社員総会のたびに、招集通知と資料一式を印刷して封入し、社員全員に郵送する。
社員が増えるほど、この作業は重くなります。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には、この負担を軽くするための電子提供措置という仕組みがあります。
総会の資料をウェブサイトに載せておけば、社員に個別に交付しなくてよいという制度です。
ただし、定款の定めが要り、載せる期間や書き方にも決まりがあります。
この記事では、法47条の2から47条の6までの条文に沿って、導入の条件と運用の手順を整理します。
電子提供措置とは|資料を送らず、閲覧できる状態に置く
電子提供措置は、法47条の2の括弧書きで定義されています。
電磁的方法により社員が情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって、法務省令で定めるもの、という書き方です。
かみ砕くと、社員がいつでも見られる状態にウェブ上に置いておくことを指します。
紙に印刷して送る代わりに、見られる状態を維持することで交付に代えるという発想です。
メールに添付して個別に送る方法とは、考え方が違います。
個別送信ではなく、一箇所に置いて全員がアクセスできるようにするのが電子提供措置です。
そのため、載せる期間の管理と、途中で見られなくならないことが重要になります。
この二点が、後で説明する電子提供措置期間と中断の規定につながります。
使うには定款の定めが必要|書くのは一文でよい
法47条の2は、一般社団法人は、理事が社員総会の招集の手続を行うときは、一定の資料の内容である情報について電子提供措置をとる旨を定款で定めることができる、としています。
つまり、定款に根拠がなければ使えません。
すでに運営している法人が導入する場合は、先に定款変更が必要です。
定款変更は社員総会の特別決議によります。
ここで実務上ありがたいのが、同条の後段です。
この場合において、その定款には、電子提供措置をとる旨を定めれば足りると明記されています。
掲載するウェブサイトのアドレスや、対象資料の細目を定款に書き込む必要はありません。
定款には一文を置き、運用の詳細は内規や理事会の決定に委ねられる仕組みになっています。
電子提供の対象になる三つの資料
法47条の2は、対象となる資料を三つ挙げています。
一つ目は社員総会参考書類です。
二つ目は議決権行使書面です。
三つ目は法125条の計算書類および事業報告ならびに監査報告です。
この三つをまとめて、条文は社員総会参考書類等と呼んでいます。
社員総会参考書類と議決権行使書面は、書面や電磁的方法による議決権行使を認めた場合に交付が必要になる書類です。
法125条の計算書類等は、理事会設置一般社団法人が定時社員総会の招集通知に際して社員に提供すべきものです。
つまり、紙で送る義務があった資料が、そのまま電子提供の対象になっているという整理です。
いつからいつまで載せるのか|電子提供措置期間
掲載期間は法47条の3第1項が定めています。
始まりは、社員総会の日の3週間前の日か、招集通知を発した日か、いずれか早い日です。
条文はこの日を電子提供措置開始日と呼んでいます。
招集通知を早めに出した場合は、その日から掲載義務が始まるということです。
終わりは、社員総会の日後3か月を経過する日です。
総会が終わったらすぐ消してよい、というものではありません。
決議の取消しの訴えの提訴期間が決議の日から3か月であることと、期間がそろっています。
この開始日から終了日までが電子提供措置期間で、その間は継続して掲載しなければなりません。
何を載せるのか|法47条の3第1項が挙げる六つの事項
載せるべき事項は、法47条の3第1項の各号に列挙されています。
1号は、法38条1項各号に掲げる事項です。
具体的には、総会の日時と場所、目的である事項、書面による議決権行使を認めるときはその旨、電磁的方法による議決権行使を認めるときはその旨、その他法務省令で定める事項です。
2号は、書面による議決権行使を認めた場合の社員総会参考書類および議決権行使書面に記載すべき事項です。
3号は、電磁的方法による議決権行使を認めた場合の社員総会参考書類に記載すべき事項です。
4号は、法45条1項の議案の要領の通知請求があった場合の、その議案の要領です。
5号は、理事会設置一般社団法人が定時社員総会を招集するときの、法125条の計算書類および事業報告ならびに監査報告に記載または記録された事項です。
6号は、これらを修正したときの、その旨と修正前の事項です。
議決権行使書面を紙で送るなら、その分は載せなくてよい
法47条の3第2項は、実務的に重要な例外を置いています。
理事が招集通知に際して社員に議決権行使書面を交付するときは、議決権行使書面に記載すべき事項については電子提供措置をとることを要しません。
議決権行使書面は、社員が記入して返送するための用紙です。
ウェブに載せただけでは、社員は印刷して記入するという手間を負うことになります。
そこで、この書面だけは紙で送るという運用が想定されています。
紙で送る以上、同じ内容をウェブにも置く必要はないという整理です。
実務では、招集通知と議決権行使書面だけを紙で送り、残りはウェブに載せるという組み合わせが取りやすくなります。
郵送物が薄くなるだけでも、印刷費と郵送費の削減効果は小さくありません。
招集通知の期限は「総会の日の2週間前まで」に一本化される
通常の招集通知の期限は、法39条1項が定めています。
原則は総会の日の1週間前までで、理事会を置かない法人はこれを下回る期間を定款で定めることもできます。
ただし、書面または電磁的方法による議決権行使を認めた場合は、2週間前までとされています。
電子提供措置をとる場合、この条文は法47条の4第1項によって読み替えられます。
読替えの結果、期限は社員総会の日の2週間前までに一本化されます。
議決権行使の方法にかかわらず、また理事会の設置の有無にかかわらず、2週間前という一本の基準になるということです。
1週間前でよかった法人にとっては、期限が前倒しになる点に注意が必要です。
電子提供措置開始日が3週間前であることと合わせて、総会の準備は従来より早く動き出す必要があります。
招集通知に書くこと・書かなくてよいこと
法47条の4第2項は、招集通知の記載事項も調整しています。
まず、法38条1項5号に掲げる事項、つまり法務省令で定める事項は、招集通知に記載または記録することを要しません。
その代わりに、法38条1項1号から4号までの事項に加えて、電子提供措置をとっている旨その他法務省令で定める事項を記載しなければなりません。
1号から4号までとは、日時と場所、目的である事項、書面による議決権行使を認めるときはその旨、電磁的方法による議決権行使を認めるときはその旨です。
つまり、招集通知そのものは薄くなり、詳細はウェブを見てくださいという構成になります。
実務では、掲載しているウェブサイトのアドレスを通知に明記することになります。
社員が資料にたどり着けなければ、制度を使う意味がありません。
アドレスは、なるべく短く、間違えずに入力できる形にしておくのが親切です。
参考書類等の交付は不要になる
法47条の4第3項は、この制度のいちばんの効果を定めた部分です。
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある一般社団法人においては、理事は、招集通知に際して、社員に対し社員総会参考書類等を交付し、または提供することを要しません。
法41条1項、法42条1項、法125条という交付義務の条文が、まとめて適用除外になるということです。
計算書類や事業報告を全社員分印刷して封入する作業が、原則としてなくなります。
社員が数十人、数百人規模の法人ほど、削減効果は大きくなります。
また、同条4項により、法45条1項の議案の要領の通知請求についても読替えが行われます。
社員から議案の要領を通知するよう請求された場合、通知に記載するのではなく、その議案の要領について電子提供措置をとることになります。
請求に応じる方法も、ウェブへの掲載に置き換わるという整理です。
紙がほしい社員のための「書面交付請求」
インターネットを使わない社員への手当ても、法47条の5に用意されています。
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある法人の社員は、法人に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求できます。
ただし、法39条3項の承諾をした社員、つまり電磁的方法による通知を承諾した社員は除かれます。
請求を受けた場合、理事は招集通知に際して、その社員に電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければなりません。
この請求は一度すれば以後も有効ですが、放置され続けるのを防ぐ仕組みも置かれています。
請求の日から1年を経過したときは、法人は書面の交付を終了する旨を通知し、異議があれば一定の期間内に述べるよう催告できます。
この催告期間は1か月を下ることができません。
催告期間内に異議が述べられなければ請求は効力を失い、異議が述べられればそのまま続きます。
サイトが見られなくなったら|電子提供措置の中断
ウェブに載せる以上、サーバーの障害やサイトの改修で一時的に見られなくなることは起こり得ます。
法47条の6は、この場合の救済を定めています。
中断とは、提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれなくなったこと、または情報が改変されたことをいいます。
次の四つのすべてに当てはまるときは、中断は電子提供措置の効力に影響しません。
一つ目は、中断が生じたことにつき法人が善意で重大な過失がないこと、または正当な事由があることです。
二つ目は、中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の10分の1を超えないことです。
三つ目は、電子提供措置開始日から総会の日までの期間中に中断が生じたときは、その期間中の中断時間の合計もその期間の10分の1を超えないことです。
四つ目は、中断を知った後速やかに、その旨と中断が生じた時間と中断の内容を、当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったことです。
導入したら登記が必要|怠れば過料の対象
電子提供措置をとる旨の定款の定めは、登記事項です。
法301条2項4号の2が、その定めがあるときはその定めを登記すると定めています。
定款を変更しただけでは足りず、登記まで済ませて手続きが完了します。
登記事項に変更が生じたときは、法303条により2週間以内に変更の登記をしなければなりません。
また、掲載義務を果たさなかった場合の制裁も用意されています。
法342条10号の2は、法47条の3第1項の規定に違反して電子提供措置をとらなかったときを、100万円以下の過料の対象として挙げています。
制度を導入した以上、毎回きちんと掲載し、期間中は落とさないという運用が求められます。
導入は自由ですが、導入後の義務は軽くないという点は押さえておくべきです。
導入すべきかどうかの判断
導入が向いているのは、社員数が多く、毎回の郵送コストが重い法人です。
数十人を超えるあたりから、印刷と封入の手間は無視できなくなります。
逆に、社員が数人しかいない法人では、効果より手続きの負担のほうが大きくなりがちです。
定款変更のための特別決議、登記、掲載の運用体制という三点セットが必要になるからです。
また、自前でウェブサイトを管理していない法人も慎重に考えるべきです。
掲載を落とさず3か月以上維持できる体制が前提になります。
制度を使わなくても、法39条3項により、社員の承諾を得て電磁的方法で通知を発することは従来どおり可能です。
まずはこの承諾方式で足りないか、自分の法人の社員数と運営体制に照らして判断するのが現実的です。
| 項目 | 電子提供措置をとらない場合 | 電子提供措置をとる場合 |
|---|---|---|
| 定款の定め | 不要 | 必要(法47条の2) |
| 登記 | 不要 | 必要(法301条2項4号の2) |
| 招集通知の期限 | 原則1週間前、書面等の議決権行使を認めるときは2週間前(法39条1項) | 一律で2週間前(法47条の4第1項) |
| 参考書類等の交付 | 必要(法41条・法125条ほか) | 不要(法47条の4第3項) |
| ウェブ掲載 | 不要 | 3週間前または通知発出日のいずれか早い日から総会の日後3か月(法47条の3第1項) |
| 紙を希望する社員 | そもそも紙で交付 | 書面交付請求に応じる(法47条の5) |
| 違反したとき | - | 100万円以下の過料(法342条10号の2) |
そのほかのよくある質問
A. 要りません。必要なのは定款の定めです(法47条の2)。定款変更は社員総会の特別決議で行いますので、決議の要件を満たせば、個々の社員の同意を一人ずつ得る必要はありません。ただし紙を希望する社員は、書面交付請求ができます(法47条の5)。
A. 必要ありません。法47条の2は、その定款には電子提供措置をとる旨を定めれば足りる、と明記しています。掲載場所や運用方法は、定款以外の内規や理事会の決定で定めることができます。
A. すぐには削除できません。法47条の3第1項により、電子提供措置期間は社員総会の日後3か月を経過する日までとされています。総会の終了後も3か月は掲載を続ける必要があります。
A. 法47条の6の四つの要件をすべて満たせば、電子提供措置の効力に影響しません。法人が善意で重大な過失がないことなどに加えて、中断時間の合計が電子提供措置期間の10分の1を超えないこと、中断を知った後速やかに中断の旨と時間と内容を掲載したことが必要です。
A. はい。法47条の4第1項の読替えにより、招集通知の期限は社員総会の日の2週間前までに一本化されます。従来1週間前でよかった法人は、前倒しになります。掲載開始日も3週間前の日が基準になるため、準備は早めに動く必要があります。
A. 法342条10号の2により、100万円以下の過料の対象になります。同条の過料は法人ではなく、理事などの個人に科される仕組みになっています。制度を導入した以上は、毎回の掲載を確実に行う運用が必要です。
📖 参考にした公的機関の情報


