一般社団法人の社員総会と理事会の違い|役割を解説

一般社団法人法
「この件は社員総会と理事会のどちらで決めればいいのか」。役員の交代、決算、借入れなど、場面ごとに答えが決まっています。条文で線引きを確かめます。

結論から申し上げます。

社員総会は、社員(法人の構成員)が集まって法人の基本事項を決める機関で、すべての一般社団法人に置かれます。

理事会は、理事全員で業務執行を決め、理事の職務を監督する機関で、定款で定めたときだけ置かれます(一般法人法60条2項・90条)。

役員の選任・解任、定款変更、決算の承認、解散は社員総会が決めます。

代表理事の選定、重要な財産の処分、多額の借財は理事会が決めます。

理事会を置くと、社員総会は法律と定款で定めた事項しか決議できなくなる点が大きな違いです(35条2項)。

POINT 社員総会=誰に任せるかとルールを決める場、理事会=任された理事が業務を決めて互いに監督する場です。どちらの決議が必要かは、一般法人法の条文で決まっています。

社員総会と理事会の違いを一覧表で比較

まず、構成・権限・決議の方法などを並べて比べます。

表の条番号は、すべて一般法人法の条文です。

項目 社員総会 理事会
設置 必ず置く 定款で定めたときだけ(60条2項)
構成 社員全員 理事全員(90条1項)
主な役割 法人の基本事項の決定 業務執行の決定・理事の監督・代表理事の選定(90条2項)
決議できる範囲 理事会なし:一切の事項(35条1項)/理事会あり:法律と定款の事項(35条2項) 業務執行の決定全般
議決権 社員1人1個が原則・定款で変更可(48条1項) 理事1人1個
普通の決議 総社員の議決権の過半数が出席し、その過半数(49条1項) 議決に加われる理事の過半数が出席し、その過半数(95条1項)
定足数を定款で 下げることも外すこともできる(49条1項) 上げることだけできる(95条1項)
代理人・書面 代理人による行使ができる(50条)・書面投票も可(51条) 代理人による議決権行使の規定はない
招集通知 1週間前(書面投票などを認めるときは2週間前。39条1項) 1週間前・定款で短縮可(94条1項)
議事録の閲覧 社員・債権者はいつでも請求できる(57条4項) 社員は裁判所の許可が必要(97条2項)

構成員の違い|「社員」と「理事」は別の立場

社員総会に出席して議決権を持つのは社員です。

ここでの社員は従業員ではなく、法人の構成員を指します。誰が社員になるかは定款で定めます。

理事会のメンバーは理事で、社員総会の決議によって選ばれます(63条1項)。

理事は社員でなくてもかまいません。外部の専門家を理事に選ぶこともできます。

社員が理事を兼ねることもよくありますが、その場合も社員総会では社員として、理事会では理事として議決権を使います。

監事は理事会の構成員ではありませんが、理事会に出席し、必要があれば意見を述べる義務があります(101条1項)。

人 社員総会での立場 理事会での立場
社員(理事でない) 出席・議決権あり 出席しない
社員で理事でもある人 社員として議決権あり 理事として議決権あり
理事(社員でない) 議決権なし・説明義務あり(53条) 議決権あり
監事 議決権なし・説明義務あり(53条) 議決権なし・出席義務あり(101条1項)

理事会を置くと社員総会の権限が変わる

理事会を置かない法人の社員総会は、法人に関する一切の事項を決議できます(35条1項)。

理事会を置く法人では、社員総会はこの法律に規定する事項と定款で定めた事項に限って決議できます(35条2項)。

それ以外の業務執行の決定は、理事会に任されることになります。

さらに理事会設置法人の社員総会は、招集のときに決めた議題以外は決議できません(49条3項)。

当日に出た新しい議題をその場で決めることはできないということです。

一方、法律が社員総会の決議を必要としている事項を、定款で理事会に任せることはできません(35条4項)。

社員総会は、どの法人でも社員に剰余金を分配する決議はできません(35条3項)。

機関設計 社員総会が決められること 業務執行を決めるのは
理事会なし・理事1人 一切の事項(35条1項) その理事(76条1項)
理事会なし・理事2人以上 一切の事項(35条1項) 理事の過半数(76条2項)
理事会あり(理事3人以上) 法律と定款で定めた事項(35条2項) 理事会(90条2項1号)

理事会設置法人の理事は3人以上が必要で、監事も必ず置きます(65条3項・61条)。

機関設計の選び方は一般社団法人の機関設計で説明しています。

どちらで決めるか|決議事項の早見表

実務で迷いやすい事項を、理事会設置法人を前提に分けると次のとおりです。

社員総会の欄のうち特別決議のものは、49条2項の要件で決めます。

決めること 決める機関 根拠
理事・監事の選任 社員総会(普通決議) 63条1項
理事の解任 社員総会(普通決議) 70条1項
監事の解任 社員総会(特別決議) 70条1項・49条2項2号
理事・監事の報酬(定款に額がないとき) 社員総会 89条・105条1項
定款の変更 社員総会(特別決議) 146条・49条2項4号
計算書類の承認 社員総会(理事会の承認後) 124条3項・126条2項
社員の除名 社員総会(特別決議) 30条1項・49条2項1号
事業の全部の譲渡 社員総会(特別決議) 147条・49条2項5号
解散 社員総会(特別決議) 148条3号・49条2項6号
代表理事の選定・解職 理事会 90条2項3号・3項
重要な財産の処分・多額の借財 理事会 90条4項1号・2号
重要な使用人の選任・解任 理事会 90条4項3号
従たる事務所の設置・変更・廃止 理事会 90条4項4号
社員総会の日時・場所・議題 理事会 38条2項
理事の競業・利益相反取引の承認 理事会 92条1項・84条1項

理事会を置かない法人では、理事の競業・利益相反取引の承認は社員総会が行います(84条1項)。

代表理事も、定款・理事の互選・社員総会の決議のいずれかで定めます(77条3項)。

決議の要件の違い

社員総会の普通決議は、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席者の議決権の過半数で行います(49条1項)。

この定足数と賛成割合は、定款で別の定めができます。定足数を外す定款も可能です。

定款変更や解散などの特別決議は、総社員の半数以上で、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(49条2項)。

理事会の決議は、議決に加われる理事の過半数が出席し、その過半数で行います(95条1項)。

理事会の要件は、定款で上げることはできても、下げることはできません。

決議に特別の利害関係がある理事は、議決に加われません(95条2項)。

数字で見る例(社員20人・理事5人の法人)

社員総会の普通決議:11人以上が出席し、出席者の過半数が賛成

社員総会の特別決議:賛成が総社員の半数以上(10人以上)で、かつ総社員の議決権の3分の2以上(14個以上)

理事会の決議:3人以上が出席し、出席理事の過半数が賛成

理事1人が特別の利害関係を持つ議題:残る4人のうち3人以上が出席し、その過半数

社員の議決権を1人1個とした場合の計算です。書面で行使した議決権は、出席した社員の議決権に数えます(51条2項)。

定足数が足りないときの対処は、総会・理事会が定足数不足のときで詳しく説明しています。

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招集の手続の違い
図:招集の手続の違い

社員総会は理事が招集し、理事会設置法人では日時・場所・議題などを理事会の決議で決めます(36条3項・38条2項)。

招集通知は社員総会の日の1週間前までに出します(39条1項)。

書面や電磁的方法による議決権行使を認めるときは、2週間前までです(同項ただし書)。

理事会を置かない法人は、定款で1週間より短くできます。理事会設置法人は短縮できません。

理事会は各理事が招集するのが原則で、定款や理事会で招集する理事を決められます(93条1項)。

理事会の招集通知は、1週間前までに各理事と各監事に出します。定款で期間を短くできます(94条1項)。

手続 社員総会 理事会
招集する人 理事(36条3項) 各理事・定款等で定めた理事(93条1項)
招集を求められる人 議決権の10分の1以上を持つ社員(37条1項) 理事・監事(93条2項・101条2項)
通知の期限 1週間前・書面投票等なら2週間前(39条1項) 1週間前・定款で短縮可(94条1項)
通知の方法 理事会設置法人や書面投票等では書面(39条2項) 定めなし(口頭も可)
手続の省略 社員全員の同意(書面投票等を認めるときは不可。40条) 理事・監事全員の同意(94条2項)

社員総会の招集通知の書き方は社員総会の招集通知で説明しています。

出席できないときの扱いの違い

社員総会では、社員は代理人によって議決権を行使できます(50条1項)。

代理権は総会ごとに与え、委任状などの書面を法人に提出します(50条1項・2項)。

招集のときに定めれば、書面や電磁的方法での議決権行使も認められます(38条1項3号・4号)。

理事会には、代理人による議決権行使を認める規定がありません。

理事は個人として選ばれ、自ら判断することが求められる立場だからです。

理事会でどうしても集まれないときは、定款に定めがあれば決議の省略(書面決議)を使えます(96条)。

方法 社員総会 理事会
代理出席(委任状) できる(50条) 規定なし
書面・電子での議決権行使 招集時に定めればできる(51条など) 規定なし
決議の省略 社員全員の書面等による同意(58条1項) 定款の定め+理事全員の同意+監事の異議なし(96条)
報告の省略 社員全員の同意(59条) 理事・監事全員への通知(98条1項)

理事会の報告の省略は、代表理事などの3か月に1回以上の職務執行報告には使えません(98条2項・91条2項)。

委任状の書き方は社員総会の委任状で説明しています。

議事録の違い

どちらの会議も、法務省令で定めるところにより議事録の作成が必要です(57条1項・95条3項)。

社員総会の議事録は、社員総会の日から10年間、主たる事務所に備え置きます(57条2項)。

理事会の議事録も、理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置きます(97条1項)。

理事会の議事録が書面のときは、出席した理事と監事が署名または記名押印します(95条3項)。

定款で、署名する人を出席した代表理事に絞ることもできます(同項かっこ書き)。

議事録に異議をとどめなかった理事は、その決議に賛成したものと推定されます(95条5項)。

項目 社員総会議事録 理事会議事録
作成 必要(57条1項) 必要(95条3項)
署名 法律上の定めなし(定款で定めることはできる) 出席した理事と監事(95条3項)
備置き 10年間(57条2項) 10年間(97条1項)
社員の閲覧 いつでも請求できる(57条4項) 権利行使に必要なとき裁判所の許可を得て(97条2項)

理事会の議事録には、反対した理事が異議を残す意味があります。賛成の推定を受けないためです。

議事録の書き方は一般社団法人の議事録の書き方にまとめています。

決算で見る社員総会と理事会の分担

決算で見る社員総会と理事会の分担
図:決算で見る社員総会と理事会の分担

両者の役割分担がよくわかるのが、毎年の決算の流れです。

理事会設置法人では、計算書類と事業報告は監事の監査を受けたあと、理事会の承認を受けます(124条1項・3項)。

そのうえで定時社員総会に提出し、計算書類は社員総会の承認を受けます(126条1項3号・2項)。

事業報告は、定時社員総会に報告すれば足ります(126条3項)。

会計監査人を置く法人で一定の要件を満たすときは、計算書類も社員総会への報告で足ります(127条)。

1
理事が計算書類と事業報告を作る
事業年度の終了後
▼
2
監事が監査する
監事を置く法人(124条1項)
▼
3
理事会が承認し、定時社員総会の招集を決める
計算書類の承認(124条3項)と招集事項の決定(38条2項)
▼
4
招集通知を出す
社員総会の日の1週間前まで(39条1項)
▼
5
定時社員総会で計算書類を承認する
事業報告は報告事項(126条2項・3項)

決算全体の流れは一般社団法人の決算で説明しています。

社員と理事会の関係|社員ができること

社員は理事会のメンバーではありませんが、社員総会を通じて理事を監督する立場にあります。

理事の選任と解任は社員総会の決議で行います(63条1項・70条1項)。

議決権の10分の1以上を持つ社員は、理事に社員総会の招集を請求できます(37条1項)。

理事会設置法人では、議決権の30分の1以上を持つ社員が、議題の追加を請求できます(43条2項)。

社員総会では、理事と監事に説明を求めることができます(53条)。

理事会の議事録を見るには裁判所の許可が必要です(97条2項)。

社員総会と理事会の線引きで確認すること

  • その事項は、法律が社員総会の決議を求めている事項か
  • 定款で社員総会の決議事項として追加していないか
  • 理事会設置法人なら、招集通知の議題に入っているか(49条3項)
  • 特別決議が必要な事項ではないか(49条2項)
  • 理事会に特別の利害関係がある理事がいないか(95条2項)
  • 議事録を作り、10年間備え置いているか

理事会を置かない法人の意思決定

理事会を置かない法人では、社員総会と理事(個々の理事)で法人を動かします。

理事が2人以上いるときは、業務は理事の過半数で決めます(76条2項)。

このときの理事の話し合いは、法律上の「理事会」ではありません。

ただし、従たる事務所の設置や社員総会の招集事項などは、各理事に任せられません(76条3項)。

社員総会は一切の事項を決議できるので、重要な業務の判断を社員総会で行う形も取れます(35条1項)。

小さな法人で、社員と理事がほぼ同じ顔ぶれなら、この形のほうが手続を簡単にできます。

あとから理事会を置くには、社員総会の特別決議で定款を変更します(146条・49条2項4号)。

理事会を置いた旨は登記事項なので、変更の登記も必要です(301条2項7号・303条)。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

一般財団法人・NPO法人との比較

一般財団法人には社員がいないため、社員総会の代わりに評議員会を置きます(170条1項)。

評議員会は、法律と定款で定めた事項に限り決議します(178条2項)。

評議員会の決議は、議決に加われる評議員の過半数が出席し、その過半数で行います(189条1項)。

一般財団法人では理事会も必ず置きます(170条1項)。

理事会の議事録を評議員はいつでも閲覧できます(197条による97条2項の読替え)。

NPO法人では、業務は定款で理事などに任せたものを除き、社員総会の決議で行います(NPO法14条の5)。

NPO法には理事会の規定がなく、理事会は定款で置く任意の会議です。

業務は定款に定めがなければ理事の過半数で決めます(同法17条)。

法人 構成員の会議 理事会
一般社団法人 社員総会(必置) 任意(60条2項)
一般財団法人 評議員会(必置) 必置(170条1項)
NPO法人 社員総会(年1回以上。NPO法14条の2) 法律上の機関ではない

よくある誤解

誤解1:理事会は社員総会の下部組織。

両者は役割が違う別の機関です。

理事会は業務執行を決め、社員総会は理事を選び基本事項を決めます。

誤解2:理事会で理事を選べる。

理事の選任は社員総会の決議です(63条1項)。

理事会が選ぶのは、理事の中の代表理事です(90条3項)。

誤解3:理事会設置法人でも総会当日に議題を追加できる。招集時に決めた議題以外は決議できません(49条3項)。

誤解4:理事会も委任状で出席できる。

理事会に代理人による議決権行使の規定はありません。

欠席が多いときは決議の省略を検討します(96条)。

誤解5:定款で理事会の定足数を下げられる。理事会の要件は定款で上げることしかできません(95条1項)。


一般社団法人の社員総会と理事会の違いについてよくある質問

Q. 社員総会と理事会はどちらが上ですか?

A. 社員総会は理事を選任・解任し、定款を変更できる機関です(一般法人法63条・70条・146条)。理事会は業務執行の決定と理事の監督を担います(90条2項)。役割が違う別の機関ですが、理事の人事を決めるのは社員総会です。

Q. 理事会は必ず置かなければなりませんか?

A. 一般社団法人では任意で、定款で定めたときに置きます(60条2項)。置く場合は理事3人以上と監事が必要です(65条3項・61条)。一般財団法人は必ず置きます(170条1項)。

Q. 代表理事は社員総会と理事会のどちらで選びますか?

A. 理事会設置法人では理事会が選びます(90条3項)。理事会を置かない法人では、定款・理事の互選・社員総会の決議のいずれかで定めます(77条3項)。

Q. 借入れは社員総会の決議が必要ですか?

A. 理事会設置法人では、多額の借財は理事会で決めます(90条4項2号)。定款で社員総会の決議事項に加えていれば社員総会の決議も必要です(35条2項)。

Q. 理事会を欠席する理事が委任状を出せますか?

A. 一般法人法には、理事会で代理人が議決権を行使する規定がありません。社員総会の代理行使(50条)とは扱いが違います。定款に定めがあれば決議の省略を使えます(96条)。

Q. 社員総会と理事会を同じ日に続けて開けますか?

A. 開けます。ただし、社員総会の招集事項は理事会で事前に決め、1週間前までに通知する必要があります(38条2項・39条1項)。総会で理事を選んだ直後に理事会を開き、代表理事を選ぶこともできます。

Q. 社員は理事会の議事録を見られますか?

A. 権利を行使するため必要があるときに、裁判所の許可を得て閲覧できます(97条2項)。社員総会の議事録は業務時間内いつでも請求できます(57条4項)。

Q. 理事会のない法人で理事が集まって決めた内容は有効ですか?

A. 理事が2人以上いれば、業務は理事の過半数で決めます(76条2項)。法律上の理事会ではありませんが、決めた内容と経緯を記録に残しておくことが大切です。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。