結論から申し上げます。NPO法人は、前事業年度の貸借対照表を作成した後、遅滞なく、定款で定めた方法で公告しなければなりません(特定非営利活動促進法〈以下「NPO法」〉28条の2第1項)。2016年(平成28年)の法改正で設けられ、2018年(平成30年)10月1日から施行されている義務です。
公告の方法は①官報、②日刊新聞紙、③電子公告、④主たる事務所の公衆の見やすい場所への掲示の4つで、このうち定款で定めた方法によります。電子公告は作成の日から5年が経過した日を含む事業年度の末日まで、掲示は開始から1年、続けなければなりません。内閣府NPO法人ポータルサイトを使う電子公告なら、掲載に費用はかかりません。
この記事では、公告の対象と期限、4つの方法の違い、所轄庁への提出との関係、内閣府NPO法人ポータルサイトでの手順、定款の書き方、公告を怠ったときの過料までを、条文と内閣府の公表資料に沿って整理します。
貸借対照表の公告とは ― 毎年、決算の貸借対照表を広く知らせる義務
NPO法人は、毎事業年度初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書、計算書類(活動計算書と貸借対照表)、財産目録などの「事業報告書等」を作成し、事務所に備え置きます(NPO法28条1項・27条3号)。貸借対照表の公告は、このうち貸借対照表を、法人の外の不特定多数の人が見られる形で知らせる手続です。
条文は「前条第一項の規定による前事業年度の貸借対照表の作成後遅滞なく」公告すると定めています。何日以内という日数の定めはありませんが、作成したら間を置かずに行うことが求められています。
この義務は、それまでの「資産の総額」の変更登記に代わるものとして設けられました。組合等登記令の改正により、NPO法人の登記事項から資産の総額は削除されています(2018年10月1日施行)。現在は、毎年の財産の状況を登記ではなく貸借対照表の公告で示す仕組みになっています。
4つの公告方法と、続ける期間
NPO法28条の2第1項は、公告の方法を4つ定めています。法人は、このうち定款で定めた方法で公告します。方法によって、全文を載せるのか要旨でよいのか、どれだけの期間続けるのかが違います。
| 方法 | 根拠 | 載せる内容 | 続ける期間 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|---|
| ①官報に掲載 | 28条の2第1項1号 | 貸借対照表の要旨で足りる(2項) | 掲載(継続の定めなし) | 掲載料がかかる |
| ②時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載 | 同2号 | 貸借対照表の要旨で足りる(2項) | 掲載(継続の定めなし) | 掲載料がかかる |
| ③電子公告(ウェブサイトに掲載) | 同3号・施行規則3条の2第1項 | 貸借対照表 | 作成の日から5年が経過した日を含む事業年度の末日まで(4項) | 内閣府NPO法人ポータルサイトなら0円 |
| ④主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示 | 同4号・施行規則3条の2第2項 | 貸借対照表 | 公告の開始後1年を経過する日まで(施行規則3条の2第3項) | 掲示の手間のみ |
※費用欄は、内閣府が「NPO法人ポータルサイトでの公告に経費はかかりません」と案内している点と、官報・新聞は掲載料が必要になる点を示したものです。官報・新聞の具体的な料金は掲載媒体に確認してください。
①官報・②日刊新聞紙 ― 要旨の公告でよい
官報または日刊新聞紙に掲載する方法を定款で定めた法人は、貸借対照表そのものではなく、その「要旨」を公告すれば足ります(NPO法28条の2第2項)。
要旨とは何かについて、内閣府の平成28年改正法Q&Aは、掲載金額の単位を「千円」とするなど適切な単位で示し、掲載科目は法人の事業の内容、規模、財務状況などに応じて重要な項目に適切に区分し、それぞれの合計額を掲載したもの、と説明しています。
官報や新聞は、掲載した事実が紙面として残るので、公告したことを後から示しやすい方法です。一方で、掲載のたびに費用がかかります。規模の小さなNPO法人では、毎年の費用として負担になりやすい点を考えて選ぶことになります。
なお、日刊新聞紙を選ぶ場合は「時事に関する事項を掲載する」日刊新聞紙であることが条件です。定款には「○○県において発行する○○新聞に掲載して行う」のように、どの新聞かが分かるように書きます。
③電子公告 ― 自分のホームページか内閣府NPO法人ポータルサイト
電子公告は、インターネットに接続された自動公衆送信装置を使う方法、つまりウェブサイトに貸借対照表を掲載する方法です(NPO法28条の2第1項3号・施行規則3条の2第1項)。内閣府のQ&Aは、法人自身が管理運営するサイトでも、第三者が管理運営するサイトに法人が直接掲載したり委託して掲載したりするものでも構わないとしています。
ただし、不特定多数の人が情報の提供を受けられる状態に置くことが条件です。Q&Aは、無料で、事前に登録したパスワード等を入力せずに閲覧できるか、法定の公告期間中続けて掲載できるかを踏まえて判断するよう求めています。例として、LINEのトークに投稿する方法は、閲覧するのに利用登録が必要になるため電子公告の方法としてふさわしくないと考えられる、と説明されています。
電子公告を選んだ場合は、貸借対照表の作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日まで、継続して公告しなければなりません(28条の2第4項)。毎年の公告が積み重なるので、ウェブサイトには常に複数年度分の貸借対照表が並ぶことになります。
公告の途中で掲載が途切れたり内容が書き換わったりすることを「公告の中断」といいます。①法人が善意かつ重大な過失がない(または正当な事由がある)、②中断した時間の合計が公告期間の10分の1を超えない、③中断を知った後速やかにその旨・時間・内容を公告に付して公告した、の全部に当たれば、公告の効力に影響しません(28条の2第5項)。
事故その他やむを得ない事由で電子公告ができない場合に備えて、官報か日刊新聞紙による方法を定款で定めておくこともできます(28条の2第3項)。
④主たる事務所での掲示 ― 開始から1年、誰でも見られる場所に
4つめの方法は、主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法です(NPO法28条の2第1項4号・施行規則3条の2第2項)。この方法による公告は、公告の開始後1年を経過する日まで続けなければなりません(施行規則3条の2第3項)。
内閣府のQ&Aは、利害関係者に限らず広く市民が主たる事務所で容易に貸借対照表にアクセスできる状態にあることが必要だとして、事務所の掲示場や入口付近への掲示がふさわしいとしています。マンションや役員の自宅の一室を主たる事務所にしている場合は、建物の構造やアクセスのしやすさを踏まえて判断されるとされています。
費用はかかりませんが、1年間掲示を続けたことを後から示せるよう、掲示を始めた日と場所を記録し、掲示物の写真を残しておくと確認しやすくなります。自宅を主たる事務所にしている法人では、誰でも見られる場所に掲示できるかを先に確かめる必要があります。
所轄庁への提出や、ポータルの「閲覧書類」は公告にならない
NPO法人は、毎事業年度1回、事業報告書等を所轄庁に提出します(NPO法29条)。所轄庁は、提出された書類を閲覧・謄写に供します(30条)。しかし、この提出と公開は、法人が行う貸借対照表の公告とは別の手続です。所轄庁へ提出しても、28条の2の公告をしたことにはなりません。
内閣府NPO法人ポータルサイトには、所轄庁が登録する「閲覧書類」の欄があり、そこに貸借対照表のデータが載っていることがあります。内閣府のQ&Aは、この閲覧書類欄は所轄庁が独自の判断で掲載しているもので、これをもって28条の2の公告を行ったことにはならず、あくまで法人自身がマイページの公告欄に掲載する必要がある、と明記しています。
つまり、ポータルサイトを使って電子公告をする場合でも、法人が自分でログインし、公告のメニューから貸借対照表を登録する操作が要ります。「ポータルに載っているから大丈夫」と考えず、公告欄に自分の法人の登録があるかを確認してください。
内閣府NPO法人ポータルサイトで公告する手順
内閣府のNPOホームページは、ポータルサイトでの公告の流れを次のように案内しています。ステップ1はアカウント登録と法人利用申請、ステップ2はログインして貸借対照表を公開する操作です。既にNPO法人と紐づいたアカウント(GビズIDを含む)を持っている場合は、ステップ2から進めます。
ログイン後は、法人入力情報の「公告の登録・更新」から公告の画面に進みます。公告メニューが表示されない場合は、法人利用申請が完了していないと案内されています。
登録画面では、公告の種別で「貸借対照表[法第28条の2]」を選び、対象年度を西暦で入力し、あらかじめ用意したPDFファイルを選択します。PDFは1ファイル100MBが上限です。準拠している会計基準や監査の実施は任意の入力項目です。
内閣府は、ポータルサイトでの公告には経費がかからないこと、公告期間中は中断の公告(28条の2第5項3号)が自動的に行われることを案内しています。自前のウェブサイトで電子公告をする場合は、この中断の管理を法人自身で行う必要があります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | ポータルサイトでアカウントを登録し、法人利用申請を行う(既に法人と紐づいたアカウントがあれば不要) |
| 2 | ログインし、法人入力情報の「公告の登録・更新」を開く |
| 3 | 「公告を追加する」から、公告の種別「貸借対照表[法第28条の2]」を選ぶ |
| 4 | 対象年度(西暦)を入力し、貸借対照表のPDF(100MBまで)を選ぶ |
| 5 | 確認画面で内容を確かめて登録する |
定款の書き方 ― 「又は」ではなく、どの媒体か分かるように
公告の方法は定款の必要的記載事項です(NPO法11条1項14号)。貸借対照表の公告は定款で定めた方法で行うので、定款の記載がそのまま手続を決めます。
内閣府のQ&Aは、定款を見た市民や利害関係者が、どの手段・どの媒体で公告されているかが分かる程度に明確に定める必要があるとしています。電子公告なら「この法人のホームページに掲載」「内閣府NPO法人ポータルサイト(法人入力情報欄)に掲載」のように書き、URLまで書く必要はありません。
複数の方法を「A及びB」と重ねて定めることはできますが、「A又はB」と選択的に定めることは認められないと考えられる、とされています。どちらの方法で公告されたのかが定款から分からなくなるためです。
貸借対照表の公告だけを、ほかの公告と別の方法にすることもできます。内閣府が公表している定款の記載例は次のような形です。
第○条 この法人の公告は、この法人の掲示場に掲示するとともに、官報に掲載して行う。ただし、法第28条の2第1項に規定する貸借対照表の公告については、内閣府NPO法人ポータルサイト(法人入力情報欄)に掲載して行う。
公告の方法の変更は、所轄庁の認証が必要な定款変更の事項(NPO法25条3項)に含まれていないため、社員総会の議決を経たうえで、遅滞なく所轄庁に届け出ることになります(25条6項)。届出には、定款の変更を議決した社員総会の議事録の謄本と変更後の定款を添えます。
解散時の公告は官報 ― 定款で官報を選んでいなくても必要
貸借対照表の公告とは別に、NPO法人には法律で官報への掲載が指定されている公告があります。解散後に清算人が債権者に対して2か月以上の期間内に債権の申出をするよう催告する公告(NPO法31条の10第1項・4項)と、清算中に債務超過が明らかになり破産手続開始の申立てをした旨の公告(31条の12第1項・4項)です。
内閣府の定款記載例は、定款で官報掲載を定めていない場合でも、この二つの公告は定款で選んだ方法とは別に官報に掲載して行う必要があると注記しています。貸借対照表の公告を無料のポータルサイトにしていても、解散のときは官報の費用がかかる点を覚えておきましょう。
公告をしなかったとき ― 20万円以下の過料
NPO法80条7号は、28条の2第1項の規定に違反して公告をせず、又は不正の公告をしたときは、NPO法人の理事、監事又は清算人を20万円以下の過料に処すると定めています。
過料の対象になるのは法人ではなく、理事・監事・清算人という個人です。毎年の決算の流れの中に公告の手順を組み込み、誰が担当するかを決めておくことが、役員自身を守ることにもつながります。
同じ80条には、事業報告書等を備え置かなかったとき(4号)や、所轄庁への提出を怠ったとき(5号)も過料の対象として並んでいます。決算後の手続は、作成・備置き・提出・公告の4つをひとまとまりで管理すると漏れを防ぎやすくなります。
| 決算後の手続 | 期限・期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 事業報告書等の作成・備置き | 毎事業年度初めの3か月以内に作成し、作成の日から5年が経過した日を含む事業年度の末日まで備置き | NPO法28条1項 |
| 所轄庁への提出 | 毎事業年度1回(条例の定めによる) | 29条 |
| 貸借対照表の公告 | 作成後遅滞なく(電子公告は5年・掲示は1年継続) | 28条の2・施行規則3条の2 |
| 違反したとき | 理事・監事・清算人に20万円以下の過料 | 80条4号・5号・7号 |
- 定款の「公告の方法」に、貸借対照表の公告の方法がどう書かれているか
- 公告するのは前事業年度の貸借対照表か(活動計算書ではない)
- 作成後、間を置かずに公告したか
- 電子公告なら、過去の年度の公告が期間内に掲載され続けているか
- 掲示なら、開始日と場所を記録し、1年間続けているか
- ポータルなら、閲覧書類欄ではなく公告欄に自分で登録したか
- 所轄庁への提出(29条)も別に済ませたか
NPO法人の貸借対照表の公告についてよくある質問
A. 前事業年度の貸借対照表を作成した後、遅滞なく行います(NPO法28条の2第1項)。事業報告書等は毎事業年度初めの3か月以内に作成するので(28条1項)、その作成に続けて公告します。
A. 官報、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙、電子公告、主たる事務所の公衆の見やすい場所への掲示の4つで、定款で定めた方法によります(28条の2第1項・施行規則3条の2)。
A. 貸借対照表の作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日までです(28条の2第4項)。事務所での掲示は、公告の開始後1年を経過する日までです(施行規則3条の2第3項)。
A. 不要にはなりません。所轄庁への提出(29条)と貸借対照表の公告(28条の2)は別の義務です。内閣府は、ポータルサイトの閲覧書類欄に所轄庁が掲載したデータをもって公告したことにはならず、法人自身が公告欄に掲載する必要があるとしています。
A. 内閣府は、ポータルサイトでの公告に経費はかからないと案内しています。アカウント登録と法人利用申請を行い、「公告の登録・更新」から貸借対照表のPDFを登録します。
A. 官報または日刊新聞紙の方法を定款で定めた法人は、貸借対照表の要旨を公告すれば足ります(28条の2第2項)。
A. 公告をせず、又は不正の公告をしたときは、理事・監事・清算人が20万円以下の過料に処せられます(NPO法80条7号)。
📖 参考にした公的機関の情報


