普通の団体と何が違うのでしょうか?
いちばんの違いは、団体そのものが契約や登記の主体になれることです。団体名義で銀行口座を開き、事務所を借り、行政から事業を受託することができるようになります。
そのかわり、設立には所轄庁の認証が必要で、申請から登記までおおむね3か月かかります。設立後も毎年、事業報告書等を所轄庁に出し、請求があれば誰にでも見せる義務を負います。
この記事では、NPO法人とは何か、どんな条件で作れるのか、作ったあと何が発生するのかを、NPO法(特定非営利活動促進法)の条文にあたって順に整理します。
NPO法人の正式名称は「特定非営利活動法人」
NPO法人という言い方は通称です。法律上の名前は特定非営利活動法人で、根拠となる法律は特定非営利活動促進法(通称NPO法・平成10年法律第7号)です。
NPO法2条2項は、特定非営利活動法人を特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、この法律の定めるところにより設立された法人と定義しています。登記簿にも「特定非営利活動法人◯◯」と記録され、契約書や請求書では正式名称を使うのが原則です。
「NPO」と「NPO法人」は別のもの
| NPO | NPO法人(特定非営利活動法人) | |
|---|---|---|
| 意味 | 営利を目的としない民間の団体すべて | NPO法にもとづき認証を受けた法人 |
| 法人格 | あるとは限らない | ある |
| 名乗るのに必要な手続き | なし | 所轄庁の認証+設立の登記 |
| 具体例 | 自治会・同窓会・ボランティア団体・一般社団法人なども含む | 登記簿に記録された特定非営利活動法人 |
| 契約・口座の名義 | 団体名では原則として不可 | 法人名義で可 |
NPOはNon-Profit Organizationの略で、もうけを構成員に分配しない民間団体を広く指す言葉です。法人格の有無は問いません。
これに対してNPO法人は、NPO法という特定の法律にもとづいて作られた、ひとつの法人の種類です。一般社団法人も非営利ですが、NPO法人ではありません。
できるのは「20分野」の活動だけ(NPO法2条1項・別表)
NPO法人は、何をする団体でも作れるわけではありません。NPO法2条1項は、特定非営利活動とは別表に掲げる活動に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものと定めています。
別表には20の分野が並んでいます。保健・医療または福祉の増進/社会教育の推進/まちづくりの推進/観光の振興/農山漁村または中山間地域の振興/学術・文化・芸術・スポーツの振興/環境の保全/災害救援/地域安全/人権の擁護または平和の推進/国際協力/男女共同参画社会の形成の促進/子どもの健全育成/情報化社会の発展/科学技術の振興/経済活動の活性化/職業能力の開発または雇用機会の拡充の支援/消費者の保護。これに、これらの団体を支援する活動(19号)と、条例で定める活動(20号)が加わります。
さらにNPO法3条は、特定の個人または法人その他の団体の利益を目的として事業を行ってはならない(1項)、特定の政党のために利用してはならない(2項)と定めています。
人の条件 ― 社員10人以上・理事3人以上・監事1人以上
| 必要な数 | 根拠 | |
|---|---|---|
| 社員(総会で議決権を持つ人) | 10人以上 | NPO法12条1項4号 |
| 理事 | 3人以上 | NPO法15条 |
| 監事 | 1人以上 | NPO法15条 |
| 報酬を受ける役員 | 役員総数の3分の1以下 | NPO法2条2項1号ロ |
| 役員のうちの親族 | ある役員の配偶者・三親等以内の親族は1人まで、本人と親族の合計が役員総数の3分の1以下 | NPO法21条 |
ここでいう社員は従業員のことではありません。総会で1人1票を持つ構成員のことです。この10人がそろわないと、そもそも設立を認証してもらえません(NPO法12条1項4号)。
NPO法16条により、理事は全員が法人を代表します。ただし定款で代表権を制限でき、実務では理事長だけに代表権を持たせる設計が一般的です。
役員には欠格事由もあります(NPO法20条)。破産手続開始の決定を受けて復権を得ない人、拘禁刑以上の刑に処せられて2年を経過しない人、暴力団の構成員等などは役員になれません。
設立までの流れ ― 認証に約3か月かかる理由
| 段階 | 内容 | 根拠・目安 |
|---|---|---|
| ①設立総会 | 定款・役員・事業計画を決める | — |
| ②所轄庁へ認証申請 | 定款・役員名簿・社員10人以上の名簿・設立趣旨書・2年分の事業計画書と活動予算書などを提出 | NPO法10条1項 |
| ③公表と縦覧 | 所轄庁が申請を公表し、書類を2週間縦覧する | NPO法10条2項 |
| ④認証または不認証の決定 | 縦覧期間の経過日から2か月以内(条例でより短い期間を定めることがある) | NPO法12条2項 |
| ⑤設立の登記 | 主たる事務所の所在地で登記して成立 | NPO法13条1項 |
| ⑥所轄庁へ届出 | 登記事項証明書と財産目録を添えて届け出る | NPO法13条2項 |
③と④を足すと、申請から決定までおおむね2か月半です。そこに書類の準備と登記の期間が加わるため、設立総会から登記完了まで3か月前後をみておくのが現実的です。
注意したいのがNPO法13条3項です。認証があった日から6か月を経過しても登記をしないときは、所轄庁は設立の認証を取り消すことができます。認証が下りたら早めに登記してください。
認証の基準はNPO法12条1項に列挙されています。手続と定款が法令に適合していること、2条2項の団体であること、暴力団やその統制下にある団体でないこと、社員が10人以上いることの4つです。行政の裁量で「ふさわしくない」と判断される仕組みではありません。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
設立後に毎年やること ― 報告と情報公開
- 事業報告書等を作る……毎事業年度初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書・計算書類・財産目録・年間役員名簿・社員10人以上の名簿を作成(NPO法28条1項)
- 事務所に備え置く……作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日まで(同項)。役員名簿と定款等も備え置く(同条2項)
- 閲覧させる……社員その他の利害関係人から請求があれば、正当な理由がある場合を除いて閲覧させなければならない(同条3項)
- 所轄庁へ出す……毎事業年度1回、事業報告書等を所轄庁に提出(NPO法29条)
- 所轄庁でも公開される……所轄庁は過去5年間に提出を受けた書類について、閲覧・謄写の請求に応じる(NPO法30条・個人の住所等は除く)
ここがNPO法人のいちばん重い部分です。誰でも所轄庁で決算を見られるという前提で運営することになります。寄付や助成を集めやすくなる反面、事務の負担は小さくありません。
一般社団法人にはこの所轄庁への報告義務がありません。事務の軽さを優先するなら一般社団法人、公開性による信用を優先するならNPO法人、という整理になります。
お金の話 ― もうけてよいし、給料も払える
「NPO法人はもうけてはいけない」というのは誤解です。事業で利益を出すことは自由で、職員に給与を払うこともできます。禁じられているのは利益を構成員に分配することだけです。
役員報酬も払えますが、報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下という上限があります(NPO法2条2項1号ロ)。理事3人・監事1人の計4人なら、報酬を受け取れる役員は1人までです。ここは一般社団法人にはない、NPO法人だけの制約です。
なお、役員が職員としても働いている場合の給与は、ここでいう役員報酬とは別に扱われるのが通常の考え方です。実際の当てはめは所轄庁の運用によりますので、申請前に窓口で確認してください。
税金は、法人税法別表第二に掲げられた公益法人等として扱われ、収益事業から生じた所得だけが法人税の対象になります。収益事業は法人税法施行令5条1項が列挙する34の業種です。
NPO法人と一般社団法人、どちらを選ぶか
| NPO法人 | 一般社団法人 | |
|---|---|---|
| 活動分野 | 20分野に限られる | 制限なし |
| 必要な人数 | 社員10人以上+理事3人+監事1人 | 社員2人以上+理事1人 |
| 設立の手続 | 所轄庁の認証+登記 | 登記のみ |
| 設立までの期間 | おおむね3か月 | 2〜3週間 |
| 設立にかかる費用 | 登録免許税・定款認証とも不要 | 定款認証と登録免許税が必要 |
| 報酬を受ける役員 | 役員総数の3分の1以下 | 制限なし |
| 毎年の所轄庁への報告 | 必要 | 不要 |
| 情報公開 | 所轄庁で誰でも閲覧できる | 社員・債権者による閲覧 |
費用だけを見ればNPO法人が有利です。設立時の登録免許税も定款認証の手数料もかかりません。そのかわり時間と人数と、その後の事務を負担します。
10人集めるのが難しい、20分野に当てはまらない、早く始めたい。このどれかに当てはまるなら一般社団法人のほうが現実的です。
デメリットとして知っておきたい4つ
- 設立に時間がかかる……縦覧2週間+決定まで2か月(NPO法10条2項・12条2項)。急ぎの事業には向きません。
- 10人の社員を維持し続ける必要がある……設立時だけの条件ではありません。社員が減ると認証の基準を満たさなくなります。
- 役員報酬に3分の1の上限がある……常勤の役員を複数置く運営とは相性がよくありません。
- 決算が公開される……所轄庁で誰でも閲覧・謄写できます(NPO法30条)。寄付を集めるうえでは強みですが、事業の中身が見えることを前提に設計する必要があります。
逆に言えば、会員が10人以上いて、公開に耐える活動をしていて、時間に余裕があるのであれば、設立費用ゼロで法人格が得られるNPO法人は有力な選択肢です。
認定NPO法人はさらに上の区分
NPO法人のうち、広く市民から支援を受けているなどの基準を満たすと認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)になれます(NPO法44条・45条)。
認定を受けると、寄付をした人が寄付金控除を使えるようになり、寄付を集めやすくなります。ただし、広く市民からの支援を受けているかどうかを判断する基準(PST)をはじめ、認定の基準はNPO法45条に細かく定められています。
設立してすぐ認定を受けられるわけではありません。まず普通のNPO法人として活動し、実績を積んでから申請するのが基本の流れです。設立5年以内の法人向けには、PSTの基準を免除する特例認定の制度もあります。
NPO法人についてよくある質問
A. 特定非営利活動法人です。根拠法は特定非営利活動促進法(通称NPO法・平成10年法律第7号)で、登記簿にも「特定非営利活動法人◯◯」と記録されます。契約書や口座の名義には、この正式名称を使います。
A. 社員が10人以上必要です(NPO法12条1項4号)。これに加えて役員として理事3人以上と監事1人以上を置きます(NPO法15条)。社員と役員は兼ねられるため、実際には10人いれば足りることが多いです。
A. 登録免許税も定款認証の手数料もかかりません。実費として、登記事項証明書や印鑑証明書の取得費用、法人印の作成費用などがかかる程度です。一般社団法人と違い、設立時の税負担がない点がNPO法人の大きな利点です。
A. おおむね3か月です。所轄庁が申請を公表して書類を2週間縦覧し(NPO法10条2項)、その期間の経過日から2か月以内に認証または不認証が決定されます(NPO法12条2項)。そのあと設立の登記をして成立します(NPO法13条1項)。
A. 差し支えありません。禁じられているのは利益を構成員に分配することです。職員への給与も支払えます。ただし報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下に抑える必要があります(NPO法2条2項1号ロ)。
A. 活動分野と人数と時間で決まります。NPO法の20分野に当てはまり、社員10人を集められ、3か月待てるならNPO法人は設立費用がかかりません。分野が合わない、人数が足りない、早く始めたい場合は一般社団法人です。
A. 見られます。所轄庁は、提出を受けた事業報告書等について閲覧または謄写の請求があったときは、過去5年間分を閲覧・謄写させなければなりません(NPO法30条)。個人の住所または居所の記載部分は除かれます。
NPO法人が毎年作る書類のうち、役員に関するものが年間役員名簿です。一般社団法人や公益法人との違いはこちらで解説しています。
NPO法人の法人格がいつ発生するのか(認証ではなく登記)を含め、法人格の基本はこちらです。
📖 参考にした公的機関の情報


