一般社団法人の社員の議決権|1人1議決権の原則と行使方法

一般社団法人法
議決権は「1人1票」と聞くけれど、定款で変えられるのか。欠席した社員の票はどう数えるのか。条文が決めていることと、定款で決められることを分けて説明します。

結論から申し上げます。

一般社団法人の社員は、各1個の議決権を持つのが原則です(一般法人法48条1項本文)。

ただし、定款で別段の定めをすれば、社員ごとに議決権の数を変えたり、行使できる事項を絞ったりできます(同項ただし書)。

一方で、すべての決議事項で議決権を行使できないとする定めは無効です(48条2項)。

議決権は、総会に出席するほか、代理人・書面・電磁的方法で行使できます(50条〜52条)。

書面や電磁的方法で行使した議決権は、出席した社員の議決権に数えます(51条2項・52条3項)。

POINT 議決権を持つのは法律上の「社員」だけです。賛助会員など社員でない会員は、定款で社員としない限り議決権を持ちません。誰が社員かは定款の「社員の資格の得喪」の定めで決まります(11条1項5号)。

議決権とは何か・誰が持つか

議決権は、社員総会の決議に加わる権利です。

一般社団法人の「社員」は従業員ではなく、法人の構成員として総会で議決権を持つ人のことです。

社員になれるのは個人だけではありません。法人が社員になることもできます。

法人の社員は、その代表者や、代理権を与えた人を通じて議決権を行使します。

「正会員」「賛助会員」などの会員の区分は法人が付ける呼び名で、議決権の有無はその会員が社員かどうかで決まります。

立場 議決権 根拠
社員(定款で社員とした会員) あり(原則各1個) 48条1項
賛助会員など社員でない会員 なし 社員でないため
理事・監事(社員でない場合) なし(総会での説明義務はある) 53条
法人の社員 あり(代表者などが行使) 48条1項
除名された元社員 なし 30条1項

会員の区分と社員の関係は賛助会員と正会員の違いで詳しく説明しています。

1人1個が原則・定款で変えられる範囲

48条1項は「社員は、各一個の議決権を有する」と定めています。

同じ項のただし書で、定款で別段の定めをすることを妨げないとしています。

つまり、議決権の数や行使できる事項は、定款で設計できます。

限界は48条2項で、総会で決議する事項の全部について議決権を行使できないとする定めは効力がありません。

ある種類の社員を「議決権ゼロ」にしたいなら、その人をそもそも社員にしない、という設計になります。

定款の定め方の例 一般社団法人で 注意点
全社員が各1個 有効(法律の原則どおり) もっとも誤解が少ない
法人社員は各3個、個人社員は各1個 有効(48条1項ただし書) 議決権行使書面に数を書く(施行規則7条3号)
会費の口数に応じて議決権を与える 一般社団法人では有効 公益認定では不可(公益認定法5条17号ロ(2))
一部の社員は役員選任だけ議決権あり 有効(行使できる事項がある) 事項の範囲を定款で明確にする
一部の社員は全事項で議決権なし 無効(48条2項) その人は社員でない会員にする
定款の記載例(議決権の数を変える場合)

第〇条(議決権)社員は、各1個の議決権を有する。ただし、法人である社員は、各〇個の議決権を有する。

第〇条(社員の資格)当法人の目的に賛同して入会した正会員をもって、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の社員とする。

数を変える定めを置かないなら、ただし書は書かずに「各1個」だけにします。

株式会社・NPO法人との違い

株式会社・NPO法人との違い
図:株式会社・NPO法人との違い

株式会社の株主は、原則として1株につき1個の議決権を持ちます(会社法308条1項)。

出資が多い人ほど議決権が多い仕組みです。

一般社団法人には株式がなく、議決権は社員1人ごとに与えられます。

NPO法人は「各社員の表決権は、平等とする」が原則です(NPO法14条の7第1項)。

NPO法人も、定款に別段の定めがある場合はこの原則を適用しないとされています(同条4項)。

法人の種類 議決権の単位 定款で変えられるか 根拠
一般社団法人 社員1人につき1個 変えられる(全事項で行使不可は無効) 一般法人法48条
公益社団法人 社員1人につき1個が基本 財産の提供額に応じた差は不可 公益認定法5条17号ロ
NPO法人 各社員平等(表決権) 定款に別段の定めがあれば別 NPO法14条の7
株式会社 1株につき1個 種類株式などで調整 会社法308条1項

決議は「議決権」で数える(普通決議)

社員総会の普通決議は、総社員の議決権の過半数を持つ社員が出席し、出席した社員の議決権の過半数で行います(49条1項)。

出席の要件(定足数)も可決の要件も、人数ではなく議決権の数で数えます。

全員が各1個なら、人数と議決権の数は同じになります。

定款で数を変えた法人では、少数の社員が多くの議決権を持つことがあります。

普通決議の要件は、定款で別段の定めができます(49条1項)。

例:社員10人・議決権の合計14個 定足数 可決に必要な数
個人社員8人(各1個)+法人社員2人(各3個) 議決権7個を超える出席(8個以上) 出席した議決権の過半数
8個出席(法人2社6個+個人2人2個)の場合 満たす 5個以上の賛成
同じ例で、個人社員6人だけ出席した場合 6個で満たさない 決議できない

定足数を満たさないときの対処は総会・理事会が定足数不足で成立しないときで説明しています。

特別決議は「頭数」と「議決権」の両方が要る

定款変更や解散などの特別決議は、総社員の半数以上で、かつ総社員の議決権の3分の2以上の多数で行います(49条2項)。

基準は「出席した社員」ではなく「総社員」です。

頭数の要件があるため、議決権を多く持つ一部の社員だけでは決められません。

3分の2の割合は、定款で引き上げることができます(同項かっこ書)。

特別決議が必要な事項は、社員の除名・監事の解任・定款変更・解散などです。

例:社員10人・議決権の合計14個 頭数(5人以上) 議決権(10個以上) 結果
法人社員2社(6個)+個人社員4人(4個)が賛成 6人で満たす 10個で満たす 可決
法人社員2社(6個)+個人社員2人(2個)が賛成 4人で満たさない 8個で満たさない 否決
個人社員8人(8個)が賛成 8人で満たす 8個で満たさない 否決

特別決議の対象事項の一覧は社員総会の決議事項|普通決議と特別決議で整理しています。

議決権を行使する4つの方法

社員は、総会に出席して議決権を行使するのが基本です。

出席できない社員のために、法律は代理・書面・電磁的方法の3つの方法を用意しています。

書面や電磁的方法で行使できるようにするかは、理事が総会の招集時に決めます(38条1項3号・4号)。

理事会を置く法人では、その決定は理事会の決議で行います(38条2項)。

書面・電磁的方法を認めた場合、招集通知は総会の2週間前までに書面で出します(39条1項ただし書・2項1号)。

あわせて、社員総会参考書類と議決権行使書面を交付します(41条1項)。

方法 手続 期限・保存 根拠
出席 総会の会場(またはオンライン)で賛否を示す 議事録は10年間備置き 57条
代理人による行使(委任状) 代理権を証明する書面を法人に出す。総会ごとに授与 書面は総会の日から3か月備置き 50条1項・2項・5項
書面による行使(議決権行使書) 議決権行使書面に賛否を書いて提出 総会の直前の業務時間の終了時まで。3か月備置き 51条・施行規則8条
電磁的方法による行使 法人の承諾を得て、行使書面の内容を電子的に送る 総会の直前の業務時間の終了時まで。3か月備置き 52条・施行規則9条

委任状の書き方は社員総会の委任状、オンラインでの開催は社員総会はオンラインでできる?で説明しています。

議決権行使書面に書くこと

書面による議決権行使を認めた総会では、理事が社員に議決権行使書面を交付します(41条1項)。

行使書面に書く事項は、一般法人法施行規則7条が定めています。

1つ目は、議案ごとの賛否を書く欄です。棄権の欄を設けることもできます。

2つ目は、議決権の行使の期限です。

3つ目は、議決権を行使する社員の氏名または名称です。

定款で議決権の数を変えている法人では、その社員が行使できる議決権の数もあわせて書きます(同条3号)。

議決権行使書の記載例

議決権行使書

一般社団法人〇〇協会 御中

私は、令和〇年〇月〇日開催の定時社員総会の各議案につき、下記のとおり議決権を行使します。

第1号議案 令和〇年度計算書類承認の件  賛・否・棄権

第2号議案 理事〇名選任の件  賛・否・棄権(候補者ごとに賛否を書く欄を設ける例もある)

社員の氏名又は名称 〇〇〇〇  行使できる議決権の数 〇個

行使の期限 令和〇年〇月〇日(〇)午後〇時までに到着したもの

期限は、原則として総会の日時の直前の業務時間の終了時です(施行規則8条)。

議決権の定めを変えるときの手続

議決権の数や行使できる事項を変えるには、定款の変更が必要です。

定款の変更は社員総会の決議で行い(146条)、特別決議の要件がかかります(49条2項4号)。

議決権を減らされる社員がいる変更では、その社員も頭数と議決権の両方の要件に含めて数えます。

変更後の定款は、次の総会の招集からそのまま使えるよう、社員名簿の議決権数もあわせて直します。

総会を開かずに決める「決議の省略」との違い

理事や社員の提案に、社員の全員が書面や電磁的記録で同意したときは、可決の決議があったものとみなされます(58条1項)。

これは議決権の行使ではなく、総会そのものを開かない方法です。

1人でも同意しなければ成立しないため、多数決で決める「書面による議決権行使」とは仕組みが違います。

同意の書面は、決議があったとみなされた日から10年間備え置きます(58条2項)。

書面による議決権行使 決議の省略(みなし決議)
総会 開く 開かない
決まり方 多数決(49条の要件) 社員全員の同意
反対の社員がいる場合 可決できることがある 成立しない
根拠 51条 58条1項

決議の省略の手順は書面決議(決議の省略)とはで説明しています。

議決権の割合で使える少数社員の権利

一定割合の議決権を持つ社員には、総会の運営に関わる権利があります。

総社員の議決権の10分の1以上を持つ社員は、理事に総会の招集を請求できます(37条1項)。

この割合は、定款で5分の1以下の範囲で定めることもできます(同項かっこ書)。

社員は、一定の事項を総会の目的とするよう理事に請求できます(43条1項)。

理事会を置く法人では、この請求は議決権の30分の1以上を持つ社員に限られ、総会の6週間前までに行います(43条2項)。

権利 必要な議決権 根拠
総会の招集請求 総社員の議決権の10分の1以上(定款で5分の1以下に変更可) 37条1項
議題の提案(理事会なし) 1個から 43条1項
議題の提案(理事会あり) 総社員の議決権の30分の1以上(定款で引下げ可) 43条2項
委任状・議決権行使書の閲覧 社員であれば請求できる(理由を示す) 50条6項・51条4項

社員の権利の全体像は一般社団法人の社員の権利で説明しています。

利害関係のある社員の議決権

一般法人法には、決議に特別の利害関係を持つ社員の議決権を排除する規定はありません。

そのため、利害関係のある社員も議決権を行使できます。

ただし、その行使で著しく不当な決議がされたときは、決議の取消しの訴えの対象です(266条1項3号)。

訴えは、決議の日から3か月以内に起こす必要があります(266条1項)。

理事会は扱いが違い、決議に特別の利害関係を持つ理事は議決に加われません(95条2項)。

会議 利害関係のある人の議決 根拠
社員総会 行使できる(著しく不当な決議は取消しの対象) 266条1項3号
理事会 議決に加われない 95条2項

決議の取消しの要件は総会決議の取消し・無効・不存在の訴えで説明しています。

公益認定を目指す法人の議決権の制限

公益社団法人になるには、議決権の定めにも基準があります。

議決権について定款に定めを置くなら、目的に照らして不当に差別的な取扱いをしないことが必要です。

根拠は公益認定法5条17号ロ(1)です。

また、社員が法人に提供した金銭その他の財産の価額に応じて議決権に差をつけないことも必要です(同号ロ(2))。

一般社団法人の段階で「寄付額や会費の口数に応じた議決権」を定款に入れると、公益認定の際に定款変更が必要になります。

公益認定の要件は一般社団法人から公益社団法人への移行で説明しています。

総会前に議決権を確認する手順

総会前に議決権を確認する手順
図:総会前に議決権を確認する手順

議決権の数え間違いは、決議の方法の法令違反として取消しの原因になり得ます(266条1項1号)。

総会の前に、次の流れで議決権を確定させておきます。

1
社員名簿で社員を確定する
退社・除名・新規入社を反映する
▼
2
社員ごとの議決権の数を確認する
定款で数を変えている場合は名簿に数も書く
▼
3
総議決権数と定足数・可決ラインを計算する
普通決議と特別決議の両方を出しておく
▼
4
委任状・議決権行使書を受け付ける
期限(総会の直前の業務時間の終了時)を守る
▼
5
当日の出席と書面行使を合算する
書面・電磁的方法の行使は出席に数える(51条2項・52条3項)
▼
6
議事録に賛否の結果を残す
委任状・行使書面は3か月備え置く

社員名簿の管理は社員名簿とはで説明しています。

よくある誤解

誤解1:一般社団法人は必ず1人1票。原則ですが、定款で別段の定めができます(48条1項ただし書)。

誤解2:特別決議は出席者の3分の2で足りる。

基準は「総社員」で、頭数の半数以上と議決権の3分の2以上の両方が必要です(49条2項)。

誤解3:書面で投票した社員は欠席扱い。

書面・電磁的方法で行使した議決権は、出席した社員の議決権に数えます(51条2項・52条3項)。

誤解4:賛助会員にも1票ある。議決権を持つのは社員だけです。賛助会員を社員にするかは定款で決まります。

誤解5:利害関係のある社員は投票できない。

社員総会では排除の規定がありません。

排除されるのは理事会の特別利害関係理事です(95条2項)。

一般社団法人の社員の議決権についてよくある質問

Q. 一般社団法人の社員は何個の議決権を持ちますか?

A. 原則として各1個です。定款で別段の定めをすれば、社員ごとに数を変えることもできます(一般法人法48条1項)。

Q. 定款で一部の社員の議決権をなくせますか?

A. すべての決議事項で行使できないとする定めは無効です(48条2項)。議決権を持たせたくない人は、社員でない会員(賛助会員など)にする設計をとります。

Q. 会費を多く払った社員に多くの議決権を与えられますか?

A. 一般社団法人では定款で定めることができます(48条1項ただし書)。ただし公益認定では、提供した財産の価額に応じた差は認められません(公益認定法5条17号ロ(2))。

Q. 欠席した社員の議決権はどうなりますか?

A. 代理人・書面・電磁的方法で行使できます(50条〜52条)。書面と電磁的方法での行使は、出席した社員の議決権に数えます(51条2項・52条3項)。

Q. 書面による議決権行使の期限はいつですか?

A. 原則として、社員総会の日時の直前の業務時間の終了時です(一般法人法施行規則8条)。招集時に特定の時を定めた場合はその時です。

Q. 特別決議の要件は何ですか?

A. 総社員の半数以上で、かつ総社員の議決権の3分の2以上の多数です。3分の2は定款で引き上げられます(49条2項)。

Q. 法人が社員の場合、誰が議決権を行使しますか?

A. その法人の代表者か、代表者から代理権を与えられた人が行使します。代理の場合は代理権を証明する書面を出します(50条1項)。

Q. 利害関係のある社員は議決権を行使できますか?

A. 社員総会では行使できます。ただし、その行使で著しく不当な決議がされたときは、決議の取消しの訴えの対象になります(266条1項3号)。

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