結論から申し上げます。印鑑カードは、法務局(登記所)に印鑑を提出した人が、法人の印鑑証明書を請求するときに提示するカードです。印鑑証明書の申請書を出すときは、印鑑カードを提示しなければなりません(商業登記規則22条2項)。
この仕組みは株式会社だけのものではありません。一般社団法人・一般財団法人(一般社団法人等登記規則3条)、NPO法人(各種法人等登記規則5条)にも、印鑑カードの規定が準用されています。カードを紛失したときは、紛失したカードの廃止と新しいカードの交付を申請し、代表者が交代したときは、新しい代表者が印鑑の提出と同時に申し出れば前の代表者のカードを引き継いで使える仕組みになっています(商業登記規則9条の4第3項)。
この記事では、印鑑カードの役割、交付の申請、印鑑証明書の請求と手数料、紛失したとき、代表者が交代したとき、廃止と返納、オンライン申請で印鑑を提出しなかった場合の扱いまでを、順に整理します。
印鑑カードとは ― 法人の印鑑証明書を請求するための「鍵」
法人の印鑑証明書は、登記所に印鑑を提出した人(一般社団法人なら通常は代表理事)が、手数料を納めて交付を請求できる書面です(商業登記法12条1項。一般社団法人等には一般法人法330条で準用)。個人の印鑑証明書のように、市区町村の窓口でカードを出して取るものとは別の仕組みです。
印鑑カードは、この法人の印鑑証明書を請求するときに提示するためのカードです。商業登記規則9条の5第1項は、登記官が「印鑑カードである旨及び印鑑カード番号を記載した磁気帯付きの印鑑カード」を作成して交付すると定めています。カードには印鑑カード番号が記録されていて、登記所の印鑑記録と結びついています。
印鑑証明書の交付申請書を出す人は、印鑑カードを提示しなければなりません(商業登記規則22条2項)。法務局の案内も、印鑑証明書の交付の申請には印鑑カードも提出すること、郵送で送付を請求する場合でも印鑑カードの提出が必要であることを示しています。印鑑証明書の請求がカードの提示と結びついている以上、カードの保管と受け渡しの管理が重要になります。
一般社団法人・NPO法人にも同じ規定が使われる
印鑑カードの規定は商業登記規則に置かれていますが、ほかの法人の登記規則がこれを準用しています。一般社団法人・一般財団法人については、一般社団法人等登記規則3条が商業登記規則9条の4(第1項後段を除く)、9条の5(第4項を除く)、9条の6以下、22条などを準用しています。
NPO法人については、各種法人等登記規則5条が、商業登記規則の9条から11条まで、13条から22条までなどを各種法人等の登記について準用しています。NPO法人の登記は組合等登記令によって行われ、その手続の細目が各種法人等登記規則に置かれているためです。
したがって、この記事で説明する交付・紛失・引継ぎ・廃止の手続は、株式会社と同じ枠組みで、一般社団法人・一般財団法人・NPO法人にも当てはまります。法務局の申請書の様式も、代表取締役・代表理事・理事などの資格欄を選ぶ共通の様式になっています。
| 法人 | 印鑑カードの規定 | 準用している条文 |
|---|---|---|
| 株式会社など | 商業登記規則9条の4〜9条の6・22条 | (直接適用) |
| 一般社団法人・一般財団法人 | 同上を準用 | 一般社団法人等登記規則3条 |
| NPO法人(特定非営利活動法人) | 同上を準用 | 各種法人等登記規則5条 |
交付を申請する ― 印鑑を提出した人が、その印鑑を押した申請書で
印鑑カードの交付を請求できるのは、印鑑の提出をした者です。その印鑑を明らかにした上で、被証明事項(法人の名称・主たる事務所・資格・氏名・生年月日)のほか、氏名、住所、年月日、登記所の表示を記載した書面を提出して請求します(商業登記規則9条の4第1項)。実務では、法務局が公開している「印鑑カード交付申請書」の様式を使います。
設立登記の申請と同時に印鑑を提出する法人が多いので、登記が完了した後に、同じ登記所で印鑑カードの交付を申請するのが一般的な流れです。代理人が交付申請をするときは、その権限を証する書面(委任状)を添付します(商業登記規則9条の6)。法務局の案内でも、代理人が印鑑カード交付申請をする場合には委任状が必要とされ、様式に委任状欄が設けられています。
交付を受けたカードの送付を求める場合は、送付に要する費用を郵便切手などで納めます(商業登記規則9条の4第4項・5項)。
印鑑カードの交付そのものの手数料は、登記手数料令に定めがありません。手数料がかかるのは、カードを使って印鑑証明書を請求するときです。
印鑑証明書を請求する ― 手数料は書面500円、オンライン420円(送付450円)
法人の印鑑証明書の交付の手数料は、1件につき500円です(登記手数料令10条1項)。オンラインで請求する場合は1件につき420円、送付を求める場合は450円です(同条2項)。法務局の案内でも、令和7年4月1日から手数料が変わったことが示されています。
請求するときは、申請書に被証明事項を記載して証明を請求する印鑑を特定し(商業登記規則22条1項)、印鑑カードを提示します(同条2項)。法務局の案内によると、商業・法人登記情報交換システムにより、登記所であればどこでも、他の登記所の管轄の法人の印鑑証明書を取得できます。
一方、印鑑の提出や印鑑カードの交付・廃止といった「印鑑に関する届出」は、法人が登記されている登記所に提出するよう案内されています。証明書はどこでも取れても、届出は管轄の登記所、という違いを押さえておきましょう。
| 請求の方法 | 手数料(1件) | 根拠 |
|---|---|---|
| 窓口・郵送(書面) | 500円 | 登記手数料令10条1項 |
| オンライン請求 | 420円 | 同10条2項 |
| オンライン請求(送付を求める) | 450円 | 同10条2項 |
| (参考)登記事項証明書・書面 | 600円 | 同2条1項 |
※登記事項証明書は印鑑カードがなくても誰でも請求できます。印鑑証明書との違いは登記事項証明書の記事で比較しています。
紛失したとき ― 廃止の届出と、新しいカードの交付申請をセットで
印鑑カードを紛失すると、印鑑証明書を請求できなくなります。盛岡地方法務局のFAQは、印鑑カードの提示がないと印鑑証明書は発行できないので、紛失した印鑑カードの廃止手続と新しい印鑑カードの交付手続が必要になると案内しています。必要なものとして挙げられているのは、法務局に届出をしている法人の実印と、代理人が手続する場合の代表者からの委任状です。
印鑑カードの廃止の届出は、被証明事項のほか、氏名、住所、年月日、登記所の表示を記載し、登記所に提出している印鑑を押した書面で行います。カードを提示するときは押印は要りません(商業登記規則9条の5第3項)。紛失した場合はカードを提示できないので、届出印を押して届け出ることになります。法務局は「印鑑・印鑑カード廃止届書」の様式を公開しています。
廃止の届出と同時に、新しい印鑑カードの交付を申請します。交付の申請にも届出印が必要なので、紛失に気づいたら、まず法人の実印がどこにあるかを確かめてください。実印とカードを同じ場所に保管していて両方を失うと、手続が重くなります。
災害でカードを失った場合の手続についても、各地の法務局がお知らせを出しています。管轄の法務局の案内を確認してください。
- 法務局に届け出ている法人の実印が手元にあるか
- 「印鑑・印鑑カード廃止届書」と「印鑑カード交付申請書」を用意したか(法務局の様式)
- 代理人が行くなら、代表者からの委任状があるか
- 提出先は法人が登記されている登記所か
代表者が交代したとき ― 印鑑の提出と同時に申し出ればカードを引き継げる
代表理事が交代すると、新しい代表理事が印鑑を提出し直すのが通常の流れです。このとき、前の代表者が資格を喪失した(または印鑑を廃止した)場合に、新たに印鑑を提出する者が、印鑑の提出と同時に申し出ることで、前の代表者の印鑑カードを承継して使用することができます(商業登記規則9条の4第3項)。
引継ぎをする場合は、資格を喪失した前の代表者の返納義務の例外になります(商業登記規則9条の5第5項ただし書)。法務局が公開している「印鑑(改印)届書」には、「印鑑カードは引き継がない」「印鑑カードを引き継ぐ」の選択欄があり、引き継いだ場合はその印鑑カードの番号と前任者の氏名を記載するよう注記されています。代表者の変更登記とあわせて印鑑を提出するときに、この欄を記入します。
引継ぎをするには、新しい代表者がそのカードを実際に受け取っている必要があります。前の代表者からの事務の引継ぎのときに、法人の実印と印鑑カードの所在を確認し、受け渡しを記録しておくと、後で証明書が取れないという事態を防げます。
前の代表者がカードを返さない、行方が分からないといった場合は、引継ぎができません。その場合は、新しい代表者が新しい印鑑カードの交付を申請することになります。
| 場面 | 手続 | 根拠 |
|---|---|---|
| 代表者交代で、カードを受け取れた | 新代表者が印鑑の提出と同時に承継を申し出る | 商業登記規則9条の4第3項 |
| 代表者交代で、カードを受け取れない | 新代表者が新しいカードの交付を申請 | 同9条の4第1項 |
| カードを紛失した | カードの廃止の届出+新しいカードの交付申請 | 同9条の5第3項・9条の4第1項 |
| カードの磁気不良 | 登記官が回収など必要な措置をとれる(法務局に受領書の様式あり) | 同9条の5第6項 |
返納が必要なとき ― 資格喪失・印鑑の廃止・カードの廃止
印鑑カードの交付を受けた者は、その資格を喪失したとき、または印鑑の廃止もしくは印鑑カードの廃止の届出をするときは、印鑑カードを返納しなければなりません(商業登記規則9条の5第5項)。ただし、前の見出しの承継をする場合は返納の必要がありません(同項ただし書)。
法人が解散した場合や、代表者が退任して後任に引き継がない場合など、カードをそのまま手元に残しておく理由はありません。使わなくなったカードは、返納の手続をとるか、承継させるかのどちらかで整理します。
また、印鑑カードの磁気的記録が毀損しているなど相当な理由があるときは、登記官は印鑑カードの回収その他の必要な措置をとることができます(商業登記規則9条の5第6項)。法務局は、磁気不良により再交付を求める場合の「印鑑カード受領書」の様式を公開しています。
オンライン申請で印鑑を提出していない法人は
法務省は、令和3年2月15日から、登記の申請をオンラインで行う場合は印鑑の提出が任意になったと案内しています。代表者の印鑑証明書が必要などの理由で印鑑を提出する場合には、オンラインによる登記の申請と同時に行う場合に限り、オンラインで提出できるようになりました。
印鑑を提出していない法人は、登記所に届け出た印鑑がないので、法人の印鑑証明書は発行されず、印鑑カードの交付も受けられません。印鑑カードの交付を請求できるのは「印鑑の提出をした者」だからです(商業登記規則9条の4第1項)。
銀行口座の開設や契約、補助金の申請などで法人の印鑑証明書を求められることがあります。設立の段階で印鑑を提出するかどうかは、その後に印鑑証明書を使う場面があるかを考えて決めることになります。なお、書面で申請する場合(QRコード付き書面申請を含む)などは、従来どおり書面による印鑑の提出が必要と案内されています。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
印鑑カードの管理で押さえること
印鑑カードは、法人の印鑑証明書を請求するために提示するカードです。法人の実印と印鑑証明書は、法人の名義で重要な契約や手続をするときに使われます。実印とカードは別々の場所に保管し、誰が管理するかを決めておくと、紛失や持ち出しに気づきやすくなります。
代表者の交代、事務局担当者の交代、事務所の移転のときは、カードの所在が分からなくなりやすい場面です。引継ぎの一覧に、法人の実印・銀行印・印鑑カード・印鑑カードの番号の控えを入れておくと、承継や紛失時の手続に早く移れます。
印鑑証明書は、提出先によって発行からの期間を条件にしていることがあります。必要になったときに、その都度カードを使って取得する運用にすると、手元に不要な証明書を置かずに済みます。
印鑑カードについてよくある質問
A. 法務局に印鑑を提出した者が、法人の印鑑証明書を請求するときに提示するカードです。登記官が印鑑カード番号を記載した磁気帯付きのカードを作成して交付します(商業登記規則9条の5第1項)。印鑑証明書の申請書を出すときは提示が必要です(同22条2項)。
A. あります。一般社団法人・一般財団法人は一般社団法人等登記規則3条、NPO法人は各種法人等登記規則5条で、商業登記規則の印鑑カードの規定が準用されています。
A. 登記手数料令に印鑑カードの交付の手数料の定めはありません。手数料がかかるのは印鑑証明書の交付で、書面は1件500円、オンライン請求は420円(送付を求める場合450円)です(登記手数料令10条)。
A. 紛失したカードの廃止の届出と、新しいカードの交付申請が必要です。法務局に届け出ている法人の実印を押して手続します(商業登記規則9条の5第3項・9条の4第1項)。代理人が行う場合は委任状が要ります。
A. 新しい代表者が印鑑を提出するときに同時に申し出れば、前の代表者の印鑑カードを承継して使えます(商業登記規則9条の4第3項)。カードを受け取れない場合は、新しいカードの交付を申請します。
A. 法務局の案内では、商業・法人登記情報交換システムにより、登記所であればどこでも他の登記所管轄の法人の印鑑証明書を取得できます。印鑑に関する届出は、法人が登記されている登記所に提出します。
A. もらえません。印鑑カードの交付を請求できるのは印鑑の提出をした者です(商業登記規則9条の4第1項)。令和3年2月15日からオンラインで登記を申請する場合は印鑑の提出が任意になっています。
📖 参考にした公的機関の情報

