結論から申し上げます。
一般社団法人の代表者について、法律に出てくる名称は「代表理事」だけです。
理事長・会長・代表は、法人が内部で付ける呼び名(通称)です。
登記簿に載るのも「代表理事」で、理事長や会長という呼び名は登記されません(一般法人法301条2項6号)。
ただし、代表権のない理事に「理事長」などを付けると、法人がその理事の行為に責任を負うことがあります(同法82条)。
法律に出てくる役職名と、出てこない役職名

一般法人法が定める一般社団法人の機関は、社員総会・理事・理事会・監事・会計監査人です(60条)。
理事の中で、法人を代表する理事を「代表理事」と呼びます(21条1項のかっこ書き)。
理事会のある法人では、代表理事以外にも「業務を執行する理事」を選べます(91条1項2号)。
一方、理事長・会長・副会長・専務理事・常務理事といった名称は、一般法人法のどこにも出てきません。
これらは、法人が定款や規程で付ける名称です。
| 名称 | 法律上の位置づけ | 登記 |
|---|---|---|
| 理事 | 法律上の役員(60条1項) | される(301条2項5号) |
| 代表理事 | 法人を代表する理事(21条1項・77条) | 氏名と住所がされる(同6号) |
| 業務執行理事 | 理事会が選ぶ業務執行の担当(91条1項2号) | されない |
| 監事 | 法律上の役員(60条2項) | 置いた旨と氏名がされる(同8号) |
| 理事長・会長・代表 | 法人が付ける呼び名 | されない |
| 副理事長・副会長・専務理事・常務理事 | 法人が付ける呼び名 | されない |
「業務執行理事」も法律上の地位ですが、登記事項ではありません。
代表理事は誰がどう決めるのか
代表理事の決め方は、理事会を置いているかどうかで変わります。
理事会を置く法人では、理事会が理事の中から代表理事を必ず選びます(90条3項)。
理事会設置法人の理事は3人以上が必要です(65条3項)。
理事会を置かない法人では、代表理事を置くかどうか自体を選べます。
置く場合は、定款・定款に基づく理事の互選・社員総会の決議のいずれかで、理事の中から定めます(77条3項)。
代表理事を定めなければ、理事は各自が法人を代表します(77条1項・2項)。
| 機関設計 | 代表理事 | 決め方 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 理事会あり | 必ず選ぶ | 理事会の決議 | 90条2項3号・3項 |
| 理事会なし・理事1人 | その理事が代表する | ― | 77条1項 |
| 理事会なし・理事2人以上 | 置いても置かなくてもよい | 定款/理事の互選/社員総会の決議 | 77条3項 |
| 理事会なし・代表理事を定めない | 理事が各自代表する | ― | 77条2項 |
設立のときは、理事会を置く法人なら設立時理事の過半数で設立時代表理事を選びます(21条1項・3項)。
一般財団法人は理事会が必ず置かれるため、代表理事も必ず選びます(170条1項・197条で90条を準用)。
代表理事の権限と責任
代表理事は、法人の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を持ちます(77条4項)。
契約の締結、訴訟、官公署への申請などを、法人の名前で行えるということです。
定款や理事会の決議で代表理事の権限を内部的に制限することはできます。
しかし、その制限を知らない相手(善意の第三者)には対抗できません(77条5項)。
代表理事が職務を行う中で第三者に損害を与えた場合、法人が賠償する責任を負います(78条)。
代表理事も理事なので、任期は原則として選任後2年以内に終わる事業年度の定時社員総会の終結時までです(66条)。
- 法人を代表する理事であること(21条1項)
- 理事会設置法人では理事会が必ず選ぶこと(90条3項)
- 業務に関する一切の行為の権限を持つこと(77条4項)
- 権限の内部制限は善意の第三者に対抗できないこと(77条5項)
- 氏名と住所が登記されること(301条2項6号)
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理事長・会長という呼び名の付け方
理事長や会長という呼び名は、定款に書いて付けるのが一般的です。
一般法人法12条は、法律に違反しない事項を定款に書いてよいとしています。
定款に書いておけば、誰が見ても「理事長=代表理事」とわかります。
呼び名の付け方には、大きく2つの型があります。
1つ目は「代表理事を理事長とする」型です。代表理事に選ばれた人が自動的に理事長になります。
2つ目は「理事長・副理事長を置き、理事長を代表理事とする」型です。役職の一覧を先に示す書き方です。
どちらでも法律上の効果は同じで、代表権を持つのは代表理事に選ばれた人です。
第〇条(役員の設置)当法人に、次の役員を置く。(1)理事 3名以上〇名以内 (2)監事 1名以上〇名以内
2 理事のうち1名を代表理事とし、代表理事をもって理事長とする。
3 理事長以外の理事のうち〇名以内を業務執行理事とし、うち1名を副理事長とする。
第〇条(役員の選任)理事及び監事は、社員総会の決議によって選任する。
2 代表理事及び業務執行理事は、理事会の決議によって理事の中から選定する。
第〇条(理事の職務及び権限)理事長は、法令及びこの定款で定めるところにより、当法人を代表し、その業務を執行する。
「副理事長」は業務執行理事として選ぶ形にしています。代表権を持たないことを明確にするためです。実際の定款は機関設計に合わせて作ります。
会長という呼び名を使う団体では、上の「理事長」を「会長」に置き換えます。
定款を変えずに理事会規程などで呼び名を決める法人もあります。その場合も、代表理事との対応を書面に残しておきます。
登記簿に載るのは「代表理事」
一般社団法人の設立登記では、理事の氏名と代表理事の氏名及び住所を登記します(301条2項5号・6号)。
理事会を置く法人は、その旨も登記します(同7号)。
登記事項証明書では「代表理事」の欄に氏名と住所が載ります。理事長や会長という呼び名は載りません。
理事会を置かず代表理事を定めていない場合は、各理事が代表理事に当たります。
21条1項が代表理事を「法人を代表する理事」と定義しているためです。
代表理事が交代したときや住所が変わったときは、2週間以内に変更の登記が必要です(303条)。
代表理事の就任の登記には、就任を承諾したことを証する書面を添付します(320条1項)。
登記を怠ると、理事などは100万円以下の過料の対象になります(342条1号)。
| こんなとき | 登記は必要か | 根拠 |
|---|---|---|
| 代表理事が交代した | 必要(2週間以内) | 303条 |
| 代表理事が引っ越した | 必要(2週間以内) | 301条2項6号・303条 |
| 代表理事が再任された(重任) | 必要(2週間以内) | 303条 |
| 呼び名を「理事長」から「会長」に変えた | 不要(登記事項でない) | 301条2項 |
| 副理事長・専務理事を新たに置いた | 不要(ただし理事の選任なら必要) | 301条2項5号 |
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
表見代表理事に注意(一般法人法82条)
呼び名の付け方で、いちばん注意したいのが表見代表理事です。
82条は、代表理事以外の理事に「理事長その他法人を代表する権限を有するものと認められる名称」を付けた場合を定めています。
この場合、法人はその理事がした行為について、善意の第三者に責任を負います。
たとえば、代表権のない理事を「理事長」と呼び、その人が法人名で契約したとします。
相手が代表権がないことを知らなければ、法人は「代表権がなかった」と言って逃れることが難しくなります。
条文が例に挙げているのは「理事長」ですが、「会長」「代表」なども代表権を思わせる名称になり得ます。
株式会社の「表見代表取締役」(会社法354条)と同じ考え方の規定です。
- 代表権のない理事に「理事長」「会長」「代表」を付けていないか
- 会長と理事長を両方置く場合、どちらが代表理事かを定款に書いているか
- 名誉会長・顧問などを理事にした場合、代表権がないことを明記しているか
- 代表理事が交代したのに、前任者の名刺や印鑑が使われていないか
- 契約書の署名欄が、登記された代表理事の氏名になっているか
表見代表理事の詳しい要件は、一般社団法人の表見代表理事とはで説明しています。
会長と理事長を両方置くときの整理
業界団体などでは、「会長」と「理事長」を両方置く例もあります。
この場合に決めておくべきなのは、どちらが代表理事かです。
代表理事を2人以上置くことも、法律上は禁止されていません。
ただし代表理事は各自が法人の業務の一切の権限を持つため、意見が割れると対外的に混乱します。
代表権のない方の役職には、代表権を思わせない役割を定款や規程で明記しておくと安全です。
たとえば「会長は社員総会の議長を務める」「名誉会長は理事会に出席して意見を述べる」といった定め方です。
| 置き方の例 | 代表理事 | 注意点 |
|---|---|---|
| 理事長のみ | 理事長 | もっとも単純で誤解がない |
| 会長のみ | 会長 | 協会・連盟などでよく使われる |
| 会長+理事長 | どちらか一方 | 代表権のない方に表見代表理事のリスク |
| 会長+理事長(両方が代表理事) | 両方 | 各自が代表権を持つ。2人とも登記される |
| 名誉会長+理事長 | 理事長 | 名誉会長を理事にするなら代表権がないことを明記 |
副理事長・専務理事・常務理事の位置づけ
副理事長・専務理事・常務理事も、法律上の名称ではありません。
理事会のある法人では、これらの理事を業務執行理事として選ぶ形が多く使われます(91条1項2号)。
業務執行理事は、理事会の決議で選ばれ、法人の業務を執行します。
代表理事と業務執行理事は、3か月に1回以上、職務の執行状況を理事会に報告しなければなりません(91条2項)。
定款で「毎事業年度に4か月を超える間隔で2回以上」と定めれば、報告の回数を減らせます(同項ただし書)。
業務執行理事は業務を行いますが、代表権はありません。
「副理事長」のように代表を思わせる名称を付けるときは、82条の観点から役割を明記しておきます。
契約書・名刺・Webサイトでの書き方
対外的な書類では、場面によって書き方を選びます。
契約書・申請書・登記の書類では、登記と一致する「代表理事」と書くのが確実です。
相手方は登記事項証明書を見て、署名した人に代表権があるかを確かめることができます。
名刺・挨拶状・Webサイトでは、理事長や会長という呼び名を使っても構いません。
呼び名と法律上の地位の両方を伝えたいときは、併記する方法があります。
契約書の署名欄:一般社団法人〇〇協会 代表理事 〇〇〇〇
併記する場合:一般社団法人〇〇協会 代表理事(理事長) 〇〇〇〇
名刺:一般社団法人〇〇協会 理事長 〇〇〇〇
Webサイトの法人概要:代表者 代表理事 〇〇〇〇(理事長)
法人の名称には「一般社団法人」の文字を入れる必要があります(一般法人法5条1項)。
名刺の作り方は、一般社団法人のWebサイトと名刺の作り方でも触れています。
一般財団法人・NPO法人・株式会社との比較
代表者の名称の決まり方は、法人の種類で違います。
一般財団法人も、一般社団法人と同じく法律上の名称は「代表理事」です(302条2項6号)。
NPO法人は、法律上理事の全員が法人を代表します(NPO法16条)。
NPO法人では、定款で代表権を理事長1人に制限する作り方ができます(同条ただし書)。
NPO法人の登記事項は「代表権を有する者の氏名、住所及び資格」です(組合等登記令2条2項4号)。
株式会社では「代表取締役」が法律上の名称で、「社長」は呼び名です(会社法349条・354条)。
| 法人の種類 | 法律上の代表者 | よく使う呼び名 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 一般社団法人 | 代表理事(理事会なしなら各理事も可) | 理事長・会長 | 一般法人法77条・90条 |
| 一般財団法人 | 代表理事(必ず選ぶ) | 理事長 | 一般法人法197条・90条 |
| NPO法人 | 理事(全員。定款で制限可) | 理事長・代表理事 | NPO法16条 |
| 株式会社 | 代表取締役(取締役会なしなら各取締役も可) | 社長 | 会社法349条 |
一般財団法人の肩書きは一般財団法人の肩書き、NPO法人はNPO法人の代表理事(理事長)とはで説明しています。
呼び名や代表者を変えるときの手続

変えるものが「呼び名」か「代表者」かで、手続が違います。
呼び名だけ変える場合、定款に呼び名を書いていれば定款変更が必要です。
一般社団法人の定款変更は、社員総会の特別決議で行います(146条)。
総社員の半数以上で、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(49条2項4号)。
呼び名は登記事項ではないため、呼び名を変えただけなら登記は要りません。
代表者を交代する場合は、代表理事の選定と変更の登記が必要です。
理事会設置法人では理事会で新しい代表理事を選び、2週間以内に登記します(90条2項3号・303条)。
理事でない人を選ぶ場合は、先に社員総会で理事に選任する
理事会設置法人は理事会の決議。理事会なしは定款・互選・社員総会
登記の添付書面になる(320条1項)
主たる事務所の所在地で2週間以内(303条)
前任者の肩書きが残らないようにする
役員の変更登記の流れは一般社団法人の役員変更登記で詳しく説明しています。
よくある誤解
誤解1:理事長と名乗れば代表者になる。代表権を持つのは代表理事に選ばれた人だけです。呼び名で代表権は生まれません。
ただし、代表権のない理事に理事長の名称を付けると、法人が責任を負う場面があります(82条)。
誤解2:「理事長」と登記しなければならない。
登記事項は「代表理事の氏名及び住所」で、呼び名は登記できる事項ではありません(301条2項)。
誤解3:代表理事は1人しか置けない。法律上、人数の上限は定められていません。複数置けば各自が代表権を持ちます。
誤解4:理事会がなければ代表理事は置けない。
理事会のない法人でも、定款・互選・社員総会で代表理事を定められます(77条3項)。
誤解5:会長は名誉職だから責任はない。会長が理事であれば、理事としての義務と責任を負います。
肩書きとは別に、法人名の頭に付く「一般社団法人」にも決まりがあります。旧制度との違いはこちらです。
これは一般社団法人の話です。一般財団法人では評議員との兼任禁止など固有の制約があります。財団版はこちらです。
代表者の肩書は登記事項証明書の役員区で確認できます。証明書の種類(代表者事項証明書を含む)と取り方はこちらです。
一般社団法人の代表者の肩書きについてよくある質問
A. 法律上の地位は「代表理事」で、理事長は法人が付ける呼び名です。定款で「代表理事を理事長とする」と定めていれば同じ人を指します(一般法人法21条1項・12条)。
A. 書かれません。登記されるのは理事の氏名と、代表理事の氏名及び住所です(一般法人法301条2項5号・6号)。
A. 理事会を置く法人では必ず選びます(90条3項)。理事会を置かない法人では任意で、定めなければ各理事が法人を代表します(77条1項〜3項)。
A. 法律で禁止はされていませんが、代表権を思わせる名称を付けると、その理事の行為について法人が善意の第三者に責任を負うことがあります(一般法人法82条)。
A. 置けます。人数の上限は法律にありません。複数置くと各自が法人の業務の一切の権限を持ち、全員が登記されます(77条4項・301条2項6号)。
A. 登記と一致する「代表理事」と書くのが確実です。呼び名も示したいときは「代表理事(理事長)」と併記する方法があります。
A. 必要です。代表理事の住所は登記事項なので、変わった日から2週間以内に変更の登記をします(301条2項6号・303条)。
A. 呼び名は登記事項ではないので登記は不要です。定款に呼び名を書いている場合は、社員総会の決議による定款変更が必要です(146条・49条2項4号)。
📖 参考にした公的機関の情報


