NPO法人の登記事項には、かつて毎年変更登記が必要なものがありました。
資産の総額です。ただしこの登記は、2018年10月1日に廃止されています。
代わりに義務づけられたのが、貸借対照表の公告です。
古い情報のまま、毎年登記が要ると思い込んでいる団体が少なくありません。
この記事では、いま登記される事項と、変更のタイミングを整理します。
NPO法人の登記事項
NPO法人は、法務局に登記されます。
登記される事項は、法令で決まっています。
第1に、目的および業務です。
定款の目的と、行う事業が記載されます。
第2に、名称です。
第3に、事務所の所在場所です。番地まで登記されます。
第4に、代表権を持つ理事の氏名、住所、資格です。
第5に、存続期間や解散の事由を定めたときは、その定めです。
第6に、代表権の範囲または制限に関する定めがあるときは、その定めです。
かつてはここに「資産の総額」が入っていましたが、2018年10月1日に外れました。
いま定期的に必要になるのは、2年ごとの役員の重任登記です。
| 登記事項 | 変更が必要になるとき | 期限 |
|---|---|---|
| 目的および業務 | 定款の目的・事業を変更したとき | 認証後2週間以内 |
| 名称 | 名称を変更したとき | 認証後2週間以内 |
| 事務所の所在場所 | 移転したとき | 移転から2週間以内 |
| 代表権を持つ理事 | 交代・再任したとき | 変更から2週間以内 |
| 解散の事由の定め | 定款で定めた事由を変更したとき | 2週間以内 |
| 代表権の範囲・制限の定め | 定款で定めを設けた・変えたとき | 2週間以内 |
廃止された「資産の総額」の登記と、代わりに始まった公告
かつては、NPO法人にも毎事業年度ごとの「資産の総額」の変更登記がありました。
この登記は2018年10月1日に廃止されています
根拠は組合等登記令です。
同令2条2項は、1号から5号までに目的および業務・名称・事務所の所在場所・代表権を有する者の氏名住所資格・存続期間または解散の事由を挙げ、6号で「別表の登記事項の欄に掲げる事項」を加えています。
その別表で特定非営利活動法人の欄に書かれているのは、「代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め」だけです。
資産の総額は、この欄に含まれていません。
入れ替わりに義務づけられたのが、貸借対照表の公告です。
特定非営利活動促進法28条の2は、前事業年度の貸借対照表の作成後遅滞なく、定款で定める方法によりこれを公告しなければならないと定めています。
方法は、官報に掲載する方法、日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告、そのほか内閣府令で定める方法の4つのうち、定款で定めたものによります。
官報または日刊新聞紙による場合は、貸借対照表の要旨を公告すれば足ります。
電子公告による場合は、作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日まで、継続して公告し続ける必要があります。
つまり、毎年やることが無くなったわけではなく、登記から公告に置き換わったということです。
古い手引きや、改正前に作られた記事には、まだ「毎年の資産の総額の変更登記」と書かれていることがあります。
自分の法人の定款に、公告の方法が書かれているかを確認してください。
登記を怠るとどうなるか
登記の期限を過ぎると、過料の対象になることがあります。
過料は、代表者個人に科されるものです。
法人ではなく、代表理事が負担することになります。
何年も放置していると、金額が大きくなる可能性もあります。
実務では、まとめて登記したときに指摘されることが多くあります。
登記事項証明書を取ったときに、古い情報のままだと信用にも関わります。
助成金の申請で、証明書の提出を求められることもあります。
内容が実態と違えば、その時点で問題になります。
毎年の作業として、確実に回す仕組みを作りましょう。
登記のスケジュール
3月末が事業年度末の団体を例に、流れを見てみます。
4月に、決算の作業を行います。
監事の監査を受け、財産目録と貸借対照表を確定させます。
5月に、通常総会を開いて承認を受けます。
6月までに、貸借対照表を公告します。
同じ時期に、所轄庁へ事業報告書等を提出します。
役員の任期が満了する年は、その登記も重なります。
2年ごとに、作業が増えるということです。
年間の予定表に、この時期をまとめて書き込んでおきましょう。
- 【毎年】貸借対照表の作成後遅滞なく公告(登記ではありません)
- 【2年ごと】役員の任期満了にともなう代表理事の登記(重任を含む)
- 【随時】名称・目的・事業を変更したときの登記
- 【随時】事務所を移転したときの登記
- 【登記後】所轄庁へ登記完了届出書を提出
- 【必要時】登記事項証明書を取得して各種手続きに使用
登記事項証明書の取り方
登記された内容は、登記事項証明書で確認できます。
法務局の窓口で請求すると、その場で交付されます。
オンラインで請求して、郵送で受け取ることもできます。
オンラインのほうが、手数料は安く設定されています。
助成金の申請や、銀行の手続きでよく求められます。
発行から3か月以内といった条件が付くことが多いので、必要なときに取ります。
複数の手続きが重なるなら、まとめて数通取っておくと効率的です。
誰でも取得できるため、他団体の情報を確認することもできます。
合併の相手を検討するときなどに、役立ちます。
登記と所轄庁の届出は別
混同しやすいのが、登記と所轄庁への届出の関係です。
この2つは、別の手続きです。
法務局に登記しても、所轄庁には伝わりません。
登記が完了したら、あらためて所轄庁へ届け出ます。
登記完了届出書に、登記事項証明書を添えて提出します。
逆に、所轄庁の認証を受けただけでは登記されません。
認証、登記、届出という3つの段階を、順に踏む必要があります。
どれか1つを飛ばすと、手続きが完了しません。
定款変更のときは、特にこの流れを意識してください。
役員の登記でつまずく点
役員に関する登記で、よくある誤解を挙げます。
第一に、理事全員を登記すると思い込んでいるケースです。
登記されるのは、代表権を持つ理事だけです。
定款で代表権を制限していれば、理事長1人で足ります。
第二に、監事を登記すると思っているケースです。
監事は登記されません。
第三に、再任のときは登記が不要だと思っているケースです。
同じ人が続く場合も、重任の登記が必要です。
第四に、住所が変わったときの登記を忘れるケースです。
代表理事の住所は登記事項なので、引っ越したら変更が必要になります。
自分で登記できるか
登記の申請は、自分たちで行うこともできます。
法務局の窓口では、書類の書き方を教えてもらえます。
相談は予約制のことが多いので、事前に確認してください。
申請書の様式は、法務局のホームページで公開されています。
役員の重任登記は、比較的簡単な部類です。
2年ごとに繰り返す作業なので、一度覚えれば次からは楽になります。
手順をメモに残しておくと、担当が変わっても引き継げます。
複雑な変更が重なる場合は、司法書士に依頼する方法もあります。
登記申請の代理は、司法書士が取り扱う業務です。
登記される目的と業務
登記される目的と業務は、定款の記載がもとになります。
定款の目的の条文と、事業の条文が反映されます。
そのため、事業を追加すると登記の変更も必要になります。
定款変更の認証を受けてから、2週間以内に登記します。
登記事項証明書を見れば、その法人が何をしているか分かります。
取引先や助成元が、内容を確認する場面もあります。
実際の活動と登記の内容がずれていると、疑問を持たれます。
事業を大きく変えたら、定款と登記も合わせて更新しましょう。
登記は、対外的な自己紹介でもあると考えてください。
事務所の所在場所の登記
登記される事務所の所在場所は、番地まで記載されます。
定款には市区町村までしか書いていなくても、登記は番地まで必要です。
この違いを、押さえておきましょう。
同じ市区町村内で移転した場合、定款は変えなくて済みます。
しかし登記は、番地が変わるので必ず変更が必要です。
期限は、移転から2週間以内です。
建物名や部屋番号まで登記するかは、法務局の運用によります。
窓口で確認してから申請すると確実です。
登記した住所が、対外的な所在地として扱われます。
郵便物が届く状態を、必ず保っておいてください。
登記が必要な場面を年間で押さえる
登記は、思い出したときに行う作業ではありません。
発生する場面が決まっているので、先に押さえておきましょう。
毎年必ず来るのは、登記ではなく貸借対照表の公告です。
2年ごとに来るのが、役員の任期満了にともなう登記です。
この2つは、カレンダーに固定して入れておけます。
随時発生するのが、名称、目的、事業、事務所の変更です。
これらは、定款変更の手続きとセットで考えます。
定款を変えるときは、登記も必要かを必ず確認しましょう。
担当者が変わっても回るよう、手順書にまとめておくと安心です。
毎年同じ作業なので、一度作れば長く使えます。
登記簿から分かること
登記事項証明書は、その法人の基本情報がまとまった書類です。
いつ設立されたのか、どこに事務所があるのかが分かります。
代表者が誰で、いつ就任したのかも記載されています。
過去の変更履歴も、抹消線つきで残ります。
事務所を何度移転したか、代表者が何度替わったかが読み取れます。
相手方の団体を調べるときにも、有効な手段です。
合併や連携を検討する場面では、まず取得してみるとよいでしょう。
自団体の証明書も、一度は目を通しておくことをおすすめします。
記載が実態と違っていることに、そこで気づく団体もあります。
印鑑と印鑑証明書
登記に関連して、法人の印鑑も押さえておきましょう。
設立登記のときに、法人の実印を届け出ます。
届け出ると、法人の印鑑証明書が取得できるようになります。
印鑑カードも、あわせて交付されます。
この印鑑証明書は、契約や助成金の申請で求められることがあります。
代表者が交代したら、印鑑の届出もやり直します。
前の代表者の届出のままだと、証明書が使えなくなります。
印鑑カードは、実印とは別の場所に保管しましょう。
カードと実印がそろうと、誰でも証明書を取得できてしまいます。
管理の担当を決めておくことが、事故の防止につながります。
印鑑証明書には有効期間の条件が付くことが多いので、必要になった時点で取得しましょう。
古い証明書を使い回そうとして、手続きが止まる例がよくあります。
取得の手順を控えておけば、次に必要になったときすぐ動けます。
銀行印は実印と分けて作り、保管する人も分けておくとより安全です。
角印は請求書などに使うもので、実印とは役割が違います。
どの場面でどの印鑑を使うかを、規程で決めておくと迷いません。
登記事項のまとめ
NPO法人の登記事項は、目的と業務、名称、事務所の所在場所などです。
代表権を持つ理事の氏名と住所も登記されます。
監事は登記されません。
「資産の総額」は2018年10月1日に登記事項から外れました。
代わりに、貸借対照表を作成後遅滞なく公告する必要があります。
登記を怠ると、代表者個人が過料の対象になることがあります。
登記と所轄庁への届出は別の手続きなので、両方を行ってください。
よくある質問
A. 目的および業務、名称、事務所の所在場所、代表権を持つ理事の氏名と住所、存続期間や解散の事由を定めたときはその定め、代表権の範囲または制限に関する定めがあるときはその定めです。資産の総額は含まれません。
A. しません。2018年10月1日に登記事項から外れました。代わりに、前事業年度の貸借対照表を作成後遅滞なく、定款で定めた方法で公告する必要があります(NPO法28条の2)。
A. されません。登記されるのは代表権を持つ理事だけです。ただし監事が変わったときは、所轄庁への役員変更届出が必要になります。
A. 過料の対象になることがあります。過料は法人ではなく代表者個人に科されます。放置期間が長いほど、指摘を受けたときの負担が大きくなります。
A. 不要にはなりません。登記と所轄庁への届出は別の手続きです。登記が完了したら、登記事項証明書を添えて所轄庁へ届け出てください。
A. できます。申請書の様式は法務局のホームページで公開されており、窓口で書き方の相談もできます。なお登記申請の代理は司法書士が取り扱う業務です。
NPO法人と同じ商業登記のルールで、一般社団法人の登記事項証明書も誰でも取れます。4種類の違いと手数料はこちらです。
📖 参考にした公的機関の情報


