NPO法人の設立が完了しても、そこからが始まりです。
初年度には、慣れない手続きが続きます。
順番を知っていれば、慌てずに済みます。
この記事では、1年目にやることを時系列で解説します。
登記の完了が出発点
法人が成立するのは、設立の登記が完了した日です。
認証書を受け取った日では、ありません。
登記が終わって、はじめて法人として動けます。
登記事項証明書を、複数枚取っておきましょう。
各種の手続きで、必要になります。
法人の印鑑証明書も、取得できます。
この二つが、初年度の手続きの基本の材料です。
まとめて取っておくと、往復が減ります。
有効期限がある場面もあるため、確認しましょう。
所轄庁への届出
登記が完了したら、所轄庁へ届出を出します。
設立登記完了届出書という様式です。
登記事項証明書を、添えて提出します。
設立時の財産目録も、必要になります。
提出の期限が、定められています。
登記後すみやかに、と考えておきましょう。
所轄庁によって、様式が異なります。
認証のときの担当者に、確認すると確実です。
控えを、必ず保管してください。
| 時期 | やること | 相手 |
|---|---|---|
| 登記完了直後 | 登記事項証明書と印鑑証明書の取得 | 法務局 |
| 登記後すみやか | 設立登記完了届出書の提出 | 所轄庁 |
| 同時期 | 法人口座の開設 | 金融機関 |
| 同時期 | 税務・自治体への届出 | 税務署・自治体 |
| 職員を雇うとき | 労働保険・社会保険の手続き | 労働局・年金事務所 |
| 事業年度終了後3か月以内 | 決算・監査・総会・提出 | 所轄庁 |
| 毎事業年度終了後3か月以内 | 資産の総額の変更登記 | 法務局 |
法人口座を開く
法人名義の口座を、早めに開きます。
登記事項証明書と、印鑑が必要です。
定款の写しも、求められます。
事業の内容を、説明することになります。
審査に、時間がかかる場合もあります。
複数の金融機関に、相談してみましょう。
地域の信用金庫が、対応しやすいこともあります。
口座ができるまで、個人名義で受けざるを得ない場面もあります。
その場合、記録を分けて残しておきます。
各種の届出
所轄庁のほかにも、届出があります。
税務署と、都道府県や市区町村です。
職員を雇うなら、労働保険と社会保険の手続きもあります。
期限が定められているものが、あります。
税務に関する届出は、税務署または税理士へご確認ください。
社会保険や労働保険は、社会保険労務士の業務範囲です。
許認可が必要な事業なら、その準備も並行します。
一覧を作って、順に消していきましょう。
中間支援組織で、確認する方法もあります。
- 登記事項証明書と印鑑証明書を取る
- 所轄庁へ設立登記完了届出書を出す
- 法人口座を開設する
- 税務・自治体への届出を確認する
- 職員を雇うなら労働保険と社会保険の手続き
- 事務所の表示(看板・表札)を出す
- 名刺や封筒を作る
- ウェブサイトに法人情報を載せる
- 所轄庁と関係先へ挨拶する
- 年間の予定表を作る
- 会員名簿を正式なものとして作り直す
会員の整理
設立の直後は、会員の整理も必要です。
設立時の社員10人以上が、そのまま続くとは限りません。
入会の手続きを、あらためて整えましょう。
会費の期間の考え方も、決めます。
設立の日からか、事業年度からかです。
名簿を、正式なものとして作り直します。
個人情報の取扱いも、この段階で決めておきます。
入会のページを、ウェブサイトに作りましょう。
任意団体からの移行なら、会員へ案内を出します。
仕組みを作る
初年度でいちばん大切なのが、仕組み作りです。
第一に、年間の予定表を作ります。
毎年やることを、12か月に並べます。
第二に、書類の保管の場所を決めます。
第三に、会計の記録の方法を決めます。
第四に、決裁の基準を決めます。
第五に、議事録の型を作ります。
ここで作った仕組みが、その後の何年分も楽にします。
逆に、作らないと毎年ゼロから悩むことになります。
最初の理事会
設立後、早い時期に理事会を開きます。
第一に、役割分担を決めます。
誰が何を担当するかです。
第二に、年間の予定を確認します。
第三に、決裁の基準を決めます。
第四に、規程を作るかを決めます。
第五に、当面の資金の見通しを共有します。
設立の勢いがあるうちに、決めておきましょう。
時間がたつほど、集まりにくくなります。
事業を始める
手続きと並行して、事業を始めます。
設立総会で決めた事業計画に沿って進めます。
計画どおりにいかないことも、あります。
その場合も、記録を残しておきましょう。
事業報告書に、実施しなかった旨を書くことになります。
小さく始めて、続くかを確かめる形が現実的です。
最初から大きく広げると、手が回りません。
実施のたびに、写真と記録を残します。
報告書を書くときに、必ず必要になります。
初年度の会計
会計の記録は、最初から付けます。
通帳の記帳と、帳簿への記入です。
毎月やる日を、決めておきましょう。
ためると、決算のときに一気に負担が来ます。
領収書は、月ごとにまとめます。
会費と寄付は、区別して受けます。
将来の認定を考えるなら、寄付者の記録も残します。
会計の具体的な処理は、専門家に相談してください。
初年度に型を作れば、翌年から楽になります。
最初の決算と総会
事業年度が終わると、最初の決算です。
終了後3か月以内に、一連の作業を行います。
決算をまとめ、監事の監査を受けます。
理事会で承認し、通常総会にかけます。
総会で承認されたら、所轄庁へ提出します。
資産の総額の変更登記も、この時期です。
初年度は、勝手が分かりません。
所轄庁の手引きを、手元に置いて進めましょう。
分からない点は、電話で聞けば教えてもらえます。
初年度が短い場合
設立の時期によって、初年度が短くなります。
3月末が事業年度末で、1月に設立した場合などです。
3か月しか、初年度がありません。
事業も、ほとんど実施できない可能性があります。
それでも、決算と総会と提出は必要です。
実施しなかった旨を、書いて出します。
短い初年度は、悪いことではありません。
手続きの練習になる、と考えましょう。
2年目から、本格的に動けます。
名刺と看板を作る
対外的な準備も、初年度に行います。
第一に、名刺です。
法人名、肩書き、連絡先を入れます。
第二に、事務所の表示です。
看板や表札を、出しましょう。
事務所としての実態を、示すものになります。
第三に、封筒とゴム印です。
第四に、ウェブサイトの法人情報です。
所在地、代表者、設立の年月を載せます。
信用の土台になる情報です。
関係先へ挨拶する
設立したことを、関係先に伝えます。
第一に、所轄庁の担当者です。
第二に、地域の中間支援組織です。
第三に、活動に関わる行政の担当課です。
第四に、これまで協力してくれた団体です。
第五に、地域の関係者です。
任意団体の時代から関わりがあるなら、報告の意味もあります。
挨拶をしておくと、その後の相談がしやすくなります。
法人になったことは、信用の材料でもあります。
活動の紹介も、あわせて渡しましょう。
初年度によくあるつまずき
第一が、設立登記完了届出書を忘れる場合です。
認証で終わったつもりになりがちです。
第二が、口座の開設が進まない場合です。
早めに動かないと、入金を受けられません。
第三が、会計の記録を後回しにする場合です。
決算のときに、一年分をまとめてやることになります。
第四が、事業年度末を意識していない場合です。
第五が、資産の総額の変更登記を知らない場合です。
毎年必要な登記が、あることを覚えておきましょう。
いずれも、予定表を作れば防げます。
2年目に向けて残すもの
初年度の終わりに、次へ渡すものを整えます。
第一に、年間の予定表を見直します。
実際にやってみて、ずれた部分を直します。
第二に、書類の一覧を作ります。
第三に、手順書を書き足します。
初年度に迷った点を、そのまま書けば足ります。
第四に、関係先の一覧をまとめます。
第五に、活動の記録と写真を整理します。
記憶が新しいうちに、やっておきましょう。
2年目からは、この型を回すだけになります。
焦らないこと
初年度は、思ったように進まないものです。
手続きに時間を取られ、事業が後回しになります。
それは、多くの団体が通る道です。
計画どおりにいかなくても、記録は残しましょう。
実施しなかった理由を、書いておきます。
2年目に、生かせる材料になります。
完璧を目指すより、続けることを優先してください。
最初から大きく広げた団体ほど、息切れします。
小さく確実に、一年を終えることが目標です。
仕組みさえ作れれば、初年度は成功です。
設立1年目のまとめ
法人が成立するのは、設立の登記が完了した日です。
まず、所轄庁への届出と法人口座の開設を行います。
税務や社会保険の届出も、あわせて確認しましょう。
会員の整理と、入会の手続きも整えます。
初年度でいちばん大切なのは、仕組みを作ることです。
年間の予定表、書類の保管、会計の方法、決裁の基準です。
事業年度が終われば、3か月以内に決算と総会と提出が続きます。
初年度に作った型が、その後の何年分もの負担を左右します。
名刺、看板、ウェブサイトの法人情報も、初年度に整えましょう。
所轄庁や中間支援組織、関係先への挨拶も済ませておきます。
設立登記完了届出書の提出漏れが、いちばん多いつまずきです。
年度末には、予定表と手順書を見直して2年目へ渡してください。
計画どおりにいかなくても、仕組みさえ作れれば初年度は成功です。
よくある質問
A. 設立の登記が完了した日です。認証書を受け取った日ではありません。登記が終わって、はじめて法人として口座の開設や契約ができます。認証書の到達から2週間以内に登記してください。
A. 登記事項証明書と印鑑証明書を取り、所轄庁へ設立登記完了届出書を出すことです。あわせて法人口座の開設も進めてください。
A. 審査に時間がかかる場合があります。登記事項証明書、印鑑、定款の写しが必要で、事業の内容も説明します。複数の金融機関に相談してみてください。
A. 仕組みを作ることです。年間の予定表、書類の保管の場所、会計の記録の方法、決裁の基準、議事録の型を決めておくと、その後の何年分も楽になります。
A. 問題ありません。事業をほとんど実施できなくても、決算と総会と提出は必要です。実施しなかった旨を書いて出し、手続きの練習と考えてください。
A. 最初からです。通帳の記帳と帳簿への記入を毎月行う日を決めてください。ためると決算で一気に負担が来ます。会費と寄付も区別して受けましょう。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
- 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
📖 参考にした公的機関の情報


