NPO法人の監事は、理事の業務執行と財産の状況を監査する役割です。
1人以上を必ず置かなければならず、理事や職員を兼ねることはできません。
形だけの監事になっている団体は、少なくありません。
この記事では、監事の仕事を具体的に解説します。
監事は必ず1人以上
NPO法人には、監事を1人以上置かなければなりません。
これは法律上の要件で、省略することはできません。
監事は、理事または法人の職員を兼ねることができません。
監査する側とされる側が同じでは、意味がないためです。
したがって、理事3人と監事1人で、最低4人の役員が必要になります。
監事も役員なので、任期は2年以内です。
総会で選任し、就任承諾書をもらいます。
監事は登記されないため、変更しても登記は不要です。
ただし、所轄庁への役員変更届出は必要になります。
監事の2つの職務
監事の職務は、法律で定められています。
第1が、理事の業務執行の状況を監査することです。
理事が、法令や定款に従って業務を行っているかを見ます。
総会の決議に反する行為がないかも、チェックの対象です。
第2が、法人の財産の状況を監査することです。
帳簿が正しく記録され、財産が適切に管理されているかを確認します。
この2つが、監事の基本の仕事になります。
監査の結果は、監査報告として書面にまとめます。
通常総会で報告するのが、一般的な流れです。
監事にできること
監事には、職務を果たすための権限も与えられています。
第1に、理事に対して意見を述べることができます。
理事会に出席して発言する運用が、広く行われています。
第2に、不正な行為や法令違反があれば報告できます。
報告先は、社員総会または所轄庁です。
第3に、報告のために必要があるときは総会を招集できます。
理事が招集しない場合でも、監事の判断で開けるということです。
これは、かなり強い権限です。
団体の健全さを守るための、最後の歯止めになっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人数 | 1人以上(必須) |
| 兼任 | 理事・職員を兼ねられない |
| 任期 | 2年以内(再任可) |
| 登記 | 登記されない |
| 所轄庁への届出 | 変更時に役員変更届出が必要 |
| 主な職務 | 理事の業務執行の監査/財産の状況の監査 |
| 権限 | 理事への意見/総会・所轄庁への報告/総会の招集 |
年間で何をするのか
監事の仕事を、1年の流れで見てみましょう。
事業年度が終わったら、決算書類の監査を行います。
通帳と帳簿を突き合わせ、残高が合っているかを確認します。
領収書と支出の記録が対応しているかも見ます。
財産目録と貸借対照表の数字が一致しているかも確認します。
監査が終わったら、監査報告を作成します。
通常総会で、その内容を報告します。
年度の途中も、理事会に出席して業務執行を見ます。
大きな支出や、新しい契約があれば、その妥当性を確認します。
年に1回だけ書類を見る形では、監査とは言えません。
- 通帳の残高と帳簿の突き合わせ
- 領収書と支出記録の照合
- 財産目録と貸借対照表の一致の確認
- 規程どおりに報酬や給与が支払われているかの確認
- 理事会への出席と、必要な場合の意見表明
- 総会や理事会の議事録の確認
- 所轄庁への提出書類の確認
- 監査報告の作成と、総会での報告
監事を誰に頼むか
監事には、会計の知識がある人が望ましいと言えます。
税理士や公認会計士に依頼できれば理想的です。
ただし、報酬の問題で難しいことも多くあります。
企業で経理を経験した人に頼む方法もあります。
地域の商工会や、退職された方に相談する例も見られます。
専門家でなくても、帳簿を確認する姿勢がある人であれば構いません。
重要なのは、遠慮せず質問できる関係かどうかです。
理事と親しすぎると、指摘しにくくなることがあります。
適度な距離感のある人を選ぶと、機能しやすくなります。
報酬を受ける役員の人数制限にも留意して人選しましょう。
形だけの監事にしないために
監事が名前だけになっている団体は、実際に多くあります。
第一に、監査の日を年間予定に入れておきましょう。
決算が固まった直後に、日程を確保します。
第二に、確認する項目をリストにしておきます。
毎年同じ手順で見れば、監事が代わっても水準が保てます。
第三に、理事会に出席してもらう運用にします。
年に1回だけでは、業務執行の監査はできません。
第四に、監査報告を書面で残します。
口頭で問題なしと言うだけでは、記録が残りません。
第五に、指摘があったら記録し、対応を報告します。
監事の指摘にどう向き合うか
監事から指摘を受けると、理事は身構えてしまいがちです。
しかし、指摘は団体を守るためのものです。
早い段階で気づけば、小さな修正で済みます。
所轄庁や外部から指摘されると、対応の負担は何倍にもなります。
指摘された内容は、理事会で共有します。
対応した結果も、次の監査で報告しましょう。
指摘しにくい雰囲気を作らないことが、理事の側の責任です。
監事が機能している団体は、外から見ても信頼できます。
情報公開が前提の制度のなかで、これは強みになります。
監事の責任
監事も役員として、善良な管理者としての注意義務を負います。
監査を怠って法人に損害が生じた場合、責任を問われる可能性があります。
ただし、通常の注意を払って監査していれば、通常は問題になりません。
重要なのは、実際に監査を行い、記録を残しておくことです。
監査報告や、確認した資料の控えが、その証拠になります。
何も見ずに問題なしとするのが、いちばん危険です。
監事を引き受ける人には、この点も説明しておきましょう。
責任があるからこそ、きちんと見る必要があるということです。
監査の準備を理事の側で整える
監査をしてもらうには、理事の側の準備も必要です。
通帳、帳簿、領収書を、年度ごとに整理しておきます。
議事録も、総会と理事会の分をそろえます。
規程類も、最新版を用意しておきましょう。
資料が散らばっていると、監査に時間がかかります。
監事から質問が出たら、記録を示して答えます。
記憶で答えるのではなく、書類で示すことが大切です。
準備が整っていること自体が、日常の管理の質を示します。
監査のたびに慌てる状態なら、日々の運用に問題があります。
監査報告に書くこと
監査報告は、それほど長い書類ではありません。
監査した期間と、監査の方法を書きます。
帳簿を確認した、通帳と突き合わせたといった具体的な方法です。
そのうえで、監査の結果を述べます。
会計が適正であること、業務執行に問題がないことを記載します。
指摘事項があれば、その内容も書きます。
末尾に、監査した日付と監事の氏名を記載して署名します。
所轄庁への提出書類ではありませんが、総会で報告します。
書面で残しておくことで、監査を行った証拠になります。
様式は自由なので、毎年同じ形式を使うと効率的です。
監事が複数いる場合
監事は1人以上ですが、2人以上置くこともできます。
規模が大きい団体では、複数置く例が見られます。
会計に詳しい人と、活動の現場を知る人を組み合わせる形です。
視点が違うと、見えるものも変わります。
複数いる場合、それぞれが独立して監査できます。
共同で監査報告を作ることも、別々に作ることも可能です。
定款で、監事の定数を何人以上何人以内と定めておきましょう。
人数が増えれば、報酬を受ける役員の制限にも影響します。
役員総数の3分の1以下という要件を、確認しながら決めてください。
監事のなり手が見つからないとき
監事のなり手が見つからない、という相談は少なくありません。
責任がありそうだという不安が、断られる理由の多くを占めます。
まず、実際に何をするのかを具体的に説明しましょう。
年に1回の監査と、理事会への出席が中心だと伝えます。
所要時間の見込みも、あわせて伝えると判断しやすくなります。
会員のなかから、経理の経験がある人を探すのが基本です。
中間支援組織や社会福祉協議会に相談する方法もあります。
他のNPO法人の役員経験者を紹介してもらえることもあります。
理事と親族関係にある人は、制限に触れないか確認してください。
無報酬で引き受けてもらう前提なら、負担の範囲を明確にすることが不可欠です。
監事と外部の専門家の違い
監事は、法人の内部の役員です。
外部の専門家に会計を依頼するのとは、位置づけが違います。
記帳や決算書の作成を外部に頼んでいても、監事は別に必要です。
作った人と、確認する人は分けなければ意味がありません。
外部に依頼している場合、監事はその成果物を確認します。
依頼先から説明を受け、疑問があれば質問します。
外部に任せているから安心、とはなりません。
最終的な責任は、法人と役員が負うためです。
監事が内容を理解できる状態にしておくことが大切です。
監事の交代と引き継ぎ
監事が交代するときは、引き継ぎを丁寧に行いましょう。
過去の監査報告を、新しい監事に渡します。
前年に指摘した事項があれば、その内容と対応状況も伝えます。
確認する項目のリストがあれば、それも引き継ぎます。
帳簿や資料がどこにあるのかも、共有しておきます。
所轄庁への役員変更届出も、忘れずに行ってください。
監事は登記されないため、登記の手続きは不要です。
その分、届出を忘れやすいので注意しましょう。
任期は2年以内なので、2年ごとに選任の機会が来ます。
総会の議案に入れ忘れないよう、年間の予定に組み込んでおきます。
監事に払う報酬
監事に報酬を払うことも、制度上は可能です。
ただし、報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下という制限があります。
理事3人と監事1人の4人体制なら、報酬を受けられるのは1人までです。
理事長に報酬を払っているなら、監事は無報酬になります。
実務では、監事が無報酬というケースが大半です。
そのぶん、負担の範囲を明確にすることが大切になります。
交通費などの実費を支給することは、報酬とは別に考えられます。
実費弁償として、規程に定めておくとよいでしょう。
無報酬でも責任は負うので、この点は率直に伝えてください。
監事のまとめ
NPO法人には、監事を1人以上置く必要があります。
理事や職員を兼ねることはできません。
職務は、理事の業務執行の監査と、財産の状況の監査です。
不正があれば総会や所轄庁に報告でき、総会を招集する権限もあります。
通帳と帳簿の突き合わせなど、実際の手続きを踏むことが大切です。
監査報告は書面で残し、総会で報告しましょう。
理事会に出席してもらう運用にすると、機能しやすくなります。
よくある質問
A. 1人以上です。理事や法人の職員を兼ねることができないため、理事3人と合わせて最低4人の役員が必要になります。
A. 理事の業務執行の状況の監査と、法人の財産の状況の監査です。決算では通帳と帳簿の突き合わせなどを行い、監査報告を作成して総会で報告します。
A. されません。登記されるのは代表権を持つ理事です。ただし監事が変わったときは、所轄庁への役員変更届出が必要になります。
A. そうではありません。会計の知識があると望ましいですが、帳簿を確認する姿勢のある人であれば務まります。理事と適度な距離感がある人が向いています。
A. できます。監事は理事会に出席して意見を述べることができ、定款にその旨を定める運用が一般的です。議決に加わることはできません。
A. あります。善良な管理者としての注意義務を負い、監査を怠って損害が生じれば責任を問われる可能性があります。実際に監査を行い記録を残すことが大切です。
📖 参考にした公的機関の情報


