結論から申し上げます。
合同会社とは、出資した人が全員「有限責任」で、出資した人自身が経営する会社です。
会社法では「持分会社」の一つに分類されます。
株式会社との一番大きな違いは、「出資する人」と「経営する人」が原則として同じという点です。
そのため、定款の認証が要らず、設立の法定費用は最低6万円からと、株式会社より低く抑えられます。
この記事では、合同会社の仕組み、株式会社との違い、設立費用、メリットとデメリットを順に説明します。
合同会社の仕組み
合同会社では、出資した人のことを「社員」と呼びます。
ここでいう社員は、従業員のことではありません。会社にお金などを出資した人、つまり会社の持ち主のことです。
会社法576条4項は、合同会社の社員を全員「有限責任社員」とすると定めています。
有限責任とは、会社が借金を返せなくなっても、社員は出資した額を超えて責任を負わないという意味です。
また、社員は設立の登記をする前に、出資の全額を払い込まなければなりません(会社法578条)。
社員は1人でもかまいません。社員が1人もいなくなると解散になる、と定められているだけです(会社法641条4号)。
「持分会社」とは
会社法が定める会社は、株式会社と持分会社の2つのグループに分かれます。
持分会社には、合名会社・合資会社・合同会社の3種類があります。
合名会社は社員が全員無限責任、合資会社は無限責任社員と有限責任社員が混ざっています。
合同会社は、持分会社の中で唯一、社員の全員が有限責任の会社です。
個人事業から法人にするときに、合名会社や合資会社がほとんど選ばれないのは、この責任の重さの違いによります。
| 会社の種類 | 社員の責任 | グループ |
|---|---|---|
| 株式会社 | 株主は全員有限責任 | 株式会社 |
| 合同会社 | 全員有限責任 | 持分会社 |
| 合資会社 | 無限責任社員と有限責任社員 | 持分会社 |
| 合名会社 | 全員無限責任 | 持分会社 |
株式会社との違いを一覧表で比較
合同会社と株式会社は、どちらも出資者が有限責任の会社です。
違いが出るのは、設立の手続、費用、会社の運営のルールです。
主な違いを表にまとめます。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 出資者の呼び名 | 社員 | 株主 | 会社法576条・104条 |
| 経営する人 | 原則として社員全員 | 取締役(株主総会で選任) | 会社法590条・329条 |
| 定款の認証 | 不要 | 必要 | 会社法30条1項 |
| 設立登記の登録免許税 | 資本金の0.7%(最低6万円) | 資本金の0.7%(最低15万円) | 登録免許税法 別表第一24号(一) |
| 役員の任期 | なし | 取締役は原則2年(非公開会社は定款で10年まで) | 会社法332条 |
| 決算公告 | 義務なし | 毎年必要 | 会社法440条 |
| 利益の分け方 | 定款で自由に決められる | 株式の数に応じる | 会社法622条・454条 |
| 持分・株式の譲渡 | 原則として他の社員全員の承諾が必要 | 原則自由(定款で制限可) | 会社法585条・127条 |
| 株式市場への上場 | できない | できる |
設立にかかる法定費用
会社を設立するときに必ずかかる費用(法定費用)を比べます。
合同会社では、定款の認証が要らないため、公証役場での手数料がかかりません。
登記のときの登録免許税は、どちらも資本金の1000分の7です。
ただし最低額が違い、合同会社は6万円、株式会社は15万円です。
資本金が約857万円までなら合同会社は6万円、約2,142万円までなら株式会社は15万円です。
紙の定款には4万円の収入印紙が必要です。これは合同会社でも株式会社でも同じです。
PDFで作る電子定款なら、印紙税の対象になりません。
| 費用 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 定款認証の手数料 | 不要 | 1万5,000円〜5万円(資本金の額などで変わる) |
| 定款の謄本 | 不要 | 1枚250円 |
| 定款の収入印紙 | 紙なら4万円・電子定款なら0円 | 紙なら4万円・電子定款なら0円 |
| 登録免許税 | 6万円〜 | 15万円〜 |
| 合計(電子定款の場合) | 6万円〜 | 16万5,000円〜(+謄本代) |
株式会社の定款認証の手数料は、公証人手数料令35条が決めています。
資本金100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円です。
資本金100万円未満で、次の3つを全部満たす株式会社は1万5,000円になります。
- 発起人が全員個人で、3人以下であること
- 発起人が設立時に発行する株式を全部引き受ける旨が定款にあること
- 取締役会を置く旨が定款にないこと
上の表の合計は、法令で決まっている費用だけです。
会社の印鑑の作成代、印鑑証明書や登記事項証明書の取得費、専門家への報酬は含んでいません。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
合同会社のメリット
合同会社を選ぶ利点は、大きく4つあります。
1つ目は、設立の費用が安いことです。電子定款なら、法定費用は6万円からです。
2つ目は、設立の手続が少ないことです。公証役場へ行く必要がなく、定款を作ったら登記の準備に進めます。
3つ目は、運営のルールが簡単なことです。
役員の任期がないので、任期ごとの変更登記が要りません。
決算公告の義務もありません。
4つ目は、利益の分け方を定款で自由に決められることです。
出資額が少なくても、事業への貢献が大きい社員に多く分ける、といった設計ができます。
なお、法人にしたあとの税金の扱いは、合同会社も株式会社も同じ「法人」として扱われます。
会社の種類で税率が変わるわけではありません。
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合同会社のデメリット
一方で、気をつけたい点もあります。
1つ目は、知名度・信用の面です。取引先や採用の場面で、株式会社のほうが通りがよいと感じる人もいます。
2つ目は、株式による資金調達や上場ができないことです。
外部から広く出資を集める予定があるなら、株式会社のほうが向いています。
3つ目は、社員どうしの対立が経営に直結しやすいことです。出資者が全員で経営するので、意見が割れると決めにくくなります。
4つ目は、持分を譲るのに原則として他の社員全員の承諾が要ることです(会社法585条)。
抜けたい社員が出たときの扱いを、定款で決めておく必要があります。
ただし、合同会社から株式会社へは、あとから「組織変更」で移ることができます(会社法743条以下)。
代表者と業務を行う人の決め方
合同会社では、原則として社員の全員が業務を行い、全員が会社を代表します(会社法590条1項・599条1項)。
社員が複数いる場合は、定款で「業務執行社員」を決めることができます。
業務執行社員の中から、会社を代表する「代表社員」を決めることもできます(会社法599条3項)。
名刺や契約書で「代表社員」という肩書きを見かけるのは、このためです。
株式会社の「代表取締役」に当たる立場と考えるとわかりやすいでしょう。
法人が合同会社の社員になることもできます。その場合は、実際に職務を行う人(職務執行者)を選びます(会社法598条1項)。
合同会社の定款に必ず書く事項
合同会社の定款には、必ず書かなければならない事項が6つあります(会社法576条1項・4項)。
株式会社と違い、社員の氏名と住所、出資の内容も定款に書きます。
社員が入れ替わると定款の変更が必要になるのは、このためです。
| 必ず書く事項 | 根拠 |
|---|---|
| 目的 | 会社法576条1項1号 |
| 商号 | 同2号 |
| 本店の所在地 | 同3号 |
| 社員の氏名又は名称及び住所 | 同4号 |
| 社員の全部を有限責任社員とする旨 | 同5号・同条4項 |
| 社員の出資の目的(金銭等に限る)及びその価額 | 同6号 |
第1条(商号)当会社は、合同会社〇〇と称する。
第2条(目的)当会社は、次の事業を行うことを目的とする。1.〇〇の企画・販売 2.前号に附帯する一切の事業
第3条(本店の所在地)当会社は、本店を〇〇県〇〇市に置く。
第4条(公告の方法)当会社の公告は、官報に掲載してする。
第5条(社員及び出資)社員の氏名及び住所、出資の価額は次のとおりとする。〇〇県〇〇市〇〇 〇〇〇〇 金〇〇万円
第6条(社員の責任)当会社の社員は、全部有限責任社員とする。
第7条(代表社員)当会社の代表社員は、〇〇〇〇とする。
第8条(事業年度)当会社の事業年度は、毎年〇月1日から翌年〇月末日までとする。
公告の方法は、定めがなければ官報になります(会社法939条4項)。実際の定款は、事業の内容に合わせて作ります。
社員が死亡したときに相続人が持分を引き継げるようにするか(次の節)も、定款で決めておく大事な点です。
社員が辞めるとき・亡くなったとき
合同会社では、社員が会社を抜けることを「退社」と呼びます。
存続期間を定款で決めていなければ、社員は事業年度の終わりに退社できます(会社法606条1項)。
この場合、6か月前までに会社へ予告します。
やむを得ない理由があるときは、いつでも退社できます(同条3項)。
社員の死亡、総社員の同意、除名なども退社の理由になります(会社法607条1項)。
注意したいのは社員が亡くなったときです。
定款に定めがなければ、亡くなった社員は退社となり、相続人は社員になれません。
相続人には、持分の払戻しを受ける権利が残るだけです(会社法611条)。
定款で「相続人が持分を引き継ぐ」と定めておけば、相続人が社員になれます(会社法608条1項)。
1人で作る合同会社では、社員が亡くなると社員がいなくなり、会社は解散します(会社法641条4号)。
家族に事業を継がせたい場合は、設立のときに定款の定めを検討しておきましょう。
資本金はいくらにするか
資本金は1円からでも設立できます。
ただし、資本金の額で変わることがいくつかあります。
1つ目は登録免許税です。資本金の1000分の7が6万円を超えるのは、約857万円を超えたときです。
2つ目は許認可の要件です。たとえば一般建設業の許可では、500万円以上の自己資本などの財産的な基礎が求められます。
3つ目は消費税です。
資本金1,000万円以上で設立した会社は、設立1期目から消費税の納税義務があります(消費税法12条の2)。
4つ目は取引や融資の場面での見られ方です。資本金は登記事項として誰でも見られます。
事業に必要な運転資金や、取引先への見え方も含めて決めましょう。
合同会社として運営されている有名な会社
合同会社は、小さな会社だけの形ではありません。
外資系企業の日本法人には、合同会社の形をとる会社が多くあります。
代表的な例が、アマゾンジャパン合同会社、グーグル合同会社、Apple Japan合同会社です。
親会社が出資者として経営を決める会社では、決算公告や役員の任期といった株式会社のルールが要らないことが、選ばれる理由の一つといわれます。
国税庁の法人番号公表サイトで社名を検索すると、会社の種類を確かめられます。
合同会社が向いている人
次のような場合は、合同会社が候補になります。
個人事業を法人にしたいが、設立の費用を抑えたい人。
1人、または信頼できる少人数で事業をする人。
取引先が一般の消費者で、会社の種類があまり問われない事業。
外部から出資を集めたり、上場したりする予定がない事業。
反対に、取引先に大企業が多い、将来は出資を受けたい、人を多く雇う予定がある、という場合は株式会社も比べてみましょう。
| こんなとき | 向いている会社 |
|---|---|
| 費用をできるだけ抑えたい | 合同会社 |
| 1人で事業を法人にしたい | 合同会社・株式会社のどちらも可 |
| 外部から出資を受けたい | 株式会社 |
| 将来、上場したい | 株式会社 |
| 非営利の活動をしたい | 一般社団法人・NPO法人も候補 |
営利を目的としない活動なら、会社ではなく一般社団法人やNPO法人という選び方もあります。
一般社団法人との違いは、一般社団法人と合同会社の違いで整理しています。
合同会社の設立の流れ
合同会社の設立は、次の順に進めます。
まず、会社の基本事項を決めます。商号(会社名)、目的、本店所在地、社員と出資額、代表社員などです。
商号には「合同会社」という文字を入れなければなりません(会社法6条2項)。
次に、定款を作ります。社員全員が署名か記名押印をします。電子定款なら電子署名をします。
合同会社では、公証人の認証は要りません。
そのあと、出資金を払い込みます。登記の前に全額を払い込むことが必要です。
最後に、本店所在地を管轄する法務局へ設立の登記を申請します。登記の申請をした日が会社の成立日になります。
登記のあとは、税務署・都道府県・市町村への届出、年金事務所での社会保険の手続などが続きます。
商号・目的・本店・社員と出資額・代表社員
社員全員が署名か記名押印(電子定款なら電子署名)。認証は不要
登記の前に全額
本店所在地の法務局へ。申請日が会社の成立日
税務署・都道府県・市町村・年金事務所など
自分で手続するか、専門家に頼むか
合同会社は定款の認証が要らないため、自分で手続を進める人も多い会社です。
専門家に頼む場合は、業務ごとに頼む先が分かれます。
定款など官公署に出す書類の作成は行政書士、登記の申請は司法書士、税務の相談は税理士の業務です。
電子定款は、電子署名の機器やソフトをそろえる手間があります。
専門家に頼むと、紙の定款の収入印紙4万円がかからない電子定款で作ってもらえることが多くなります。
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本店の住所をどこにするか
本店所在地は、登記されて誰でも見られる情報になります。
自宅を本店にすると、自宅の住所が登記事項証明書に載ります。
賃貸住宅の場合は、契約で事務所としての利用が認められているかも確かめておきましょう。
自宅の住所を出したくない場合は、登記に使えるバーチャルオフィスを使う方法もあります。
ただし、許認可が必要な事業では、事務所の要件を満たせないことがあります。先に所管の行政機関へ確かめておくと安心です。
合同会社についてよくある質問
A. 出資した人(社員)が全員有限責任で、出資した人自身が経営する会社です。会社法では持分会社の一つに分類されます(会社法576条4項)。
A. いいえ。合同会社の社員は、会社に出資した人(持ち主)のことです。雇われて働く従業員とは別の意味です。
A. 作れます。社員が1人もいなくなると解散になるという定めがあるだけで、社員1人の合同会社は認められています(会社法641条4号)。
A. 法令で決まっている費用は、登録免許税が資本金の1000分の7(最低6万円)です。紙の定款なら収入印紙4万円が加わり、電子定款なら不要です。定款の認証は要りません。
A. 合同会社は出資者と経営者が原則として同じで、定款の認証が不要、役員の任期や決算公告の義務がありません。株式会社は出資者(株主)と経営者(取締役)を分けられ、株式による資金調達や上場ができます。
A. 定款で代表社員を定めた場合は「代表社員」です。定めなければ、社員の全員が会社を代表します(会社法599条)。
A. できます。会社法743条以下の「組織変更」の手続をとります。組織変更には債権者を保護するための手続と登記が必要です。
A. 決算公告の義務は株式会社に対するもので(会社法440条)、合同会社にはありません。
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