結論から申し上げます。
一般社団法人の設立費用は、法定費用+専門家の報酬で決まります。
法定費用は、定款認証の手数料5万円と、設立登記の登録免許税6万円です。
この2つは、自分で手続をしても専門家に頼んでも同じ額です。
専門家の報酬は、各事務所が自分で決めています。法律で決まった額や、国が公表している相場はありません。
そのため、この記事では報酬の金額は示さず、報酬の確かめ方と見積書の見方を説明します。
また、定款の作成は行政書士、登記申請の代理は司法書士の業務です。頼む内容によって依頼先が変わります。
誰に頼んでも変わらない法定費用
一般社団法人を設立するには、設立時社員が共同して定款を作り、公証人の認証を受けます(一般法人法10条1項・13条)。
定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません(13条)。
そのうえで、主たる事務所の所在地で設立の登記をすると法人が成立します(22条)。
この2つの手続で、法律が定める費用がかかります。
| 費用 | 金額 | 根拠 | 専門家に頼んだ場合 |
|---|---|---|---|
| 定款認証の手数料 | 5万円 | 公証人手数料令35条3号 | 同じ額 |
| 設立登記の登録免許税 | 6万円 | 登録免許税法別表第一第24号(一)ロ | 同じ額 |
| 定款に貼る収入印紙 | 不要 | 印紙税法別表第一第6号(会社の定款に限る) | 同じく不要 |
| 合計 | 11万円 | ― | 11万円に報酬が加わる |
このほか、定款の謄本の手数料、設立時理事の印鑑証明書、法人の印鑑の作成費用などの実費がかかります。
印鑑証明書の手数料は市区町村ごとに決まっています。印鑑の作成費用は購入する店によって違います。
設立後に法人の登記事項証明書を取る場合、法務局の手数料は書面請求で1通600円です(令和7年4月1日から)。
法定費用の内訳は一般社団法人の設立に必要な費用でも説明しています。
電子定款にしても法定費用は減らない
株式会社の設立では「電子定款にすると4万円安くなる」と説明されることがあります。
これは、株式会社の紙の定款の原本に4万円の収入印紙が必要だからです。
印紙税法の別表第一第6号は、課税の対象を「会社の設立のときに作成される定款の原本」に限っています。
一般社団法人は会社ではないので、紙の定款でも収入印紙は要りません。
つまり一般社団法人では、電子定款にしても収入印紙の分の節約は生じません。
定款は電磁的記録で作ることもできます(一般法人法10条2項)。
その場合は、署名や記名押印に代わる措置(電子署名)が必要です(同項後段)。
電子署名の環境を持つ専門家に頼むか、紙の定款で認証を受けるかは、手間と報酬で選びます。
「電子定款で収入印紙の代金が浮くので報酬が実質無料」といった説明は、一般社団法人には当てはまりません。
設立の手続ごとに、頼める専門家が違う

一般社団法人の設立には、性質の違う複数の手続があります。
手続ごとに、法律でその業務を扱える資格者が決まっています。
定款の作成は、権利義務に関する書類の作成として行政書士の業務です(行政書士法1条の3第1項)。
行政書士は、契約などの書類を代理人として作成することや、書類の作成について相談に応じることもできます(同法1条の4第1項3号・4号)。
設立登記の申請の代理は、司法書士の業務です(司法書士法3条1項1号)。
法務局に提出する登記申請書や添付書類の作成も、司法書士の業務です(同項2号)。
行政書士の業務でも、他の法律で制限されているものはできません(行政書士法1条の3第2項)。
そのため行政書士は、登記の申請の代理や登記申請書の作成はできません。
| 手続 | 扱える専門家 | 根拠 |
|---|---|---|
| 定款の作成・作成の相談 | 行政書士 | 行政書士法1条の3第1項・1条の4第1項3号4号 |
| 定款の認証 | 公証人(認証そのもの) | 一般法人法13条 |
| 設立登記の申請の代理 | 司法書士 | 司法書士法3条1項1号 |
| 登記申請書・添付書類の作成 | 司法書士 | 司法書士法3条1項2号 |
| 設立後の税務署への申告・届出書類 | 税理士 | 税理士法2条1項 |
| 社会保険・労働保険の加入手続 | 社会保険労務士 | 社会保険労務士法27条 |
資格を持たない人がこれらを報酬を得て業として行うことは、各法律で禁止されています。
根拠は、行政書士法19条1項・司法書士法73条1項・税理士法52条・社会保険労務士法27条です。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
- 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。
自分で手続をする場合にかかるもの
設立の手続は、専門家に頼まず自分たちで行うこともできます。
その場合、費用は法定費用と実費だけで、報酬はかかりません。
設立の登記は、法人を代表すべき者が申請します(一般法人法318条1項)。
法務局のWebサイトには、一般社団法人の設立登記の申請書様式と記載例が掲載されています。
理事会や監事を置くかどうかで様式が分かれているので、自分の機関設計に合う様式を使います。
一方で、定款の内容を決める作業と、添付書類をそろえる作業には時間がかかります。
| 自分で行う作業 | 内容 | 根拠・参照先 |
|---|---|---|
| 定款を作る | 目的・名称・所在地・設立時社員・社員の資格・公告方法・事業年度の7項目は必ず書く | 一般法人法11条1項 |
| 定款の認証を受ける | 公証役場で認証を受ける。実質的支配者となるべき者の申告もする | 一般法人法13条・公証人法施行規則46条1項1号 |
| 登記申請書を作る | 法務局の様式と記載例を使う | 法務局「申請書様式」 |
| 添付書類をそろえる | 定款、設立時代表理事の選定に関する書面、就任承諾書など | 一般法人法318条2項 |
| 登記を申請する | 主たる事務所の所在地を管轄する法務局へ | 一般法人法22条 |
社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めは、効力がありません(11条2項)。
自分で進める場合も、定款の条文はこの点を含めて確認します。
定款認証の準備は一般社団法人の定款認証の必要書類、公証役場については公証役場とはで説明しています。
頼み方ごとの費用の組み立て
専門家に頼む範囲は、全部か一部かを選べます。
範囲によって、費用の内訳と依頼先が変わります。
どの組み合わせでも、法定費用の11万円は必ずかかります。
| 頼み方 | 依頼先 | 費用の内訳 | 自分で行うこと |
|---|---|---|---|
| すべて自分で行う | なし | 法定費用+実費 | 定款作成・認証・登記申請のすべて |
| 定款の作成だけ頼む | 行政書士 | 法定費用+実費+行政書士の報酬 | 認証の手続(依頼範囲による)と登記申請 |
| 登記の申請だけ頼む | 司法書士 | 法定費用+実費+司法書士の報酬 | 定款の作成と認証 |
| 定款も登記も頼む | 行政書士と司法書士(両方の資格者が連携する場合もある) | 法定費用+実費+それぞれの報酬 | 書類への署名・押印、印鑑証明書の取得など |
「定款も登記も」と頼む場合、登記の部分は司法書士が担当する必要があります。
行政書士事務所に申し込んだ場合でも、登記の申請は提携する司法書士が行う形になるのが条文に沿った分担です。
このとき、報酬が別々に請求されるのか、まとめて請求されるのかを見積書で確かめます。
報酬の金額はどうやって確かめるか
行政書士と司法書士の報酬は、法律で金額が決められていません。
その代わり、依頼する人が報酬を知るための仕組みが法律にあります。
行政書士は、事務所の見やすい場所に報酬の額を掲示しなければなりません(行政書士法10条の2第1項)。
司法書士は、依頼を受ける前に、報酬額の算定方法などの基準を示す必要があります(司法書士法施行規則22条)。
日本行政書士会連合会などは、報酬額の統計を作って公表するよう努めることとされています(行政書士法10条の2第2項)。
ただし統計は調査ごとの集計で、個々の事務所の報酬を決めるものではありません。
結局は、依頼する範囲を同じにしたうえで、複数の事務所の見積書を比べるのが確実です。
- 報酬の対象:定款の作成だけか、認証の手続や登記の申請まで含むか
- 法定費用(定款認証5万円・登録免許税6万円)が報酬と分けて書かれているか
- 実費(謄本の手数料、証明書代、郵送料など)の扱い
- 登記の申請を担当するのは誰か(司法書士の氏名・事務所)
- 定款の修正や打ち合わせの回数に上限があるか
- 設立後の届出の案内が含まれるか、別料金か
- 支払の時期と、途中で依頼をやめたときの扱い
1 法定費用:定款認証手数料 50,000円
2 法定費用:登録免許税 60,000円
3 実費:定款謄本の手数料・郵送料など 〇円
4 報酬(行政書士):定款の作成 〇円
5 報酬(司法書士):設立登記の申請の代理・申請書類の作成 〇円
6 消費税(報酬に係るもの) 〇円
法定費用と報酬を分けて書いてもらうと、事務所どうしで比べやすくなります。
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「設立代行」をうたう無資格の業者に注意
「一般社団法人の設立を代行します」と広告する業者には、資格者でない会社もあります。
行政書士法19条1項は、行政書士でない者がいかなる名目によるかを問わず報酬を得て定款などの書類作成を業として行うことを禁じています。
「コンサルティング料」「サポート料」という名目でも、実際に書類を作っていれば同じです。
司法書士でない者が登記の申請の代理や登記申請書の作成を業として行うことも、禁じられています(司法書士法73条1項)。
依頼する前に、担当者が行政書士・司法書士の登録を受けているか、名刺や事務所の表示で確かめます。
| こんな説明を受けたら | 確かめること |
|---|---|
| 「書類は全部こちらで作って法務局に出します」 | 担当するのが司法書士か(司法書士法3条1項1号・2号) |
| 「書類作成ではなくサポートなので資格は要りません」 | 実際に定款を作るなら行政書士の業務(行政書士法19条1項) |
| 「電子定款なので収入印紙の代金が浮きます」 | 一般社団法人の定款には収入印紙がそもそも不要(印紙税法別表第一第6号) |
| 「税金の届出もまとめてやります」 | 税務署への申告・届出書類の作成は税理士の業務(税理士法2条1項・52条) |
定款づくりで専門家に相談する意味
報酬を払って専門家に頼む価値が出やすいのは、定款の中身を決める場面です。
定款には法律で必ず書く事項のほか、理事会や監事を置くか、社員の資格をどうするかなど、法人の運営を左右する定めが入ります。
設立後に定款を変えるには、社員総会の特別決議が必要です(一般法人法146条・49条2項4号)。
最初の定款で機関設計や社員の資格を決めておくと、設立後の手続が少なくて済みます。
税の面では、法人税法2条9号の2が「非営利型法人」を定めています。
非営利型法人に当たるかどうかは、定款の定めと運営の実態で判断されます。
具体的な判定は税理士または税務署に確認する事項です。
- 法人の目的と、実際に行う事業
- 理事会を置くか、監事を置くか(機関設計)
- 誰を社員にするか(正会員だけか、など)と、入退会の手続
- 役員の人数と任期
- 事業年度と公告の方法
- 設立時社員・設立時理事になる人と、その印鑑証明書の準備
機関設計の選び方は一般社団法人の機関設計で説明しています。
依頼から設立までの流れ

定款は行政書士、登記は司法書士に頼む場合の一般的な流れです。
一方だけを頼む場合は、該当しない部分を自分で行います。
法定費用と報酬を分けて書いてもらい、同じ範囲で比べる
目的・機関設計・社員の資格などを打ち合わせる(行政書士法1条の4第1項4号)
公証人の認証で定款が効力を生じる(一般法人法13条)。手数料5万円
就任承諾書・設立時代表理事の選定書面など(一般法人法318条2項)
司法書士が代理して申請(司法書士法3条1項1号)。登録免許税6万円
税務署・都道府県・市町村への届出、必要なら社会保険の手続
設立の手順全体は一般社団法人の設立の流れ、就任承諾書の書き方は就任承諾書とはで説明しています。
株式会社・NPO法人と法定費用を比べる
法定費用は、法人の種類によって大きく違います。
株式会社の定款認証の手数料は、資本金の額によって3万円・4万円・5万円に分かれます(公証人手数料令35条1号〜3号)。
資本金100万円未満で、発起人が3人以下の個人であるなどの要件を満たすと1万5千円です(同条1号)。
株式会社の設立登記の登録免許税は資本金の1000分の7で、15万円に満たないときは15万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)イ)。
NPO法人は、公証人の定款認証ではなく、所轄庁の設立の認証を受けます(NPO法10条1項)。
NPO法人の設立登記は登録免許税法の別表第一に掲げられていないため、登録免許税はかかりません(同法2条)。
| 法人の種類 | 定款の認証 | 設立登記の登録免許税 | 収入印紙(紙の定款) |
|---|---|---|---|
| 一般社団法人 | 公証人・5万円 | 6万円 | 不要 |
| 株式会社 | 公証人・資本金により3万円/4万円/5万円(要件を満たせば1万5千円) | 資本金の1000分の7(最低15万円) | 4万円(電子定款なら不要) |
| NPO法人 | 所轄庁の認証(公証人の認証は不要) | かからない | 不要 |
一般社団法人は法定費用が株式会社より少なくなりやすい一方、NPO法人は所轄庁の認証に時間がかかります。
法人の選び方は一般社団法人とNPO法人どっちを選ぶ?で比べています。
設立後に専門家へ頼むことが多い手続
設立の費用を考えるときは、設立後の手続も見ておくと予算を立てやすくなります。
設立後には、税務署・都道府県・市町村への届出があります。
税務署への届出や申告の書類作成は税理士の業務です(税理士法2条1項)。
職員を雇えば、社会保険・労働保険の加入手続が必要になることがあります。
役員の変更などで登記事項が変わったときは、2週間以内に変更の登記をします(一般法人法303条)。
これらを専門家に頼む場合も、それぞれの資格者に報酬を払う形になります。
| 設立後の手続 | 時期 | 扱う専門家 |
|---|---|---|
| 税務署などへの届出 | 設立後すみやかに | 税理士(自分で行うこともできる) |
| 社会保険・労働保険の加入 | 職員を雇ったときなど | 社会保険労務士(自分で行うこともできる) |
| 役員変更などの登記 | 変更から2週間以内(303条) | 司法書士(自分で行うこともできる) |
| 定款の変更 | 社員総会の特別決議(146条) | 定款の作成は行政書士 |
設立後の届出の一覧は一般社団法人の設立後の届出で説明しています。
よくある誤解
誤解1:専門家に頼むと法定費用が安くなる。定款認証5万円と登録免許税6万円は、誰が手続をしても同じです。
誤解2:電子定款にすれば4万円安くなる。
収入印紙が必要なのは会社の定款だけです。
一般社団法人の定款には紙でも収入印紙は要りません。
誤解3:行政書士に頼めば登記まで全部できる。
登記の申請の代理と登記申請書の作成は司法書士の業務です(司法書士法3条1項1号・2号)。
誤解4:報酬には決まった相場がある。
報酬は各事務所が決めています。
掲示(行政書士法10条の2)や基準の提示(司法書士法施行規則22条)で確かめます。
誤解5:資格がなくても「サポート」なら問題ない。
名目を問わず、報酬を得て定款などを作ることは行政書士でない者には禁じられています(行政書士法19条1項)。
一般社団法人の設立を専門家に頼む費用についてよくある質問
A. 法定費用の11万円(定款認証5万円・登録免許税6万円)に、実費と専門家の報酬を足した額です。報酬は事務所ごとに違うため、見積書で確かめます(公証人手数料令35条3号・登録免許税法別表第一第24号(一)ロ)。
A. 定款は権利義務に関する書類なので、行政書士に頼めます(行政書士法1条の3第1項)。代理人としての作成や、作成についての相談も行政書士の業務です(同法1条の4第1項3号・4号)。
A. 登記の申請の代理と、法務局に出す書類の作成は司法書士の業務です(司法書士法3条1項1号・2号)。法人を代表すべき者が自分で申請することもできます(一般法人法318条1項)。
A. 報酬は法律で決まっていません。行政書士は事務所に報酬額を掲示し(行政書士法10条の2第1項)、司法書士は依頼前に報酬の基準を示します(司法書士法施行規則22条)。同じ範囲で複数の見積書を比べるのが確実です。
A. 一般社団法人の定款には紙でも収入印紙が不要です(印紙税法別表第一第6号は会社の定款に限る)。そのため電子定款にしても法定費用は変わりません。
A. 定款の謄本の手数料、設立時理事などの印鑑証明書の手数料、法人の印鑑の作成費用などの実費です。登記申請書の様式は法務局のWebサイトで入手できます。
A. 担当者が行政書士・司法書士であるかを確かめてください。資格者でない者が名目を問わず報酬を得て定款などを作ることや、登記申請を代理することは禁じられています(行政書士法19条1項・司法書士法73条1項)。
A. 株式会社は定款認証が資本金により3万円・4万円・5万円(要件を満たせば1万5千円)、登録免許税は資本金の1000分の7で最低15万円です。NPO法人は所轄庁の認証で、設立登記の登録免許税はかかりません。
📖 参考にした公的機関の情報


