NPO法人の保険|ボランティア活動保険から役員賠償責任保険まで

一般社団法人法
活動中の事故は、いつ起きるか分かりません。備えとして入れる保険を整理します。

NPO法人の活動には、さまざまなリスクがあります。

参加者のけが、備品の破損、第三者への損害などです。

備えがないと、団体や個人が負担を抱えることになります。

この記事では、検討したい保険を種類ごとに解説します。

POINT 結論:まず検討したいのが、社会福祉協議会のボランティア活動保険と行事保険です。施設を使う活動なら施設賠償責任保険、役員のリスクに備えるなら役員賠償責任保険があります。職員を雇う場合の労働保険は、任意ではなく法律上の義務です。

どんなリスクがあるか

まず、想定されるリスクを洗い出しましょう。

第一に、活動する人自身のけがです。

移動中の事故や、作業中の転倒などが考えられます。

第二に、参加者や利用者のけがです。

イベントの最中に起きると、団体の責任が問われることがあります。

第三に、他人の物を壊してしまう損害です。

借りた施設の設備を破損する例が典型です。

第四に、運営上の判断による損害です。

役員の責任が問われる場面が、これに当たります。

リスクの種類ごとに、対応する保険が違います。

ボランティア活動保険

最も基本になるのが、ボランティア活動保険です。

社会福祉協議会が扱っており、全国で加入できます。

活動中や往復の途中のけが、他人への賠償が対象になります。

年度単位での加入が一般的です。

保険料も、比較的手ごろに設定されています。

加入の手続きは、地域の社会福祉協議会で行います。

登録するボランティアの人数分を、まとめて申し込みます。

年度が変わったら、更新を忘れないようにしましょう。

活動を始める前に、まずこれを検討してください。

行事保険

イベントを開くときは、行事保険が使えます。

その行事の期間だけを対象にする保険です。

参加者のけがや、主催者の賠償責任をカバーします。

ボランティア活動保険では対象にならない参加者も、含められます。

申し込みは、行事の内容と参加予定人数を伝えて行います。

保険料は、人数と日数によって変わります。

屋外の行事や、体を動かす内容ほどリスクが高くなります。

会場を借りる条件として、加入を求められることもあります。

申し込みには日数がかかるので、早めに手配しましょう。

保険の種類 主な対象 検討する場面
ボランティア活動保険 ボランティアのけが・賠償 日常的に活動するとき
行事保険 参加者のけが・主催者の賠償 イベントを開くとき
施設賠償責任保険 施設の管理にともなう賠償 拠点を運営するとき
役員賠償責任保険 役員個人の賠償責任 事業規模が大きいとき
労働保険(法定) 職員の労災・雇用 職員を雇うとき(義務)
自動車保険 送迎中の事故 車を使う活動があるとき

施設賠償責任保険

常設の拠点を運営しているなら、施設賠償責任保険を検討します。

施設の管理の不備によって、他人に損害を与えたときに備えるものです。

床が濡れていて利用者が転倒した、といった場面が典型です。

子ども食堂や、居場所づくりの拠点を持つ団体に向いています。

食事を提供するなら、食中毒に備える特約もあります。

保険料は、施設の広さや事業の内容によって変わります。

損害保険会社に相談すると、内容を組み立ててもらえます。

施設を借りている場合は、貸主が加入を求めることもあります。

契約の条件を、あらかじめ確認しておきましょう。

役員賠償責任保険

役員には、善良な管理者としての注意義務があります。

職務を怠って法人に損害を与えると、賠償責任を負うことがあります。

この責任に備えるのが、役員賠償責任保険です。

事業の規模が大きくなるほど、検討する価値が高まります。

役員のなり手を探すときにも、材料になります。

責任が不安で断られるケースは、少なくありません。

保険があると伝えると、引き受けてもらいやすくなります。

ただし、保険料はほかの保険より高めです。

団体の規模と財政に照らして、判断してください。

故意による行為は、保険の対象になりません。

労働保険は義務

保険のなかで、唯一必ず入るべきものがあります。

職員を雇った場合の労働保険です。

労災保険は、1人でも雇えば加入の義務があります。

雇用保険も、要件を満たす職員がいれば加入します。

これらは任意ではなく、法律上の義務です。

手続きは、労働基準監督署とハローワークで行います。

期限は、事実が発生してから10日以内と短く設定されています。

加入を怠ると、さかのぼって保険料を求められることがあります。

職員を雇うと決めたら、同時に手続きの準備を始めましょう。

なお、社会保険・労働保険の手続きは社会保険労務士が取り扱う業務です。

自動車を使う活動

送迎や運搬で車を使う活動には、別の備えが必要です。

法人名義の車なら、法人として自動車保険に加入します。

問題になりやすいのが、個人の車を使う場合です。

ボランティアが自分の車で送迎すると、事故のときに個人の保険で対応することになります。

団体の活動中でも、契約上は個人の事故です。

保険の等級が下がるなど、個人が不利益を受けます。

車を使う活動を続けるなら、この点をあらかじめ話し合いましょう。

団体で加入できる保険があるか、損害保険会社に相談する方法もあります。

福祉有償運送などを行う場合は、別に許可の要件もあります。

加入の前に確認すること

保険を選ぶときは、いくつか確認しておきましょう。

第一に、対象になる人の範囲です。

会員だけなのか、参加者も含むのかで大きく違います。

第二に、対象になる活動の範囲です。

団体が主催する行事に限られる場合があります。

第三に、対象外になる事由です。

危険な作業や、特定のスポーツが除外されることがあります。

第四に、補償の上限額です。

第五に、加入から補償が始まるまでの日数です。

当日に加入しても、間に合わない場合があります。

保険を検討する順序

  • ①職員を雇うなら労働保険(法律上の義務)
  • ②日常的に活動するならボランティア活動保険
  • ③イベントを開くなら行事保険
  • ④常設の拠点があるなら施設賠償責任保険
  • ⑤車を使うなら自動車保険と、個人の車の扱いの取り決め
  • ⑥規模が大きくなったら役員賠償責任保険
  • ⑦加入内容を年度ごとに見直す

事故が起きたときの対応

保険に入っていても、対応の手順は必要です。

まず、けが人の安否を確認し、必要なら救急に連絡します。

次に、団体の責任者へ速やかに報告します。

当日の責任者を決めておくのは、このためです。

状況を記録し、可能なら写真も残します。

保険会社への連絡は、決められた期限内に行います。

遅れると、支払いを受けられないことがあります。

関係する会員や保護者への説明も、早めに行いましょう。

隠したり後回しにしたりすると、信頼を大きく損ないます。

報告の連絡先を、活動の場に掲示しておくと確実です。

保険料をどう負担するか

保険料は、団体が負担するのが基本です。

活動にともなうリスクへの備えだからです。

ボランティア活動保険は、1人あたりの金額が小さく済みます。

登録者が増えても、大きな負担にはなりません。

活動予算書には、保険料の科目を立てて計上しましょう。

事業費に入れるか管理費に入れるかは、対象によって判断します。

特定の事業のための行事保険なら、その事業の事業費に入れます。

団体全体をカバーする保険なら、管理費として扱う形が自然です。

助成金の対象経費に、保険料が含まれる制度もあります。

募集要項を確認してみてください。

年度ごとに見直す

保険は、一度入って終わりではありません。

年度ごとに、内容を見直しましょう。

活動の内容が変われば、必要な備えも変わります。

新しい事業を始めたら、その活動が対象になるかを確認します。

参加者の人数が増えたら、補償の上限も見直します。

拠点を借りたら、施設に関する備えが必要になります。

ボランティアの登録者が増えたら、加入の人数も更新します。

毎年の事業計画を立てるときに、あわせて確認するとよいでしょう。

更新の時期をカレンダーに入れ、切れ目が生じないようにします。

保険が切れている期間に事故が起きるのが、最悪の事態です。

保険で備えられないこと

保険は万能ではありません。

故意による行為は、どの保険でも対象外です。

法令に違反する行為も、補償されないのが原則です。

団体の信用が損なわれること自体も、保険では回復できません。

したがって、保険は最後の備えだと考えましょう。

第一の備えは、事故を起こさない運営です。

危険な作業の手順を決め、無理をさせないことが基本です。

参加者の体調を確認し、当日の責任者を置くことも有効です。

記録を残しておけば、経緯を説明できます。

保険と運営の両方で備えることが、団体を守ります。

相談する先

保険の内容は、団体の活動によって変わります。

どの保険が合うかは、一律には決められません。

第一の相談先は、地域の社会福祉協議会です。

ボランティア活動保険と行事保険は、ここで案内してもらえます。

第二に、NPO支援センターや中間支援組織です。

同じ分野の団体がどう備えているかを、教えてもらえることがあります。

第三に、損害保険会社や代理店です。

施設賠償責任保険や役員賠償責任保険は、こちらで相談します。

複数の窓口で話を聞き、比べてから決めるとよいでしょう。

見積もりを取るだけなら、費用はかかりません。

団体の活動内容と参加人数を整理してから相談すると、話が早く進みます。

事業計画書を持参すると、必要な備えを一緒に考えてもらえます。

毎年の見直しのときも、同じ担当者に相談できると効率的です。

担当者が変わる場合に備えて、相談の記録を残しておきましょう。

どんな理由でその内容にしたのかが、次の判断の材料になります。

保険のまとめ

NPO法人の活動には、けがや賠償のリスクがあります。

まず検討したいのが、ボランティア活動保険と行事保険です。

常設の拠点があるなら、施設賠償責任保険も加えます。

役員の責任に備えるなら、役員賠償責任保険という選択肢があります。

職員を雇う場合の労働保険は、任意ではなく法律上の義務です。

車を使う活動は、個人の車の扱いを先に話し合っておきましょう。

事故が起きたときの報告の手順も、あわせて決めておいてください。

よくある質問

Q. どの保険から入るべき?

A. 職員を雇うなら労働保険が最優先です。これは法律上の義務です。そのうえで、日常的な活動にはボランティア活動保険、イベントには行事保険を検討します。

Q. ボランティア活動保険はどこで入る?

A. 地域の社会福祉協議会で加入できます。年度単位が一般的で、保険料も比較的手ごろです。年度が変わったら更新を忘れないようにしましょう。

Q. 参加者もカバーされる?

A. ボランティア活動保険は、登録したボランティアが対象です。参加者まで含めたい場合は、行事保険を別に検討してください。

Q. 役員賠償責任保険は必要?

A. 事業の規模が大きいほど検討する価値があります。役員のなり手を探すときの材料にもなります。ただし保険料は高めなので、財政に照らして判断してください。

Q. ボランティアの車で送迎してもいい?

A. 事故のときは個人の保険で対応することになり、等級が下がるなど個人が不利益を受けます。続けるなら事前に話し合い、団体で加入できる保険がないか相談しましょう。

Q. 事故が起きたらどうする?

A. 安否の確認と救急への連絡を最優先に行い、責任者へ報告します。状況を記録し、保険会社へは期限内に連絡してください。関係者への説明も早めに行いましょう。

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