一般財団法人の書類の備置きと保存期間|定款は期限なし・議事録10年・計算書類5年を一覧で整理

一般財団法人
一般財団法人の書類は、何を何年とっておけばいいですか?
事務所に置く義務があるものと、しまっておけばいいものがあると聞きました。

そのとおりです。一般法人法には「備置き」と「保存」という2つの別の義務があります。

備置きは、事務所に置いて請求があれば見せるための義務です。場所(主たる事務所か従たる事務所か)と年数が書類ごとに決まっています。保存は、見せることを前提としないとっておくだけの義務で、場所の指定がありません。

この2つを混ぜると、「10年保存すればいい」と考えて事務所に置かず、閲覧請求に応じられない状態になります。この記事では、一般財団法人の書類ごとに「どこに」「何年」を一覧にし、閲覧できる人の範囲と、怠ったときの過料までを条文つきで整理します。

まず一覧 ― 書類ごとに場所も年数も違う

書類 主たる事務所 従たる事務所 根拠
定款 期限なし(常に) 期限なし(常に) 156条1項
評議員会議事録 評議員会の日から10年 写しを5年 193条2項・3項
評議員会の決議を省略したときの書面 みなされた日から10年 義務なし 194条2項
理事会議事録 理事会の日から10年 義務なし 197条で準用する97条1項
計算書類等 定時評議員会の日の2週間前から5年 写しを3年 199条で準用する129条1項・2項
事業計画書・収支予算書など (一般財団法人には法律上の備置き義務なし) ※公益認定を受けた法人は認定法21条1項で義務
会計帳簿・重要な資料 保存:閉鎖の時から10年 199条で準用する120条2項
計算書類・附属明細書 保存:作成した時から10年 199条で準用する123条4項
POINT 上の表で色が変わるのは最後の2行です。ここだけが保存=場所の指定がなく、事務所に置く必要がない義務です。残りはすべて備置き=事務所に置いて閲覧に応じる義務です。

定款だけは期限がなく、両方の事務所に置く

156条1項は、一般財団法人が定款を主たる事務所および従たる事務所に備え置かなければならないと定めています。年数の定めはありません。法人が存続する限り、ずっと置き続けます。

従たる事務所にも義務がある点が、議事録や計算書類と違います。議事録は「写しを従たる事務所に」という形ですが、定款は写しではなく定款そのものを両方に置くことが求められています。

閲覧を請求できるのは評議員と債権者です(156条2項)。謄本・抄本の交付を請求されたときは、債権者に対しては法人が定めた費用を求められます。定款変更をしたときは、変更後の定款に差し替えます。定款変更の手続きは定款変更の記事で扱っています。

評議員会議事録は10年、写しは従たる事務所に5年

193条は、評議員会の議事録について次のように定めています。

評議員会議事録のルール(193条)

  • 法務省令の定めるところにより議事録を作成する(1項)
  • 評議員会の日から10年間、主たる事務所に備え置く(2項)
  • 評議員会の日から5年間、その写しを従たる事務所に備え置く(3項)
  • 電磁的記録で作り、従たる事務所で閲覧に応じられる措置をとっていれば、写しは不要(3項ただし書)
  • 評議員と債権者は、業務時間内はいつでも閲覧・謄写を請求できる(4項)

評議員会の決議を省略したとき(194条1項)は、議事録ではなく評議員全員の同意の意思表示を記載した書面を、みなされた日から10年間、主たる事務所に備え置きます(194条2項)。こちらは従たる事務所への写しの義務がありません。

POINT 🔑 一般財団法人の評議員会の決議の省略は、定款に定めがなくても使えます(194条1項)。定款の定めが要るのは理事会のほうです(197条で準用する96条)。ここは取り違えやすいので、備置きの前に手続きの根拠を確認してください。

理事会議事録は10年 ― 従たる事務所への写しは要らない

理事会議事録の備置きは、197条で準用する97条1項によります。理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置きます。

評議員会議事録と違い、従たる事務所に写しを置く義務はありません。条文が主たる事務所しか挙げていないためです。事務所が複数ある財団では、この差を運用に落とし込んでおくと管理が楽になります。

評議員会議事録 理事会議事録
主たる事務所 10年(193条2項) 10年(197条で準用する97条1項)
従たる事務所 写しを5年(193条3項) 義務なし
閲覧できる人 評議員・債権者(193条4項) 評議員(許可不要)・債権者(裁判所の許可が必要
決議を省略したときの書面 10年(194条2項) 議事録等に含めて10年(97条1項)

3行目の債権者の扱いが大きく違います。評議員会議事録は債権者も業務時間内にいつでも請求できますが、理事会議事録については債権者は理事または監事の責任を追及するために必要なときに限り、裁判所の許可を得て請求できます(197条で準用する97条3項)。詳しくは理事会議事録の記事で扱っています。

計算書類等は「定時評議員会の2週間前」から5年

計算書類等(計算書類・事業報告・これらの附属明細書、監査報告や会計監査報告を含む)は、199条で準用する129条によって備え置きます。

項目 内容 根拠
起算点 定時評議員会の日の2週間前の日(決議を省略したときは提案があった日) 199条で準用する129条1項
主たる事務所 起算点から5年間 同1項
従たる事務所 写しを起算点から3年間 同2項
写しの省略 電磁的記録で作成し、従たる事務所で閲覧に応じられる措置をとっていれば不要 同2項ただし書
閲覧できる人 評議員と債権者(業務時間内はいつでも) 同3項

起算点が「2週間前」なのは、一般財団法人が理事会を必ず置く法人だからです(170条1項)。一般社団法人では理事会を置かない場合に1週間前となりますが、財団にその選択肢はないため、常に2週間前で固定されます。

謄本・抄本の交付を請求するときは、法人が定めた費用の支払いが必要です(129条3項ただし書)。決算の流れそのものは決算の記事で扱っています。

「保存」は備置きとは別 ― 会計帳簿と計算書類は10年

ここまでが備置きです。これとは別に、次の2つには保存の義務があります。場所の指定がないので、倉庫や外部の保管サービスでも構いません。

対象 期間 起算点 根拠
会計帳簿およびその事業に関する重要な資料 10年 会計帳簿の閉鎖の時 199条で準用する120条2項
計算書類およびその附属明細書 10年 作成した時 199条で準用する123条4項

注意したいのは、計算書類が備置き5年と保存10年の両方にかかることです。「5年で処分してよい」と読むと、保存義務のほうに違反します。備置きの5年が過ぎても、作成から10年は手元に残しておく必要があります。

「その事業に関する重要な資料」の範囲は法律に定義がありません。契約書・領収書・請求書など、会計帳簿の記載を裏づける資料が該当すると考えて運用します。

誰が閲覧を請求できるか

一般財団法人には社員がいないので、閲覧を請求できるのは基本的に評議員債権者です。書類ごとに範囲が違います。

書類 評議員 債権者 一般の第三者
定款 ×
評議員会議事録 ×
計算書類等 ×
理事会議事録 ○(許可不要 △(裁判所の許可が必要) ×
会計帳簿 ○(理由の説明は不要) × ×

会計帳簿について補足します。一般社団法人では、社員が閲覧を請求するときに請求の理由を明らかにする必要がありますが(121条1項後段)、199条はこの後段を準用の対象から外しているため、財団の評議員は理由を示さずに会計帳簿の閲覧を請求できます。評議員が理事を監督する立場にあることの表れです。

なお、公益認定を受けた法人は扱いが大きく変わります。認定法21条5項により何人も財産目録等の閲覧を請求でき、法人は正当な理由がなければ拒めません。公益法人になると、閲覧の相手方が一般に開かれるということです。

電磁的記録で作ったときの扱い

議事録・計算書類等は電磁的記録で作成できます。その場合、従たる事務所への写しの備置きを省略できる場面があります。

写しの備置きを省略できる条件

  • 書類を電磁的記録で作成していること
  • 従たる事務所で、電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示できる措置をとっていること
  • 評議員会議事録は193条3項ただし書、計算書類等は199条で準用する129条2項ただし書が根拠

「措置をとっている」とは、従たる事務所の端末から閲覧請求に応じられる状態を指します。本店のサーバーにあるだけで従たる事務所から見られないなら、条件を満たしません。省略できるのは写しだけで、主たる事務所への備置き自体は省略できません。

怠ると100万円以下の過料 ― 法人ではなく個人に科される

342条は、理事・監事・評議員などが次のことをしたときに100万円以下の過料に処すると定めています。法人への罰ではなく、行為をした人個人に科される点が重要です。

内容 備置きとの関係
4号 正当な理由がないのに閲覧・謄写・謄本の交付などを拒んだとき 置いていても見せなければ過料
7号 議事録・財産目録・会計帳簿・貸借対照表などに記載すべき事項を記載せず、または虚偽の記載をしたとき 中身が空でも過料
8号 156条1項・193条2項3項・194条2項・97条1項(197条で準用)129条1項2項(199条で準用)などに違反して備え置かなかったとき 本記事の備置き義務そのもの

8号は、財団の備置き義務を条文名で名指ししています。定款・評議員会議事録・決議省略の書面・理事会議事録・計算書類等のいずれを置かなくても、この号に当たります。

刑事罰ではないので前科にはなりませんが、過料は理事などが個人として納めるものです。「忙しくて作っていない」は正当な理由になりません。

年度末にやることの順番

3月決算の財団の例

  • 事業年度末(3月31日):会計帳簿を閉鎖する → ここから10年の保存が始まる
  • 4〜5月:計算書類・事業報告・附属明細書を作成し、監事の監査を受ける
  • 定時評議員会の2週間前:計算書類等を主たる事務所に備え置く(写しを従たる事務所に)
  • 定時評議員会:計算書類の承認を受ける → 議事録を作成
  • 評議員会後すみやかに:議事録を主たる事務所へ(写しを従たる事務所へ) → 10年・5年
  • 貸借対照表の公告(199条で準用する128条1項)
  • 古い書類の点検:備置き期間が過ぎたものでも、保存10年が残っていないか確認する

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

よくある質問

Q. 備置きと保存は何が違うのですか?

A. 備置きは事務所に置いて閲覧請求に応じるための義務で、場所と年数が条文で決まっています。保存は、とっておくだけの義務で場所の指定がありません。会計帳簿(199条で準用する120条2項)と計算書類(同123条4項)が保存、それ以外は備置きです。

Q. 従たる事務所がない財団は、写しを用意しなくてよいですか?

A. 用意する必要はありません。写しの備置きは「従たる事務所」に対する義務なので、従たる事務所が存在しなければ適用されません。主たる事務所への備置きは変わらず必要です。

Q. 計算書類は5年で処分してよいですか?

A. 処分できません。備置きは定時評議員会の2週間前から5年ですが、これとは別に作成した時から10年の保存義務があります(199条で準用する123条4項)。備置き期間が終わっても、保存期間が残っています。

Q. 理事会議事録の写しを従たる事務所に置く必要はありますか?

A. ありません。197条で準用する97条1項は主たる事務所だけを挙げています。写しの義務があるのは評議員会議事録(193条3項)と計算書類等(199条で準用する129条2項)です。

Q. 評議員が会計帳簿を見たいと言ってきました。理由を聞けますか?

A. 理由の説明を求めることはできません。一般社団法人の社員には請求理由を明らかにする義務がありますが(121条1項後段)、199条はこの部分を準用していないため、財団の評議員は理由を示さずに請求できます。

Q. 債権者から理事会議事録を見せてほしいと言われました。

A. 裁判所の許可がなければ応じる義務はありません。債権者が理事会議事録の閲覧を請求できるのは、理事または監事の責任を追及するために必要なときに裁判所の許可を得た場合に限られます(197条で準用する97条3項)。

Q. 紙で保管する場所がありません。すべて電子化してよいですか?

A. 電磁的記録での作成は認められています。ただし従たる事務所の写しを省略するには、従たる事務所で法務省令の定める方法により表示できる措置をとっている必要があります(193条3項ただし書・199条で準用する129条2項ただし書)。主たる事務所での備置き自体は、電子化しても省略できません。

Q. 備置きを怠ると法人が罰金を払うのですか?

A. いいえ。342条8号の過料は、理事・監事・評議員などの個人に対して科されます。100万円以下で、刑事罰ではありません。閲覧を拒んだ場合(4号)や、議事録に虚偽の記載をした場合(7号)も同じ過料の対象です。

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