NPO法人の事業報告書とは?毎年の提出期限・書類・書き方を解説

一般社団法人法
NPO法人は毎年、所轄庁へ書類を提出しなければなりません。期限と中身を確認しておきましょう。

NPO法人には、毎事業年度事業報告書等を所轄庁へ提出する義務があります。

提出期限は、事業年度の開始から3か月以内です。

この義務を怠り続けると、認証の取消しにつながることもあります。

この記事では、提出する書類の中身と、毎年のスケジュールを整理します。

POINT 結論:毎事業年度の開始から3か月以内に、事業報告書、活動計算書、貸借対照表、財産目録、年間役員名簿、社員10人以上の名簿を所轄庁へ提出します。3月決算なら6月末が期限です。提出書類は一般に公開され、事務所にも備え置く義務があります。

毎年の提出は法律上の義務

NPO法人は、毎事業年度が終わったら決算を行い、所轄庁へ書類を提出します。

これは任意の作業ではなく、特定非営利活動促進法で定められた義務です。

一般社団法人には所轄庁への提出義務がないため、ここは大きな違いです。

提出された書類は、所轄庁を通じて誰でも閲覧できる状態になります。

NPO法人の社会的な信頼は、この情報公開の仕組みに支えられています。

提出しないまま放置すると、改善命令の対象になります。

3年以上にわたって提出しない状態が続くと、認証の取消しにつながり得ます。

設立初年度から、毎年の恒例作業として仕組み化しておきましょう。

提出期限は事業年度開始から3か月以内

提出期限は、毎事業年度の開始から3か月以内です。

決算期の終了からではなく、新しい事業年度が始まってから3か月という数え方です。

3月末決算の団体なら、4月から数えて6月末が期限になります。

12月末決算なら、3月末が期限です。

法人税の申告期限は事業年度終了から2か月以内なので、時期が近接します。

決算作業をまとめて進めると効率的です。

総会の開催時期も、この期限から逆算して決めましょう。

通常総会で決算を承認してから提出する流れが一般的です。

毎年提出する書類

  • 事業報告書
  • 活動計算書(収支の状況)
  • 貸借対照表
  • 財産目録
  • 年間役員名簿(前事業年度に役員だった者全員の氏名・住所・報酬の有無)
  • 前事業年度末日における社員のうち10人以上の者の名簿

事業報告書に書くこと

事業報告書は、その年に何をしたのかをまとめる文書です。

特定非営利活動に係る事業と、その他の事業を分けて記載します。

各事業について、事業名、内容、実施日時、場所、対象者、参加人数を書きます。

前年に提出した事業計画書と、対応する形にすると分かりやすくなります。

計画どおりに実施できなかった事業は、その理由を添えます。

実施しなかったことより、説明がないことのほうが問題になります。

数値を入れると、活動の規模が伝わりやすくなります。

公開される文書なので、読み手を意識して書きましょう。

活動計算書と貸借対照表

活動計算書は、1年間の収入と支出をまとめた書類です。

かつては収支計算書が使われていましたが、現在は活動計算書が標準です。

経常収益と経常費用に分けて表示します。

経常費用は、事業費と管理費に区分します。

貸借対照表は、事業年度末時点の資産と負債の状況を示します。

現金預金、未収金、固定資産などを資産の部に記載します。

未払金や借入金は、負債の部に表示します。

貸借対照表は、法人のホームページなどで公告する必要があります。

正規の簿記の原則にしたがって処理することが求められます。

財産目録と2つの名簿

財産目録は、事業年度末の財産を1つずつ列挙した書類です。

預金の残高、備品、未収金などを具体的に記載します。

貸借対照表の数字と一致していなければなりません。

年間役員名簿には、その事業年度に役員だった人を全員記載します。

期の途中で辞めた人も、在任していた期間とともに載せます。

報酬を受けたかどうかも記載する必要があります。

社員名簿は、事業年度末時点の社員のうち10人以上を記載します。

社員が10人を下回っていないか、この機会に確認しましょう。

書類 内容 チェックポイント
事業報告書 1年間の活動の実績 計画と対応しているか
活動計算書 経常収益と経常費用 事業費と管理費を区分しているか
貸借対照表 年度末の資産と負債 財産目録と一致しているか
財産目録 財産を1つずつ列挙 預金残高が合っているか
年間役員名簿 在任した役員全員 報酬の有無を記載したか
社員名簿 年度末の社員10人以上 10人を下回っていないか

毎年のスケジュール

事業年度が終わったら、まず帳簿を締めて決算作業に入ります。

領収書の整理や未払金の計上を行い、活動計算書と貸借対照表を作成します。

監事が監査を行い、監査報告を作成します。

次に、理事会で決算と事業報告の案を承認します。

そのうえで通常総会を開き、社員の承認を受けます。

総会での承認を経てから、所轄庁へ提出するのが基本の流れです。

収益事業を行っている場合は、事業年度終了から2か月以内に法人税の申告も行います。

住民税均等割の減免申請がある団体は、その期限も忘れないでください。

3月決算なら、4月に決算、5月に総会、6月に提出という組み立てが標準的です。

事務所への備え置きと閲覧

提出するだけでなく、書類を事務所に備え置く義務もあります。

対象は、事業報告書等のほか、定款、認証書の写し、役員名簿などです。

社員や利害関係人から閲覧の請求があれば、応じなければなりません。

直近5事業年度分を備え置くこととされています。

ファイルにまとめて、いつでも出せるようにしておきましょう。

個人情報が含まれるため、名簿の扱いには配慮が必要です。

閲覧の求めがあったときの対応手順も、決めておくと安心です。

提出を忘れるとどうなるか

提出が遅れただけで、すぐに罰則が科されるわけではありません。

まず、所轄庁から提出を促す連絡が来るのが一般的です。

それでも提出しないと、改善命令の対象になります。

改善命令に従わない場合は、設立の認証が取り消されることがあります。

3年以上にわたって提出しない状態が続くと、取消しの理由になり得ます。

また、未提出の団体は所轄庁のリストで公表されることもあります。

助成金の申請で、直近の事業報告書の提出を求められることも少なくありません。

未提出だと、資金調達の場面でも不利になります。

実務上の不利益が大きいので、確実に提出しましょう。

役員が変わったときの手続き

毎年の報告とは別に、役員が変わったときの手続きがあります。

役員の変更があったら、所轄庁へ役員変更届出書を提出します。

就任した役員については、就任承諾書や住所を証する書面も添えます。

理事長など登記されている役員が変わった場合は、法務局への登記も必要です。

登記は、変更から2週間以内に行わなければなりません。

任期満了で同じ人が再任された場合も、重任の登記が必要です。

この登記を怠ると、過料の対象になることがあります。

役員の任期は2年以内なので、2年ごとに必ず発生する作業です。

カレンダーに登録して、忘れない仕組みを作りましょう。

定款を変えたときの手続き

定款を変更したときも、所轄庁への手続きが必要です。

目的や名称、事業の種類など重要な事項は、所轄庁の認証を受けます。

認証が必要な変更は、審査に時間がかかります。

軽微な事項の変更は、届出だけで済みます。

どちらに当たるかは、法律で区分が定められています。

登記事項にあたる変更は、あわせて法務局への登記も必要です。

判断に迷ったら、所轄庁に確認するのが確実です。

事務負担を減らす工夫

会計ソフトを使うと、活動計算書と貸借対照表の作成が大幅に楽になります。

非営利法人に対応したソフトなら、様式に近い形で出力できます。

日々の入力を溜めないことが、決算作業を軽くする最大のコツです。

領収書は月ごとにファイルし、その月のうちに入力しましょう。

事業報告書は、事業ごとに実施記録を残しておくと年度末が楽になります。

写真や参加者数をその場でメモしておくだけでも違います。

役員名簿と社員名簿は、更新しやすい形式で管理します。

前年のファイルを使い回せるようにしておけば、毎年の作業は数時間で終わります。

担当者を決めて引き継げる形にしておくことも重要です。

監事の監査と理事会の承認

決算書類は、作ったあとに監事の監査を受けます。

監事は、会計が適正に処理されているかを確認する役割です。

理事の業務執行についても、法令や定款に反していないかを見ます。

監査の結果は、監査報告として書面にまとめます。

監査報告は所轄庁への提出書類ではありませんが、総会で報告するのが通例です。

監事が形だけの存在になっている団体は少なくありません。

通帳と帳簿の突合など、最低限の手続きは踏んでもらいましょう。

監事は理事を兼ねられないため、独立した目でチェックできる立場にあります。

この仕組みがあることが、NPO法人の信頼性を支えています。

公開されることを前提に作る

提出した書類は、所轄庁を通じて誰でも見ることができます。

内閣府のNPOポータルサイトでも、法人情報が公開されています。

寄付を検討している人や、助成元がここを見ることは珍しくありません。

数字だけを並べた事業報告書では、活動の価値が伝わりません。

参加人数や実施回数を入れ、何が起きたのかを具体的に書きましょう。

写真は提出書類に入れられませんが、自団体のサイトで補うことができます。

報告書を広報の一部と捉えると、作る意味が変わってきます。

毎年きちんと提出している事実そのものが、信頼の材料になります。

決算書類の作り方でよくある間違い

第一に、事業費と管理費を区分していないケースです。

活動計算書は、経常費用を事業費と管理費に分けて表示するのが基本です。

第二に、財産目録と貸借対照表の数字が合っていないケースです。

預金残高は通帳と必ず突合してください。

第三に、その他の事業を行っているのに会計を区分していないケースです。

定款でその他の事業を定めているなら、区分経理が必要になります。

第四に、前年度の繰越金が引き継がれていないケースです。

前期末の正味財産が、今期の期首と一致しているか確認しましょう。

第五に、事業報告書と活動計算書で事業名が違うケースです。

同じ名前でそろえておくと、読む側にも分かりやすくなります。

毎年の報告のまとめ

NPO法人は、毎事業年度の開始から3か月以内に事業報告書等を提出します。

提出するのは、事業報告書、活動計算書、貸借対照表、財産目録、役員名簿、社員名簿です。

3月決算なら6月末が期限になります。

書類は一般に公開され、事務所にも直近5事業年度分を備え置きます。

提出を怠り続けると、改善命令や認証の取消しにつながります。

役員変更や定款変更があったときは、別に手続きが必要です。

日々の記録を溜めない運用にすれば、毎年の作業は大きく軽くなります。

よくある質問

Q. 提出期限はいつ?

A. 毎事業年度の開始から3か月以内です。3月末決算なら6月末、12月末決算なら3月末が期限になります。決算期の終了からではない点に注意してください。

Q. 何を提出する?

A. 事業報告書、活動計算書、貸借対照表、財産目録、年間役員名簿、前事業年度末日における社員のうち10人以上の名簿です。

Q. 提出しないとどうなる?

A. まず所轄庁から提出を促されます。従わないと改善命令の対象になり、3年以上提出しない状態が続くと認証の取消しにつながることがあります。助成金申請でも不利になります。

Q. 活動がなくても提出する?

A. 必要です。活動実績がない場合も、その旨を記載して提出します。休眠状態でも義務は続きます。

Q. 総会の前に提出してもいい?

A. 通常は総会で決算の承認を受けてから提出します。総会の開催時期は、提出期限から逆算して決めましょう。

Q. 書類は事務所にも置く必要がある?

A. あります。事業報告書等や定款、役員名簿などを直近5事業年度分備え置き、社員や利害関係人から閲覧を求められたら応じる必要があります。

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