会費と寄付だけでは足りないので、講座の受講料を取りたい。
物販を始めたいが、これは「その他の事業」にあたるのか。
そもそも税金はかかるのか。
この場面で混乱が起きるのは、NPO法の「その他の事業」と、法人税法の「収益事業」が別の概念だからです。
名前が似ているうえ、どちらも「お金を稼ぐ活動」の話に見えるので、同じものだと思われがちです。
この記事では、2つの違いと、それぞれで必要になる会計の分け方を整理します。
NPO法の「その他の事業」とは
根拠はNPO法5条1項です。
条文は、特定非営利活動法人は、その行う特定非営利活動に係る事業に支障がない限り、それ以外の事業(その他の事業)を行うことができると定めています。
つまり、その他の事業は例外的に認められている位置づけです。
そして同項の後段が重要で、利益を生じたときは、これを特定非営利活動に係る事業のために使用しなければならないと定めています。
その他の事業で稼いだ利益を、その他の事業の拡大だけに再投資し続けることはできません。
本来の活動に還すことが法律上の義務です。
さらに5条2項が、その他の事業に関する会計は、特定非営利活動に係る事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならないと定めています。
つまり帳簿を分けることが求められます。
その他の事業を行う場合は、定款にその旨と事業の種類を記載する必要があります。
法人税法の「収益事業」とは
こちらはまったく別の法律の話です。
NPO法人は法人税法上の公益法人等にあたり、収益事業から生じた所得にだけ法人税が課されます。
その収益事業は、法人税法施行令5条1項に34業種が限定列挙されています。
物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産権の提供等を行う事業、労働者派遣業の34です。
加えて、継続して事業場を設けて行われるものという要件がかかります。
一度きりのバザーが継続性を欠くと判断されることがあるのは、この要件によります。
限定列挙なので、この34業種のどれにも当たらなければ、収益が出ていても法人税の課税対象にはなりません。
なお、業種ごとに「次に掲げるもの以外のもの」という除外規定が置かれているものがあり、実際の判定はそこまで読む必要があります。
2つは重なることも、ずれることもある
ここが最も誤解されるところです。
本来の特定非営利活動に係る事業として行っている講座であっても、技芸教授業などに当たれば法人税法上は収益事業になります。
逆に、その他の事業として定款に書いた活動が、34業種のどれにも当たらないこともあります。
つまり、NPO法の区分と、税法の区分は一致しません。
「うちはその他の事業をやっていないから法人税は関係ない」という理解は誤りです。
また、「その他の事業をやっているから必ず課税される」という理解も誤りです。
判定は、NPO法の区分と税法の区分を別々に行ってください。
| NPO法の「その他の事業」 | 法人税法の「収益事業」 | |
|---|---|---|
| 根拠 | NPO法5条 | 法人税法施行令5条1項 |
| 範囲 | 定款の特定非営利活動に係る事業以外 | 34業種の限定列挙+継続して事業場を設けて行う |
| 求められること | 利益を本来の事業に充てる/特別会計として区分 | 収益事業の所得に法人税/区分経理 |
| 定款 | 事業の種類の記載が必要 | 関係しない |
| 判定する人 | 所轄庁の視点 | 税務署の視点 |
会計は二重に分けることになる
結果として、会計の区分は2種類が並走します。
1つはNPO法5条2項による、特定非営利活動に係る事業とその他の事業の区分です。
もう1つは法人税法上の、収益事業と収益事業以外の区分です。
この2つの線は同じ位置に引かれるとは限りません。
会計ソフトの科目設計を最初に決めるときに、両方の切り口で集計できるようにしておくと後が楽になります。
またNPO法27条は会計の原則を定めていて、会計簿は正規の簿記の原則に従って記帳すること、計算書類(活動計算書および貸借対照表)と財産目録は会計簿に基づいて真実な内容を明瞭に表示すること、採用する会計処理の基準と手続は毎事業年度継続して適用しみだりに変更しないことを求めています。
この継続性の原則があるので、年度の途中で区分の考え方を変えるのは避けてください。
認定NPO法人は「その他の事業の停止」を命じられることがある
認定を受けている法人には、追加の制裁規定があります。
NPO法66条1項は、所轄庁は、5条1項に違反してその他の事業から生じた利益が本来の事業以外の目的に使用されたと認めるときは、その他の事業の停止を命ずることができると定めています。
利益の使い道を守らないと、その他の事業そのものを止められるということです。
認定を目指している法人にとっては、日々の経理の付け方がそのまま認定の維持につながります。
税務の判定は個別性が高いので、迷ったら早い段階で税理士に相談してください。
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「その他の事業」と「収益事業」の線引きは、NPO法人を見慣れた事務所でないと止まる
34業種のどれに当たるか、除外規定に入るか、区分経理をどう組むか——このあたりは、株式会社しか扱っていない事務所だと判断が止まることがあります。税理士ドットコムは、対応分野・地域・報酬の希望を伝えると無料で税理士を紹介してくれるサービスです(相談・紹介は無料)。
Q. NPO法の「その他の事業」と法人税法の「収益事業」は同じものですか?
A. 違います。「その他の事業」は定款の特定非営利活動に係る事業以外の事業を指すNPO法5条の概念で、「収益事業」は法人税法施行令5条1項に34業種が限定列挙された税法上の概念です。重なることもずれることもあるので、判定は別々に行います。
Q. その他の事業の利益は自由に使えますか?
A. 使えません。利益を生じたときは特定非営利活動に係る事業のために使用しなければなりません(NPO法5条1項)。会計もその他の事業を特別の会計として区分する必要があります(同2項)。
Q. その他の事業をしていなければ法人税はかかりませんか?
A. そうとは限りません。本来の特定非営利活動に係る事業であっても、法人税法施行令5条1項の34業種に当たり継続して事業場を設けて行われていれば、収益事業として課税対象になります。
Q. 収益事業は何種類ありますか?
A. 法人税法施行令5条1項に34業種が限定列挙されています。ただし業種ごとに除外規定があるため、条文を最後まで読んで判定する必要があります。
Q. その他の事業を止められることはありますか?
A. 認定NPO法人については、その他の事業から生じた利益が本来の事業以外の目的に使用されたと所轄庁が認めるときは、その他の事業の停止を命じられることがあります(NPO法66条1項)。
📖 参考にした公的機関の情報


