NPO法人が活動の地域を広げるとき、手続きが必要かどうかは場合によります。
活動するだけなら、届出は要りません。
一方、事務所を置くなら手続きが生じます。
この記事では、その線引きを解説します。
活動と事務所は別
まず、二つを分けて考えます。
活動をどこで行うかは、自由です。
定款に、活動の地域を書く必要もありません。
書いている団体も、ありますが義務ではありません。
一方、事務所は定款の記載事項です。
主たる事務所の所在地を、書きます。
従たる事務所を置く場合も、定款に書きます。
手続きが生じるのは、この事務所の部分です。
活動を広げるだけなら、届出は要りません。
定款に地域を書いている場合
定款の目的や事業に、地域を書いている団体があります。
○○市において、といった書き方です。
この場合、その範囲を超える活動は問題になり得ます。
定款に反する活動になるためです。
広げるなら、定款変更が必要です。
目的や事業の変更は、認証が要ります。
数か月かかることを、見込みましょう。
将来を考えるなら、地域を限定しないほうが柔軟です。
設立の段階で、この点を意識しておきましょう。
| やりたいこと | 必要な手続き | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 隣の市で活動する | 不要(定款に地域の限定がなければ) | — |
| 定款の地域の記載を広げる | 定款変更の認証 | 数か月 |
| 従たる事務所を置く | 定款変更+登記 | 数か月 |
| 主たる事務所を移す | 定款の記載による | 場合により数か月 |
| 他県へ主たる事務所を移す | 所轄庁の変更+認証 | 数か月 |
従たる事務所を置くとき
活動が広がると、拠点が欲しくなります。
従たる事務所として、定款に書くことになります。
定款変更の手続きが、必要です。
登記も、あわせて行います。
手続きが増えるぶん、負担も増えます。
本当に事務所として必要かを、考えましょう。
活動の拠点にすぎない場所なら、事務所としない選択もあります。
看板を出さず、郵便も受け取らない形です。
実態に応じて、判断してください。
所轄庁が変わる場合
事務所の置き方によって、所轄庁が変わります。
主たる事務所のある都道府県が、原則の所轄庁です。
同じ都道府県内に従たる事務所を置くだけなら、変わりません。
主たる事務所を他県へ移すと、所轄庁が変わります。
この場合、定款変更の認証が必要です。
書類の引き継ぎも、行われます。
移転の予定が決まったら、早めに相談しましょう。
認証に時間がかかるためです。
手続きの案内は、所轄庁ごとに異なります。
- 定款に活動の地域を書いていないか
- 定款の事業の記載に収まるか
- 事務所を置く必要が本当にあるか
- 所轄庁が変わる形になっていないか
- 許認可が必要な事業ではないか
- 担う人と資金があるか
- 既存の活動に支障が出ないか
- 現地の協力者がいるか
- 移動の時間と費用を見積もったか
許認可がある事業の注意
許認可を受けている事業は、扱いが違います。
介護保険や、障害福祉のサービスが代表です。
事業所ごとに、指定を受ける仕組みです。
別の場所で行うなら、あらためて指定が要ります。
自治体をまたぐと、窓口も変わります。
人員や設備の基準も、満たす必要があります。
準備に、相応の時間がかかります。
定款の手続きと、並行して進めることになります。
順番を、あらかじめ確認しておきましょう。
広げる前に足元を見る
地域を広げることは、良いことばかりではありません。
担う人と資金には、限りがあります。
新しい場所に人を割けば、既存の活動が薄くなります。
移動の時間と費用も、増えます。
現地に協力者がいないと、続きません。
呼ばれたから広げる、という進め方は危ういものです。
一度始めると、簡単には止められません。
利用者や、関わる人が生まれるためです。
始める前に、続けられるかを考えましょう。
現地の協力者を作る
広げるなら、現地に人がいることが前提です。
外から通うだけでは、続きません。
第一に、現地の団体とつながります。
第二に、中間支援組織に相談します。
第三に、現地の会員を増やします。
第四に、現地の行政の担当課に挨拶します。
第五に、現地で活動する日を定期的に作ります。
顔が見える関係ができてから、拠点を考えましょう。
順番を逆にすると、事務所だけが残ります。
広げずに連携する
自分たちで広げる以外の方法も、あります。
現地の団体と、連携する形です。
こちらのやり方を、伝えて実施してもらいます。
研修や、資料の提供という関わり方です。
自分たちの負担は、大きく減ります。
現地の実情に、合わせてもらえる利点もあります。
名前の使い方は、あらかじめ取り決めます。
質を保つ仕組みも、考えておきましょう。
広げることが目的ではなく、課題が解決されることが目的です。
報告書への書き方
活動の地域が広がったら、事業報告書にも書きます。
どこで、何を行ったかを記載します。
定款の記載と、整合するかを確認します。
地域を限定して書いているなら、矛盾が生じます。
所轄庁は、この整合を見ています。
事業計画書にも、あらかじめ書いておきましょう。
年度の途中で始めた場合は、その旨を書きます。
書類の間でずれがないよう、確認してください。
一度ずれると、翌年以降も説明が必要になります。
全国に広げる場合
全国規模の活動を目指す団体も、あります。
この場合、体制の作り方が変わります。
第一に、事務局の機能を強くする必要があります。
第二に、各地の担い手を育てることになります。
第三に、意思決定の仕組みを整えます。
各地の意見を、どう吸い上げるかです。
第四に、資金の規模も大きくなります。
第五に、情報公開の水準も上がります。
規模が大きいほど、外からの目も厳しくなります。
段階を踏んで、進めましょう。
広げないという判断
地域に根ざしたまま、続ける選択もあります。
規模が大きいことが、良いとは限りません。
顔の見える範囲だからこそ、できることがあります。
一人ひとりに、丁寧に向き合えます。
広げると、その良さが失われることもあります。
目的に照らして、判断しましょう。
課題を解決するために、規模が必要かどうかです。
必要でないなら、深めるほうに力を使えます。
広げないことも、立派な戦略です。
会員の分布を見る
広げる前に、いまの会員の分布を見ましょう。
すでに他の市に、会員がいることがあります。
その人たちが、現地の担い手になり得ます。
名簿を、住所ごとに数えてみてください。
意外な広がりが、見えることがあります。
逆に、まったくいない地域なら足場がありません。
一から作ることになります。
会員のいる地域から、順に広げるのが自然です。
呼びかけの手紙を出すだけでも、反応が分かります。
数字で見てから、判断しましょう。
広げ方の順番
広げるにも、順番があります。
第一に、単発の催しを現地で開きます。
第二に、反応を見ます。
参加者の数と、その後の関心です。
第三に、定期的に行く日を作ります。
第四に、現地の協力者を募ります。
第五に、拠点が必要かを判断します。
この順で進めれば、無理が生じにくくなります。
逆に、拠点から作ると固定費だけが残ります。
小さく試して、続くかを確かめてください。
現地の所轄庁との関係
事務所を置かない場合でも、現地の行政と関わります。
会場を借りる、後援を受けるといった場面です。
窓口は、その自治体の担当課になります。
所轄庁とは、別の相手です。
所轄庁は、主たる事務所のある都道府県のままです。
混同しないよう、整理しておきましょう。
現地で助成金に応募する場合も、要件を確認します。
市内に事務所があること、が条件のこともあります。
在住や在勤の会員が要件になる例も、あります。
応募の前に、読み込んでおきましょう。
名前の知られ方が変わる
地域を広げると、名前の知られ方も変わります。
地元では通じる略称が、外では通じません。
団体の名前に地名が入っている場合も、考えどころです。
○○市を名乗ったまま、隣の市で活動する形です。
説明の手間が、増えることがあります。
一方、地名は信用の源でもあります。
どこの団体かが、はっきり分かるためです。
名称を変えるかは、慎重に判断しましょう。
認証と登記の手続きが、必要になります。
略称や通称で対応できないかを、先に考えます。
移動の負担を見積もる
広げるときに見落とされるのが、移動の負担です。
片道1時間なら、往復で2時間が消えます。
月に4回行けば、8時間です。
交通費も、積み重なると小さくありません。
その時間と費用を、予算に入れておきましょう。
担当する人の負担も、現実的に見積もります。
本業のある人には、大きな負担です。
交代で行く仕組みにする方法も、あります。
接続での参加を、組み合わせる形も有効です。
無理な移動は、長続きしません。
地域を書き足すという方法
定款に地域を書いている団体が、広げたい場合です。
削除するのではなく、書き足す方法もあります。
○○市および周辺の地域において、といった書き方です。
都道府県の名前で書く方法も、あります。
将来を見込んで、広めに書いておきましょう。
認証の手続きは、一度で済ませたいためです。
ただし、実態とかけ離れた記載は避けます。
全国と書いて、一つの市でしか活動していない状態です。
事業報告書との整合が、問われます。
現実的な範囲で、余裕を持たせてください。
活動地域を広げるまとめ
活動の地域を広げること自体に、手続きは要りません。
ただし、定款に地域を書いている場合は定款変更が必要です。
従たる事務所を置くなら、定款変更と登記が生じます。
主たる事務所を他県へ移すと、所轄庁が変わります。
許認可がある事業は、あらためて指定が必要です。
広げる前に、担う人と資金があるかを確かめましょう。
現地の協力者を作ってから、拠点を考えてください。
広げずに、現地の団体と連携する方法もあります。
広げる前に、会員の分布を住所ごとに数えてみてください。
単発の催し、定期訪問、協力者、拠点という順で進めます。
拠点から作ると、固定費だけが残ります。
移動の時間と費用も、予算と担当者の負担に見込みましょう。
現地の助成金は、事務所や在住の要件があることもあります。
よくある質問
A. 要りません。活動をどこで行うかは自由です。ただし定款の目的や事業に地域を書いている場合は、その範囲を超えると問題になり得ます。まず定款を確認してください。
A. 義務ではありません。書くと、範囲を超えるときに定款変更が必要になります。将来を考えるなら、限定しないほうが柔軟です。
A. 定款変更の手続きと、登記が必要です。手続きが増えるため、本当に事務所として必要かを考えてください。活動の拠点にすぎないなら、事務所としない選択もあります。
A. 主たる事務所のある都道府県が原則の所轄庁です。同じ都道府県内に従たる事務所を置くだけなら変わりませんが、主たる事務所を他県へ移すと変わります。
A. 事業所ごとに指定を受ける仕組みのため、あらためて指定が必要です。自治体をまたぐと窓口も変わり、人員や設備の基準も満たす必要があります。
A. 担う人と資金、現地の協力者があるかを確かめてください。広げずに現地の団体と連携する方法もあります。広げないことも立派な戦略です。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
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