NPO法人の会計と帳簿|活動計算書の作り方と会計ソフトの選び方

NPO法人
NPO法人の決算書は「活動計算書」。損益計算書ではありません。

会計を誰がやるか。何で記帳するか。

NPO法人の運営で、いちばん後回しにされがちなのが会計です。

しかし法律は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳することを明確に求めています。

毎年つくる書類も、備え置く期間も、閲覧に応じる義務も決まっています。

この記事では、作るべき書類、帳簿のつけ方、そして会計ソフトの選び方までを整理します。

POINT 結論:NPO法人の会計は「正規の簿記の原則」に従い、会計処理の基準は毎事業年度継続して適用します。毎事業年度の初めの3か月以内に事業報告書・計算書類(活動計算書と貸借対照表)・財産目録などを作成し、作成から5年を超える期間、事務所に備え置きます。社員その他の利害関係人から閲覧を求められたら、正当な理由がある場合を除いて応じる義務があります。

法律が求めている会計の原則

特定非営利活動促進法は、会計について4つの原則を挙げています。

第一に、会計簿は正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること。

第二に、計算書類(活動計算書・貸借対照表)と財産目録は、会計簿にもとづいて事業の実績と財政状態を真実な内容で明瞭に表示すること。

第三に、採用する会計処理の基準と手続は、毎事業年度継続して適用し、みだりに変更しないこと。

正規の簿記の原則とは、取引を漏れなく、順序立てて、検証できる形で記録することを指します。

実務上は複式簿記で処理するのが基本です。

現金出納帳だけでは、貸借対照表を正しく作れません。

継続性の原則も見落とされがちです。

担当者が代わるたびに処理方法が変わると、前年と比較できない決算書になってしまいます。

会計方針は文書にして引き継いでください。

毎年つくる書類と期限

NPO法人が毎事業年度つくる書類は決まっています。

法律は、毎事業年度初めの3か月以内に次の書類を作成しなければならないと定めています。

事業報告書。1年の活動を文章でまとめたものです。

計算書類。活動計算書と貸借対照表の2つを指します。

財産目録。

年間役員名簿。前事業年度に役員であった人全員の氏名・住所と、報酬の有無を記載します。

社員のうち10人以上の氏名と住所を記載した書面。

これらをまとめて事業報告書等と呼びます。

作成した書類は、作成の日から5年が経過した日を含む事業年度の末日まで事務所に備え置きます。

加えて、役員名簿と定款等も事務所に備え置く義務があります。

所轄庁への提出は別途必要で、提出された書類は所轄庁でも公開されます。

年間の流れは、年間スケジュールの記事で整理しています。

活動計算書は損益計算書ではない

会社の決算書との違いを押さえておきましょう。

NPO法人の決算書は活動計算書です。

株式会社の損益計算書にあたる位置づけですが、考え方が違います。

損益計算書は「どれだけ儲かったか」を示す書類です。

活動計算書は「1年間でどのように財産が増減したか」、つまり資金がどう使われたかを示す書類です。

利益ではなく、正味財産の増減を表します。

科目も独特です。

受取会費、受取寄付金、受取助成金等、事業収益といった科目が並びます。

費用も、事業費と管理費に分けて表示するのが基本です。

事業費は活動そのものにかかった費用、管理費は法人の運営に必要な事務費用です。

この事業費と管理費の区分は、助成金の申請や報告でも必ず見られます。

記帳の段階から分けておかないと、決算のときに配分し直す羽目になります。

NPO法人会計基準という共通のものさし

会計の具体的なルールについて、法律は細部まで定めていません。

実務で広く使われているのが、民間の団体が策定したNPO法人会計基準です。

法律で強制されるものではありませんが、多くの所轄庁が様式の参考にしており、事実上の標準になっています。

この基準の特徴は、収支計算書ではなく活動計算書を採用している点です。

また、注記の充実も求められます。

重要な会計方針、施設の提供等の物的サービスを受けた場合の内容、役員および近親者との取引などです。

とくにボランティアによる役務の提供を注記できる仕組みは、NPO会計ならではです。

無償で提供された労力を金額に換算して注記することで、活動の実像を示せます。

必須ではありませんが、寄付者や助成団体への説明力が上がります。

基準の最新版は策定団体の公表資料で確認してください。

会計ソフトをどう選ぶか

では、何を使って記帳すればよいのでしょうか。

選択肢は大きく3つあります。

選択肢 向いている団体 注意点
表計算ソフト(無料) 取引が月数件、現金中心の小規模団体 複式簿記の形を自作する必要がある。担当交代で壊れやすい
NPO向け会計ソフト 活動計算書をそのまま出したい団体 事業費・管理費の区分や科目が最初から入っている
一般のクラウド会計 口座連携や請求管理も使いたい団体 科目や様式をNPO用に設定し直す手間がかかる

選ぶときの判断軸は4つです。

第一に、活動計算書の形式で出力できるか。ここが最重要です。

第二に、事業費と管理費の区分、事業別の集計ができるか。助成金の報告で必要になります。

第三に、複数人で使えるか。会計担当と理事が同じ数字を見られる状態が理想です。

第四に、担当が代わっても引き継げるか。特定の個人のパソコンにしかないデータは、その人が辞めた瞬間に消えます。

費用は年1万円台から数万円が目安ですが、団体の規模と取引件数で必要な機能が変わります。

無料の表計算から始めて、取引が増えた段階で移行するのが現実的です。

日々の記帳で決めておくこと

ソフトを入れても、運用の型がなければ続きません。

最初に決めるべきことを挙げます。

第一に、誰がいつ入力するか。月1回まとめてでも構いませんが、日を決めます。

第二に、証憑の保管方法。領収書・請求書・通帳のコピーをどこに綴じるかです。

第三に、事業ごとの区分。助成金を受けている事業は、必ず別に集計できるようにします。

第四に、現金の扱い。小口現金は金額の上限を決め、月末に残高を数えて記録します。

第五に、通帳と帳簿の突合を誰がいつやるか。

監事の監査でも、まずここが見られます。

第六に、会計方針の文書化。減価償却の方法、寄付金の計上時期などを書き残します。

この6点を1枚の紙にまとめておけば、担当が代わっても運用が壊れません。

監事の監査の進め方は、専用の記事で解説しています。

会計担当がいないときの現実解

小さな団体では、会計が分かる人がいないこともあります。

その場合の現実的な選択肢を挙げます。

第一に、中間支援組織の相談窓口を使うことです。多くの都道府県にNPO支援センターがあり、会計の相談に応じています。

第二に、記帳だけを外部に委託することです。

第三に、税理士に依頼することです。課税事業者になった段階では、これが安全です。

⚠️ただし、丸投げにはしないでください。

数字を理解しないまま決算書に押印すると、理事としての責任だけが残ります。

外注する場合も、月次の残高と主要な収支だけは理事会で確認する運用にしてください。

会計は事務作業ではなく、団体の意思決定の材料です。

ここが弱い団体は、助成金の申請でも金融機関との交渉でも不利になります。

財産目録と貸借対照表の関係

毎年つくる書類のうち、財産目録は見落とされやすい存在です。

財産目録は、事業年度末時点で法人が持っている資産と負債を、個別に列挙した書類です。

貸借対照表が科目ごとの合計を示すのに対し、財産目録は「何が、どこに、いくらあるか」を具体的に書きます。

現金は手元にいくら、預金はどの銀行のどの口座にいくら、備品は何がいくら。

この2つは同じ会計簿から作るので、合計が一致します

一致しない場合は、どこかで記帳が漏れているサインです。

決算のとき、まず財産目録と貸借対照表の合計を突き合わせてください。

ここが合っていれば、大きな記帳漏れはないと判断できます。

なお、かつて登記事項だった「資産の総額」は2018年10月1日に廃止されています。いまは毎事業年度、貸借対照表を公告する義務に置き換わっています(NPO法28条の2)。

よくある記帳の間違い

実務で頻繁に見かける間違いを挙げます。

第一に、助成金を受け取った年に全額を収益にしてしまうケースです。

事業が翌年度にまたがる場合、期間に応じた処理が必要になることがあります。

第二に、事業費と管理費を分けずに記帳するケースです。決算で配分し直すことになり、必ず手戻りが出ます。

第三に、代表者の個人口座で団体のお金を管理しているケースです。

法人名義の口座を作り、個人の資金と完全に分けてください。

第四に、領収書のない支出です。とくに交通費や少額の立替は、記録の様式を決めておきます。

第五に、寄付金の計上時期です。約束をもらった時点ではなく、実際に入金された時点で計上するのが基本です。

第六に、前年と処理方法を変えてしまうケース。継続性の原則に反し、比較できない決算書になります。

口座開設の実務は、専用の記事で解説しています。

記帳を続けるための仕組み

会計が止まる原因は、たいてい能力ではなく仕組みの不在です。

続けるための工夫を挙げます。

第一に、入力の日を決めることです。毎月第1週など、カレンダーに固定します。

第二に、証憑の置き場所を1か所にすることです。

第三に、月次で残高を確認することです。通帳の残高と帳簿の残高が合っているかだけでも見ます。

第四に、理事会で月次または四半期の数字を共有することです。

会計担当ひとりに背負わせないことが、いちばんの再発防止策になります。

第五に、引き継ぎ資料を作っておくことです。

ソフトのアカウント、会計方針、証憑の場所、締めの手順を1枚にまとめます。

担当が交代する瞬間が、団体の会計がもっとも壊れやすいタイミングです。

よくある質問

Q. NPO法人は複式簿記でないといけませんか?

A. 法律は「正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること」と定めており、実務上は複式簿記で処理するのが基本です。現金出納帳だけでは貸借対照表を正しく作成できないため、規模が小さくても複式簿記に対応した方法を選んでください。

Q. 決算書はいつまでに作りますか?

A. 毎事業年度の初めの3か月以内に、事業報告書・計算書類(活動計算書と貸借対照表)・財産目録・年間役員名簿・社員10人以上の名簿を作成します。所轄庁への提出期限も条例で定められており、3か月以内としている自治体が一般的です。

Q. 作った書類はいつまで保管しますか?

A. 作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日までの間、事務所に備え置く必要があります。あわせて役員名簿と定款等も備え置く義務があります。

Q. 活動計算書と損益計算書は何が違いますか?

A. 損益計算書が利益を示すのに対し、活動計算書は1年間の正味財産の増減、つまり資金がどう使われたかを示します。科目も受取会費・受取寄付金・受取助成金等が並び、費用は事業費と管理費に区分して表示するのが基本です。

Q. 会計ソフトは何を基準に選べばいいですか?

A. 最重要は活動計算書の形式で出力できることです。あわせて事業費・管理費の区分と事業別集計ができるか、複数人で共有できるか、担当交代時に引き継げるかを確認してください。取引が月数件なら表計算から始めても構いません。

Q. 会員から帳簿を見せてほしいと言われたら?

A. 事業報告書等については、社員その他の利害関係人から閲覧の請求があった場合、正当な理由がある場合を除いて閲覧させる義務があります。日頃から整理しておけば、突然の請求にも慌てずに対応できます。


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