結論から申し上げます。任意団体の役員の決め方は、会則で自由に決められます。法律で決まった方法はありません。
大切なのは、会則に書いた方法どおりに候補者を決め、総会で選任し、本人の就任の承諾を記録することです。
なり手不足への対策は、決め方の工夫だけでは足りません。役員の仕事そのものを減らすこととセットで考えます。
この記事では、会則の定め、決め方の種類、選考の進め方、総会での選任、辞退への対応、引き継ぎまでを順に説明します。
役員改選の前に、会則を確かめる
役員改選で最初にやることは、会則を読むことです。次の5点が書かれているかを確かめます。
- 役員の種類と人数(会長・副会長・会計・書記・会計監査など)
- 役員の選び方(総会で選任、役員会で互選など)
- 任期と再任の可否
- 任期の途中で欠けたときの補充の方法
- 会長などの役職を、選ばれた役員の中でどう決めるか
会則に書いていないときは
会則に選び方が書いていないときは、まず総会で選び方を決めます。
毎年のやり方がばらばらだと、「今年はなぜこの方法なのか」という不満が出ます。この機会に会則を変えて、選び方を書き込んでおくのが確実です。
会則の変更には、会則に定めた手続(総会の特別な多数など)が必要です。改選の前の総会で変えておくと、次の改選から新しい方法を使えます。
役員の決め方4つ ― 長所と注意点
任意団体でよく使われる決め方は、次の4つです。組み合わせて使う団体も多くあります。
| 決め方 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 立候補 | やる気のある人が就く | 候補者が出ないと決まらない |
| 推薦(選考委員会) | 適任者に個別にお願いできる | 頼まれた人が断りにくく負担感が残る |
| 輪番(班・地区の順番) | 公平で予測しやすい | 向き不向きを考えにくい |
| くじ引き | 短時間で決まる | 事情のある人への配慮が必要 |
くじ引き・輪番で決めるときのルール
くじ引きや輪番は、公平で早い一方、「事情があるのに当たってしまった」という問題が起きやすい方法です。
そこで、くじ引きの前に、免除や延期の基準を決めて公表しておくのが基本です。例えば、病気療養中、介護中、乳幼児の育児中、すでに役員を経験した人などです。
基準は、個別の事情を細かく聞き出さなくても判断できるように作ります。申し出の内容を他の会員に知らせないことも大切です。
くじ引きの結果も、総会での選任が必要です。くじで決まるのは「候補者」であり、選任するのは会則に定めた機関(多くは総会)です。
選考委員会を置くときの進め方
推薦で決める団体では、改選の2〜3か月前に選考委員会を作ることがあります。
選考委員会は、現役員の一部と一般の会員で構成すると、「現役員が次の役員を決めている」という印象を和らげられます。
候補者にお願いするときは、仕事の内容・会議の回数・任期を書いた1枚の説明を渡します。「何をするのかわからない」ことが、断られる大きな理由だからです。
候補者がそろったら、選考委員会は候補者名簿を総会の議案として出します。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 改選の3か月前 | 選考委員会を作る/役員の仕事の説明書を用意する |
| 2か月前 | 立候補を募る/推薦・輪番・くじ引きで候補者を決める |
| 1か月前 | 候補者の内諾を取り、候補者名簿を作る |
| 総会 | 役員選任の議案として諮り、選任する/就任承諾を確認する |
| 総会後 | 新役員で役職を決める/引き継ぎをする |
役員の仕事の説明書 ― 候補者に渡す1枚
候補者にお願いするときに渡す説明書は、役職ごとに「主な仕事」「会議の回数」「目安の時間」を並べるだけで十分です。
以下は、自治会を想定した例です。団体の実情に合わせて書き換えてください。
| 役職 | 主な仕事 | 会議・時間の目安(例) |
|---|---|---|
| 会長 | 総会・役員会の招集と進行、対外的な窓口、書類への署名 | 役員会が月1回程度 |
| 副会長 | 会長の補佐、会長が欠けたときの代理、行事の取りまとめ | 役員会が月1回程度 |
| 会計 | 会費の管理、支払い、帳簿、会計報告と予算案の作成 | 役員会+月数時間の記帳 |
| 書記 | 会議の記録、議事録の作成、会報・回覧の作成 | 役員会+議事録の作成 |
| 会計監査 | 年度末の会計の監査、総会での監査報告 | 年1〜2回 |
| 班長・組長 | 班内の回覧、会費の集金、行事の連絡 | 年に数回の集金と回覧 |
班長・組長の決め方
自治会では、会長などの役員とは別に、班長や組長を置くことが多くあります。
班長・組長は、班内の輪番で決めるのが一般的です。会則や細則に「班長は班内の輪番により選ぶ」と書いておくと、毎年もめずに済みます。
輪番の順番表を班内で共有し、事情のある世帯の免除や順番の入れ替えの方法も決めておきます。
班長・組長の仕事は、回覧や集金が中心です。集金した会費を早めに会計に渡す流れを決めておくと、班長の負担と現金の管理の心配を同時に減らせます。
会則に入れておきたい役員の条文例
役員の決め方と任期、欠員の補充は、会則に書いておくと改選のたびに迷いません。
第〇条(役員) 本会に、会長1名、副会長1名、会計1名、書記1名、会計監査2名を置く。
第〇条(選任) 役員は、総会において選任する。会長、副会長、会計及び書記は、役員の互選により定める。
第〇条(候補者) 役員の候補者は、立候補、推薦又は細則に定める輪番により定める。
第〇条(任期) 役員の任期は1年とし、再任を妨げない。役員は、任期満了後も後任者が就任するまでその職務を行う。
第〇条(補充) 役員に欠員が生じたときは、役員会の決議により補充し、次の総会で承認を受ける。補充された役員の任期は、前任者の残任期間とする。
第〇条(兼職の禁止) 会計監査は、他の役員を兼ねることができない。
総会での選任と、議事録の書き方
総会では、候補者名簿を示して一括で諮るか、一人ずつ諮るかを決めます。反対意見が出そうなときは、一人ずつ諮るほうが後の争いを防げます。
議事録には、「議長が役員候補者を別紙のとおり諮ったところ、賛成〇名で承認され、各被選任者は就任を承諾した」のように書きます。
会長・副会長などの役職を、選ばれた役員の中で互選する会則なら、総会の後に役員会を開いて決め、その議事録も残します。
銀行口座の代表者変更などでは、新しい代表者を決めた議事録の提出を求められるのが一般的です。
辞退したい・途中でやめたいと言われたら
役員は、本人の承諾があって就くものです。承諾する前に辞退を申し出た人に、就任を強いることはできません。
ただし、選ばれてから一方的に辞めると、団体の運営が止まることがあります。会則に「役員は、後任者が就任するまでその職務を行う」と書いておくと、空白を防げます。
任期の途中で役員が欠けたときの補充の方法(役員会で補充し、次の総会で承認を受けるなど)も、会則に書いておきます。
辞退の申し出が多いときは、個人を責めるより、役員の仕事の量と会議の回数を見直すほうが効果的です。
なり手不足を減らす工夫
なり手不足の根本の原因は、多くの場合、役員の仕事が多すぎることです。
一つめは、仕事の棚卸しです。役員が毎年やっている仕事を書き出し、やめてもよいもの、外に頼めるもの、会員全体で分けられるものに分けます。
二つめは、会議の回数と方法の見直しです。連絡をメッセージアプリや電子メールでまとめ、集まる会議を減らします。書面決議やオンラインの会議を認めるなら、会則にその方法を書いておきます。
三つめは、任期と人数の見直しです。任期を短くする、副役職を置いて一人あたりの仕事を減らす、会計と書記を兼ねないなどの方法があります。
四つめは、引き継ぎの仕組み化です。毎年同じ説明書と引き継ぎ書を使えば、初めての人でも仕事を始めやすくなります。
引き継ぎの手順
新しい役員が決まったら、総会の後なるべく早く引き継ぎを行います。
引き継ぎは口頭だけで済ませず、引き継ぎ書と、渡した物の一覧を作り、受け取った側が確かめて署名します。
- 年間の行事と、それぞれの準備の時期
- 毎月・毎年の定例の仕事(会報、集金、市町村への書類など)
- 連絡先の一覧(市町村の担当課、関係団体、業者)
- 通帳・印鑑・現金・帳簿・備品と保管場所
- 進行中の案件と、次にやること
- パスワードなどの情報(書面とは別の安全な方法で渡す)
役員改選でよくあるトラブル
一つめは、会則にない方法で決めてしまうことです。会則が「総会で選任」なのに役員会だけで決めると、選任が有効かどうかで争いになります。
二つめは、就任の承諾を取らずに名簿に載せることです。本人が知らないうちに役員にされたという苦情は、団体への信頼を大きく損ないます。
三つめは、同じ人が何年も会長と会計を兼ねることです。お金の管理と確認が一人に集まると、誤りにも気づけません。会計と会計監査は必ず別の人にします。
四つめは、前の役員が引き継ぎをしないまま退くことです。通帳や印鑑の所在がわからなくなると、口座の手続だけで何か月もかかることがあります。
認可地縁団体の場合
法人格を得た自治会(認可地縁団体)では、代表者を1人置かなければなりません(地方自治法260条の5)。
代表者が替わったときは、市町村長が告示した事項に変更があったことになるため、市町村長への届出が必要です(260条の2第10項・第11項)。
届出の様式や添付書類は市町村ごとに案内されています。新しい代表者を選んだ総会の議事録を添えるのが一般的なので、議事録の作成を急ぎます。
役員改選についてよくある質問
A. 会則で決めた方法によります。立候補、推薦、輪番、くじ引きなどで候補者を決め、会則に定めた機関(多くは総会)で選任し、本人の就任承諾を記録します。
A. 会則や総会で認めていれば可能です。事情のある人の免除や延期の基準を先に決めて公表し、くじで決まった人も総会で選任し、就任の承諾を得ます。
A. 役員は本人の承諾で就くものなので、承諾前の辞退を強いることはできません。会則に後任者が就任するまで職務を行う定めや、欠員の補充方法を置いておくと運営が止まりません。
A. 会則の補充の方法に従います。定めがなければ、役員会で後任を仮に決め、次の総会で承認を受ける方法が一般的です。
A. 候補者を諮った方法、票数、選任された人、本人が就任を承諾したことを書きます。役職を互選で決めた場合は、その役員会の議事録も残します。
A. 決め方の工夫だけでなく、仕事の棚卸し、会議の回数の削減、任期と人数の見直し、引き継ぎ書の整備など、役員の負担を減らすことが効果的です。
A. 告示された事項に変更があったときは、市町村長に届け出なければなりません(地方自治法260条の2第11項)。
📖 参考にした公的機関の情報


