結論から申し上げます。
一般社団法人でよく作る印鑑は、代表者印(法人実印)・銀行印・角印の3本です。
このうち法令に定めがあるのは、法務局(登記所)に届け出る代表者印だけです。
2021年2月15日から、登記をオンラインで申請する場合は印鑑の届出が任意になりました。
一方、書面で登記を申請するときは、申請書に登記所へ届け出た印鑑を押す必要があります(商業登記規則35条の2)。
また、法人の印鑑証明書は、印鑑を届け出た人しか請求できません(商業登記法12条1項)。
銀行口座の開設や不動産の取引で印鑑証明書を求められることを考えると、多くの法人にとって届出は今も実務上必要です。
一般社団法人で使う印鑑の種類
法人の印鑑は、どこに届け出るか、どの書類に押すかで呼び名が変わります。
代表者印は、代表理事が登記所に届け出る印鑑です。「法人実印」「代表印」とも呼ばれます。
届け出た印鑑について、登記所で印鑑証明書を発行してもらえます(商業登記法12条1項)。
銀行印は、金融機関に口座の届出印として登録する印鑑です。
届け出るのは金融機関で、どの印鑑を使えるかは各金融機関の規定によります。
角印は、法人名を彫った四角い印鑑で、請求書や領収書などに押します。
角印は、どこにも届け出ません。法令上の作成義務もありません。
| 印鑑 | 届け出る先 | 主な用途 | 法令の定め |
|---|---|---|---|
| 代表者印(法人実印) | 登記所(法務局) | 書面での登記申請・重要な契約・印鑑証明書が要る手続 | 商業登記規則9条(大きさ・届出の方法) |
| 銀行印 | 金融機関 | 預金口座の取引 | 法令上の定めなし(金融機関の規定) |
| 角印 | 届出なし | 請求書・見積書・領収書など | 法令上の定めなし |
| ゴム印(住所印) | 届出なし | 書類の名義・住所の記入 | 法令上の定めなし |
代表者印を銀行印として兼ねることもできます。
ただし、口座の手続のたびに代表者印を持ち出すことになるため、分けて作る法人が多くあります。
2021年改正:オンライン申請なら印鑑の届出は任意
法務省は、2021年(令和3年)2月15日から、オンラインで登記を申請する場合は印鑑の提出が任意になったと案内しています。
一般社団法人の登記にも、一般法人法330条で商業登記法が、一般社団法人等登記規則3条で商業登記規則が準用されます。
一般社団法人等登記規則の改正も、附則で同じ令和3年2月15日施行とされています。
ただし、書面で申請する場合は、申請書に登記所へ提出している印鑑を押さなければなりません(商業登記規則35条の2第1項)。
代理人に頼むときの委任状にも、その印鑑を押します(同条2項)。
そのため法務省も、書面で申請する場合は従来どおり印鑑の提出が必要だとしています。
| 申請の方法 | 印鑑の届出 | 根拠 |
|---|---|---|
| オンライン申請(電子署名) | 任意 | 法務省の案内(令和3年2月15日から) |
| 書面申請(窓口・郵送) | 必要(申請書に届出印を押す) | 商業登記規則35条の2第1項 |
| 書面申請を代理人に委任 | 必要(委任状に届出印を押す) | 商業登記規則35条の2第2項 |
| 印鑑証明書を取りたい | 必要(届け出た人だけが請求できる) | 商業登記法12条1項 |
オンラインでの印鑑の届出は、オンラインでの登記申請と同時に行う場合に限られる、と法務省は案内しています。
登記を書面で出すか、オンラインで出すかは、設立の準備の段階で決めておきます。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
届出をしないとどうなるか
印鑑を届け出なくても、オンラインで設立登記をすることはできます。
しかし、届出をしていなければ、法人の印鑑証明書が取れません。
商業登記法12条1項は、印鑑証明書を請求できる人を「その印鑑を登記所に提出した者」に限っています。
印鑑証明書は、金融機関での口座開設、不動産の売買や賃貸、取引先との契約などで提出を求められることがあります。
また、のちに役員変更などの登記を書面で申請するときは、その前に印鑑を届け出る必要があります。
印鑑を提出した者がいない法人では、代表理事の辞任の登記の添付書面の扱いも変わります(商業登記規則61条8項)。
届け出るかどうかは、今後の登記の申請方法と、印鑑証明書が必要になる取引があるかで判断します。
- 登記を書面(窓口・郵送)で申請する予定がある
- 司法書士などに書面で委任して登記を申請する予定がある
- 金融機関から法人の印鑑証明書の提出を求められている
- 事務所の賃貸借や不動産の取引をする予定がある
- 補助金・委託事業・入札などで印鑑証明書や使用印鑑の届出を求められる
代表者印の大きさと規格

登記所に届け出る印鑑の大きさは、商業登記規則9条3項で決まっています。
辺の長さが1センチメートルの正方形に収まるものは届け出られません。
辺の長さが3センチメートルの正方形に収まらないものも届け出られません。
つまり、1cm角より大きく、3cm角に収まる大きさであることが必要です。
印鑑は照合に適するものでなければなりません(同条4項)。
すり減って印影がはっきりしない印鑑や、ゴム印のように変形しやすい印鑑は、照合に向きません。
照合に適さない印鑑が押されたときは、登記官が改印などを求めることがあります(9条の3)。
彫る文字の内容は、法令に定めがありません。
外枠に法人名、内枠に「代表理事之印」「理事長之印」と彫る形が広く使われています。
法人名を彫る場合は、名称中に「一般社団法人」の文字を含む正式な名称と一致させます(一般法人法5条1項)。
| 項目 | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 大きさの下限 | 1cm角の正方形に収まるものは不可 | 商業登記規則9条3項 |
| 大きさの上限 | 3cm角の正方形に収まらないものは不可 | 商業登記規則9条3項 |
| 印影 | 照合に適するもの | 商業登記規則9条4項 |
| 形(丸・角) | 定めなし | ― |
| 彫る文字 | 定めなし(法人名を入れるのが一般的) | ― |
| 材質 | 定めなし(照合に適することが必要) | 商業登記規則9条4項 |
名称が変わる可能性がある段階で印鑑を発注すると、作り直しになります。
定款の名称を確定させてから注文するのが安全です。
印鑑届書の書き方と添付書類
印鑑の届出は、印鑑を明らかにした書面(印鑑届書)でします(商業登記規則9条1項)。
法務局のWebサイトに様式が掲載されています。
代表理事が届け出る場合、印鑑届書には次の事項を書きます。
名称、主たる事務所、資格(代表理事)、氏名、出生の年月日です(9条1項4号を準用)。
あわせて、届出人の住所、届出の年月日、登記所の表示を書きます(9条1項)。
届書には、代表理事個人の印鑑(市区町村に登録した実印)を押します。
そして、その印鑑について市区町村長が作成した印鑑証明書で作成後3か月以内のものを添付します(9条5項1号)。
届け出る印鑑:所定の枠内に代表者印を押す
名称:一般社団法人〇〇〇〇
主たる事務所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
資格:代表理事
氏名:〇〇 〇〇 / 生年月日:〇年〇月〇日
印鑑カードの引継ぎ:前任者のカードを引き継ぐ場合にその旨と番号を書く
届出人の住所・氏名:代表理事本人(個人の実印を押す)
添付:代表理事個人の印鑑証明書(市区町村長作成・作成後3か月以内)
様式の欄の配置は法務局の最新の様式で確認してください。代理人が届け出る場合は委任状の欄も記入します。
代表理事が複数いる場合、印鑑は代表理事ごとに届け出られます。
商業登記法12条1項1号が、登記の申請書に押印すべき者を印鑑証明書の請求権者としているためです。
設立登記と印鑑の準備の順番

書面で設立登記を申請する場合、印鑑届書は登記申請と同時に提出するのが一般的です。
申請書に押す印鑑と、届け出る印鑑を一致させる必要があるからです(商業登記規則35条の2)。
設立登記では、就任承諾書などに押した個人の印鑑について、市区町村長の印鑑証明書を添付する場面があります。
その根拠は、一般社団法人等登記規則3条で準用する商業登記規則61条4項〜6項です。
設立時の個人の印鑑証明書が何通いるかは、機関設計と誰が就任するかで変わります。
くわしくは就任承諾書とはで解説しています。
定款の名称と同じ文字で印鑑を作る(一般法人法5条1項)
1cm超3cm以内の正方形に収まる大きさ(商業登記規則9条3項)
印鑑届書に添付。作成後3か月以内(9条5項1号)
代表者印と代表理事個人の実印を押す
書面申請なら申請書にも届け出る印鑑を押す(35条の2)
印鑑証明書の請求にカードが要る(9条の4・22条2項)
印鑑カードと印鑑証明書の取り方
印鑑を届け出た人は、印鑑カードの交付を請求できます(商業登記規則9条の4第1項)。
印鑑証明書を請求するときは、印鑑カードを提示しなければなりません(22条2項)。
法務局は、印鑑証明書の送付を請求する場合でも印鑑カードの提出が必要だと案内しています。
印鑑証明書は、商業・法人登記情報交換システムにより、管轄にかかわらず登記所であればどこでも取得できると案内されています。
手数料は登記手数料令10条で決まっています。
| 請求の方法 | 手数料(1件) | 根拠 |
|---|---|---|
| 書面で請求(窓口・郵送) | 500円 | 登記手数料令10条1項 |
| オンラインで請求・窓口で受け取る | 420円 | 登記手数料令10条2項 |
| オンラインで請求・送付を受ける | 450円 | 登記手数料令10条2項 |
上の額は、法務省が令和7年4月1日から変わったと案内している現行の額です。
オンライン申請で使う電子署名には、印鑑とは別に商業登記に基づく電子証明書の制度があります(商業登記法12条の2)。
印鑑カードの交付申請や紛失時の対応は、法人の印鑑カードとはで説明しています。
代表理事の交代・改印・紛失のとき
印鑑の届出は、届け出た人にひも付いています。
代表理事が交代したときは、新しい代表理事が改めて印鑑を届け出ます。
前任者と同じ代表者印を使い続ける場合も、新しい代表理事の名で届け出ます。
新しく印鑑を提出する人は、提出と同時に申し出れば、前任者の印鑑カードを引き継いで使えます(9条の4第3項)。
印鑑を変える(改印)ときや、使うのをやめるときは、廃止の届出をします(9条7項)。
廃止の届出は、届け出ている印鑑を押した書面でします。印鑑カードを提示すれば押印は要りません(同項後段)。
代表者印を紛失した場合は、悪用を防ぐため、早めに廃止の届出と新しい印鑑の届出をします。
印鑑カードの交付を受けた人が資格を失ったときは、カードを返納します。
ただし後任者が引き継ぐ場合は除きます(9条の5第5項)。
| こんなとき | 手続 | 根拠 |
|---|---|---|
| 代表理事が交代した | 新代表理事が印鑑を届け出る(カードの引継ぎも可) | 商業登記規則9条1項・9条の4第3項 |
| 代表者印を作り替えた | 旧印の廃止届と新印の届出 | 9条7項・9条1項 |
| 代表者印をなくした | 廃止届(カード提示で押印不要)と新印の届出 | 9条7項 |
| 印鑑カードをなくした | カードの廃止届と再交付の請求 | 9条の5第3項・9条の4第1項 |
| 印影がすり減った | 改印(照合に適さないと改印を求められることがある) | 9条4項・9条の3 |
代表理事の交代に伴う登記は、一般社団法人の代表理事の選び方と辞任届とはを参考にしてください。
銀行印・角印の作り方と使い分け
銀行印は、口座を開く金融機関に届け出る印鑑です。
代表者印と兼ねてもよいか、どんな印鑑なら受け付けるかは、金融機関の規定によります。
口座開設のときは、法人の登記事項証明書や印鑑証明書などを求められるのが一般的なので、事前に金融機関へ確認します。
角印は、請求書・見積書・領収書・案内状など、日常的に発行する書類に押します。
角印は登記所にも金融機関にも届け出ないので、大きさや文字に法令上の決まりはありません。
押印の有無が書類の効力を左右するかは、書類の種類によります。
私文書は、本人や代理人の署名か押印があれば、真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。
このため、重要な契約書には、代表者印を押して印鑑証明書を添える運用が今も広く行われています。
| 書類 | よく使う印鑑 | 補足 |
|---|---|---|
| 書面での登記申請書・委任状 | 代表者印(届出印) | 商業登記規則35条の2 |
| 重要な契約書(不動産・借入など) | 代表者印 | 相手方から印鑑証明書を求められることが多い |
| 一般的な業務委託契約書 | 代表者印または契約で定めた印 | 相手方との取り決めによる |
| 預金の払戻し・口座の変更届 | 銀行印 | 金融機関の規定による |
| 請求書・見積書・領収書 | 角印 | 押印は法令上必須ではない |
| 社内の稟議書・議事録の写し | 法人が規程で決める | ― |
銀行口座の開き方は、一般社団法人の銀行口座開設の流れで解説しています。
印鑑の管理ルールを決める
代表者印は、印鑑証明書と組み合わせると、法人の重要な意思表示に使われます。
理事が複数いる法人や、事務局職員が実務を担う法人では、誰がいつ何に押したかを残す仕組みが必要です。
一般法人法に印鑑の管理を直接定めた条文はないので、印章管理規程などの内部規程で決めます。
理事会のある法人では、規程の制定や改正を理事会で決めておくと、権限の所在がはっきりします。
- 印鑑の種類(代表者印・銀行印・角印など)と、それぞれの用途
- 印鑑ごとの管理責任者と保管場所(鍵のかかる場所など)
- 押印を承認する人(代表理事・事務局長など)と、承認が必要な書類の範囲
- 押印したときの記録(日付・書類名・相手方・押印者)を残す方法
- 印鑑カードの保管者と、印鑑証明書を取得するときの手続
- 紛失・盗難のときの連絡先と、廃止届・改印の手順
- 代表理事が交代したときの引継ぎ(印鑑・印鑑カード・記録)
NPO法人・株式会社との比較
印鑑の届出の仕組みは、法人の種類が違っても大きくは変わりません。
株式会社は商業登記法と商業登記規則が直接適用され、一般社団法人には一般法人法330条と一般社団法人等登記規則3条を通じて準用されます。
大きさの規格(1cm超3cm以内)と照合に適することは、どちらも商業登記規則9条3項・4項です。
NPO法人は組合等登記令にもとづいて登記をする法人で、印鑑の届出の仕組みは別の規定を通じて扱われます。
NPO法人の印鑑の使い分けは、NPO法人の印鑑と対外的な表記で説明しています。
法人の印鑑についてよくある誤解
誤解1:法人を設立するには必ず代表者印の届出が必要。
2021年2月15日から、オンライン申請なら届出は任意です。
書面申請なら必要です(商業登記規則35条の2)。
誤解2:届出をしなくても印鑑証明書は取れる。
印鑑証明書を請求できるのは、印鑑を登記所に提出した者です(商業登記法12条1項)。
誤解3:代表者印は丸い形でなければならない。法令が決めているのは大きさと照合に適することだけです(規則9条3項・4項)。
誤解4:代表理事が交代しても届出はそのまま。
届出は人にひも付くので、新しい代表理事が届け出ます。
印鑑カードは引き継げます(9条の4第3項)。
誤解5:角印も法務局に登録する。角印には届出の制度がありません。
誤解6:法人印鑑は3本ないと設立できない。法令が関係するのは代表者印だけで、銀行印・角印は法人の任意です。
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法人実印は、設立登記の申請より先に用意する
設立登記の申請書には法人実印の印鑑届書を添えます。実印・銀行印・角印の3本を先にそろえておくと、登記が終わったあとの口座開設や契約書でもそのまま使えます。
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設立時代表理事の就任承諾書には、市町村長が作成した印鑑証明書と同一の印鑑を押します。印鑑の使い分けはこちらで解説しています。
一般社団法人の印鑑についてよくある質問
A. 法令が関係するのは登記所に届け出る代表者印だけです。銀行印と角印は任意ですが、代表者印を持ち出す機会を減らすため、3本に分けて作る法人が多くあります。
A. 2021年2月15日から、オンラインで登記を申請する場合は任意になりました。書面で申請する場合は、申請書に届け出た印鑑を押す必要があるため届出が必要です(商業登記規則35条の2第1項)。
A. あります。1cm角の正方形に収まるものと、3cm角の正方形に収まらないものは届け出られません。印影は照合に適するものでなければなりません(商業登記規則9条3項・4項)。
A. 代表理事個人が届書に押した印鑑について、市区町村長が作成した印鑑証明書で作成後3か月以内のものを添付します(一般社団法人等登記規則3条で準用する商業登記規則9条5項1号)。
A. 登記所であればどこでも取得できると法務局が案内しています。請求には印鑑カードの提示が必要です(商業登記規則22条2項)。手数料は書面請求500円、オンライン請求で窓口受取420円・送付450円です(登記手数料令10条)。
A. 作り直す必要はありません。同じ印鑑を新しい代表理事の名で届け出ます。届出と同時に申し出れば、前任者の印鑑カードを引き継げます(商業登記規則9条の4第3項)。
A. 登記所に印鑑の廃止の届出をし、新しい印鑑を届け出ます。廃止の届出は、印鑑カードを提示すれば押印は不要です(商業登記規則9条7項)。
A. 角印には法令上の決まりはありません。銀行印は届け出る金融機関の規定によります。商業登記規則9条3項の大きさの規格は、登記所に届け出る印鑑についての定めです。
📖 参考にした公的機関の情報


