NPO法人の設立要件をわかりやすく解説|社員10人・役員・20分野の条件

一般社団法人法
NPO法人は誰でも作れるわけではありません。設立に必要な条件を、ひとつずつ確認していきましょう。

NPO法人の設立には、法律で定められた要件をすべて満たす必要があります。

ひとつでも欠けていると、所轄庁の認証を受けられません。

とくに人数の要件と、活動分野の要件でつまずく団体が多く見られます。

この記事では、設立要件を項目ごとに整理し、判断に迷いやすい点まで解説します。

POINT 結論:主な要件は「①法定20分野の活動が主目的」「②社員10人以上」「③理事3人以上・監事1人以上」「④営利を目的としない」「⑤宗教活動や政治活動が主目的でない」「⑥暴力団と関係がない」の6つです。このうち最初につまずくのは社員10人の確保です。

設立要件は大きく6つ

NPO法人の設立要件は、特定非営利活動促進法に定められています。

第1に、法律で定められた20分野の活動を、主たる目的としていることです。

第2に、社員が10人以上いることです。

第3に、理事3人以上と監事1人以上を置くことです。

第4に、営利を目的としないこと、つまり利益を分配しないことです。

第5に、宗教活動や政治活動を主たる目的としないことです。

第6に、暴力団やその構成員の統制下にないことです。

これらに加えて、社員の資格に不当な条件を付けないという要件もあります。

いずれも形式的な条件ではなく、実態が伴っているかどうかが審査されます。

要件1 法定20分野に該当すること

NPO法人が行える特定非営利活動は、法律で20の分野に限定されています。

保健、医療または福祉の増進を図る活動が、その代表例です。

社会教育の推進、まちづくりの推進、観光の振興、農山漁村または中山間地域の振興も含まれます。

学術、文化、芸術またはスポーツの振興を図る活動も対象です。

環境の保全、災害救援、地域安全、人権の擁護または平和の推進も分野に含まれます。

国際協力、男女共同参画社会の形成の促進、子どもの健全育成も該当します。

情報化社会の発展、科学技術の振興、経済活動の活性化を図る活動もあります。

職業能力の開発または雇用機会の拡充を支援する活動、消費者の保護も対象です。

さらに、これらの活動を行う団体の運営や活動に関する連絡、助言または援助の活動があります。

最後に、都道府県または指定都市の条例で定める活動が加わります。

特定非営利活動の20分野(要約)

  • 保健・医療・福祉の増進
  • 社会教育の推進
  • まちづくりの推進
  • 観光の振興
  • 農山漁村・中山間地域の振興
  • 学術・文化・芸術・スポーツの振興
  • 環境の保全
  • 災害救援
  • 地域安全
  • 人権の擁護・平和の推進
  • 国際協力
  • 男女共同参画社会の形成の促進
  • 子どもの健全育成
  • 情報化社会の発展
  • 科学技術の振興
  • 経済活動の活性化
  • 職業能力の開発・雇用機会の拡充
  • 消費者の保護
  • 上記団体の運営・活動に関する連絡、助言または援助
  • 都道府県・指定都市の条例で定める活動

分野の判断でつまずくケース

自分たちの活動が20分野のどれに当たるか、迷う団体は少なくありません。

判断のポイントは、活動の目的が不特定かつ多数の利益に向いているかどうかです。

会員だけが利益を受ける活動は、特定非営利活動とは認められにくくなります。

たとえば、会員だけで楽しむ趣味のサークルは、そのままでは該当しません。

同じ活動でも、地域の子どもに広く教室を開くなら、社会教育や子どもの健全育成に整理できます。

つまり、活動の中身よりも、誰に向けた活動かという設計が重要です。

複数の分野にまたがる場合は、主たるものを選び、定款に順番に列挙します。

どうしても20分野に収まらない活動が中心なら、一般社団法人を検討することになります。

一般社団法人には分野の制限がないため、より自由に事業目的を設定できます。

要件2 社員が10人以上いること

NPO法人は、社員が10人以上いなければ設立できません。

ここでいう社員は、従業員ではなく、総会で議決権を持つ正会員のことです。

この10人という数字が、実務上いちばん高い壁になります。

名前だけを借りた社員では、その後の総会運営が形骸化してしまいます。

総会は、社員の過半数の出席で成立するのが一般的です。

実際に集まらない社員ばかりだと、決議ができず運営が止まります。

設立の段階から、活動に関わってくれる人を10人そろえることが大切です。

法人や団体を社員にすることもできますが、その場合も議決権の扱いを定款で明確にします。

設立後に社員が10人を下回った場合は、解散事由に該当することがあります。

設立時だけでなく、継続的に10人を維持する必要がある点にも注意してください。

要件3 役員の人数と欠格事由

役員として、理事3人以上と監事1人以上を置く必要があります。

理事と監事は兼ねることができないため、最低でも4人の役員が必要です。

役員の任期は2年以内で、定款で定めます。再任は可能です。

役員のうち報酬を受ける者は、役員総数の3分の1以下でなければなりません。

つまり、役員4人なら報酬を受けられるのは1人までという計算になります。

ここでいう報酬は役員としての報酬であり、職員として働く分の給与とは区別されます。

役員には欠格事由があり、成年被後見人や、一定の刑に処せられた者は就任できません。

暴力団員や、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者も就任できません。

また、役員のうち親族が占める割合にも制限があります。

役員総数が6人以上の場合、親族は1人までとされ、その配偶者や3親等以内の親族を含めて3分の1を超えてはなりません。

項目 要件
社員(正会員) 10人以上
理事 3人以上
監事 1人以上
理事と監事の兼任 不可
役員の任期 2年以内(定款で定める・再任可)
報酬を受ける役員 役員総数の3分の1以下
役員の親族制限 役員6人以上の場合は親族1人まで等の制限あり

要件4 営利を目的としないこと

NPO法人は、営利を目的としない法人です。

ただし、これは事業で利益を出してはいけないという意味ではありません。

禁止されているのは、利益を社員や役員に分配することです。

事業で得た剰余金は、翌年度の活動費に繰り越して使います。

職員に給与を支払うことも、事業を有償で行うことも、まったく問題ありません。

実際、多くのNPO法人が委託事業や物販で収入を得ています。

大切なのは、その収入が団体の目的のために使われるという構造です。

定款には、剰余金を分配しない旨を明記します。

解散したときの残余財産も、個人や営利法人に渡すことはできません。

要件5 宗教活動・政治活動が主目的でないこと

NPO法人は、宗教の教義を広めることを主たる目的にできません。

同様に、政治上の主義を推進、支持、反対することを主たる目的にできません。

特定の公職の候補者や政党を推薦、支持、反対することも認められません。

申請の際には、これらに該当しない旨を記載した確認書を提出します。

ただし、活動の中で結果的に政策提言を行うこと自体は禁止されていません。

あくまで、それが主たる目的になっているかどうかが判断の基準です。

福祉政策の改善を求める活動などは、通常の特定非営利活動として認められています。

定款の目的の書き方で誤解を招かないよう、表現には注意しましょう。

要件6 暴力団との関係がないこと

暴力団、またはその構成員などの統制下にある団体は、認証を受けられません。

これは団体そのものと、役員個人の両方について確認されます。

申請時に提出する確認書と役員の誓約書で、この点を宣誓します。

所轄庁は必要に応じて警察へ照会を行うことがあります。

虚偽の記載があれば、認証後であっても取り消される可能性があります。

社員の資格に不当な条件を付けないこと

社員の加入や脱退について、不当な条件を付けることは認められません。

たとえば、特定の思想を持つ人だけを社員にするといった定めは問題になります。

入会に理事会の全員一致の承認を必要とするような規定も、実質的な制限とみなされることがあります。

高額な入会金や年会費も、加入を妨げる要因と判断される場合があります。

一方で、活動の趣旨に賛同することを要件にするのは、通常は問題ありません。

入会を承認制にすること自体も、合理的な範囲であれば認められます。

定款の会員に関する条項は、事前相談で必ず確認してもらいましょう。

会計と情報公開の要件

NPO法人は、正規の簿記の原則にしたがって会計処理を行う必要があります。

毎事業年度、活動計算書と貸借対照表、財産目録を作成します。

これらを含む事業報告書等を、毎事業年度の開始から3か月以内に所轄庁へ提出します。

提出した書類は、所轄庁で誰でも閲覧できる状態になります。

法人の事務所にも、これらの書類を備え置く義務があります。

社員や利害関係者から閲覧の請求があれば、応じなければなりません。

この情報公開の義務が、NPO法人の社会的な信頼を支えています。

一方で、一般社団法人にはこうした所轄庁への報告義務がありません。

透明性を取るか、事務負担の軽さを取るかという違いになります。

設立要件を満たせないときの選択肢

社員10人がどうしても集まらない場合は、一般社団法人が現実的な選択肢です。

一般社団法人は、設立時社員2人以上で設立でき、設立後は1人でも存続できます。

活動が20分野に収まらない場合も、一般社団法人なら制限がありません。

報酬を受ける役員の人数制限もないため、運営の自由度が高くなります。

その代わり、設立に約9万円から11万円の法定費用がかかります。

寄付者への税制優遇や、行政との連携における名称の信用力では、NPO法人が有利です。

まず一般社団法人で活動を始め、体制が整ってからNPO法人を検討する団体もあります。

ただし、法人格を変更することはできないため、新設と解散が必要になる点は理解しておきましょう。

最初にどちらを選ぶかは、慎重に判断したいところです。

設立要件のまとめ

NPO法人の設立要件は、20分野への該当、社員10人以上、理事3人と監事1人以上が柱です。

加えて、利益を分配しないこと、宗教活動や政治活動が主目的でないことも求められます。

報酬を受ける役員は3分の1以下、役員の親族にも制限があります。

社員の資格に不当な条件を付けないことも、忘れられがちな要件です。

設立後は、毎事業年度の報告と情報公開の義務が続きます。

要件を満たせない場合や、時間を優先したい場合は、一般社団法人という選択肢もあります。

自分たちの体制と活動内容に照らして、無理のない法人格を選びましょう。

よくある質問

Q. 社員10人は絶対に必要?

A. 必要です。特定非営利活動促進法で、社員10人以上が設立の要件とされています。設立後も継続して維持することが求められ、下回った場合は解散事由に該当することがあります。

Q. 役員は何人必要?

A. 理事3人以上と監事1人以上です。理事と監事は兼任できないため、最低4人の役員が必要になります。社員10人のなかから役員を選ぶことは可能です。

Q. 役員に報酬を払える?

A. 払えますが、報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下に制限されています。なお、職員として実際に働いた分の給与は、この制限とは別に支払うことができます。

Q. 親族が役員になれる?

A. なれますが制限があります。役員総数が6人以上の場合、親族は1人まで、その配偶者や3親等以内の親族を含めて役員総数の3分の1を超えてはならないとされています。

Q. 趣味のサークルはNPO法人にできる?

A. 会員だけが楽しむ活動のままでは、不特定かつ多数の利益に向いていないため難しいと考えられます。地域に広く開かれた教室や大会運営など、公益性のある形に設計し直せば該当し得ます。

Q. 要件を満たせないときはどうする?

A. 一般社団法人という選択肢があります。社員2人以上で設立でき、活動分野の制限も役員報酬の人数制限もありません。ただし法定費用が約9〜11万円かかります。

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