認可地縁団体とは?自治会・町内会が法人格を得る4つの要件と申請の書類5点|メリット・デメリットと認可後の運営ルール(地方自治法260条の2)

一般社団法人法
自治会の集会所の土地が、昔の役員の個人名義のままになっている。そんな相談のときに出てくるのが「認可地縁団体」です。どんな制度で、何が変わり、何が大変になるのか。条文から整理しましょう。

結論から申し上げます。認可地縁団体とは、市町村長の認可を受けて法人格を得た自治会・町内会などの団体です(地方自治法260条の2第1項・第7項)。

認可を受けると、団体の名前で不動産の登記や銀行口座の開設ができるようになります。役員個人の名義に頼らずに、団体の財産を持てるということです。

一方で、総会の開催、財産目録や構成員名簿の備え置きなど、法律で決まった運営ルールに従う義務が生まれます。

この記事では、要件、規約、申請の書類、メリット・デメリット、認可後の運営ルールまでを順に説明します。

認可地縁団体とは ― 自治会が「法人」になる仕組み

自治会や町内会は、ふつうは法人格のない任意団体です。法律上は権利や義務の主体になれません。

そのため、集会所の土地や建物を団体で持ちたくても、登記は代表者や役員の個人名義にするしかありませんでした。

役員が亡くなると、名義が相続人に移ってしまいます。相続人が多数に分かれると、売ることも名義を直すことも難しくなります。

この問題に対応するのが認可地縁団体の制度です。地方自治法260条の2第1項は、地縁による団体は、市町村長の認可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負うと定めています。

以前は、認可の目的が不動産などを保有するためと限定されていました。現在の条文には、その限定がありません。地域的な共同活動を円滑に行うためであれば、認可を受けられます。

項目 任意団体の自治会 認可地縁団体
法人格 なし あり(規約の目的の範囲内)
不動産の登記名義 代表者など個人 団体
銀行口座 「〇〇会 代表 〇〇」の形 団体名義
総会 会則で決める 毎年1回以上の通常総会が義務
規約の変更 会則で決める 原則として総構成員の4分の3以上の同意+市町村長の認可
財産目録・構成員名簿 義務なし 備え置きの義務
加入の拒否 会則で決める 正当な理由がなければ拒めない

認可を受けるための4つの要件

地方自治法260条の2第2項は、認可の要件として次の4つを定めています。市町村長は、要件に該当すると認めるときは、認可をしなければなりません(同条第5項)。

要件 条文の内容(要旨) 確かめられること
1. 目的と活動 住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理など、良好な地域社会の維持・形成に資する地域的な共同活動を目的とし、現にその活動を行っていること 活動の実績
2. 区域 区域が住民にとって客観的に明らかなものとして定められていること 地図・町名・字名での区域の定め
3. 構成員 区域に住所を有するすべての個人が構成員となることができ、その相当数の者が現に構成員となっていること 加入資格の定めと加入者数
4. 規約 規約を定めていること 規約の内容(下の8項目)

要件で迷いやすい点

要件2の区域は、団体が相当の期間にわたって存続している区域の現況によらなければなりません(同条第4項)。認可のために区域を新しく線引きし直すことは想定されていません。

要件3では、構成員は「世帯」ではなく「個人」です。区域に住所を有するすべての個人が構成員になれるように規約を作る必要があります。

「相当数」がどのくらいかは、条文に数字がありません。実際の判断は市町村が行うため、申請の前に市町村の担当課へ相談するのが確実です。

なお、認可を受けても、団体が市町村などの行政組織の一部になるわけではありません(同条第6項)。

規約に書かなければならない8項目

認可を受ける団体の規約には、次の8項目を定めなければなりません(地方自治法260条の2第3項)。

規約の必要記載事項(260条の2第3項)

  • 1. 目的
  • 2. 名称
  • 3. 区域
  • 4. 主たる事務所の所在地
  • 5. 構成員の資格に関する事項
  • 6. 代表者に関する事項
  • 7. 会議に関する事項
  • 8. 資産に関する事項

今の会則をそのまま使えるか

多くの自治会には、すでに会則があります。ただし、そのまま認可の規約として使えるとは限りません。

よく直すことになるのは、構成員を世帯単位から個人単位に改めること、区域を町名・字名や地図ではっきりさせること、資産に関する事項を加えることです。

会則を直したら、総会で承認を受けます。認可の申請にも、総会の議決が必要です。

任意団体の会則の作り方と書くべき項目は、別の記事で詳しく整理しています。

申請に必要な書類5点

認可の申請は、団体の代表者が、申請書に次の書類を添えて、団体の区域を包括する市町村の長に対して行います(地方自治法施行規則18条1項)。

書類 内容 準備のポイント
1. 規約 8項目を備えた規約 総会で承認されたもの
2. 総会の議決を証する書類 認可を申請することを総会で議決したことを示すもの 議事録の写しなど
3. 構成員の名簿 構成員の氏名・住所など 個人単位で作る
4. 活動を記載した書類 地域的な共同活動を現に行っていることを記載したもの 事業報告・行事の記録など
5. 代表者であることを証する書類 申請者が代表者であることを示すもの 代表者を選んだ総会の議事録など

申請から認可後までの流れ

申請書の様式は、施行規則の別記で定められています(施行規則18条2項)。市町村の窓口やウェブサイトで様式を配っていることが多いので、先に確かめます。

市町村長は、認可をしたときは告示をします(地方自治法260条の2第10項)。

認可地縁団体は、告示があるまでは、認可地縁団体となったことを第三者に対抗することができません(同条第13項)。登記や口座の手続は、告示の後に進めます。

告示した事項(名称、代表者など)に変更があったときは、市町村長に届け出なければなりません(同条第11項)。

だれでも、市町村長に告示事項の証明書の交付を請求できます(同条第12項)。銀行や法務局の手続では、この証明書を使うのが一般的です。

時期 やること
申請の前 市町村の担当課に相談/規約の改正/構成員名簿の整備
総会 規約の承認・認可申請の議決・代表者の選任
申請 申請書+書類5点を市町村長へ提出
認可・告示 市町村長が認可し告示する
告示の後 証明書を取り、不動産の登記・口座の名義変更を進める

メリット ― 何ができるようになるか

一つめは、集会所などの不動産を団体名義で登記できることです。役員の交代や相続で名義が動く心配がなくなります。

二つめは、団体名義で銀行口座を持てることです。代表者が替わるたびに口座の名義を個人名で付け替える手間が減ります。

三つめは、契約の主体になれることです。団体として物を借りたり、工事を頼んだりする契約を、団体の名前で結べます。

四つめは、財産と個人の区別がはっきりすることです。団体の財産が、役員個人の財産と混ざりにくくなります。

デメリット ― 何が大変になるか

一つめは、運営のルールが法律で決まることです。毎年1回以上の通常総会(260条の13)、財産目録と構成員名簿の備え置き(260条の4)などが義務になります。

二つめは、規約の変更が重くなることです。規約は、原則として総構成員の4分の3以上の同意がなければ変更できず(260条の3第1項)、変更には市町村長の認可が必要です(同条第2項)。

三つめは、加入を拒めないことです。認可地縁団体は、正当な理由がない限り、区域に住所を有する個人の加入を拒んではなりません(260条の2第7項)。

四つめは、中立の義務です。民主的な運営の下に自主的に活動し、構成員に不当な差別的取扱いをしてはならず(同条第8項)、特定の政党のために利用してはなりません(同条第9項)。

五つめは、税金の扱いです。認可地縁団体は、法人税の関係では公益法人等とみなされます(同条第16項)。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

認可後の運営ルール

認可を受けたあとは、地方自治法の定めに従って運営します。主なルールは次のとおりです。

項目 ルール 条文
代表者 1人の代表者を置く 260条の5
監事 規約または総会の決議で置くことができる 260条の11
通常総会 代表者は少なくとも毎年1回開く 260条の13
臨時総会 総構成員の5分の1以上(規約で別の割合も可)の請求で招集 260条の14
招集通知 総会の日より少なくとも5日前に目的を示して通知 260条の15
表決権 各構成員平等。書面・代理人による表決ができる(規約で別段の定めも可) 260条の18
財産目録 認可時と毎年1〜3月(事業年度がある団体は年度末)に作成し備え置く 260条の4第1項
構成員名簿 備え置き、変更のたびに直す 260条の4第2項
規約の変更 原則として総構成員の4分の3以上の同意+市町村長の認可 260条の3
解散の決議 原則として総構成員の4分の3以上の賛成 260条の21
POINT 規約の変更と解散の「4分の3」は、出席者ではなく総構成員が基準です。ただし、どちらも規約に別段の定めを置くことが認められています(260条の3第1項ただし書・260条の21ただし書)。

総会の事務の範囲

認可地縁団体の事務は、規約で代表者その他の役員に委任したものを除き、すべて総会の決議によって行います(260条の16)。

役員会で日常の事務を決めたい場合は、規約に委任の定めを置いておく必要があります。

解散の事由は、規約で定めた事由の発生、破産手続開始の決定、認可の取消し、総会の決議、構成員が欠けたこと、合併です(260条の20)。

市町村長は、団体が要件のいずれかを欠くこととなったとき、または不正な手段で認可を受けたときは、認可を取り消すことができます(260条の2第14項)。

NPO法人・一般社団法人との違い

自治会が法人格を得る方法は、認可地縁団体だけではありません。NPO法人や一般社団法人になる方法もあります。

ただし、NPO法人は特定非営利活動を目的とし、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することが求められます。地域の住民だけを対象とする活動とは相性がよくありません。

一般社団法人は、登記で設立でき、目的の制限もありません。一方で、定款の認証や登記の費用がかかり、地域の全員が加入できる仕組みを法律が用意しているわけではありません。

地域の住民全員が入れる団体として法人格を持ちたいなら、認可地縁団体がいちばん素直な選択肢です。

比較 認可地縁団体 NPO法人 一般社団法人
根拠法 地方自治法 特定非営利活動促進法 一般法人法
成立 市町村長の認可 所轄庁の認証+登記 登記
対象 区域の住民 不特定多数の利益 制限なし
法人の設立登記 なし(認可と告示) あり(登録免許税は非課税) あり(定款認証・登録免許税)
加入 区域の個人は原則拒めない 不当な条件を付けない 定款で決める

認可地縁団体についてよくある質問

Q. 認可地縁団体とは何ですか?

A. 市町村長の認可を受けて法人格を得た自治会・町内会などの団体です(地方自治法260条の2第1項・第7項)。規約に定める目的の範囲内で権利を有し、義務を負います。

Q. 不動産を持っていなくても認可を受けられますか?

A. 現在の条文では、認可の目的は地域的な共同活動を円滑に行うためとされ、不動産の保有に限定されていません。4つの要件を満たせば申請できます。

Q. 認可の要件は何ですか?

A. ①地域的な共同活動を目的とし現に活動していること、②区域が客観的に明らかなこと、③区域の全ての個人が構成員になれ相当数が加入していること、④規約を定めていること、の4つです(260条の2第2項)。

Q. 申請に必要な書類は?

A. 申請書に、規約、総会で申請を議決したことを証する書類、構成員の名簿、地域的な共同活動を現に行っていることを記載した書類、申請者が代表者であることを証する書類を添えます(施行規則18条1項)。

Q. 認可を受けると加入を断れなくなりますか?

A. 正当な理由がない限り、区域に住所を有する個人の加入を拒んではならないとされています(260条の2第7項)。

Q. 規約を変えるにはどうすればよいですか?

A. 原則として総構成員の4分の3以上の同意が必要で、変更は市町村長の認可を受けなければ効力を生じません(260条の3)。4分の3の割合は規約で別に定めることができます。

Q. 認可後に代表者が替わったら?

A. 告示された事項に変更があったときは、市町村長に届け出なければなりません(260条の2第11項)。登記や口座の手続には、変更後の証明書を使います。

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