公益法人の情報公開と閲覧請求|誰でも見られる書類・断れない理由・住所だけ隠せる・自分で公表しなければならない4つの情報

公益法人
公益財団法人の事務局です。知らない方から「役員名簿と決算書を見せてほしい」と電話がありました。
会員でも寄付者でもない人に見せる義務があるのですか。住所まで出さないといけませんか。

見せる義務があります。公益法人の財産目録等は、何人も、業務時間内はいつでも閲覧を請求できると認定法21条5項が定めており、法人は正当な理由がないのに拒めません。会員・寄附者・取引先である必要はなく、理由も問えません。

一方で、役員等名簿と社員名簿の住所だけは、社員・評議員以外の請求には除外して見せることができます(21条6項)。この記事では、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)と施行規則の条文で、閲覧の対象・請求への対応・住所の扱い・電子データの見せ方、そして法人が自分から公表しなければならない情報まで整理します。

公益法人の情報公開は3層 ― 閲覧・行政庁の公表・自主公表

誰が 何を 根拠
① 閲覧請求への対応 公益法人が請求者に 財産目録等(下表) 認定法21条5項〜7項
② 行政庁による公表 行政庁が公衆に 提出を受けた財産目録等(住所を除く) 22条2項
③ 法人による自主公表 公益法人が公衆に 公益充実資金の状況/公益目的事業継続予備財産の限度額・理由 規則23条1項2号/認定法16条3項・規則37条
(参考)行政庁の公示・公表 行政庁 勧告の内容/命令・取消し・変更届出の公示 28条2項・4項/29条4項/13条2項
POINT 「提出したから公開されている」で終わりません。①は法人が窓口で対応する義務、③は法人がウェブなどで自分から出す義務です。②は内閣府の「公益法人information」で行われ、寄附者や取引先はそこを見ています。

閲覧の対象=「財産目録等」(認定法21条5項)

21条5項は閲覧の対象をまとめて「財産目録等」と呼んでいます。中身は次のとおりです。

書類 作成の根拠 備え置き期間
事業計画書・収支予算書・資金調達及び設備投資の見込み・事業の種類と内容を記載した書類 21条1項・規則45条 その事業年度の末日まで
財産目録 21条2項1号 5年(写しは3年)
役員等名簿(理事・監事・評議員の氏名と住所) 21条2項2号 5年(写しは3年)
報酬等の支給の基準を記載した書類 21条2項3号 5年(写しは3年)
キャッシュ・フロー計算書、運営組織・事業活動の重要事項、中期的収支均衡・公益目的事業比率・使途不特定財産額の数値、公益充実資金・予備財産の書類など 21条2項4号・規則46条 5年(写しは3年)
定款 常時
社員名簿(公益社団法人) 一般法人法31条 常時
計算書類等(貸借対照表・損益計算書・事業報告・附属明細書・監査報告など) 一般法人法129条1項(199条準用) 5年(写しは3年)

一般社団法人・一般財団法人でも、計算書類等は社員・評議員・債権者が閲覧できます(一般法人法129条3項)。公益法人ではこれが「何人も」に広がり、対象書類も事業計画書・役員等名簿・報酬基準・財務数値の明細まで含む点が違います。

閲覧請求が来たときの対応(21条5項・6項・規則54条)

論点 条文の答え 根拠
誰の請求に応じるか 何人も。会員・寄附者・取引先である必要はない 21条5項
いつ応じるか 業務時間内はいつでも
断れるか 正当な理由がないのに拒んではならない
紙で作っている書類 その書面または写しの閲覧 同5項1号
電子データで作っている書類 記録された事項を紙面または出力装置の映像面に表示して閲覧させる 同5項2号・規則54条
役員等名簿・社員名簿の住所 社員・評議員以外からの請求には、個人の住所の部分を除外して閲覧させることができる 21条6項
謄写(コピー) 条文は「閲覧」の請求。謄写の請求権は定めていない 21条5項

「正当な理由」の中身は条文にありません。業務時間外、書類の特定ができない、同一人による著しく反復した請求で業務に支障が出る、といった事情が想定されます。「うちの法人と関係がない人だから」は正当な理由になりません。

住所の除外は「できる」規定です。社員・評議員以外に住所を見せる義務はなく、見せない運用を標準にして差し支えありません。行政庁の公表(22条2項)でも住所は除かれるので、扱いは一貫しています。

POINT 閲覧は「見せる」義務であって「渡す」義務ではありません。ただし、行政庁が公表する書類(22条2項)は公益法人informationで誰でもダウンロードできるので、閲覧を渋る実益はほとんどありません。窓口対応を決めておき、淡々と応じるのが現実的です。

従たる事務所での閲覧と、電子データの備え置き(21条3項・7項・規則52条・55条)

財産目録等は電磁的記録で作成・備え置きできます(21条3項・規則52条)。従たる事務所には写しを備え置くのが原則ですが、従たる事務所でオンライン閲覧できる措置(法人の電子計算機と電気通信回線で接続し、従たる事務所の端末に表示できる方法)をとっていれば、写しの備え置きは不要になります(21条7項・規則55条)。

複数の事務所を持つ法人は、本部のサーバーに置いたPDFを支部の端末で表示できるようにしておけば、支部ごとに紙の写しを揃える必要がありません。閲覧請求は支部でも受けられる体制が前提です。

行政庁による公表(22条2項)― 公益法人informationに載る

行政庁は、提出を受けた財産目録等を内閣府令の定めにより公表します(22条2項)。役員等名簿と社員名簿については、個人の住所の部分は除かれます。実際には内閣府の「公益法人information」で法人ごとに提出書類が公開されています。

ここで公開されるのは、法人が提出した書類そのものです。提出書類の誤記や古い数字は、そのまま外部に出ることになります。定期提出書類は「行政庁に見せるもの」ではなく「公衆に読まれるもの」として作る、というのが公益法人の前提です。

法人が自分から公表しなければならない情報(規則23条・認定法16条3項)

閲覧に応じるだけでなく、法人自身がインターネット等で公表しなければならない情報があります。2025年4月の改正で明確になった2つです。

情報 公表する内容 時期・方法 根拠
公益充実資金 公益充実活動等ごとの内容と実施時期/積立限度額とその算定根拠/当年度の取崩額と積立額/年度末の資金の額/前年度の同事項/その他内閣総理大臣が必要と認める事項 事業年度終了後、インターネットの利用その他の適切な方法により速やかに 規則23条1項2号
公益目的事業継続予備財産 保有する限度額とその算定根拠/保有する理由(規則35条の要件に適合することの説明) 毎事業年度の末日において保有する場合、インターネットの利用その他の適切な方法 認定法16条3項・規則37条

公益充実資金の公表は、規則23条1項の要件そのものです。公表していなければ公益充実資金として認められず、積立額を費用に数えること(中期的収支均衡)も、使途不特定財産額から除くこともできなくなります。

行政庁が公示・公表するもの ― 勧告は法人名つきで外に出る

事項 行政庁の対応 根拠
名称・代表者の変更、収益事業等の内容の変更の届出 公示 13条2項
合併・事業譲渡・公益目的事業の全部廃止の届出 公示 24条2項
勧告 勧告の内容を公表 28条2項
命令 その旨を公示 28条4項
公益認定の取消し その旨を公示 29条4項

勧告の公表は、法人にとって情報公開の中で最も重いものです。寄附者・会員・取引先が検索すれば、勧告の内容が法人名とともに出てきます。勧告の前提と対応は立入検査と勧告・命令の記事で整理しています。

拒んだとき・備え置かなかったときの罰則

行為 罰則 根拠
財産目録等を備え置かない、記載事項を書かない、虚偽の記載 30万円以下の罰金(法人にも科される) 64条3号・65条
財産目録等を行政庁に提出しない、虚偽記載 理事・監事・清算人に50万円以下の過料 66条2号
正当な理由なく閲覧を拒む 直接の罰則規定はないが、21条5項の義務違反=第二節の不遵守として勧告・命令・取消しの対象(29条2項2号) 28条・29条

閲覧拒否そのものに罰金・過料はありませんが、21条は認定法第二節の規定なので、拒み続ければ「前節の規定を遵守していない」として29条2項2号の取消し事由になります。一般法人法側でも、計算書類等の閲覧拒否は過料の対象です(一般法人法342条)。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

閲覧対応の実務チェックリスト

事務局で決めておくこと

  • 閲覧対象の一覧(事業計画書等・財産目録・役員等名簿・報酬基準・規則46条の書類・定款・社員名簿・計算書類等)を1つのファイルにまとめてある
  • 主たる事務所に原本、従たる事務所に写し(またはオンライン閲覧の措置)を備え置いている(21条1項・2項・7項)
  • 役員等名簿・社員名簿は住所を除いた閲覧用を別に用意してある(21条6項)
  • 電磁的記録で保存している書類は、紙面または画面に表示して見せられる(規則54条)
  • 「業務時間内」の範囲と、対応する担当者を決めてある
  • 公益充実資金と予備財産を持つなら、規則23条・37条の公表事項をウェブに掲載し、年度ごとに更新している
  • 公益法人informationで自法人の公開情報を確認し、提出書類の誤りがないか見た
  • 閲覧の記録(日時・請求者・対象書類)を残す様式を用意した

よくある質問

Q. 会員でも寄付者でもない人に決算書を見せる義務がありますか?

A. あります。認定法21条5項は「何人も」業務時間内に財産目録等の閲覧を請求できると定め、公益法人は正当な理由がないのに拒めません。関係の有無や理由は問えません。

Q. 役員名簿の住所も見せなければいけませんか?

A. 社員・評議員以外からの請求については、個人の住所の部分を除外して閲覧させることができます(認定法21条6項)。行政庁の公表でも住所は除かれます(22条2項)。

Q. コピーを渡す必要はありますか?

A. 認定法21条5項が定めているのは閲覧の請求です。書面またはその写しの閲覧、電磁的記録なら紙面か画面への表示で応じます(規則54条)。謄写の請求権は定められていません。

Q. 電子データで保存している書類はどう見せますか?

A. 記録された事項を紙面または出力装置の映像面に表示する方法で閲覧させます(認定法21条5項2号・規則54条)。従たる事務所でも表示できる措置をとっていれば、写しの備え置きは不要です(21条7項・規則55条)。

Q. 提出した書類はどこで公開されますか?

A. 行政庁が公表します(認定法22条2項)。実際には内閣府の「公益法人information」で法人ごとに閲覧・取得できます。役員等名簿・社員名簿の住所は除かれます。

Q. 法人が自分で公表しなければならない情報はありますか?

A. あります。公益充実資金を持つ法人は活動等ごとの内容・実施時期・積立限度額と算定根拠・取崩額と積立額・残高などを事業年度終了後速やかに(規則23条1項2号)、公益目的事業継続予備財産を持つ法人は限度額・算定根拠・保有理由を(認定法16条3項・規則37条)、インターネット等で公表します。

Q. 閲覧を拒むと罰則がありますか?

A. 閲覧拒否そのものに罰金・過料の規定はありませんが、21条は第二節の規定なので不遵守は29条2項2号の取消し事由になり、勧告(内容は公表)・命令の対象です。備え置き義務違反は30万円以下の罰金(64条3号)、提出義務違反は50万円以下の過料(66条2号)です。

Q. 勧告を受けたことは公開されますか?

A. 公開されます。行政庁は勧告をしたときにその内容を公表しなければなりません(認定法28条2項)。命令・取消しもその旨が公示されます(28条4項・29条4項)。

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