公益法人の役員報酬と報酬等の支給基準|「不当に高額でない」基準の作り方・評議員も対象・変更は届出・2,000万円超は理由を書く

公益法人
公益社団法人の事務局長です。理事長から「来年度から常勤理事に月額を払いたい」と言われました。
一般社団法人のときは社員総会で決めればよかったはずですが、公益法人だと何が違いますか。

決め方が一段増えます。一般法人法の手続(定款または社員総会・評議員会の決議)に加えて、公益法人は「不当に高額なものとならないような支給の基準」をあらかじめ定め、その基準に従って支給することを認定法が求めています(5条14号・20条)。個別の理事にいくら払うかを決める前に、基準そのものが要るということです。

この記事では、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)と施行規則の条文で、報酬等の範囲、基準に書く事項、「不当に高額でない」の物差し、申請・変更・備置き・公表の手続、2,000万円超の扱い、守らなかったときの帰結を整理します。2025年4月1日施行の改正で条文の号番号が動いているので、現行の番号で書きます(報酬基準は5条14号です)。

公益法人の役員報酬は「基準を定めて、基準どおりに払う」(認定法5条14号・20条)

場面 求められること 根拠
認定を受けるとき 理事・監事・評議員に対する報酬等について、内閣府令で定めるところにより、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めていること 5条14号
認定を受けたあと 5条14号の支給の基準に従って、理事・監事・評議員に対する報酬等を支給しなければならない 20条
基準を変えるとき 行政庁に届出(変更認定は不要) 13条1項5号・規則13条2項2号
毎事業年度 基準を記載した書類を作成・備置き・提出。何人も閲覧でき、行政庁が公表 21条2項3号・5項/22条

ポイントは、基準は「認定のときに一度作れば終わり」ではなく、20条によって支給のたびに縛る規範になることです。基準に書いていない賞与を出す、基準の上限を超えて払う、といったことは20条違反になります。

「報酬等」の範囲 ― 報酬・賞与・退職手当まで含む(5条14号かっこ書)

5条14号は報酬等を「報酬、賞与その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益及び退職手当」と定義しています。一般法人法89条の「報酬等」(報酬、賞与その他の職務執行の対価として受ける財産上の利益)に、退職手当を明示的に加えた形です。

項目 報酬等に含まれるか 理由
月額報酬・年額報酬 含まれる 職務遂行の対価
賞与 含まれる 5条14号が明示
退職手当(退職慰労金) 含まれる 5条14号が明示
理事会・評議員会に出席するごとの日当 含まれる 職務遂行の対価として受ける財産上の利益
社宅・車両など現物の利益 含まれる 「財産上の利益」は金銭に限らない
交通費・宿泊費などの実費の弁償 含まれない 職務遂行の対価ではなく、立て替えた費用の精算
職員を兼ねる理事の職員給与 5条14号の報酬等ではないが、規則46条の2,000万円判定では合算 規則46条1項2号ハ
POINT 実費の弁償は報酬等ではありませんが、基準の中に「費用弁償は実費とし、報酬等に含めない」と一文書いておくと、閲覧した人にも行政庁にも区別が伝わります。書かないと、日当と実費の境目で説明を求められます。

基準に必ず書く3つの事項(規則3条)

施行規則3条は、支給の基準において「理事等の勤務形態に応じた報酬等の区分及びその額の算定方法並びに支給の方法及び形態に関する事項」を定めるものとしています。分解すると3つです。

事項 書くこと 書き方の例
① 勤務形態に応じた区分 常勤・非常勤、理事・監事・評議員、代表理事・業務執行理事・その他の理事、といった区分 「常勤理事」「非常勤理事」「監事」「評議員」の4区分
② 額の算定方法 区分ごとに、月額・年額・日当などの計算の仕方と上限。金額そのものでなく算定方法でよいが、上限は数字で 常勤理事は月額報酬(上限◯円)/非常勤理事・監事・評議員は出席1回につき日当◯円/賞与は支給しない/退職手当は月額×在任年数×係数を上限
③ 支給の方法及び形態 いつ・どのように払うか(毎月◯日・銀行振込・現物支給の有無・退職手当の支給時期) 毎月25日に指定口座へ振込/現物支給は行わない/退職手当は退任後の理事会承認を経て一括支給

「無報酬」の法人も基準は要ります。「理事・監事・評議員には報酬等を支給しない。費用弁償は実費とする」という基準が、それに当たります。5条14号は基準を定めていることを求めているので、払わない法人にも適用されます。

「不当に高額でない」の物差し ― 民間の役員報酬・従業員給与・法人の経理の状況(5条14号)

5条14号は、基準を作るときに考慮する事情を3つ挙げています。

考慮事情 意味 実務での使い方
民間事業者の役員の報酬等 同程度の規模・事業の民間法人の役員報酬の水準 公表されている役員報酬の統計・同規模団体の公表基準と比べ、突出しない上限にする
従業員の給与 当該法人の職員の給与水準 常勤理事の月額が職員の最高給与から不釣り合いに離れていないか
当該法人の経理の状況 収支・純資産・寄附金への依存度 寄附金や補助金が主な財源の法人で、経常費用に占める役員報酬の割合が大きすぎないか

条文は「不当に高額なものとならない」という規範だけを置き、金額の上限は書いていません。いくらまでなら適法、という数字は法令上ありません。だからこそ、基準の中に上限を数字で置き、その根拠(民間水準・職員給与・経理の状況)を説明できるようにしておくことが、認定時にも立入検査時にも効きます。

関連して、認定法5条3号は「社員、評議員、理事、監事、使用人その他の関係者に特別の利益を与えない」ことを基準にしています。職務の実態に見合わない高額の報酬は、この特別の利益に当たるとして問題になります。報酬基準は14号だけでなく3号からも見られます。

評議員も対象 ― 一般法人法の決め方との二重構造(一般法人法89条・105条・196条・197条)

認定法の基準とは別に、個別の額を誰が決めるかは一般法人法が定めています。公益法人はこの両方を満たします。

役員 公益社団法人(一般社団法人のルール) 公益財団法人(一般財団法人のルール) 根拠
理事 定款に額を定めていないときは社員総会の決議 定款に額を定めていないときは評議員会の決議 89条/197条で読み替え準用
監事 定款に額を定めていないときは社員総会の決議。2人以上で個別の定めがなければ総額の範囲内で監事の協議。監事は総会で意見を述べられる 同じ構造で評議員会。監事は評議員会で意見を述べられる 105条/197条
評議員 (評議員は置かれない) 報酬等の額は定款で定めなければならない。評議員会の決議では決められない 196条

認定法5条14号は理事・監事に加えて評議員も対象にしています。公益財団法人は、評議員の報酬等の額を定款に書き(196条)、その定款の定めが認定法の「不当に高額でない基準」にも適合している必要があります。評議員に日当を払うなら、定款と報酬基準の両方に載せます。

また、一般法人法上の「監事の報酬は理事と区別して決める」構造(105条)は公益法人でも同じです。報酬基準の中でも、理事と監事の区分を分けて書くのが自然です。

申請時に添付し、変えたら届け出る(認定法7条2項5号・13条・規則13条2項2号)

場面 手続 根拠
公益認定の申請 申請書に「第五条第十四号に規定する報酬等の支給の基準を記載した書類」を添付 7条2項5号
基準の変更 遅滞なく行政庁に届出(様式第三号)。変更認定ではない 13条1項5号・規則13条1項・2項2号
変更届出の添付 7条2項各号の書類のうち変更に係るもの=変更後の基準を記載した書類 規則13条3項

報酬基準の変更は「軽い」手続(届出)ですが、変更後の基準も5条14号に適合していなければならず、適合しなくなれば取消し事由です(29条2項1号)。上限を引き上げる変更は、届出の前に「なぜその額か」を民間水準・職員給与・経理の状況で説明できるかを確認しておきます。

備え置く・誰でも閲覧できる・行政庁が公表する(認定法21条2項3号・5項・22条)

義務 内容 根拠
備置き 毎事業年度経過後3か月以内に「報酬等の支給の基準を記載した書類」を作成し、主たる事務所に5年間、写しを従たる事務所に3年間備え置く 21条2項3号
閲覧 何人も、業務時間内はいつでも閲覧を請求でき、法人は正当な理由なく拒めない 21条5項
提出 毎事業年度経過後3か月以内に行政庁へ提出 22条1項
公表 行政庁が提出書類を公表する(インターネットの利用その他の適切な方法) 22条2項・規則72条

報酬基準は、寄附者・会員・取引先が「この法人は役員にいくら払う仕組みか」を確かめられる書類として設計されています。公益法人informationで各法人の提出書類が公開されているので、他の公益法人の基準を読んで自法人の水準を比べることもできます。

2,000万円を超える人がいれば、額と必要の理由を書く(規則46条1項2号ハ)

事業年度経過後3か月以内に作成する「運営組織に関する重要な事項を記載した書類」には、理事等の当該事業年度に係る役員報酬、賞与その他の職務遂行の対価として公益法人から受ける財産上の利益の合計額が2,000万円を超える者がいる場合、当該額及びその必要の理由を記載します(規則46条1項2号ハ)。

この判定では、その理事等が法人の職員を兼ねている場合の職員としての報酬・賞与も合算します。「理事報酬は少額だが職員給与と合わせると2,000万円を超える」ケースが対象です。この書類も備置き・閲覧・提出・公表の対象なので、2,000万円を超える人の額と理由は外部から読まれます。

POINT 2,000万円は「これを超えたら違法」という線ではありません。超えたら理由を書いて公開するという透明化のラインです。基準(5条14号)の「不当に高額でない」とは別の仕組みなので、2,000万円未満なら自動的に適法、という読み方もできません。

守らないとどうなる(認定法29条2項・28条)

状態 帰結 根拠
基準を定めていない/基準が「不当に高額でない」ものと言えない 5条の基準に適合しなくなった=行政庁は公益認定を取り消すことができる 29条2項1号
基準はあるが、基準に従わずに支給した 20条(第二節の規定)の不遵守=取消し事由。まず勧告(内容は公表)→命令→取消しの順 29条2項2号・28条
基準の変更を届け出ない 13条違反。届出を怠ったことを理由とする監督処分等は委員会への諮問を要しない類型 13条・43条1項2号ロ
基準を記載した書類を備え置かない・虚偽記載 30万円以下の罰金 64条3号

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
  • 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。

報酬等の支給の基準を作る・見直すときのチェックリスト

基準の中身(規則3条の3事項と補足)

  • 区分:常勤・非常勤、理事・監事・評議員(財団)、代表理事・業務執行理事・その他の理事を分けた
  • 算定方法:区分ごとに月額・年額・日当のどれで計算するかと上限額を数字で書いた
  • 賞与・退職手当:支給するかしないか、するなら算定方法と上限を書いた
  • 支給の方法と形態:支給日・振込・現物支給の有無・退職手当の支給時期を書いた
  • 費用弁償:実費とし報酬等に含めないことを書いた
  • 無報酬の法人:「支給しない」旨を基準として書いた
  • 根拠:上限額を民間事業者の役員報酬・職員給与・法人の経理の状況で説明できる資料を残した
手続と公開

  • 一般法人法の手続を踏んだ:社団は定款または社員総会、財団は定款または評議員会(理事・監事)、評議員の額は定款(196条)
  • 認定申請時に基準を記載した書類を添付した(7条2項5号)
  • 基準を変えたら遅滞なく届け出た(13条・規則13条2項2号)
  • 毎年、基準を記載した書類を作成して5年間備え置き、行政庁へ提出した(21条2項3号・22条1項)
  • 報酬等(職員給与を含む合計)が2,000万円を超える人の額と理由を書いた(規則46条1項2号ハ)
  • 閲覧請求が来たときの窓口を決めた(21条5項)

よくある質問

Q. 公益法人は役員に報酬を払ってよいのですか?

A. 払えます。認定法は報酬の支給そのものを禁じておらず、理事・監事・評議員の報酬等について「不当に高額なものとならないような支給の基準」を定め(5条14号)、その基準に従って支給すること(20条)を求めています。

Q. 報酬基準にはいくらまでと書けばよいですか?

A. 法令上の上限額はありません。5条14号は民間事業者の役員の報酬等・従業員の給与・法人の経理の状況その他の事情を考慮して不当に高額にならない基準を求めるだけです。基準の中に区分ごとの上限を数字で置き、その根拠を説明できるようにしておきます。

Q. 無報酬の法人でも報酬基準は必要ですか?

A. 必要です。5条14号は基準を「定めていること」を認定基準にしています。「理事・監事・評議員に報酬等を支給しない。費用弁償は実費とする」という内容の基準を定めます。

Q. 退職慰労金は報酬基準に入りますか?

A. 入ります。5条14号は報酬等を「報酬、賞与その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益及び退職手当」と定義しており、退職手当が明示されています。支給するなら算定方法と上限を基準に書きます。

Q. 評議員に日当を払うにはどうしますか?

A. 評議員の報酬等の額は定款で定めなければならず(一般法人法196条)、評議員会の決議だけでは決められません。あわせて認定法5条14号の報酬基準にも評議員の区分と算定方法を書きます。

Q. 報酬基準を変えるときは変更認定が必要ですか?

A. 不要です。報酬等の支給の基準の変更は届出事項で、遅滞なく行政庁に届け出ます(認定法13条1項5号・規則13条2項2号)。変更後の基準も5条14号に適合している必要があります。

Q. 報酬基準は誰でも見られますか?

A. 見られます。基準を記載した書類は毎事業年度作成して5年間備え置き(21条2項3号)、何人も業務時間内に閲覧を請求でき(21条5項)、行政庁に提出されて公表されます(22条)。

Q. 2,000万円を超える報酬は違法ですか?

A. 違法とする規定はありません。規則46条1項2号ハは、報酬等(職員を兼ねる場合の職員給与を含む)の合計が2,000万円を超える者がいる場合に、その額と必要の理由を書類に記載して備置き・提出することを求める透明化の仕組みです。基準の「不当に高額でない」要件は別に判断されます。

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