法人の登記申請で「補正」と言われたら|却下されるのは直せないときだけ(商業登記法24条ただし書)・期間・取下げとの違い・よくある不備

一般社団法人法
法務局から「補正をお願いします」と電話が来た。却下されてしまうのか、出し直しになるのか。落ち着いて対応できるよう、条文の仕組みから確かめていきましょう。

結論から申し上げます。申請の不備が補正することができるもので、登記官が定めた相当の期間内に申請人がこれを補正したときは、却下されません(商業登記法24条ただし書)。補正の連絡は、却下の通知ではなく直せば通るという案内です。

この仕組みは一般社団法人・一般財団法人にもNPO法人にも当てはまります。一般社団法人等登記規則3条と各種法人等登記規則5条が、商業登記法・商業登記規則の規定を準用しているためです。株式会社と同じ枠組みで手続が進みます。

この記事では、却下される事由(24条の各号)、補正できるものとできないもの、期間の考え方、取下げとの違い、法人の登記でよくある不備、連絡を受けたときの動き方までを整理します。

登記官は申請のすべてを調査する(規則38条)

登記官が申請書を受け取ったときは、遅滞なく、申請に関するすべての事項を調査しなければなりません(商業登記規則38条)。受け付けた順に、申請書の記載、添付書面、登記記録との突合せが行われます。

申請書を受け取ったときは、受付帳に登記の種類・申請人の氏名(法人なら名称)・受付の年月日・受付番号が記載され、申請書にも受付の年月日と受付番号が記載されます(商業登記法21条1項)。受け付けられたことと、登記されることは別です。

調査の結果、不備が見つかったときに出てくるのが、却下(24条本文)と補正(24条ただし書)です。

POINT 補正の連絡は「不備があるが、直せば通る」という意味。却下されるのは、直せない不備か、期間内に直さなかったときです(商業登記法24条)。

却下の事由は13号まで列挙されている(24条)

商業登記法24条は、登記官が理由を付した決定で申請を却下しなければならない場合を号で並べています。主なものを挙げます。

1号が管轄違い、2号が登記すべき事項以外の事項の登記を目的とするとき、3号が既に登記されているとき、4号が申請の権限を有しない者の申請、または権限を有する者であることの証明がないとき、6号が申請書が法令で定められた方式に適合しないとき、7号が申請書に必要な書面を添付しないとき、8号が申請書またはその添付書面の記載が添付書面または登記簿の記載と合致しないとき、9号が登記すべき事項につき無効または取消しの原因があるとき、11号が同時にすべき他の登記の申請を同時にしないときです。

実務で補正の対象になりやすいのは、6号(方式)・7号(添付書面の不足)・8号(記載の不一致)です。書類を足す、書き直す、押印し直すといった方法で直せる類型だからです。

一方、1号の管轄違いや3号の二重登記のように、直しようがない不備は補正できません。この場合は却下か取下げになります。

事由 補正で直せるか
1号 管轄違い 直せない(取下げて正しい登記所へ)
3号 既に登記されている 直せない
4号 申請権限の証明がない 委任状等を補えば直せることが多い
6号 申請書の方式不適合 直せる
7号 必要な書面の不添付 直せる
8号 記載が添付書面・登記簿と合致しない 直せる
9号 登記すべき事項に無効・取消しの原因 直せない(決議のやり直しが必要)
11号 同時にすべき登記を同時にしない 同時に申請すれば直せる

「登記官が定めた相当の期間内に」の意味

24条ただし書は、補正の期間を「登記官が定めた相当の期間内」としています。法律に日数の定めはなく、登記所が事案ごとに期限を示します

実務では、補正の連絡と同時に「いつまでに」が伝えられます。書類を郵送で送り直す場合は到着までの日数を見込む必要があるので、期限と方法を最初に確認してください。

期間内に補正されなければ、24条本文に戻って却下されます。却下は理由を付した決定でされるので、何が不備だったのかは書面で分かります。

期限に間に合いそうにないときは、補正ではなく取下げを選ぶ判断もあります。どちらがよいかは、登記の期限(役員変更なら2週間など)との関係で決まります。

補正・取下げ・却下の違い

補正は、申請を生かしたまま不備を直す手続です。受付番号はそのまま残るので、登記の効力が生じる日(受付の日)を保てるのが最大の利点です。

取下げは、申請そのものを引っ込める手続です。出し直しになるので、受付の日は新しい申請の日になります。登記懈怠の期限が迫っているときは、この差が効きます。

却下は、登記官が理由を付した決定でする処分です。申請は通らず、添付書面は還付の手続によります。

同じ「通らなかった」でも、取下げと却下は記録の残り方が違います。直せる不備なら補正、直せないが出し直せるなら取下げ、というのが実務の順序です。

補正 取下げ 却下
申請の扱い 生かしたまま直す 引っ込める 通らない(決定)
受付の日 そのまま 新しい申請の日
根拠 商業登記法24条ただし書 申請人の意思 商業登記法24条本文
使う場面 直せる不備 直せないが出し直せる 期間内に直さなかったとき

一般社団法人・NPO法人でよくある不備

法人の登記で補正になりやすいのは、決議の内容と申請書が合っていない類型です(24条8号)。理事の任期が満了しているのに重任の登記をしていない、議事録の日付と就任承諾の日付がずれている、選定した代表理事の氏名の表記が住民票と違う、といった形です。

添付書面の不足も多い類型です(7号)。就任承諾書、印鑑証明書、議事録の押印、代理人による申請での委任状(商業登記法18条)などが足りないときに補正となります。

一般社団法人では、理事会設置法人かどうかで代表理事の選定機関が変わります。定款の定めと実際の決議機関が食い違っていると、8号や9号の問題になります。

NPO法人では、所轄庁の認証を受けてから登記をする場面(設立、定款変更のうち登記事項に関わるもの)があります。認証書の添付や、認証と登記の順序が合っているかを確認してください。

オンライン申請のときの補正

登記の申請は書面でするのが原則ですが(商業登記法17条1項)、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律により、オンラインでの申請もできます。登記・供託オンライン申請システムを使う形です。

オンラインで申請した場合、補正の連絡は申請システムの処理状況の画面に表示されます。「補正」という状態になっていたら、内容を確認して補正情報を送信するか、指示に従って書面を提出します。電話で連絡が来ることもあります。

注意したいのは、申請の状態を自分で見に行かないと気づかないことです。書面申請なら電話が来ますが、オンラインでは画面が変わるだけの場合があります。申請したら、登記が完了するまで処理状況を見る習慣にしてください。

添付書面を郵送で提出する方式(特例方式)を使った場合は、書面の到着が遅れると補正の連絡が来ます。申請と書面の発送は同じ日に済ませておくと、この種の補正を避けられます。

補正を減らすために申請前に見るところ

申請書の記載と登記記録の突合せが、8号の不備を防ぐ要です。現在の登記事項証明書を取り、法人の名称・主たる事務所・役員の氏名の表記を1文字ずつ照らし合わせます。旧字体と新字体の違いは見落としやすい箇所です。

議事録は、日付の前後関係を確認します。就任承諾の日が選任の決議より前になっていないか、任期の満了日と重任の日がつながっているか、という順に見ます。

添付書面は、申請の種類ごとに決まっています。役員変更なら議事録・就任承諾書・本人確認証明書・印鑑証明書のうち何が要るか、代理人が申請するなら委任状(商業登記法18条)が入っているかを、申請書の添付書面欄と現物で二重に数えます。

登録免許税の額と納付方法も確認します。金額が足りないときも補正の対象です。

補正の連絡が来たときの動き方

  • 何号の不備なのか(方式・添付書面・記載の不一致など)を確認したか
  • 補正の期限と、提出の方法(持参・郵送・オンライン)を確認したか
  • 直せる不備か、直しようがない不備かを切り分けたか
  • 直せない場合、取下げて出し直すか、決議からやり直すかを決めたか
  • 登記の期限(役員変更なら2週間など)に間に合うかを逆算したか
  • 同じ不備が他の申請書でも起きていないか(連件申請のとき)を見たか
  • 直した内容を控えとして保管したか

却下されたあとにできること

却下は理由を付した決定でされます(商業登記法24条本文)。まず、その理由を読んで、書類の作り方の問題なのか、決議そのものの問題なのかを切り分けます。

書類の作り方の問題であれば、整えて申請し直します。受付の日は新しくなるので、登記の期限を過ぎている場合は、遅れた理由を整理しておきます。役員変更のように2週間の期限があるものは、期限の起算日が決議の日であって申請の日ではない点に注意してください。

決議そのものに無効や取消しの原因がある場合(24条9号)は、書類を直しても通りません。社員総会や理事会をやり直し、新しい議事録で申請することになります。招集手続に瑕疵があった、定足数を満たしていなかった、といった場面です。

なお、登記すべき事項につき訴えをもってのみ主張できる無効・取消しの原因がある場合で、その訴えが提起期間内に提起されなかったときは、24条9号は適用されません(商業登記法25条1項)。この場合は、訴えが提起されなかったことを証する書面と登記すべき事項の存在を証する書面を添付します(同条2項)。

よくある誤解を4つ

一つめは「補正の連絡=却下」という誤解です。24条ただし書は、期間内に補正すれば却下しないと定めています。

二つめは「補正すると受付の日が変わる」という誤解です。受付の日はそのままで、だから期限のある登記では補正の方が有利です。

三つめは「どんな不備でも補正できる」という誤解です。管轄違いや二重登記、決議そのものに無効・取消しの原因がある場合は、補正では直りません。

四つめは「法人の登記は株式会社と別の法律で動く」という誤解です。一般社団法人等登記規則3条、各種法人等登記規則5条が商業登記法・商業登記規則を準用しています。

登記の補正についてよくある質問

Q. 登記の補正とは何ですか?

A. 申請の不備を、申請を生かしたまま直す手続です。補正することができる不備を、登記官が定めた相当の期間内に直せば、申請は却下されません(商業登記法24条ただし書)。

Q. 補正の期限は何日ですか?

A. 法律に日数の定めはありません。「登記官が定めた相当の期間内」とされており(商業登記法24条ただし書)、登記所が事案ごとに示します。連絡を受けたときに期限と方法を確認してください。

Q. 補正すると受付の日は変わりますか?

A. 変わりません。申請を生かしたまま直す手続なので受付番号はそのままです。取下げて出し直すと、新しい申請の日になります。

Q. 補正できない不備はありますか?

A. あります。管轄違い(商業登記法24条1号)、既に登記されている場合(3号)、登記すべき事項に無効または取消しの原因がある場合(9号)などは、書類を直しても解消しません。

Q. 却下されたらどうなりますか?

A. 登記官が理由を付した決定で却下します(商業登記法24条本文)。理由が書面で示されるので、何が不備だったのかを確認して、決議のやり直しや申請の作り直しを検討します。

Q. 一般社団法人やNPO法人も同じ扱いですか?

A. 同じです。一般社団法人・一般財団法人には一般社団法人等登記規則3条、NPO法人には各種法人等登記規則5条によって、商業登記法・商業登記規則の規定が準用されています。

Q. 補正と取下げはどちらがよいですか?

A. 直せる不備なら補正です。受付の日を保てるため、2週間などの登記期限がある場合に有利です。直しようがない不備のときは取下げて出し直します。

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