一般社団法人の社員総会の委任状|書き方と注意点を解説

一般社団法人法
総会を欠席する社員に、委任状を同封して返送してもらう。よくある運営ですが、書き方や数え方を誤ると、決議の効力が争われる原因にもなります。条文で決まっていることと、法人が決めることを分けて説明します。

結論から申し上げます。

社員総会の委任状は、法律上は「代理権を証明する書面」です(一般法人法50条1項)。

社員は代理人を立てて議決権を行使でき、そのときは社員か代理人がこの書面を法人に出します。

代理権は総会ごとに授与しなければなりません(同条2項)。

「今後の総会はすべて〇〇に任せる」という包括的な委任状は使えないということです。

受け取った委任状は、総会の日から3か月間、主たる事務所に備え置きます(同条5項)。

様式は法律で決まっていません。代理人の資格や人数は、定款か招集の際の決定で定めます(施行規則4条2号)。

POINT 委任状は「代理人が出席して議決権を使う」ための書面です。本人が書面で賛否を出す「議決権行使書」(51条)とは別の制度で、使うための前提条件も違います。

社員総会の委任状とは(一般法人法50条)

社員総会の委任状とは(一般法人法50条)
図:社員総会の委任状とは(一般法人法50条)

一般法人法50条1項は、社員が代理人によって議決権を行使できると定めています。

同じ項で、社員または代理人が代理権を証明する書面を法人に提出しなければならないとしています。

実務で「委任状」と呼んでいるのが、この書面です。

代理の効果は民法の原則どおりで、代理人が本人のためにすることを示した意思表示は本人に効力が生じます(民法99条1項)。

つまり、代理人が総会で投じた賛否は、委任した社員本人の賛否として扱われます。

委任状は欠席者のための書面ですが、欠席を「棄権」で終わらせず、本人の意思を決議に乗せる手段になります。

項目 条文で決まっていること 根拠
代理人による行使 社員は代理人によって議決権を行使できる 50条1項前段
書面の提出 社員または代理人が代理権を証明する書面を提出する 50条1項後段
授与の単位 社員総会ごとに授与する 50条2項
電子での提出 法人の承諾を得て電磁的方法で提供できる 50条3項
備置き 総会の日から3か月間、主たる事務所に置く 50条5項
閲覧・謄写 社員は理由を示して請求できる 50条6項

法律に書かれているのは、この6点です。用紙の形、押印の有無、提出の締切は法律では決まっていません。

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代理人の記入欄、議案ごとの賛否の指示欄、修正案が出た場合の一任の文言を入れています。代理権の授与は総会ごと(一般法人法50条2項)なので、総会の日付を必ず書き換えてください。登録不要・無料。

委任状に書く項目と記載例

委任状の記載事項は法律で列挙されていません。

ただし50条の仕組みから考えると、次の点が書面から読み取れないと、代理権の証明として役に立ちません。

「誰が」「誰に」「どの総会の」「どの範囲の」議決権を任せたのか、の4点です。

総会ごとの授与が求められているので(50条2項)、総会の名称と開催日は必ず書きます。

前年の用紙を使い回して日付を直し忘れると、その総会の代理権を証明できなくなるおそれがあります。

委任状に入れておく項目

  • 宛先(一般社団法人〇〇協会 御中)
  • 対象の総会(第〇回定時社員総会・開催日時)
  • 代理人の氏名(空欄の場合の扱いも書く)
  • 委任する範囲(議決権の行使に関する一切の権限 など)
  • 議案ごとの賛否欄(賛否の指示をする場合)
  • 修正案や動議が出たときの扱い
  • 作成日、社員の住所・氏名(法人社員なら名称と代表者名)
社員総会の委任状の記載例

委任状

一般社団法人〇〇協会 御中

私は、_______を代理人と定め、次の権限を委任します。

1 〇年〇月〇日開催の一般社団法人〇〇協会 第〇回定時社員総会に出席し、議決権を行使すること

2 第1号議案 〇年度事業報告の件  賛・否

3 第2号議案 〇年度計算書類承認の件  賛・否

4 第3号議案 理事〇名選任の件  賛・否

5 賛否の記載がない議案、及び原案に対する修正案・動議が出された場合は、代理人の判断に一任します。

※代理人欄が空欄のときは、議長を代理人に選任したものとして取り扱います。

〇年〇月〇日 社員 住所______ 氏名______

代理人欄が空欄のときの扱いと、修正案が出たときの扱いは、招集通知や定款の定めと一致させてください。代理人を社員に限る定款なら、その旨も用紙に書いておくと誤記が減ります。

押印は法律上の要件ではありません。本人確認の方法として押印欄を設けるかどうかは、法人が決めます。

代理人は誰でもよいのか(資格と人数)

一般法人法は、代理人の資格を直接は定めていません。

その代わり施行規則4条2号が、招集の際に決める事項として次のものを挙げています。

代理権(代理人の資格を含む)を証明する方法、代理人の数、その他代理人による議決権行使に関する事項です。

定款にこれらの定めがない場合に、招集を決めるときに定める仕組みです。

つまり「代理人は当法人の社員に限る」「代理人は1人に限る」といったルールは、定款か招集時の決定で置けます。

理事会のある法人では、招集事項の決定は理事会の決議で行います(38条2項)。

代理人の候補 よく使われる場面 注意点
議長 代理人欄が空欄の委任状の受け皿 議長が誰になるかを招集通知などで示しておく
他の社員 特定の社員に判断を任せたいとき 定款で代理人を社員に限っている法人が多い
理事 事務局を兼ねる理事に託すとき 理事が社員でなければ、資格制限に当たらないか確認する
社員でない第三者(家族・職員など) 法人社員が担当職員を出すときなど 定款や招集時の決定で認められているか確認する

法人が社員になっている場合は、その法人の代表者が議決権を行使するか、代表者が委任状を出して担当者を代理人にします。

「総会ごと」に出す決まり(50条2項)

50条2項は、代理権の授与は社員総会ごとにしなければならないと定めています。

このため、入会時に「今後すべての総会の議決権を理事長に委任する」と書かせる方式は、条文に合いません。

定時社員総会と臨時社員総会は別の総会なので、それぞれに委任状が必要です。

一方、総会で延期・続行を決議した場合、次の会合には改めての招集手続(38条・39条)が要りません(56条)。

延期後の会合にも同じ委任状を使うかどうかは、委任状の文言で疑いが残らないようにしておくと安全です。

例えば「本総会(その延会・継続会を含む)」と書いておく方法があります。

白紙委任と「議長一任」の扱い

「白紙委任」には、2つの意味が混ざって使われています。

1つは代理人欄が空欄の委任状、もう1つは賛否欄が空欄の委任状です。

代理人欄が空欄のままだと、書面だけでは誰に代理権を与えたのかが決まりません。

そこで、委任状や招集通知に「空欄の場合は議長を代理人とする」と書いておく運用が広く使われています。

賛否欄が空欄の場合は、代理人が自分の判断で賛否を決めることになります。

本人の意思と違う投票になり得るので、賛否を指示したい社員には議案ごとの賛否欄を使ってもらいます。

委任状の状態 どうなるか 用紙での手当て
代理人欄・賛否欄とも記入あり 代理人は指示どおりに行使する ―
代理人欄だけ記入あり 賛否は代理人の判断に任される 「賛否の記載がない議案は一任」と明記
代理人欄が空欄 誰が代理人か書面から決まらない 「空欄は議長に委任」と明記
総会の表示が別の総会 その総会の代理権の証明にならないおそれ 総会名と日付を毎回差し替える
社員本人の氏名がない 誰の議決権か特定できない 受付時に社員名簿と照合する

議長に多数の委任状が集まると、議長が大きな票数を持つことになります。

議案に反対の社員が議長一任にすると、意思と逆の票になることもあります。招集通知で賛否欄の使い方を案内しておくと親切です。

委任状と定足数の数え方

社員総会の決議は、定款に別段の定めがなければ、総社員の議決権の過半数を持つ社員の出席が必要です(49条1項)。

委任状を出した社員は、代理人を通じて総会に出席し議決権を行使する立場です。

そのため、代理人が実際に出席していれば、その社員の議決権も出席した議決権として数えるのが一般的な扱いです。

逆に、代理人に指名された人が当日来なければ、その委任状の議決権は行使されません。

議長を代理人とする委任状が多い法人では、議長が欠席・交代した場合の扱いも決めておきます。

書面による議決権行使(議決権行使書)の数は、条文で出席した議決権に算入すると明記されています(51条2項)。

定足数の計算例(社員10名・1人1個の議決権の場合)

総社員の議決権:10個 → 定足数は過半数の6個以上

当日の本人出席:4名(4個)

委任状による代理出席:3名(3個)

出席した議決権の合計:7個 → 定足数を満たす

可決に必要な賛成:出席した7個の過半数=4個以上

定款で定足数や決議要件を別に定めている場合は、定款が優先します(49条1項「定款に別段の定めがある場合を除き」)。特別決議は「総社員の半数以上で総社員の議決権の3分の2以上」です(49条2項)。

議事録には、総社員数・出席社員数と、うち委任状による出席の数を分けて書きます。

そうしておけば、定足数を満たしたことを後から示せます。

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委任状の回収から保管までの流れ
図:委任状の回収から保管までの流れ

委任状は、受け取ってから総会後の保管まで、法人側の事務が続きます。

受付で社員名簿と照合し、誰の議決権を誰が持っているかを総会前に確定させます。

保管期間は総会の日から3か月間で、主たる事務所に備え置きます(50条5項)。

社員は業務時間内に、理由を示して委任状の閲覧や謄写を請求できます(50条6項)。

法人は、権利行使と関係のない目的の請求などを除き、拒むことができません(50条7項)。

備置きを怠ると、理事などは100万円以下の過料の対象になります(342条8号)。

1
招集の決定
代理人の資格・人数・委任状の提出方法を、定款になければ決める(施行規則4条2号)
▼
2
招集通知に委任状を同封
総会名・日付・議案を差し替えた用紙を使う
▼
3
委任状を受け付ける
社員名簿と照合し、代理人と賛否の指示を一覧にする
▼
4
総会当日の受付
本人出席と委任状の重複を確認し、出席議決権を確定する
▼
5
議事録に反映
出席社員数のうち委任状による出席の数を分けて記載する
▼
6
3か月間備え置く
総会の日から3か月間、主たる事務所に置く(50条5項)

議事録そのものは総会の日から10年間、主たる事務所に備え置きます(57条2項)。委任状の3か月とは期間が違います。

委任状を出した後に本人が出席したら

委任状を出した社員が、当日になって本人で出席することがあります。

委任による代理権は、委任の終了によって消滅します(民法111条2項)。

委任は各当事者がいつでも解除できるので(民法651条1項)、本人は委任を撤回して自分で議決権を使えます。

本人が出席して自ら議決権を行使すれば、委任は撤回されたものと扱い、委任状の分は数えないのが通常です。

ここで大切なのは、同じ議決権を二重に数えないことです。

受付で本人出席を確認したら、委任状の一覧から外す手順を決めておきます。

なお社員が死亡すると、その社員は退社し(一般法人法29条3号)、代理権も消滅します(民法111条1項1号)。

理事会・評議員会では委任状を使えない

委任状による代理行使を定めた50条は、社員総会についての規定です。

理事会の決議要件を定めた95条1項には、代理人による議決の定めがありません。

理事は個人として選任されて職務を行う立場のため、理事会では委任状による出席は認められないと解されています。

理事が集まれないときは、定款に定めを置いて理事会の決議の省略を使う方法があります(96条)。

一般財団法人の評議員会でも、決議要件を定めた189条に代理行使の定めはありません。

評議員会が開けないときは、評議員全員の同意による決議の省略(194条1項)で対応します。

会議 委任状(代理) 欠席者の代わりの方法 根拠
一般社団法人の社員総会 使える 議決権行使書・電磁的方法・決議の省略 50条・51条・52条・58条
理事会 使えない 決議の省略(定款の定めが必要) 95条・96条
一般財団法人の評議員会 使えない 決議の省略 189条・194条
NPO法人の社員総会 使える(定款で別段の定め可) 書面による表決・電磁的方法・決議の省略 NPO法14条の7・14条の9

評議員会の運営は一般財団法人の評議員会で説明しています。

NPO法人の総会の委任状との違い

NPO法人の社員総会でも、委任状は使えます。

NPO法14条の7第2項は、総会に出席しない社員は書面で、または代理人によって表決できると定めています。

電磁的方法による表決は、定款で定めたときに認められます(同条3項)。

これらの規定は、定款に別段の定めがある場合には適用されません(同条4項)。

招集通知の期限は、総会の日より少なくとも5日前です(NPO法14条の4)。

一般社団法人のような「総会ごとの授与」「3か月の備置き」の条文はNPO法にはありません。運用は定款で確認します。

NPO法人の書面表決と委任状の違いはNPO法人の書面表決と委任状で詳しく扱っています。

登記申請の「委任状」とは別物

「一般社団法人の委任状」で調べると、登記申請の委任状が出てくることがあります。

これは代表理事が登記申請を代理人に任せるための書面で、社員総会の委任状とは目的が違います。

法務局の一般社団法人設立登記申請書の記載例にも、登記申請の委任状の例が載っています。

役員の選任など総会の決議が登記事項に関わるときは、登記申請書に社員総会の議事録を添付します(317条2項)。

委任状の数え方を誤って定足数を欠くと、議事録の記載と実態が合わなくなります。

登記に使う総会ほど、出席議決権の確認を丁寧に行います。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

委任状の扱いを誤ったときのリスク

委任状の不備や数え間違いで定足数を欠いていた場合、決議の方法が法令や定款に違反したことになり得ます。

この場合、社員などは決議の日から3か月以内に決議の取消しの訴えを起こせます(266条1項1号)。

代理人の資格を社員に限る定款なのに社員以外の代理人に行使させた場合も、定款違反として争われる可能性があります。

また、受け取った委任状を3か月間備え置かなければ、過料の対象です(342条8号)。

総会後に「誰が誰の議決権を持っていたか」を示せるよう、受付簿と委任状をそろえて保管しておきます。

決議の取消しの訴えについては一般社団法人の総会決議はやり直せる?で説明しています。

よくある誤解

誤解1:一度出せば毎年の総会に使える。代理権の授与は総会ごとです(50条2項)。毎回新しい委任状が要ります。

誤解2:委任状と議決権行使書は同じもの。

委任状は代理人が出席して行使し、議決権行使書は本人が書面で賛否を出します(50条・51条)。

誤解3:委任状を使うなら招集は2週間前。

2週間前になるのは書面・電磁的方法による行使を定めた場合です(39条1項ただし書)。

誤解4:委任状には実印の押印が必須。法律上の要件ではありません。押印欄を設けるかは法人が決めます。

誤解5:理事会も委任状で出席できる。代理出席の規定は社員総会のもので、理事会では使えないと解されています。

誤解6:委任状は総会が終われば捨ててよい。総会の日から3か月間の備置きが義務です(50条5項)。

一般社団法人の社員総会の委任状についてよくある質問

Q. 社員総会の委任状に決まった様式はありますか?

A. 法律で決まった様式はありません。一般法人法50条1項は「代理権を証明する書面」の提出を求めているだけです。総会名と日付、代理人、委任の範囲、社員の氏名が読み取れる形にします。

Q. 一度出した委任状を翌年の総会にも使えますか?

A. 使えません。代理権の授与は社員総会ごとにしなければならないと定められています(一般法人法50条2項)。総会ごとに新しい委任状を集めます。

Q. 代理人を社員に限ることはできますか?

A. できます。代理人の資格や人数は、定款で定めるか、定款に定めがなければ招集の際に決めます(一般法人法施行規則4条2号)。

Q. 代理人欄が空欄の委任状はどう扱いますか?

A. 書面だけでは代理人が決まらないため、委任状や招集通知に「空欄の場合は議長を代理人とする」と書いておく運用が一般的です。定めがない場合の扱いは事前に決めておきます。

Q. 委任状を出した社員は定足数に入りますか?

A. 代理人が出席して議決権を行使すれば、その社員の議決権も出席した議決権として数えるのが一般的な扱いです。定足数は定款に別段の定めがなければ総社員の議決権の過半数です(一般法人法49条1項)。

Q. 委任状を出した後に本人が出席したらどうなりますか?

A. 委任はいつでも解除でき(民法651条1項)、委任の終了で代理権は消滅します(民法111条2項)。本人が自ら行使すれば委任状の分は数えず、二重に数えないよう受付で確認します。

Q. メールで委任状を受け付けてもよいですか?

A. 法人の承諾を得れば、委任状の記載事項を電磁的方法で提供でき、書面を提出したものとみなされます(一般法人法50条3項)。受け付けた記録は総会の日から3か月間備え置きます(同条5項)。

Q. 受け取った委任状はいつまで保管しますか?

A. 総会の日から3か月間、主たる事務所に備え置く義務があります(一般法人法50条5項)。社員は理由を示して閲覧・謄写を請求できます(同条6項)。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。