NPO法人の法人住民税「均等割」|収益事業がなくてもかかる理由と減免申請

一般社団法人法
収益事業をしていなくても、届け出なければ請求が来ます。

NPO法人を作ったら、税務署とは別に自治体から通知が届いた。

収益事業はしていないのに、税金の請求だと言われた。

その正体が法人住民税の均等割です。

実は、NPO法人は法律上の均等割の非課税リストに入っていません。

この記事では、なぜ課税されるのか、どうすれば減免を受けられるのかを、条文にそって解説します。

POINT 結論:NPO法人は、収益事業をしていなくても法人住民税の均等割が原則としてかかります(年間おおむね7万円程度)。ただし多くの自治体が条例で減免制度を設けており、申請すれば免除されることがあります。減免は自動ではなく、期限内の申請が必要です。

均等割とは何か

法人住民税は、都道府県民税と市町村民税の二つで構成されます。

それぞれに、法人税額に応じてかかる法人税割と、所得に関係なくかかる均等割があります。

均等割は、赤字でも、収益事業がなくてもかかる定額の税金です。

会社が地域に存在していること自体に対する会費のような性格の税だと説明されます。

金額は資本金等の額と従業者数で決まり、最小の区分でおおむね年7万円程度が目安です。

NPO法人には資本金がないため、通常は最小区分にあたります。

内訳は自治体によって異なり、都道府県分と市区町村分に分かれて課されます。

事務所が複数の市区町村にまたがると、その数だけ市町村民税の均等割がかかります。

NPO法人が非課税リストに入っていない

ここが誤解の多いところです。

地方税法は、均等割を課すことができない法人を条文で列挙しています。

その列挙には、社会福祉法人・学校法人・宗教法人・更生保護法人などが並んでいますが、特定非営利活動法人は入っていません

道府県民税でも市町村民税でも同じ構造です。

つまり、法律のレベルでは、NPO法人は均等割の納税義務者になります。

「非営利だから税金はかからない」は成り立ちません。

ちなみに公益社団法人・公益財団法人も、博物館の設置や学術研究を主たる目的とするものなど、条件つきの記載にとどまっています。

法人格の名前ではなく、条文に書かれているかどうかで決まる世界です。

一般社団法人も同様に、均等割は原則としてかかります。

それでも多くのNPO法人が払っていない理由

では、なぜ「うちは払っていない」というNPO法人が多いのでしょうか。

答えは条例による減免です。

地方税法は、市町村長は特別の事情がある者に限り、条例の定めるところにより市町村民税を減免することができる、と定めています。

都道府県民税についても、同じ趣旨の規定があります。

この規定を受けて、多くの自治体が「収益事業を行わない公益的な法人」を対象とする減免制度を条例で設けています。

NPO法人はこの対象に含まれることが一般的です。

ただし、あくまで各自治体の条例次第です。

減免の範囲、必要書類、申請期限は自治体ごとに違います。

そして重要なのは、減免は申請しなければ受けられないという点です。

黙っていれば課税されたままになります。

設立したらまず出す届出

法人を設立したら、登記が終わったあとに提出する書類があります。

税務署への法人設立届出書のほか、都道府県税事務所と市区町村へも設立の届出が必要です。

収益事業を行わない場合は、その旨を明らかにして提出します。

自治体によっては、この届出とあわせて減免申請の案内が送られてきます。

提出期限は自治体ごとに定められており、設立から1か月から2か月以内としている例が多く見られます。

登記事項証明書と定款の写しを添えるのが一般的です。

ここを放置すると、減免の存在を知らないまま納付書だけが届くことになります。

設立1年目にやることの全体像は、別記事で整理しています。

減免申請の実務

減免申請の流れは、おおむね次のとおりです。

第一に、事務所のある自治体の税務担当課に、NPO法人向けの減免制度があるかを確認します。

第二に、申請書を取り寄せます。多くの自治体がウェブサイトで様式を公開しています。

第三に、添付書類をそろえます。定款、登記事項証明書、事業報告書、決算書類などが典型です。

第四に、期限内に提出します。

期限は納期限までとしている自治体が多く、遅れるとその年度分は受けられないことがあります。

第五に、毎年度の手続きが必要かを確認します。

一度の申請で継続する自治体と、毎年申請が必要な自治体があります。

毎年必要な場合、年間スケジュールに組み込んでおかないと、ある年だけ課税される事故が起きます。

年間スケジュールの作り方は、別記事で解説しています。

収益事業を始めたら扱いが変わる

減免の前提は、収益事業を行っていないことです。

法人税法上の収益事業に該当する事業を始めた場合、この前提が崩れます。

物品販売業、不動産貸付業、請負業、席貸業など、法令に列挙された事業が対象です。

該当すれば、法人税の申告義務が生じるとともに、均等割の減免も受けられなくなるのが通常です。

注意したいのは、NPO法人が定款で定める「その他の事業」と、法人税法の収益事業が別の概念だという点です。

特定非営利活動に係る事業として行っていても、実態が請負や物品販売なら収益事業に該当し得ます。

判定は事業の実態で行われます。

新しい事業を始めるときは、始める前に税理士へ確認してください。

収益事業の考え方は、その他の事業の記事で詳しく整理しています。

金額の目安と資金繰りへの影響

減免が受けられなかった場合の負担を、具体的に見ておきましょう。

標準的な最小区分で、都道府県民税の均等割が年2万円程度、市町村民税の均等割が年5万円程度、合わせて7万円程度が一つの目安です。

税率や区分は自治体の条例で異なるため、正確な額は必ず自治体で確認してください。

会費収入が年10万円ほどの小さな法人にとって、7万円は致命的な金額です。

実際、この均等割の存在を知らずに設立し、活動資金が足りなくなる団体があります。

また、休眠状態にしていても均等割の対象になり得ます。

活動していないのに毎年課税される、という状態を避けるには、休眠ではなく解散を検討する場面もあります。

休眠と解散の違いは、専用の記事で解説しています。

都道府県と市区町村は別々に申請する

見落としやすいのが、申請先が一つではないことです。

法人住民税は都道府県民税と市町村民税に分かれており、課税する主体もそれぞれ違います。

したがって、減免を受けたいなら都道府県税事務所と市区町村の両方に申請するのが原則です。

片方だけ申請して、もう片方から納付書が届いて驚く、という相談は珍しくありません。

様式も期限も別なので、二つ並べて管理してください。

政令指定都市や東京23区では窓口の構成が異なる場合があります。

最初の一回だけは、電話で「NPO法人の均等割の減免を受けたい」と伝えて、必要な様式と提出先を確認するのが確実です。

一度確認してしまえば、翌年以降は同じ手順を繰り返すだけです。

減免申請書に書くこと

様式は自治体ごとに違いますが、書く中身はおおむね共通しています。

第一に、法人の基本情報です。名称、所在地、法人番号、代表者名を記入します。

第二に、減免を受けようとする税額と年度です。

第三に、減免を求める理由です。ここが実質的な中身で、収益事業を行っていないこと、特定非営利活動を目的とする法人であることを簡潔に書きます。

第四に、添付書類です。定款、登記事項証明書、直近の事業報告書と活動計算書が典型です。

活動計算書で収益事業の欄が空であることが、そのまま証拠になります。

書き方に凝る必要はありません。事実を過不足なく書き、決算書類と矛盾しないことがすべてです。

審査で追加の説明を求められたら、素直に補足資料を出してください。

一般社団法人・株式会社との違い

均等割の扱いを法人格ごとに比べると、構造が見えてきます。

株式会社は、赤字でも均等割がかかります。減免の対象になることは基本的にありません。

一般社団法人も、非営利型かどうかにかかわらず均等割は原則としてかかります。

ただし、収益事業を行っていない場合に減免を認める自治体があり、この点はNPO法人と似た扱いです。

社会福祉法人や学校法人、宗教法人は、法律のレベルで非課税と定められています。

同じ非営利でも、法人格によって扱いが違うのです。

この差は、法人格を選ぶときの判断材料の一つになります。

とはいえ、均等割の数万円のために法人格を選ぶのは本末転倒です。活動の内容と、必要な信用の大きさで選んでください。

納め忘れたときにどうなるか

減免を申請しないまま納付書を放置すると、どうなるのでしょうか。

住民税は地方税なので、督促状が届き、それでも納付がなければ延滞金が加算されます。

延滞金は日割りで増えていき、最終的には財産の差押えという手続きに進み得ます。

法人の口座が差し押さえられれば、助成金の受け取りや会費の管理にも支障が出ます。

また、滞納があると助成金の申請や入札で不利になる場面があります。納税証明書の提出を求められる制度が少なくないためです。

気づいた時点で、まず自治体の窓口に相談してください。

減免を遡って認めてもらえるかは自治体次第ですが、事情を説明すれば分割などの相談に応じてもらえることがあります。

放置がいちばん高くつきます。

均等割と一緒に確認したい税金

設立後にNPO法人が関わる税金は、均等割だけではありません。

収益事業を行えば法人税と法人事業税、そして法人住民税の法人税割がかかります。

課税売上が一定額を超えれば消費税の納税義務も生じます。

職員に給与を払えば源泉所得税の徴収と納付が必要になり、これは収益事業の有無と関係ありません。

つまり、収益事業がなくても源泉徴収の義務は生じ得るということです。

均等割の減免だけ済ませて安心してしまうと、給与まわりで抜けが出ます。

設立の年に、関わる税目を一覧にしておくと迷いません。

よくある質問

Q. NPO法人は法人住民税が非課税ではないのですか?

A. 非課税ではありません。地方税法が均等割を課さないと列挙している法人に、特定非営利活動法人は含まれていません。多くの自治体が条例で減免制度を設けているため実質的に免除される例が多いのですが、それは非課税ではなく減免です。

Q. 減免は自動で適用されますか?

A. されません。減免は自治体の条例に基づく制度で、期限内の申請が必要です。申請しなければ課税されたままになります。毎年度の申請が必要かどうかも自治体によって異なります。

Q. 収益事業をしていなければ必ず減免されますか?

A. 自治体によります。多くの自治体が収益事業を行わない公益的な法人を対象としていますが、要件や範囲は条例次第です。事務所のある自治体の税務担当課に必ず確認してください。

Q. 均等割はいくらですか?

A. 資本金等の額と従業者数の区分で決まり、NPO法人は通常最小区分です。都道府県民税と市町村民税を合わせて年7万円程度が一つの目安ですが、税率は自治体の条例によるため正確な額は各自治体でご確認ください。

Q. 事務所が2つの市にある場合はどうなりますか?

A. 市町村民税の均等割は、事務所のある市区町村ごとにかかるのが原則です。従業者数に応じた按分の扱いもあるため、複数の自治体に事務所を置く場合はそれぞれの窓口で確認してください。

Q. 活動していない年も払うのですか?

A. 休眠状態でも法人が存続している限り均等割の対象になり得ます。減免を受けられるかは自治体の判断です。活動再開の見込みがないなら、解散を検討したほうが負担は小さくなります。


【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。税額・減免の可否は自治体の条例によって異なります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず自治体の窓口や税理士にご確認ください。