一般社団法人の銀行口座が作れない?開設の方法と対処法を解説

一般社団法人法
法人を作ったのに銀行口座が開けない。そんなときは、銀行が法律上なにを確認しなければならないのかを知ると、準備すべきものが見えてきます。

結論から申し上げます。

一般社団法人だから口座が作れない、という法律上の決まりはありません。

預金口座の開設は、犯罪収益移転防止法の「取引時確認」の対象です(同法4条1項・同法施行令7条1項1号イ)。

銀行は、法人の名称と所在地、取引の目的、事業の内容、実質的支配者を確認しなければなりません。

確認に応じてもらえないとき、銀行は取引を拒めます(同法5条)。

審査の細かな基準は銀行ごとに異なり、公表されていません。

この記事では、法律で決まっている確認事項から逆算して準備を説明します。

POINT 口座開設で問われるのは「どんな法人が、何のために、誰の支配のもとで口座を使うのか」です。この4点を書類と説明で示せるようにしておくことが、準備の中心です。

銀行が法律上確認しなければならないこと

銀行・信用金庫・信用組合などは、犯罪収益移転防止法の「特定事業者」です(2条2項1号〜15号)。

特定事業者は、預金契約を結ぶとき、法人である顧客について次の事項を確認しなければなりません(4条1項)。

あわせて、窓口で手続をする人(代表者等)の本人確認も必要です(4条4項)。

確認事項 一般社団法人の場合の中身 確認の方法 根拠
本人特定事項 名称と主たる事務所の所在地 登記事項証明書などの確認 法4条1項1号・規則6条1項3号
取引を行う目的 会費の受入れ、事業の売上の入金、経費の支払など 申告 法4条1項2号・規則9条
事業の内容 定款の目的・実際に行う事業 定款・登記事項証明書などの確認 法4条1項3号・規則10条2号
実質的支配者 事業を実質的に支配できる自然人 代表者等からの申告 法4条1項4号・規則11条1項
代表者等の本人特定事項 窓口で手続をする人の氏名・住居・生年月日 運転免許証などの確認 法4条4項・規則12条

これらは、すべての特定事業者に共通する最低限の確認です。

そのうえで、特定事業者は確認した情報を最新に保つ措置などを講じることとされています(11条)。

法律の項目を超える資料を求めるかどうかは、各銀行の内部の方針によります。その基準は公表されていません。

必要書類と、その書類が求められる理由

必要書類と、その書類が求められる理由
図:必要書類と、その書類が求められる理由

必要書類は銀行ごとに案内が違いますが、多くは上の確認事項に対応しています。

何のための書類かが分かれば、手元にないときの代わりの資料も考えやすくなります。

書類 何を確認するためか 注意点 根拠
登記事項証明書 名称・所在地・事業の内容 提示を受ける日の前6か月以内に作成されたもの 規則7条2号イ・10条2号ハ
定款の写し 事業の内容 原本と相違ない旨の証明を求める銀行もある 規則10条2号イ
代表者等の本人確認書類 窓口で手続をする人の本人特定事項 運転免許証・マイナンバーカードなど。有効期限内のもの 規則7条1号・12条1項
実質的支配者の申告書 実質的支配者の本人特定事項 銀行所定の様式に記入することが多い 規則11条1項
委任状など 代表理事以外の人が手続するときの権限 代表権を持つ役員として登記された人なら不要の扱い 規則12条5項2号
事業の説明資料 取引の目的・事業の実態 法令の書類ではないが、銀行が任意に求めることがある 法令の定めなし

登記所が発行する法人の印鑑証明書も、名称と所在地が書かれた官公庁発行の書類として本人確認書類になります(規則7条2号ロ)。

ただし、銀行によっては届出印の確認などのために別途求められる場合があります。

非対面で申し込むときは、登記情報の送信や法人番号の公表事項の確認に加え、主たる事務所あての転送不要郵便などで所在が確かめられます(規則6条1項3号ロ・ハ)。

「作れない」と言われやすい場面

口座開設を断られた理由は、詳しく説明されないことが多いです。

特定事業者には、疑わしい取引を行政庁へ届け出る義務があります(8条1項)。

そして、届出をしようとしていることや、したことを顧客に漏らしてはならないとされています(8条4項)。

理由が伝えられないこと自体は、珍しいことではありません。

そのうえで、法律の確認事項に照らすと、つまずきやすい場面は次のように整理できます。

つまずきやすい場面 確認事項との関係 準備できること
定款の目的が広すぎて、何をする法人か分からない 事業の内容(規則10条2号) 実際に行う事業を説明する資料を用意する
事務所の実態が確認しにくい(自宅・バーチャルオフィスなど) 本人特定事項・転送不要郵便での確認(規則6条1項3号) 郵便が届く体制、賃貸借契約書などを用意する
お金の流れが説明できない 取引を行う目的(法4条1項2号) 入金元・出金先・おおよその金額を説明できるようにする
実質的支配者が誰か答えられない 実質的支配者(規則11条) 誰に当たるかを事前に整理しておく
窓口に来た人の権限が確認できない 代表者等(規則12条5項) 代表理事本人が行くか、委任状を用意する
設立直後で活動の実績がない 事業の内容・取引の目的 事業計画や契約予定の資料で今後の活動を示す

表は法令の確認事項から考えられる場面を整理したものです。各銀行の審査基準そのものを示すものではありません。

一般社団法人の実質的支配者は誰になるか

実質的支配者の決め方は、法人の種類で違います。

株式会社のように議決権の数で決まる法人(資本多数決法人)は、議決権の4分の1超などが基準です(規則11条2項1号)。

一般社団法人は資本多数決法人以外の法人にあたり、規則11条2項3号の基準で考えます。

事業の収益や財産の総額の4分の1を超える配当・分配を受ける権利を持つ自然人がいれば、その人です(同号イ)。

出資・融資・取引などを通じて事業活動に支配的な影響力を持つ自然人がいれば、その人も当たります(同号ロ)。

そのような人がいなければ、法人を代表し、業務を執行する自然人が実質的支配者です(同項4号)。

3号のイにもロにも当たる人がいなければ、4号により代表理事が実質的支配者になります。

なお、法務局の「実質的支配者リスト制度」を使えるのは株式会社(特例有限会社を含む)です。

一般社団法人は対象外と法務省が案内しています。

一般社団法人の場合は、銀行の申告書に実質的支配者を記入して申告します(規則11条1項)。

判定の詳しい考え方は一般社団法人の実質的支配者で解説しています。

口座開設までの流れ

一般社団法人は、主たる事務所の所在地で設立の登記をすることによって成立します(一般法人法22条)。

登記が終わるまでは法人が存在しないため、法人名義の口座は作れません。

登記の完了後に、次の順で進めます。

1
設立の登記が完了する
法人が成立する(一般法人法22条)。法人番号もこのあと指定される
▼
2
登記事項証明書を取る
6か月以内に作成されたものを用意(規則7条2号イ)
▼
3
定款の写しと事業の説明資料をそろえる
事業の内容と取引の目的を説明できるようにする
▼
4
金融機関に申し込む
窓口なら事前予約が必要な場合がある。ネット申込みは画面の案内に従う
▼
5
取引時確認を受ける
名称・所在地、目的、事業の内容、実質的支配者、代表者等の本人確認(法4条)
▼
6
審査の結果を待つ
期間は金融機関ごとに異なる。追加資料を求められたら速やかに出す
▼
7
口座開設・届出印やネットバンキングの設定
利用できる人と権限を法人内で決めておく

設立の流れ全体は一般社団法人の設立の流れ、口座開設の一般的な手順は一般社団法人の銀行口座開設の流れもご覧ください。

申し込み前に準備しておくこと

窓口では、書類の提出とあわせて事業や取引の目的を質問されます。

答えに詰まると、確認事項が満たせないと判断されるおそれがあります。

事前に次の項目を確かめ、説明用のメモを作っておくと落ち着いて対応できます。

申し込み前のチェックリスト

  • 登記事項証明書は6か月以内に作成されたものか
  • 定款の目的と、実際に始める事業が対応しているか
  • 主たる事務所で郵便物を確実に受け取れるか
  • 会費・売上・助成金など、入金の見込みと入金元を説明できるか
  • 主な支払先(家賃・外注費・人件費など)を説明できるか
  • 実質的支配者が誰か、申告書に書ける状態か
  • 窓口に行くのは代表理事本人か。違うなら委任状を用意したか
  • 法人のWebサイトやパンフレットなど、活動が分かる資料があるか
取引の目的・事業内容の説明メモ(例)

法人名:一般社団法人〇〇協会(主たる事務所:〇〇県〇〇市〇〇町1-2-3)

事業の内容:〇〇に関する講習会の開催、会報の発行、〇〇の普及啓発

口座の用途:正会員の年会費・講習会の参加費の受入れ、会場費・印刷費・謝金の支払

入金の見込み:正会員約〇名×年会費〇円、講習会年〇回(参加費〇円)

主な支払先:会場(〇〇会館)、印刷会社、講師への謝金

実質的支配者:代表理事 〇〇〇〇(支配的な影響力を持つ個人はいない)

数字は見込みで構いません。定款の目的との対応が分かるように書くと、事業の内容の確認に役立ちます。

断られたときの対処

一度断られても、法人として口座が持てないと決まったわけではありません。

まず、上の確認事項のうち、書類や説明が足りなかった点がないかを見直します。

銀行・信用金庫・信用組合・ゆうちょ銀行・ネット銀行は、いずれも同じ法律の取引時確認を行います。

ただし、取引時確認等の措置の実施に関する規程は、各金融機関が作るものとされています(法11条2号)。

そのため、金融機関によって求められる資料や判断が違うことがあります。

事業の拠点がある地域の金融機関に相談する、活動実績ができてから再度申し込む、といった方法も考えられます。

やること ポイント
書類の不足を見直す 登記事項証明書の作成日、定款の写し、委任状の有無
説明資料を補う 事業計画、契約予定の書類、会員募集の案内、Webサイト
事務所の実態を示す 賃貸借契約書、郵便の受取体制
別の金融機関に申し込む 求められる資料が違う場合がある
時期を改める 会費の受入れや事業が始まり、実績が説明できるようになってから

理事個人の口座で法人のお金を管理し続けるのは避けたいところです。

法人の財産と個人の財産が混ざり、会計の記録や説明が難しくなるためです。

やむを得ず一時的に使う場合は、専用の口座にして取引をすべて記録します。

やってはいけないこと

やってはいけないこと
図:やってはいけないこと

口座を早く作りたいからといって、事実と違う申告をしてはいけません。

顧客等と代表者等は、取引時確認の事項を偽ってはならないとされています(4条6項)。

本人特定事項を隠す目的で偽った場合は、3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科です(25条)。

口座の通帳やキャッシュカード、振込に必要な情報を他人に譲り渡すことも罰則の対象になり得ます(26条)。

他の団体や知人に「口座を貸す」「借りる」こともしないでください。

避けるべき行為

  • 実際と違う事業内容や取引目的を申告する
  • 実質的支配者を事実と違う人で申告する
  • 登記していない場所を事務所として申告する
  • 他人名義の口座を法人の口座として使う
  • 法人の口座を他の団体や個人に使わせる

開設後に必要な手続

口座を開いた後も、届け出た情報は最新に保つ必要があります。

特定事業者は、取引時確認をした事項の情報を最新の内容に保つ措置を講ずるものとされています(法11条)。

代表理事が交代したときや主たる事務所を移転したときは、金融機関への届出が必要になるのが通常です。

代表理事の氏名・住所、主たる事務所は登記事項です(一般法人法301条2項3号・6号)。

変更があったときは、2週間以内に変更の登記をしなければなりません(303条)。

金融機関への届出には、変更後の登記事項証明書を求められることが多いため、登記を先に済ませます。

こんなとき 法人の手続 金融機関への手続
代表理事が交代した 変更登記(2週間以内・303条) 代表者変更の届出・新代表者の本人確認
主たる事務所を移転した 変更登記(2週間以内・303条) 住所変更の届出
名称を変更した 定款変更・変更登記 名義変更の届出
銀行から確認の書類が届いた ― 期限内に回答する(取引を続けるための確認)

この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

役員変更の登記は一般社団法人の役員変更登記で説明しています。

任意団体から法人化したときの口座

法人化する前の任意団体(人格のない社団)でも、団体名義の口座を持っていることがあります。

人格のない社団の取引時確認では、本人特定事項は実際に手続をする自然人について確認します(法4条5項)。

事業の内容も、書類ではなく申告で確認する方法がとられます(規則10条1号)。

法人化すると、一般社団法人は任意団体とは別の権利主体として成立します(一般法人法22条)。

既存の口座をそのまま使えるか、新たに法人名義で開設するかは、金融機関に確認してください。

会員に会費の振込先を案内している場合は、切り替えの時期を早めに知らせます。

法人化の手順は任意団体の法人化で解説しています。

口座を開いたら決めておく管理のルール

口座は、法人のお金の出入りをまとめて記録する土台です。

開設と同時に、誰がどこまで操作できるかを決めておくと、後のトラブルを防げます。

代表理事は法人の業務に関する一切の行為をする権限を持ちます(一般法人法77条4項)。

だからこそ、出金の承認や記録の確認を別の人が行う仕組みが役立ちます。

口座管理のルール

  • 通帳・届出印・キャッシュカードの保管者を分ける
  • ネットバンキングは、振込の作成者と承認者を分ける設定にする
  • 一定額以上の支払は、理事会などの承認を得てから行う
  • 毎月、通帳(入出金明細)と帳簿の残高を照合する
  • 監事が定期的に通帳と帳簿を確認する

会計の不正を防ぐ体制は一般社団法人の会計トラブルでも扱っています。

よくある誤解

誤解1:一般社団法人は口座を作れない。法人の種類で開設を禁じる法令はありません。確認事項を示せるかどうかが問われます。

誤解2:印鑑証明書がないと本人確認できない。

法人の本人確認書類は登記事項証明書でも足ります(規則7条2号イ)。

ただし金融機関が別の目的で求めることはあります。

誤解3:法務局の実質的支配者リストが必要。

この制度を使えるのは株式会社で、一般社団法人は対象外です。

銀行への申告で足ります(規則11条1項)。

誤解4:断られた理由は必ず教えてもらえる。

疑わしい取引の届出に関することは顧客に漏らしてはならないとされ(法8条4項)、理由が説明されないことがあります。

誤解5:設立前に法人名義で口座を作れる。

法人は設立の登記で成立します(一般法人法22条)。

登記前は法人名義の口座は作れません。

一般社団法人の銀行口座についてよくある質問

Q. 一般社団法人の口座開設で銀行は何を確認しますか?

A. 法人の名称と主たる事務所の所在地、取引を行う目的、事業の内容、実質的支配者を確認します(犯罪収益移転防止法4条1項)。窓口で手続をする代表者等の本人確認も行います(同条4項)。

Q. 必要書類は何ですか?

A. 登記事項証明書(6か月以内に作成されたもの)、定款の写し、代表者等の本人確認書類、実質的支配者の申告書が中心です(同法施行規則7条・10条・11条)。金融機関によって追加の資料を求められることがあります。

Q. 一般社団法人の実質的支配者は誰ですか?

A. 支配的な影響力を持つ自然人がいればその人、いなければ法人を代表し業務を執行する自然人です(同法施行規則11条2項3号・4号)。3号に当たる人がいなければ、代表理事が当たります。

Q. 口座開設を断られたら、理由を教えてもらえますか?

A. 教えてもらえないことがあります。特定事業者は、疑わしい取引の届出をしようとしていることなどを顧客に漏らしてはならないとされているためです(同法8条4項)。

Q. 代表理事以外の人が窓口に行けますか?

A. 行けます。その場合は、法人のために手続をしていることを示す委任状などが必要です(同法施行規則12条5項2号)。代表権を持つ役員として登記された人は、その登記で確認できます。

Q. 設立登記の前に口座を作れますか?

A. 法人名義では作れません。一般社団法人は設立の登記によって成立するためです(一般法人法22条)。登記が終わってから申し込みます。

Q. 代表理事が交代したら口座の手続は必要ですか?

A. 金融機関への届出が必要になるのが通常です。代表理事の変更は2週間以内に登記しなければならず(一般法人法303条)、届出では変更後の登記事項証明書を求められることが多いです。

Q. 他の団体の口座を借りて使ってもよいですか?

A. 避けてください。預貯金通帳やキャッシュカードなどの譲渡・提供は、目的や対価の有無によって罰則の対象になります(犯罪収益移転防止法26条)。

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