任期の規定はありません。理事の任期(原則として選任後2年以内に終わる事業年度の定時社員総会の終結まで)が終われば代表理事の地位も終わります(66条)。

Q. 代表理事を解職すると理事の地位はどうなりますか?

A. 理事会による解職は代表理事の地位だけを失わせるもので、理事の地位は残ります(90条2項3号)。理事を辞めさせるには社員総会の解任決議が必要です(70条1項)。

Q. 代表理事が辞任したら後任が決まるまでどうなりますか?

A. 辞任や任期満了で欠けた場合、前任者は新しい代表理事が就任するまで代表理事としての権利義務を持ちます(79条1項)。必要があれば裁判所が一時代表理事を選任できます(同条2項)。

Q. 代表理事を変えたときの登記の期限と費用は?

A. 変更から2週間以内に主たる事務所の所在地で登記します(303条)。法務局の役員変更の記載例では登録免許税は1万円です。怠ると100万円以下の過料の対象です(342条1号)。

Q. 代表理事の権限を定款で制限できますか?

A. 内部的に制限することはできますが、その制限を知らない第三者には対抗できません(77条5項)。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。