法人格とは?団体が「人」になるということ|取り方は法人の種類で違う・登記で発生する仕組みを条文で解説

一般社団法人法
「法人格を取ったほうがいい」と言われました。
法人格とは何でしょうか?

法人格とは、団体そのものが権利を持ち、義務を負うことができる資格のことです。法律が団体に「人」としての立場を与える、と考えるとわかりやすくなります。

法人格があれば、団体名義で銀行口座を開き、不動産を登記し、契約書に団体の名前で署名できます。代表者が交代しても、名義を書き換える必要はありません。

この記事では、法人格とは何か、どうすれば得られるのか、得たあとに何が発生するのかを、民法・一般法人法・NPO法・会社法の条文にあたって整理します。

法人格とは ― 団体が「人」として扱われる資格

権利や義務の持ち主になれるのは、法律上「人」だけです。生きている人間を自然人といい、法律が人と同じ立場を認めた団体を法人といいます。この「人としての立場」が法人格です。

一般法人法3条は一般社団法人及び一般財団法人は、法人とすると、会社法3条は会社は、法人とすると、それぞれ一文で定めています。この一文があるから、団体が財産を持てるようになります。

POINT 法人格は「信用の証明」ではありません。登記をすれば誰でも得られるものもあります。取引の相手を判断する材料としては、法人格の有無だけでなく登記簿の中身や活動実績を見る必要があります。

法人格がないと何ができないのか

やりたいこと 法人格なし(任意団体) 法人格あり
団体名義の銀行口座 原則として開けない(代表者個人名+団体名の併記が限界) 開ける
不動産の登記 できない(代表者個人か構成員全員の名義) 法人名義でできる
契約の当事者 代表者個人が当事者になる 法人が当事者
訴訟 代表者または管理人の定めがあれば団体名でできる(民事訴訟法29条) できる
代表者の交代 名義の書き換えが必要 影響なし
代表者の死亡・借金 団体の財産が相続や差押えに巻き込まれるおそれ 影響なし

いちばん痛いのが財産の帰属です。任意団体の財産は、形のうえでは代表者個人のものか、構成員全員で持っているものとして扱われます。代表者が亡くなれば相続の対象に含まれかねません

訴訟だけは例外で、民事訴訟法29条が法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができると定めています。ただし、これは訴訟の場面に限った話で、登記名義人にはなれません。

法人は「法律がある種類」しか作れない(民法33条1項)

民法33条1項は、法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しないと定めています。これを法人法定主義といいます。

つまり、好きな名前の法人を自由に発明することはできません。一般社団法人・一般財団法人・株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人・学校法人・宗教法人・医療法人など、法律が用意した種類の中から選ぶことになります。

同条2項は、法人の設立・組織・運営・管理についても法律の定めるところによるとしています。定款で自由に決められる部分と、法律が動かせない部分があるのはこのためです。

法人格の取り方は4つに分かれる

方式 意味
準則主義 法律の要件を満たして登記すれば成立する。行政の判断が入らない 一般社団法人・一般財団法人・株式会社・合同会社
認証主義 所轄庁の認証を受けたうえで登記する NPO法人・宗教法人
認可主義 所轄庁の認可を受けたうえで登記する。行政の裁量が広い 社会福祉法人・学校法人・医療法人
許可主義 主務官庁の許可が必要。現在はほぼ使われていない 2008年11月30日までの旧・社団法人/財団法人

いちばん早いのが準則主義です。一般社団法人なら、公証人の定款認証と法務局への登記だけで、おおむね2〜3週間で法人格が得られます。行政が「ふさわしいかどうか」を判断する場面がありません。

NPO法人は認証主義で、所轄庁の審査と縦覧を経るためおおむね3か月かかります。そのかわり設立時の登録免許税も定款認証の手数料もかかりません

法人格が発生するのは「設立の登記」をした瞬間

成立の時期を定めた条文

  • 一般社団法人……主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立(一般法人法22条)
  • 一般財団法人……同じく設立の登記によって成立(一般法人法163条)
  • 株式会社……本店の所在地において設立の登記をすることによって成立(会社法49条)
  • NPO法人……主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立(NPO法13条1項)

どの法人も表現がそろっています。定款を作った日でも、認証を受けた日でもなく、登記をした日が誕生日です。

ここを取り違えると事故が起きます。NPO法人の場合、所轄庁の認証は「設立してよい」という許可にすぎず、この段階ではまだ法人格がありません。NPO法13条3項は、認証があった日から6か月を経過しても登記をしないときは所轄庁が認証を取り消すことができるとしています。

民法36条も、法人及び外国法人は、この法律その他の法令の定めるところにより、登記をするものとすると定めています。登記は法人格とセットの仕組みです。

法人格があっても、何でもできるわけではない(民法34条)

民法34条は、法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負うと定めています。

法人ができるのは定款に書いた目的の範囲内だ、ということです。実務では目的の範囲はかなり広く解釈されますが、定款の目的にまったく書いていない事業を始めるなら、先に定款を変更するのが安全です。

また、法人の種類ごとの制約もあります。一般社団法人は社員に剰余金や残余財産を分配できませんし(一般法人法11条2項)、NPO法人は別表の20分野以外を主たる目的にできません(NPO法2条1項)。

法人格のない団体は「権利能力なき社団」と呼ばれる

法人格を持たない団体を、法律の世界では権利能力なき社団(法人でない社団)と呼びます。自治会・同窓会・研究会・保護者会などがこれにあたります。

判例(最高裁昭和39年10月15日判決)は、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、代表の方法・総会の運営・財産の管理など主要な点が確定していれば、法人に準じた扱いを一部認めるとしています。

ただし、認められるのはあくまで一部です。登記名義人になれないという壁は動きません。不動産を持つ予定があるなら、法人格の取得は避けて通れません。

主な法人格を一覧で比べる

法人格 営利/非営利 取り方 最低人数 設立時の税負担
株式会社 営利 準則主義(定款認証+登記) 1人 定款認証+登録免許税
合同会社 営利 準則主義(定款認証なし+登記) 1人 登録免許税
一般社団法人 非営利 準則主義(定款認証+登記) 社員2人+理事1人 定款認証+登録免許税
一般財団法人 非営利 準則主義(定款認証+登記) 設立者1人+役員等7人 定款認証+登録免許税+300万円の拠出
NPO法人 非営利 認証主義(所轄庁の認証+登記) 社員10人+理事3人+監事1人 なし
公益社団・財団法人 非営利 一般法人が公益認定を受ける 一般法人と同じ
社会福祉法人・学校法人・医療法人 非営利 認可主義 法律ごとに異なる

「早く・安く・自由に」であれば一般社団法人、「時間はかかるが設立費用ゼロ」であればNPO法人、「もうけを分配したい」なら株式会社・合同会社という切り分けになります。

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。

法人格を得ると発生する義務

法人になったら毎年ついてくるもの

  • 決算と申告……所得がなくても法人税の申告は必要です。法人住民税の均等割は、赤字でも原則としてかかります。
  • 役員の変更登記……任期ごとに登記します。怠ると過料の対象になります(一般社団法人は100万円以下・一般法人法342条)。
  • 書類の備置きと閲覧対応……定款は事務所に備え置き、社員と債権者の請求に応じます(一般法人法14条)。
  • 社会保険……法人が人を雇えば加入手続きが発生します。
  • NPO法人はさらに所轄庁への年次報告(NPO法29条)と、所轄庁での情報公開(同法30条)が加わります。

法人格はもらったら終わりではありません。維持する事務と費用が毎年発生する点を、取得の前に見ておいてください。

放置した場合の受け皿もあります。一般社団法人・一般財団法人は、最後の登記から5年が経過すると解散したものとみなされる制度があります。登記を続ける意思があるなら、任期ごとの手続きを忘れないことです。

法人格はいつ消えるのか

解散しただけでは法人格は消えません。解散すると清算の手続きに入り、債権を取り立て、債務を返し、残った財産の行き先を決めます。

すべてが終わって清算結了の登記をしたときに、法人格が消滅します。解散=終わりではなく、清算結了=終わりです。

清算中の法人も法人格を持っていますので、清算の目的の範囲内で権利を持ち、義務を負います。解散を決めたあとも、口座や契約はすぐには消えません。

よくある3つの誤解

取り違えが多いところ

  • 誤解1「法人格=信用」……一般社団法人や合同会社は、要件を満たせば登記だけで作れます。法人格があること自体は、活動実績や財務の裏づけを意味しません。
  • 誤解2「法人格があれば代表者は責任を負わない」……法人の債務と個人の債務は別ですが、代表者が任務を怠って第三者に損害を与えれば個人としての責任を問われることがあります。金融機関から個人保証を求められる場面もあります。
  • 誤解3「NPO法人は認証されれば法人になる」……認証は登記の前段階です。法人格が発生するのは設立の登記をしたときです(NPO法13条1項)。

誤解2はとくに注意が必要です。「法人にすれば個人の財産は絶対に守られる」と考えるのは正確ではありません。法人格は財産の名義を分ける仕組みであって、責任をすべて遮断する仕組みではありません。

法人格についてよくある質問

Q. 法人格とは何ですか?

A. 団体そのものが権利を持ち、義務を負うことができる資格です。一般法人法3条は「一般社団法人及び一般財団法人は、法人とする」、会社法3条は「会社は、法人とする」と定めています。法人格があれば団体名義で口座を開き、不動産を登記し、契約の当事者になれます。

Q. 法人格はいつ発生しますか?

A. 設立の登記をしたときです。一般社団法人は一般法人法22条、一般財団法人は163条、株式会社は会社法49条、NPO法人はNPO法13条1項が、いずれも「設立の登記をすることによって成立する」と定めています。定款を作った日でも、認証を受けた日でもありません。

Q. 法人格がなくても活動できますか?

A. できます。任意団体のまま会費を集めて活動している団体は多数あります。ただし団体名義で銀行口座を開いたり不動産を登記したりできず、財産は代表者個人の名義になりがちです。訴訟だけは、代表者または管理人の定めがあれば団体名でできます(民事訴訟法29条)。

Q. 好きな種類の法人を作れますか?

A. できません。民法33条1項が「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない」と定めており、法律が用意した種類の中から選ぶことになります。

Q. 法人格を取るのにいちばん早い方法は何ですか?

A. 準則主義の法人です。一般社団法人・合同会社・株式会社は、要件を満たして登記すれば成立し、行政の審査がありません。一般社団法人ならおおむね2〜3週間です。NPO法人は所轄庁の認証が要るためおおむね3か月かかります。

Q. 法人格があれば何をしてもよいのですか?

A. いいえ。民法34条は、法人は定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において権利を有し義務を負うと定めています。また一般社団法人は社員に剰余金を分配できず(一般法人法11条2項)、NPO法人は別表の20分野以外を主たる目的にできません。

Q. 法人格はいつ消えますか?

A. 清算結了の登記をしたときです。解散しただけでは消えません。解散後は清算の手続きに入り、債務を返して残余財産の行き先を決め、すべてが終わってから清算結了の登記をします。

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