結論から申し上げます。
社員総会の議長は、総会の秩序を維持し、議事を整理する役です(一般法人法54条1項)。
命令に従わない人や秩序を乱す人を退場させる権限もあります(同条2項)。
誰を議長にするかは法律で決まっておらず、定款に定めるのが一般的です。
議長の仕事は、総会が成立しているかの確認、議案の審議、質疑の整理、採決、結果の宣言です。
議長の氏名は、社員総会の議事録に書く事項です(施行規則11条3項5号)。
議長の権限は法律でどう決まっているか
一般法人法54条は、社員総会の議長について2つのことを定めています。
1つ目は、秩序の維持と議事の整理です(1項)。
発言の順番を決める、議題から外れた発言を止める、審議を打ち切って採決に移る、といった進行の判断がこれに当たります。
2つ目は、退場させる権限です(2項)。議長の命令に従わない人や、秩序を乱す人を退場させることができます。
ただし、議長の権限は議事を整理するためのものです。
社員の質問を理由なく打ち切ったり、反対意見だけを封じたりすると、決議の方法が「著しく不公正」とされるおそれがあります。
| 議長ができること | 議長にできないこと |
|---|---|
| 発言者を指名し、発言の順番と時間を決める | 正当な理由なく特定の社員の発言を封じる |
| 議題と関係のない発言を制止する | 招集通知にない事項を決議する(理事会設置法人) |
| 十分に審議したと判断して採決に移る | 定足数を満たさないまま決議を成立させる |
| 命令に従わない人を退場させる(54条2項) | 理由なく議決権の行使を妨げる |
| 休憩を宣言する | 出席社員の決議なしに総会を延期・続行する(56条) |
延期や続行は、社員総会の決議で決めます。決議があれば、続きの会のために改めて招集手続をとる必要はありません(56条)。
議長は誰が務めるか
一般法人法には、誰が議長になるかの規定がありません。
そのため、定款で決めておくのが一般的です。
よく使われる定め方は、「代表理事が議長となる」と「出席した社員の中から選ぶ」の2つです。
定款に定めがなければ、総会の冒頭で出席社員に諮って議長を選びます。
社員が裁判所の許可を得て自ら招集する総会(37条2項)もあるため、代表理事がいない場面の決め方も定款に書いておくと安心です。
| 定め方 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 代表理事が議長 | 準備がしやすく、毎回決める手間がない | 代表理事の解任などが議題のときは中立性を疑われやすい |
| 出席社員の中から選ぶ | 中立性を示しやすい | 冒頭で選ぶ手順が要る。候補を事前に決めておく |
| 代表理事、事故があるときは他の理事 | 代わりの人まで決まっている | 「事故」の範囲と順番を定款に書いておく |
第〇条(議長)社員総会の議長は、代表理事がこれに当たる。
2 代表理事に事故があるときは、あらかじめ理事会で定めた順序により他の理事がこれに当たる。
(別の例)第〇条(議長)社員総会の議長は、その社員総会に出席した社員の中から選出する。
実際の定款は、理事会の有無などの機関設計に合わせて作ります。
議長が社員であれば、法律上は他の社員と同じく議決権を持ちます(48条1項)。
議長の議決権の扱いを定款で決めている法人もあります。
総会の前に議長が確認しておくこと
当日の進行は、準備でほぼ決まります。
議長は、招集通知、議案、出席の見込み、事前に届いた質問を確認しておきます。
招集通知は、総会の日の1週間前までに発するのが原則です(39条1項)。
書面や電磁的方法での議決権行使を認めた場合は、2週間前までです(同項ただし書)。
理事会設置法人では、招集の際に定めた「目的である事項(議題)」以外は決議できません(49条3項)。
- 招集通知を期限内に全社員へ発したか(39条1項)
- 議題ごとの議案書と説明者は決まっているか
- 書面投票・電子投票・委任状の数を集計しているか
- 委任状に代理権を証明する書面がそろっているか(50条1項)
- 定足数(原則は総社員の議決権の過半数)に届く見込みか
- 特別決議が必要な議案(定款変更など)が含まれていないか(49条2項)
- 事前の質問と、回答する理事・監事を割り振ったか
- 議事録を作る担当者と記録の方法を決めたか
招集通知の書き方は社員総会の招集通知で詳しく説明しています。
開会から閉会までの進め方

標準的な進行は、次の順です。
会場の都合や議案の数で変わりますが、この骨組みを押さえておけば大きく外れません。
議長が就任を告げ、開会を宣言する(議長を選ぶ場合はその手順から)
本人出席・委任状・書面と電子の行使を合計し、総会の成立を宣言する
事業報告など、報告で足りる事項を説明する
議案ごとに説明→質疑→採決→結果の宣言を繰り返す
すべての議案が終わったことを確認して閉会する
議長の氏名・議事の経過・結果などを記載する(57条)
総会全体の運営(定時総会と臨時総会、年間の流れ)は社員総会の運営と進め方にまとめています。
議長の進行台本(そのまま使える例)
議長の発言は、短く、決まった型で進めると混乱しません。
次の台本は、理事会設置法人の定時社員総会で、議案が2つある場合の例です。
【開会】ただいまから、一般社団法人〇〇の第〇回定時社員総会を開会いたします。定款第〇条により、代表理事の私が議長を務めます。
【成立の報告】本日の出席状況をご報告します。総社員〇名、議決権〇個のうち、本人出席〇名、委任状による出席〇名、書面による行使〇名で、合計〇個です。総社員の議決権の過半数を有する社員が出席していますので、本総会は成立しました。
【報告事項】まず、第〇期事業報告の件をご報告します。担当理事から説明いたします。
【議案の上程】次に、第1号議案「第〇期計算書類承認の件」を上程します。担当理事から説明をお願いします。
【質疑】ただいまの説明について、ご質問・ご意見はありませんか。発言される方は挙手のうえ、お名前をおっしゃってからお願いします。
【採決】ほかにご質問がないようですので、採決に移ります。第1号議案に賛成の方は挙手をお願いします。ありがとうございました。書面と委任状を合わせて賛成〇個で過半数となりましたので、第1号議案は原案どおり承認されました。
【特別決議】第2号議案「定款一部変更の件」は特別決議です。総社員の半数以上で、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
【閉会】以上で本日の議案はすべて終了しました。これをもちまして閉会いたします。ご協力ありがとうございました。
書面・電子・代理で行使された議決権は、出席した社員の議決権として数えます(51条2項・52条3項・50条1項)。
定足数と採決の数え方
普通決議は、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席社員の議決権の過半数で決めます(49条1項)。
定足数や賛成の割合は、定款で変えることができます。
定款変更、監事の解任、解散などは特別決議です。
総社員の半数以上で、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(49条2項)。
特別決議の分母は「出席した社員」ではなく「総社員」です。欠席が多いと成立しないので注意します。
採決の方法(挙手・起立・投票など)は法律で決まっていません。賛否の数が確実にわかる方法を議長が選びます。
賛否が近いときは、挙手ではなく、記名投票などで正確に数えておくと後の争いを防げます。
| 決議の種類 | 定足数 | 可決の要件 | 主な議案 |
|---|---|---|---|
| 普通決議 | 総社員の議決権の過半数(定款で変更可) | 出席社員の議決権の過半数 | 計算書類の承認、理事の選任 |
| 特別決議 | なし(分母が総社員) | 総社員の半数以上かつ総社員の議決権の3分の2以上 | 定款変更、監事の解任、解散 |
決議事項ごとの要件は社員総会の決議事項|普通決議と特別決議で一覧にしています。
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本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
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議事録の作り方は一般社団法人の議事録の書き方で、記載例とともに説明しています。
会議を開かないときは議長も要らない
社員の全員が書面や電磁的記録で同意すれば、総会を開かずに決議があったものとみなされます(58条1項)。
報告事項も、社員の全員が同意すれば報告があったものとみなされます(59条)。
これらの場合は会議を開かないため、議長は置きません。
議事録には、みなされた事項の内容、提案者、日付、議事録の作成者を書きます(施行規則11条4項)。
社員の全員が同意すれば、招集の手続を省いて総会を開くこともできます(40条)。
この場合は会議を開くので、議長を決めて進行します。
理事会の議長との違い

理事会にも議長を置くのが一般的ですが、理事会の議長についても一般法人法に規定はありません。
理事会の議事録には、議長がいるときはその氏名を書きます(施行規則15条3項8号)。
理事会の議事録は、出席した理事と監事が署名または記名押印します(一般法人法95条3項)。
社員総会と違い、理事会では決議に特別の利害関係がある理事は議決に加われません(95条2項)。
議長がその理事に当たるときは、議長を交代して審議します。
| 項目 | 社員総会の議長 | 理事会の議長 |
|---|---|---|
| 法律上の権限 | 秩序維持・議事整理・退場命令(54条) | 規定なし(定款・規程で定める) |
| 誰がなるか | 定款で定める(代表理事が多い) | 定款・理事会規程で定める |
| 議事録への記載 | 議長の氏名(規則11条3項5号) | 議長の氏名(規則15条3項8号) |
| 議事録の署名 | 法律上は不要(定款で定められる) | 出席理事・監事が署名か記名押印(95条3項) |
理事会の進め方は理事会とは?役割・決議事項・運営の進め方で説明しています。
手続を誤ったときのリスク
議事の進め方に問題があると、決議の効力が争われます。
招集の手続や決議の方法が法令・定款に違反し、または著しく不公正なときは、社員などが決議の日から3か月以内に取消しの訴えを起こせます(266条1項1号)。
決議の内容が法令に違反するときは、決議の無効の確認を求める訴えの対象になります(265条2項)。
議長がとくに気をつけたいのは、定足数の確認、特別決議の要件、議題外の決議、質問の打ち切り方です。
よくある誤解
誤解1:議長は代表理事でなければならない。法律に定めはなく、定款で自由に決められます。
誤解2:議長は議決権を行使できない。法律上の制限はありません。社員である議長は議決権を持ちます(48条1項)。
誤解3:委任状は出席に数えない。
代理人による行使は出席として数えます。
書面・電子での行使も出席に算入されます(51条2項・52条3項)。
誤解4:社員総会の議事録には全員の署名が必要。法律上の署名義務はなく、定款の定めによります。
誤解5:議長は質問を自由に打ち切れる。説明を拒める場合は法令で限られています(53条・施行規則10条)。
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社員総会の議長と議事進行についてよくある質問
A. 総会の秩序を維持し、議事を整理する権限と、命令に従わない人や秩序を乱す人を退場させる権限があります(一般法人法54条)。
A. 法律に定めはなく、定款で決めます。「代表理事が議長となる」「出席社員の中から選ぶ」が一般的です。定めがなければ総会の冒頭で選びます。
A. 議長が社員であれば、法律上は他の社員と同じく議決権を持ちます(一般法人法48条1項)。定款で扱いを定めている場合はそれに従います。
A. 数えます。代理人による行使、書面や電磁的方法による行使は、出席した社員の議決権に算入します(一般法人法50条・51条2項・52条3項)。
A. 議題と関係がない場合、社員の共同の利益を著しく害する場合、同じ質問の繰り返しなどに限られます(一般法人法53条・施行規則10条)。
A. 法律上の署名義務はありません。議事録には議長の氏名を書きます(施行規則11条3項5号)。署名の要否は定款の定めによります。
A. 議長は秩序を乱す人を退場させられます(一般法人法54条2項)。続けられないときは、出席社員の決議で延期や続行を決めます(56条)。
A. 招集手続や決議の方法が法令・定款に違反し、または著しく不公正なときは、決議の日から3か月以内に取消しの訴えの対象になります(一般法人法266条1項1号)。
📖 参考にした公的機関の情報


