NPO法人は、設立登記が終わったあとに複数の役所へ届出をする必要があります。
所轄庁、法務局、税務署、自治体、年金事務所と提出先が分かれます。
期限が短いものもあるため、順番を決めて進めることが大切です。
この記事では、設立後の届出を提出先ごとにまとめて解説します。
設立後の手続きの全体像
認証書を受け取ったら、まず法務局で設立登記をします。
期限は、認証の日から2週間以内です。
登記が完了すると、法人として成立します。
次に、所轄庁へ設立登記完了届出書を提出します。
そのうえで、税務署と自治体へ法人の設立を届け出ます。
職員を雇うのであれば、社会保険と労働保険の手続きも必要です。
銀行口座の開設も、この時期に行います。
登記事項証明書と印鑑証明書は、複数の手続きで使います。
登記が終わったら、まとめて数通取得しておくと効率的です。
| 提出先 | 主な書類 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 法務局 | 設立登記申請書 | 認証の日から2週間以内 |
| 所轄庁 | 設立登記完了届出書(登記事項証明書・財産目録を添付) | 登記後すみやかに |
| 税務署 | 法人設立届出書 | 設立から2か月以内 |
| 税務署 | 収益的な事業に関する届出 | 税務署または税理士に確認 |
| 税務署 | 給与の支払いに関する届出 | 税務署または税理士に確認 |
| 都道府県・市区町村 | 法人設立届出書 | 自治体の定めによる |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 事実発生から5日以内 |
| 労働基準監督署 | 労働保険関係成立届 | 事実発生から10日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届 | 事実発生から10日以内 |
法務局での設立登記
設立登記は、主たる事務所の所在地を管轄する法務局で行います。
申請書には、定款、認証書の写し、代表者の就任承諾書などを添付します。
代表者の印鑑証明書も必要です。
NPO法人の設立登記に、登録免許税はかかりません。
法人の実印を作成し、印鑑届書もあわせて提出します。
登記は申請してから完了まで、1週間程度かかるのが一般的です。
完了したら、登記事項証明書と印鑑カードを取得します。
2週間という期限は短いので、認証書が届く前から書類を準備しておきましょう。
所轄庁への設立登記完了届出
登記が完了したら、所轄庁へ設立登記完了届出書を提出します。
添付するのは、登記事項証明書と、設立当初の財産目録です。
財産目録は、法人成立の日の財産の状況を示す書類です。
設立時に引き継いだ現金や備品を記載します。
任意団体からの移行なら、その財産を引き継ぐ形になります。
様式は所轄庁のホームページからダウンロードできます。
この届出をもって、設立の手続きは一区切りとなります。
以降は、毎年の事業報告書等の提出が続きます。
税務署への届出
税務署には、法人設立届出書を提出します。
期限は、設立の日から2か月以内です。
定款の写しと登記事項証明書を添付します。
収益的な事業を行う場合や職員に給与を払う場合は、別に必要な届出があります。提出すべき書類と期限は状況によって変わるため、具体的な判定や税額の計算は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
職員に給与を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書も必要です。
都道府県と市区町村への届出
都道府県税事務所と市区町村にも、法人設立の届出をします。
様式と期限は自治体によって異なるので、確認してください。
あわせて、法人住民税の取扱いについても窓口で確認しておきましょう。自治体によって制度や手続きが異なります。
社会保険の手続き
法人は、社会保険の強制適用事業所になります。
これはNPO法人でも変わりません。
加入の要否は、報酬や勤務の実態によって判断されます。判断に迷う場合は年金事務所に確認してください。
年金事務所へ、健康保険・厚生年金保険新規適用届を提出します。
期限は、事実が発生してから5日以内と短く設定されています。
被保険者資格取得届も、あわせて提出します。
扶養家族がいる場合は、被扶養者届も必要です。
判断に迷ったら、年金事務所に相談してください。
労働保険の手続き
職員を1人でも雇ったら、労働保険の手続きが必要です。
労働基準監督署へ、労働保険関係成立届を提出します。
期限は、事実が発生してから10日以内です。
あわせて、概算保険料申告書も提出します。
雇用保険については、ハローワークへ届け出ます。
雇用保険適用事業所設置届と、被保険者資格取得届を提出します。
こちらも10日以内が期限です。
ボランティアには、労働保険は適用されません。
ただし、実態が労働なら労働者と扱われる点に注意してください。
銀行口座の開設
法人名義の銀行口座は、登記が完了してから開設します。
必要な書類は、登記事項証明書、定款、印鑑証明書、法人の実印です。
代表者の本人確認書類も求められます。
設立趣旨書や事業計画書の提示を求める金融機関もあります。
近年は、法人口座の審査が厳しくなっている傾向があります。
活動の実態を説明できる資料を、そろえて持参しましょう。
地域の信用金庫や労働金庫は、NPO法人の口座開設に理解があることが多くあります。
ネット銀行を併用すると、振込手数料を抑えられます。
設立後に始まる毎年の義務
設立の届出が終わっても、手続きは続きます。
毎事業年度の開始から3か月以内に、事業報告書等を所轄庁へ提出します。
住民税の均等割の減免申請も、毎年必要です。
役員の任期は2年以内なので、2年ごとに選任と登記が発生します。
定款を変更したときは、所轄庁への認証申請または届出をします。
これらの期限を、年間カレンダーにまとめておきましょう。
担当者が変わっても引き継げる形にしておくことが大切です。
- 法務局で設立登記(認証から2週間以内)
- 登記事項証明書・印鑑証明書を数通取得
- 所轄庁へ設立登記完了届出書を提出
- 税務署へ法人設立届出書を提出
- 都道府県税事務所・市区町村へ法人設立届出書を提出
- 法人住民税の取扱いを自治体の窓口で確認
- 法人名義の銀行口座を開設
- 職員を雇う場合は社会保険・労働保険の手続き
任意団体から移行する場合の注意
任意団体からNPO法人になる場合、財産の引き継ぎが必要です。
任意団体の総会で、財産を法人へ引き継ぐ決議をしておきます。
その決議にもとづいて、設立当初の財産目録を作成します。
銀行口座も、任意団体名義から法人名義へ移し替えます。
既存の口座をそのまま使うことはできないのが一般的です。
契約関係も、法人名義に切り替える必要があります。
事務所の賃貸借契約、リース契約、保険契約などが対象です。
取引先や委託元にも、法人化した旨を通知しましょう。
会員名簿も、法人の社員名簿として整理し直します。
一つひとつは小さな作業ですが、数が多いので早めに着手してください。
届出をまとめて進めるコツ
設立後の届出は、提出先が5つ以上に分かれます。
効率よく進めるコツは、必要書類を先にまとめて用意することです。
登記事項証明書は、最低でも5通は取得しておきましょう。
定款のコピーも、同じ枚数を用意しておきます。
提出先ごとにセットを作っておくと、抜けが起きません。
税務署と自治体は、同じ日にまとめて回ると1日で終わります。
社会保険と労働保険も、期限が近いので同時期に進めます。
どの届出を出したかをチェックリストで管理しましょう。
控えは必ず受け取り、ファイルにまとめて保管します。
この一式が、翌年以降の手続きの土台になります。
印鑑と法人カードの準備
設立登記に合わせて、法人の実印を作成します。
実印のほかに、銀行印と角印も作っておくと運用が楽になります。
実印は登記に使い、銀行印は口座の取引に使います。
角印は、請求書や領収書に押す社印として使います。
3本セットで販売されていることが多く、1万円前後で用意できます。
法人名義のクレジットカードも、口座開設後に検討できます。
設立間もない法人は審査が通りにくいことがあります。
その場合は、デビットカードやプリペイド型で代用する方法もあります。
経費の支払いを法人名義に集約すると、会計処理がぐっと楽になります。
代表者の個人口座と混ざらないよう、最初から分けておきましょう。
届出を忘れたときの影響
設立登記が2週間を過ぎた場合、認証が取り消される可能性があります。
実務では事情を説明して対応してもらえることもありますが、原則は期限内です。
税務署への法人設立届出書が遅れても、直ちに罰則はありません。
ただし、収益事業の申告が必要な場合は、申告期限に影響します。
均等割の減免申請を忘れると、その年度は課税されます。
一度課税されると、後からさかのぼって免除を受けるのは難しくなります。
社会保険の手続きが遅れると、さかのぼって保険料を求められることがあります。
労働保険も同様に、遡及して徴収される場合があります。
職員を雇うなら、雇用の初日から手続きを意識してください。
期限のある届出は、設立前に一覧にして準備しておくのが確実です。
設立後の届出のまとめ
NPO法人は、認証後2週間以内に設立登記をします。
登記が終わったら、所轄庁へ設立登記完了届出書を提出します。
税務署へは設立から2か月以内に法人設立届出書を出します。
自治体への届出のときに、法人住民税の取扱いもあわせて確認しましょう。
職員を雇うなら、社会保険は5日以内、労働保険は10日以内が期限です。
銀行口座は、登記事項証明書がそろってから開設します。
設立後は、毎年の事業報告書等の提出が続きます。
よくある質問
A. 認証の日から2週間以内です。この期限を過ぎると認証が取り消される場合があるため、認証書が届く前から書類を準備しておきましょう。
A. 法人設立届出書は設立から2か月以内です。このほか状況に応じて必要な届出があるため、具体的な判定や税額の計算は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
A. 自治体によって制度の有無や手続きが異なります。事務所のある市区町村と都道府県の窓口でご確認ください。
A. 加入の要否は報酬や勤務の実態によって判断されます。年金事務所にご確認ください。
A. 登記事項証明書がそろってから開設します。近年は審査が厳しくなる傾向があるため、定款や事業計画書など活動の実態を説明できる資料を持参しましょう。
A. あります。毎事業年度の開始から3か月以内に事業報告書等を所轄庁へ提出します。役員の任期満了ごとの登記も必要です。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
- 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。
📖 参考にした公的機関の情報


