NPO法人の監事には、業務監査と会計監査の二つの役割があります。
名前だけの監事では、責任を果たせません。
とはいえ、難しい作業ばかりではありません。
この記事では、監査の進め方を手順で解説します。
監事の二つの役割
監事の職務は、法律で定められています。
第一が、理事の業務執行の状況を監査することです。
業務監査と呼ばれます。
第二が、法人の財産の状況を監査することです。
会計監査と呼ばれます。
二つは、性格が違います。
業務監査は、活動が定款どおりかを見ます。
会計監査は、お金の流れが正しいかを見ます。
どちらも、監事の仕事です。
監事になれない人
監事には、兼任の制限があります。
理事を兼ねることは、できません。
職員を兼ねることも、できません。
監査する側とされる側が、同じでは意味がないためです。
役員の親族の制限も、監事に適用されます。
選ぶときに、必ず確認しましょう。
要件を欠くと、認証にも関わります。
外部から迎えることも、できます。
会員以外を役員にできるかは、定款で確認します。
| 監査の種類 | 見るもの | 主な作業 |
|---|---|---|
| 業務監査 | 活動が定款どおりか | 理事会への出席、記録の確認 |
| 会計監査 | 財産の状況が正しいか | 通帳と帳簿の突合、証拠書類の確認 |
| 期中の確認 | 日常の運営 | 随時の聞き取り |
| 決算の監査 | 年度の締め | 決算書類一式の確認 |
| 監査報告 | 結果の記録 | 書面の作成と総会での報告 |
一年の流れ
監事の仕事は、決算のときだけではありません。
年度の初めに、事業計画を見ておきます。
年度の途中は、理事会に出席します。
議論の経過を、直接見ることになります。
決算の時期に、まとまった監査を行います。
通常総会の前に、監査報告を作ります。
総会で、その結果を報告します。
この流れを、年間の予定表に入れましょう。
決算の日程も、あらかじめ押さえておきます。
会計監査の基本の作業
会計監査は、難しい会計の知識がなくても始められます。
第一に、通帳と帳簿を突き合わせます。
入金と出金が、記録と一致するかを見ます。
第二に、残高が合っているかを確認します。
期末の残高と、帳簿の数字を比べます。
第三に、証拠書類を抜き取りで確認します。
領収書や請求書が、支出と対応しているかです。
第四に、現金の残高を実際に数えます。
第五に、大きな支出の理由を確認します。
会計の具体的な処理は、専門家に相談してください。
- 通帳の入出金と帳簿の一致
- 期末の残高の一致
- 現金の実際の残高
- 領収書や請求書の有無(抜き取り)
- 大きな支出の理由と決裁
- 会費と寄付の区別
- 助成金の使途と報告
- 前年からの繰越の金額
- 議事録が毎回作られているか
- 届出や登記に漏れがないか
業務監査の進め方
業務監査は、活動が適正かを見ます。
第一に、定款にない事業を行っていないかを見ます。
第二に、総会や理事会の決議どおりに動いているかを見ます。
第三に、議事録が作られているかを確認します。
第四に、必要な届出や登記がされているかを見ます。
役員変更の届出や、資産の総額の変更登記です。
第五に、書類の備え置きができているかを確認します。
第六に、事故や苦情への対応を聞きます。
理事会に出席していれば、多くは把握できます。
聞き取りという方法
書類を見るだけが、監査ではありません。
担当者に、話を聞くことも有効です。
実際にどう処理しているかを、確かめます。
書類の上では整っていても、実務が違う場合があります。
現金を誰が扱っているか、といった点です。
責める姿勢では、正確な話は聞けません。
改善のために聞いている、と伝えましょう。
困っていることを、教えてもらう機会にもなります。
聞いた内容は、記録に残しておきます。
監査報告を書面で作る
監査の結果は、書面で残します。
監査報告書という形が、一般的です。
監査の期間と、実施した日を書きます。
何を見たかを、具体的に書きます。
通帳、帳簿、証拠書類、議事録といった項目です。
結果として、適正であると認める旨を書きます。
問題があれば、その内容を書きます。
監事が署名または記名押印します。
総会の資料としても、使います。
問題を見つけたとき
監査で、問題が見つかることもあります。
まず、事実を確認します。
思い違いや、記録の漏れであることも多いものです。
確認したうえで、理事へ伝えます。
軽微なものは、その場で直してもらえば足ります。
重大なものは、理事会へ報告します。
法令や定款に違反する行為があれば、総会にも報告します。
監事には、そのための権限があります。
見て見ぬふりをすると、監事自身の責任になります。
何も見ない監事が危ない
いちばん危険なのは、何も見ない監事です。
通帳も帳簿も見ずに、問題なしとする状態です。
これは、監査を行ったことになりません。
あとから不正が発覚したとき、責任を問われます。
監事も、善良な管理者としての注意義務を負います。
形だけで押印するのは、危うい行為です。
実際に確認し、記録を残しましょう。
記録があれば、備えを尽くしたと説明できます。
守るべきは、団体と自分自身の両方です。
監事を複数置く
監事は1人以上ですが、複数置くこともできます。
2人置くと、負担が分かれます。
会計に強い人と、活動に詳しい人という組み合わせもあります。
一人が辞めても、欠員になりません。
監事が1人だけだと、辞めた時点で直ちに欠員です。
定款の定数を、幅を持たせて書いておきましょう。
1人以上2人以内、といった書き方です。
なり手が見つかるかは、別の問題です。
無理のない人数で、確実に機能させましょう。
監事を引き受けるとき
監事を頼まれたら、条件を確認しましょう。
第一に、年に何回、何時間かかるかです。
第二に、理事会への出席を求められるかです。
第三に、報酬の有無です。
第四に、氏名と住所が公開されることです。
第五に、善良な管理者としての注意義務を負うことです。
第六に、書類がきちんと整っているかです。
整っていない団体の監事は、負担が大きくなります。
引き受ける前に、直近の書類を見せてもらいましょう。
決算の監査の段取り
決算の監査には、段取りが要ります。
第一に、決算書類がいつできるかを確認します。
第二に、監査を行う日を決めます。
第三に、必要な書類を用意してもらいます。
通帳、帳簿、証拠書類、議事録の一式です。
第四に、まとまった時間を確保します。
半日は、みておきましょう。
第五に、担当者に立ち会ってもらいます。
疑問をその場で聞けると、早く終わります。
第六に、理事会の日程から逆算して決めます。
見つかりやすい不備
監査で見つかる不備には、傾向があります。
第一が、領収書のない支出です。
第二が、現金の残高が合わない場合です。
第三が、会費と寄付が区別されていない場合です。
第四が、決裁を受けずに支出された場合です。
第五が、議事録が作られていない場合です。
第六が、届出や登記が漏れている場合です。
いずれも、悪意によるものとは限りません。
知らなかった、忙しかったという理由がほとんどです。
仕組みを直せば、次の年は減ります。
専門家に見てもらう場合
規模が大きくなると、外部の目を入れる団体もあります。
会計の専門家に、決算を見てもらう形です。
監事の監査に代わるものでは、ありません。
監事の監査は、法律上の義務だからです。
外部の確認は、それを補うものになります。
費用はかかりますが、信用の裏づけになります。
助成金の申請で、求められることもあります。
会計の具体的な処理は、専門家に相談してください。
まずは監事の監査を、確実に行うことが先です。
監査を楽にする日ごろの工夫
監査が大変になるのは、日ごろの記録が薄いからです。
第一に、通帳の記帳を毎月行います。
第二に、帳簿への記入も毎月行います。
第三に、領収書を月ごとにまとめます。
第四に、大きな支出は決裁の記録を残します。
第五に、議事録をその都度作ります。
これだけで、決算の作業は大きく減ります。
監事も、短い時間で確認できるようになります。
一年分をまとめてやろうとすると、必ず破綻します。
毎月30分の作業が、年度末の何日分にもなります。
監事が複数いる場合の分担
監事が2人いるなら、分担を決めましょう。
一人が会計、一人が業務という分け方があります。
ただし、責任は分かれません。
それぞれが、両方について義務を負います。
分担は、あくまで作業の効率のためです。
結果は、二人で共有します。
監査報告も、連名で作るのが一般的です。
意見が分かれた場合は、その旨を書きます。
無理にそろえる必要は、ありません。
違う見方があること自体が、監査の価値です。
監査は改善のためにある
監査を、粗探しと捉える人がいます。
そうではありません。
団体が続くための、仕組みの点検です。
不備が見つかれば、直せばよいだけです。
直った状態を、翌年に確認します。
この繰り返しで、運営の質が上がります。
監事と理事が、対立する必要はありません。
同じ目的を、違う立場から見ているだけです。
指摘を歓迎する空気が、団体を強くします。
隠す団体ほど、大きな事故を起こします。
監事の監査のまとめ
監事には、業務監査と会計監査の二つの役割があります。
会計監査の基本は、通帳と帳簿の突合です。
証拠書類は、抜き取りで確認すれば足ります。
業務監査は、理事会に出席していれば多くを把握できます。
結果は、監査報告として書面に残してください。
問題を見つけたら、事実を確認して理事へ伝えます。
何も見ずに問題なしとするのが、いちばん危険です。
監事も、善良な管理者としての注意義務を負います。
決算の監査は半日を見込み、担当者に立ち会ってもらいましょう。
見つかる不備の多くは、悪意ではなく仕組みの不足によるものです。
通帳の記帳と帳簿への記入を毎月行えば、監査は短時間で終わります。
一年分をまとめてやろうとすると、必ず破綻します。
監事が2人いるなら分担を決められますが、責任は分かれません。
監査は粗探しではなく、団体が続くための仕組みの点検です。
よくある質問
A. 理事の業務執行の状況を監査する業務監査と、法人の財産の状況を監査する会計監査の二つです。どちらも監事の職務として法律に定められています。
A. 始められます。通帳と帳簿を突き合わせ、残高が合っているかを見て、領収書を抜き取りで確認するのが基本の作業です。具体的な会計処理は専門家に相談してください。
A. 兼ねられません。職員を兼ねることもできません。監査する側とされる側が同じでは意味がないためです。役員の親族の制限も適用されます。
A. 出てください。議論の経過を直接見れば、業務監査の材料が集まります。決算の時期だけ現れる監事より、はるかに機能します。
A. まず事実を確認します。思い違いや記録の漏れであることも多いためです。軽微なら直してもらえば足り、重大なら理事会へ、法令や定款に違反する行為なら総会にも報告します。
A. 危うい行為です。監事も善良な管理者としての注意義務を負い、あとから不正が発覚すれば責任を問われます。実際に確認し、記録を残してください。
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