結論から申し上げます。任意団体の会計報告に、法律で決まった様式はありません。
それでも、中身の型はほぼ共通です。前年度繰越金・収入・支出・次年度繰越金の4つを並べ、監査報告を添えます。
いちばん大事なのは検算です。「前年度繰越金+収入-支出=次年度繰越金」が、通帳残高と手元現金の合計に一致することを確かめます。
この記事では、呼び方の違い、載せる要素、ひな形、検算、監査、総会での承認、よくある間違いまでを順に説明します。
会計報告・収支報告書・収支決算書は何が違うのか
「会計報告」「収支報告書」「収支決算書」「決算報告書」は、任意団体ではほぼ同じ書類を指します。
1年間のお金の出入りをまとめて、会員に報告する書類です。団体の会則で使っている呼び名に合わせれば足ります。
任意団体の会計報告の様式を定めた法律はありません。会則に「会計は総会に収支を報告し承認を受ける」と書いてあれば、それが作成の根拠になります。
注意したいのは、同じ名前でも別物の書類があることです。「政治資金収支報告書」は、政治団体が政治資金規正法に基づいて出す書類で、この記事の対象ではありません。
また、NPO法人や一般社団法人になると、法律で決まった書類を作る義務が生まれます。任意団体の会計報告とは扱いが違うので、後半で整理します。
| 呼び名 | 主に使われる場面 | 法律で決まった様式 |
|---|---|---|
| 会計報告・会計報告書 | 自治会・PTA・サークル・同窓会 | なし(会則で決める) |
| 収支報告書 | 任意団体全般・イベントの実行委員会 | なし(政治団体のものは別) |
| 収支決算書・決算報告書 | 予算を立てている団体 | なし(会則で決める) |
| 活動計算書 | NPO法人 | あり(NPO法28条1項) |
| 計算書類(貸借対照表・損益計算書) | 一般社団法人 | あり(一般法人法123条2項) |
会計報告に載せる5つの要素
会計報告は、次の5つがそろっていれば読み手に伝わります。
一つめは対象の期間です。「令和〇年4月1日から令和〇年3月31日まで」のように、会則の会計年度をそのまま書きます。
二つめは前年度繰越金です。前の年度の報告で「次年度繰越金」とした額と、1円も違わないことが前提です。
三つめは収入の部です。会費、補助金、寄付、事業収入、預金利息などを科目ごとに合計します。
四つめは支出の部です。会議費、印刷費、通信費、行事費、備品費などを科目ごとに合計します。
五つめは次年度繰越金です。前年度繰越金に収入を足し、支出を引いた額です。
このほか、作成日、会計担当者の氏名、監査の結果を書き添えます。
そのまま使える会計報告のひな形
以下は、会員30名ほどの任意団体を想定した記入例です。金額は説明のための仮の数字です。
予算額と決算額を並べ、差額と理由を備考に書く形にしています。総会の資料では、この形がいちばん質問を減らせます。
令和〇年度 〇〇会 会計報告(収支決算書)
(令和〇年4月1日から令和〇年3月31日まで)
収入の部(単位:円)
| 科目 | 予算額 | 決算額 | 差額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 前年度繰越金 | 52,300 | 52,300 | 0 | 前年度の報告どおり |
| 会費 | 90,000 | 87,000 | △3,000 | 3,000円×29名(1名退会) |
| 補助金 | 20,000 | 20,000 | 0 | 〇〇市の活動補助 |
| 事業収入 | 30,000 | 34,500 | 4,500 | バザー売上 |
| 雑収入 | 100 | 12 | △88 | 預金利息 |
| 収入合計 | 192,400 | 193,812 | 1,412 |
支出の部(単位:円)
| 科目 | 予算額 | 決算額 | 差額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 会議費 | 15,000 | 12,400 | 2,600 | 会場使用料4回 |
| 印刷費 | 20,000 | 18,760 | 1,240 | 会報・総会資料 |
| 通信費 | 8,000 | 6,300 | 1,700 | 切手・はがき |
| 行事費 | 80,000 | 76,540 | 3,460 | 夏祭り・清掃活動 |
| 備品費 | 15,000 | 14,800 | 200 | テント1張 |
| 雑費 | 5,000 | 1,980 | 3,020 | 振込手数料ほか |
| 予備費 | 49,400 | 0 | 49,400 | 使用なし |
| 支出合計 | 192,400 | 130,780 | 61,620 |
- 収入合計193,812円-支出合計130,780円=次年度繰越金63,032円
- 内訳:〇〇銀行普通預金 60,532円、手元現金 2,500円
- 令和〇年4月〇日 会計 〇〇〇〇
ひな形を使うときの注意
収入の部の先頭に前年度繰越金を入れる形と、入れない形があります。どちらでも構いません。
ただし、入れる形なら「収入合計-支出合計=次年度繰越金」、入れない形なら「前年度繰越金+収入合計-支出合計=次年度繰越金」になります。
毎年同じ形にそろえることが大切です。年度ごとに形が変わると、前年との比較ができなくなります。
予算額の欄は、その年度の総会で承認された予算書の数字をそのまま写します。途中で予算を変えた場合は、変えた後の額を書き、備考に変更した日を書きます。
差額の「△」はマイナスの意味です。収入は予算より少ないとき、支出は予算より多いときに△が付くように、向きを決めておきます。
いちばん大事な検算 ― 繰越金と通帳残高を一致させる
会計報告で最も多い指摘は、次年度繰越金が実際のお金と合わないことです。
検算の式は一つだけです。前年度繰越金+収入合計-支出合計=次年度繰越金=通帳残高+手元現金
この等式が1円でも合わないときは、報告書を作る前に原因を探します。
原因の多くは、次の4つのどれかです。
一つめは、領収書のない支出や、記帳漏れです。二つめは、会員が立て替えたお金をまだ精算していないことです。
三つめは、年度末をまたいだ入金や引き落としです。四つめは、預金利息や振込手数料の書き漏れです。
通帳は年度末の日付で記帳し、最終ページのコピーを監査の資料に付けます。現金は年度末に数えて、金種表(1万円札〇枚、千円札〇枚…)を残しておきます。
| 合わないときの症状 | よくある原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 帳簿の残高が通帳より多い | 引き落としの記帳漏れ・手数料 | 通帳を1行ずつ帳簿と突き合わせる |
| 帳簿の残高が通帳より少ない | 利息・入金の記帳漏れ | 入金欄を確認し、雑収入などで計上 |
| 現金が帳簿より少ない | 領収書のない支出・立替の二重計上 | 領収書を日付順に並べ直して確認 |
| 前年度繰越金が前年の報告と違う | 前年度の誤りを今年度で調整した | 前年度の報告を正とし、差は備考で説明 |
預り金・立替金は収入や支出に混ぜない
会員から集めて、そのまま他へ渡すお金があります。上部団体への負担金、共同購入の代金、慶弔の集金などです。
これを団体の収入と支出に入れると、実際の活動の規模より大きく見えてしまいます。
集めたお金は「預り金」として別の表に書き、渡した日と相手を記録します。年度末に残っていれば、その額を繰越金の内訳に分けて書きます。
役員が一時的に立て替えたお金も同じです。精算が済むまでは「立替金」として区別し、精算した日に支出として計上します。
総会で承認を受けるまでの5ステップ
会計報告は、作って配って終わりではありません。多くの会則は「総会の承認」を求めています。
承認までの流れは、次の5つに分けると迷いません。
| ステップ | やること | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 1. 帳簿を締める | 年度末の日付で通帳記帳・現金の実査・領収書の整理 | 年度末から1〜2週間 |
| 2. 会計報告を作る | ひな形に数字を入れ、検算の等式を確かめる | 総会の1か月前まで |
| 3. 会計監査を受ける | 監査担当が帳簿・通帳・領収書を突き合わせ、監査報告を書く | 総会の2〜3週間前 |
| 4. 役員会で確認する | 報告の内容と総会での説明の仕方を決める | 総会の2週間前 |
| 5. 総会で報告し承認を受ける | 会計が報告し、監査が結果を述べ、議決をとる | 総会当日 |
ステップごとのコツ
帳簿を締めるときは、年度末の翌日以降の入出金を入れないことが大切です。4月分の会費が3月中に振り込まれた場合は、前受けとして扱うか、どの年度に入れるかを毎年同じにします。
総会の資料は、会計報告と監査報告を1枚にまとめると読みやすくなります。前年度の報告と並べて配ると、増減の説明がしやすくなります。
総会では、会計が全科目を読み上げる必要はありません。予算と大きく違った科目と、その理由だけを説明すれば十分です。
承認を受けたら、議事録に「第〇号議案 令和〇年度会計報告の件は、賛成多数で承認された」と残します。議事録と会計報告、監査報告はセットで保管します。
会計監査の進め方と、監査報告の文例
会計監査は、会計と別の人が行うのが原則です。会則で「会計監査」「監事」を置いている団体は、その人が担当します。
監査では、次の3点を確かめます。帳簿の数字が領収書と一致しているか、通帳残高と合っているか、予算と会則に沿って使われているかです。
監査が済んだら、監査報告を書いて署名します。形は自由ですが、次の文例で足ります。
監査報告
令和〇年度(令和〇年4月1日から令和〇年3月31日まで)の〇〇会の会計について、帳簿、預金通帳、領収書その他の証拠書類を照合し監査した結果、収支は適正に処理されていることを認めます。
令和〇年4月〇日
会計監査 〇〇〇〇
会計監査 〇〇〇〇
監査で指摘が出たとき
監査で誤りが見つかったら、会計が直してから監査報告を書きます。直せない事情があるときは、監査報告にその内容を書き添えます。
例えば「領収書のない支出が〇件〇円あり、会計から理由の説明を受けた」のように、事実だけを書きます。
指摘を隠して「適正」と書くと、後で問題になったときに監査担当も説明を求められます。
- 会計報告(案)と前年度の会計報告
- 総会で承認された今年度の予算書
- 帳簿(出納帳)
- 預金通帳の原本(年度末まで記帳したもの)
- 領収書・レシート(日付順に貼ったもの)
- 手元現金と金種表
- 預り金・立替金の記録
財産目録を添えると、引き継ぎが楽になる
会計報告はお金の流れの報告です。団体が持っている物までは書かれていません。
テントや机、パソコンなどの備品が多い団体は、財産目録(預金・現金・備品の一覧と保管場所)を添えておくと、役員の交代で物がなくなりにくくなります。
任意団体に財産目録を作る法的な義務はありません。ただし、法人格を得た自治会(認可地縁団体)は別です。
認可地縁団体は、認可を受ける時と毎年1月から3月までの間に財産目録を作り、主たる事務所に備え置かなければなりません。事業年度を設けている団体は、毎事業年度の終了の時に作ります(地方自治法260条の4第1項)。
同じ条文の2項で、構成員名簿を備え置き、変更があるたびに直すことも求められています。
口座の名義と、会計の引き継ぎ
団体のお金は、個人のお金と分けて管理するのが大前提です。会計担当者の個人口座で管理すると、相続や差押えのときに団体のお金と区別できなくなるおそれがあります。
口座は「〇〇会 会計 山田花子」のように団体名を付けた名義で作ります。銀行からは会則と、役員を決めた議事録の提出を求められるのが一般的です。
会計を交代するときは、総会で承認された会計報告を区切りにします。次の書類を一式で渡し、受け取った側が残高を確かめて受領の署名をします。
- 承認済みの会計報告・監査報告・予算書
- 預金通帳・届出印・キャッシュカード(暗証番号は別の方法で伝える)
- 手元現金と金種表
- 帳簿(紙・データ)と領収書の綴り
- 預り金・立替金の残高と相手先の一覧
- 口座の名義変更に必要な議事録
税金について知っておきたいこと
任意団体でも、税金と無関係とは限りません。
法人税法では、代表者または管理人の定めがある法人でない社団・財団を「人格のない社団等」と呼びます(法人税法2条8号)。そして、人格のない社団等は法人とみなされます(同法3条)。
ただし、人格のない社団等に法人税がかかるのは、収益事業を行う場合に限られます(同法4条1項ただし書)。
会費や補助金で活動するだけの団体か、物の販売などの事業をしている団体かで扱いが変わります。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
法人化すると、会計報告の作り方が変わる
任意団体がNPO法人や一般社団法人になると、会計報告は法律で決まった書類に置き換わります。
NPO法人は、毎事業年度初めの3か月以内に、事業報告書、活動計算書・貸借対照表などの計算書類、財産目録などを作らなければなりません(NPO法28条1項)。
一般社団法人は、各事業年度の計算書類(貸借対照表と損益計算書)と事業報告を作らなければなりません(一般法人法123条2項)。
どちらも、任意団体の「収入と支出を並べる表」とは作り方が違います。法人化を考えている団体は、任意団体の最後の年度の会計報告で、引き継ぐ預金と備品の額をはっきりさせておくと移行が楽になります。
会計報告についてよくある質問
A. 任意団体の会計報告の様式を定めた法律はありません。前年度繰越金・収入・支出・次年度繰越金の4つを並べ、監査報告を添える形が一般的です。
A. 任意団体ではほぼ同じ書類を指します。会則で使っている呼び名に合わせれば足ります。政治団体の「政治資金収支報告書」は法律に基づく別の書類です。
A. 「前年度繰越金+収入-支出=通帳残高+手元現金」の等式で差額を出し、通帳と帳簿を1行ずつ突き合わせます。原因の多くは手数料・利息の記帳漏れ、立替金の未精算、年度末をまたいだ入出金です。
A. 支払った日・相手・金額・内容を書いたメモ(出金伝票)を作り、会計と別の役員が確認の署名をします。監査報告にも件数と金額を書き添えると後で説明がつきます。
A. 会則で定めた会計監査・監事が行います。会計本人が自分を監査しても意味がないため、会計とは別の人が担当するのが原則です。
A. 指摘された点を直し、臨時総会や次の総会で改めて承認を求めます。議事録に不承認の理由と今後の対応を残しておきます。
A. 法人格のない自治会に法律上の義務はありません。認可地縁団体になった自治会は、認可を受ける時と毎年1月から3月までの間に財産目録を作り、事務所に備え置く義務があります(地方自治法260条の4第1項)。
📖 参考にした公的機関の情報


