一般社団法人の内部統制システムとは?理事会が決める11項目(施行規則14条)と、負債200億円以上で決定が義務になる「大規模一般社団法人」

一般社団法人法
「内部統制システムを整備しましょう」と言われても、何をどこまで決めればよいのかは分かりにくいものです。一般社団法人では何が義務で、何がそうでないのか、条文から確かめていきましょう。

結論から申し上げます。理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制、その他法人の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備は、理事会が決める事項で、理事に委任することができません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律〈以下「一般法人法」〉90条4項5号)。

そして、大規模一般社団法人である理事会設置一般社団法人では、理事会はこの事項を決定しなければなりません(90条5項)。大規模一般社団法人とは、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上の一般社団法人です(2条2号)。

つまり、決定が義務になるのは負債200億円以上の法人だけです。多くの法人にとっては「決めるなら理事会で決める事項」であって、決めること自体が義務ではありません。この記事では、体制の中身(施行規則14条の11項目)、義務になる範囲、財団の扱い、決めた後にすること、責任との関係までを整理します。

条文の位置 ― 理事会が決めて、理事に任せられない事項

一般法人法90条4項は、理事会が理事に委任できない事項を並べています。1号が重要な財産の処分及び譲受け、2号が多額の借財、3号が重要な使用人の選任及び解任、4号が従たる事務所その他の重要な組織の設置・変更・廃止、5号が業務の適正を確保するための体制の整備、6号が定款の定めに基づく責任の免除です。

5号が、いわゆる内部統制システムにあたります。ここに置かれているということは、代表理事や事務局の判断で決めてよい事柄ではないということです。決めるなら理事会の決議で決めます。

理事会を置かない一般社団法人には、この規定の適用がありません。理事会そのものがないためです。ただし、理事は法令・定款・社員総会の決議を遵守し、法人のため忠実に職務を行う義務を負っています(83条)。体制を整えないことが直ちに違法になるわけではありませんが、事故が起きたときの説明はしなければなりません。

POINT 内部統制の整備は理事会の専決事項(90条4項5号)。決定が義務なのは負債200億円以上の大規模一般社団法人だけ(90条5項・2条2号)です。

「大規模一般社団法人」の判定 ― 負債200億円以上

一般法人法2条2号は、大規模一般社団法人を「最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上である一般社団法人」と定めています。

見るのは負債であって、収入でも資産でもありません。会員数や職員数も判定には関係しません。

一般財団法人にも同じ考え方の定義があり、大規模一般財団法人は負債の合計額が200億円以上の一般財団法人です(2条3号)。

多くの一般社団法人はこの水準に届きません。その場合、90条5項の「決定しなければならない」は当てはまらず、90条4項5号の「決めるなら理事会」という位置づけだけが残ります。

判定の基準 内部統制の決定
大規模一般社団法人 負債の合計額が200億円以上 理事会が決定しなければならない(90条5項)
それ以外の理事会設置法人 決めるなら理事会の決議(90条4項5号)
理事会を置かない法人 90条の適用なし(忠実義務は83条)

体制の中身 ― 施行規則14条の11項目

90条4項5号の「法務省令で定める体制」は、一般法人法施行規則14条が定めています。11の号に分かれていて、前半が業務全般、後半が監事の監査を支える仕組みです。

1号が理事の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制、2号が損失の危険の管理に関する規程その他の体制、3号が理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、4号が使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制です。

5号から11号は監事に関わります。5号が監事の職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合の当該使用人に関する事項、6号がその使用人の理事からの独立性に関する事項、7号が監事のその使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項、8号が理事及び使用人が監事に報告をするための体制その他の監事への報告に関する体制、9号が報告をした者が報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制、10号が監事の職務の執行について生ずる費用の前払・償還の手続その他の費用または債務の処理に係る方針に関する事項、11号がその他監事の監査が実効的に行われることを確保するための体制です。

並べてみると、半分以上が「監事が仕事をできるようにする」ための項目だと分かります。内部統制というと不正防止の話に寄りがちですが、条文の重心は監査の実効性にあります。

体制 ねらい
1号 情報の保存・管理 記録が残っていること
2号 損失の危険の管理(リスク管理規程等) 危ないことに気づける形
3号 職務の執行の効率性 決裁や分掌の整理
4号 使用人の法令・定款適合 職員の行為への目配り
5〜7号 監事の補助使用人・独立性・指示の実効性 監事に手足を用意する
8〜9号 監事への報告体制・報告者の不利益取扱い禁止 報告が上がる形をつくる
10号 監事の費用の前払・償還の方針 費用で監査が止まらないように
11号 その他監査の実効性 受け皿の条項

一般財団法人ではどうなるか

一般財団法人には理事会が必ず置かれます(170条1項)。そして197条が、理事・理事会・監事・会計監査人についての規定を準用しています。90条もその中に含まれます。

したがって、業務の適正を確保するための体制の整備は、財団でも理事会が決める事項です。大規模一般財団法人(負債200億円以上・2条3号)では、決定が義務になります。

財団には社員総会がないため、準用にあたって「社員総会」は「評議員会」と読み替えられます。体制の決定そのものは理事会の権限で、評議員会の決議事項ではありません。

決めたあとにすること ― 事業報告への記載と運用状況

体制の整備を決議したら、その内容を議事録に残します。決議した事実だけでなく、決議した体制の中身が分かる形にしておくと、後から監事や社員に説明できます。

決議して終わりにしないことも大切です。施行規則14条2号の「損失の危険の管理に関する規程」のように、規程を作って初めて形になるものがあります。8号の監事への報告体制も、誰が何をいつ監事に伝えるのかを決めなければ動きません。

事業報告では、法人の状況に関する重要な事項を記載します(施行規則34条1項)。体制を決議した法人は、その内容と運用の状況を事業報告で説明する形が実務上とられています。決議の有無と運用の実際がずれていないかを、毎年確認してください。

責任との関係 ― 整えることが理事を守る側面

役員等は、その任務を怠ったときは、法人に対して損害を賠償する責任を負います(111条1項)。複数の役員等が責任を負うときは連帯債務者となります(118条)。

職員の不正や事故が起きたとき、理事が何を整えていたかは、任務を怠ったかどうかの判断材料になります。規程を作り、報告の道筋を決め、監事が動ける状態にしておくことは、法人を守ると同時に理事自身の説明材料にもなります。

逆に、体制を決議していても、実際には運用されていなかったという場合には、決議があることが有利に働くとは限りません。決議の有無ではなく、運用の実際が見られると考えておくのが安全です。

規模が小さい法人が、まず手を付けるとよいところ

義務ではない法人でも、施行規則14条の並びは点検の手がかりになります。全部をそろえる必要はありません。自分の法人で事故が起きるとすればどこか、という順に見ていきます。

はじめに手を付けやすいのは、1号の情報の保存と管理です。理事会・社員総会の議事録、契約書、会計帳簿と証憑を、どこに、誰が、いつまで保管するのかを決めます。一般法人法は議事録の備置き(97条)や計算書類等の備置き(129条)を定めていますが、それ以外の書類の置き場所は法人が決める話です。

次が、お金の扱いです。2号の損失の危険の管理に当たる部分で、支出の決裁の順序、通帳と印鑑を別の人が管理すること、現金の取り扱いを減らすことなど、少人数でもできる手当てがあります。

三つめが、8号の監事への報告です。監事に何をいつ伝えるのかを決めておくと、監事の監査報告が形だけのものになりません。監事が費用を立て替える場面に備えて、10号の費用の扱いも決めておくとよいでしょう。

POINT 小さな法人で先に効くのは①記録の保管②お金の分掌③監事への報告の3つ。施行規則14条を全部そろえる話ではありません。
内部統制まわりで確認すること

  • 自分の法人が理事会設置法人かどうかを確認したか
  • 負債の合計額が200億円以上か(大規模一般社団法人の判定・2条2号)を確認したか
  • 体制を決めるなら、理事会の決議で決めているか(90条4項5号)
  • 施行規則14条の11項目を、自法人の規模に合わせて検討したか
  • 損失の危険の管理に関する規程(14条2号)を作ったか
  • 監事への報告の道筋(14条8号)と、報告者を不利に扱わない定め(9号)を決めたか
  • 監事の費用の前払・償還の方針(14条10号)を決めたか
  • 決議の内容を議事録に残し、事業報告で運用状況を説明できるようにしたか

よくある誤解を4つ

一つめは「すべての一般社団法人に内部統制システムの整備義務がある」という誤解です。決定が義務なのは大規模一般社団法人(負債200億円以上)です(90条5項)。

二つめは「規模が小さければ理事会で決めなくてもよい」という誤解です。義務でないのは「決めること」であって、決めるなら理事会の専決事項です(90条4項5号)。代表理事の一存では決められません。

三つめは「内部統制は不正防止の話」という誤解です。施行規則14条の11項目のうち5号から11号は監事の監査を支えるための項目です。

四つめは「大規模かどうかは収入で決まる」という誤解です。2条2号が見ているのは貸借対照表の負債の部の合計額です。

一般社団法人の内部統制システムについてよくある質問

Q. 一般社団法人に内部統制システムの整備義務はありますか?

A. 決定が義務なのは大規模一般社団法人である理事会設置一般社団法人です(一般法人法90条5項)。それ以外の法人では義務ではありませんが、決めるなら理事会の決議事項です(90条4項5号)。

Q. 大規模一般社団法人とは何ですか?

A. 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上の一般社団法人です(一般法人法2条2号)。収入や資産ではなく負債で判定します。

Q. 体制の中身はどこに書いてありますか?

A. 一般法人法施行規則14条です。情報の保存・管理、損失の危険の管理、職務の効率性、使用人の法令適合のほか、監事の補助使用人や監事への報告体制など、11の項目が定められています。

Q. 理事会を置かない法人はどうすればよいですか?

A. 一般法人法90条は理事会の権限の規定なので適用がありません。ただし理事は忠実義務を負い(83条)、事故が起きたときには任務を怠っていないかが問われます。

Q. 一般財団法人にも同じ規定がありますか?

A. あります。197条が90条を含む規定を準用しており、大規模一般財団法人(負債200億円以上・2条3号)では理事会の決定が義務です。

Q. 決議したあとは何をしますか?

A. 議事録に内容を残し、規程の作成や報告の道筋づくりなど、実際の運用に落とします。事業報告では法人の状況に関する重要な事項を記載します(施行規則34条1項)。

Q. 体制を決議していれば理事は責任を免れますか?

A. 決議の有無だけで決まるものではありません。役員等は任務を怠ったときに損害賠償責任を負い(111条1項)、複数が責任を負うときは連帯債務者となります(118条)。運用の実際が見られます。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。