結論から申し上げます。
防犯ボランティア団体をつくるのに、警察や市町村への届出の義務はありません(警察庁「自主防犯活動Q&A」Q3)。
一般社団法人にする意味が大きいのは、青色防犯パトロール(青パト)を行いたいときと、資機材・車両・口座を団体名義で持ちたいときです。
青パトの証明を受けられる団体には、「地域安全活動を目的として設立された一般社団法人」が挙げられています(長野県警察の申請要件)。
一方で、法人になってもパトロールに特別な権限は生まれません。
不審者に出会ったら、無理に追いかけず警察に通報するのが基本です(同Q&A Q12)。
防犯・見守りの団体に法人格は必要か
警察庁の自主防犯活動Q&Aは、防犯ボランティア団体を結成しても届け出る義務はないとしています。
ただし、警察や市町村と連携すると、犯罪情報の提供や助成・資機材の支援を受けられる場合があると案内しています。
結成の相談先として挙げられているのは、最寄りの警察署(生活安全課など)か防犯協会です。
徒歩のパトロールや登下校の見守りなら、任意団体のままでも続けられます。
任意団体だと、車両・資機材・口座が代表者個人の名義になりやすくなります。
一般社団法人は登記によって成立するので、これらを法人名義で持てます(一般法人法22条)。
| こんなとき | 法人化の必要性 |
|---|---|
| 町内で週1回、徒歩でパトロールする | 任意団体のままでも続けられる |
| 青色回転灯を付けた車でパトロールしたい | 法人化すると証明の対象団体に入りやすい(下で説明) |
| パトロール車やカメラを団体で所有したい | 法人名義で所有・管理できる |
| 自治体から防犯の委託を受けたい | 応募資格で法人格を求められることがある |
| 代表者が交代しても車両や口座をそのまま使いたい | 法人化すると名義の付け替えが要らない |
任意団体との違いは任意団体と一般社団法人の違いで説明しています。
任意団体・認可地縁団体・一般社団法人・NPO法人の比較
自治会・町内会は、市町村長の認可を受けると「認可地縁団体」として法人格を得られます(地方自治法260条の2第1項)。
認可地縁団体は、一定の区域に住所を持つ人の地縁に基づく団体です。
一般社団法人は、地域を限らず、定款の認証と登記で設立できます(一般法人法13条・22条)。
NPO法人は、所轄庁の認証を受けてから登記をします(NPO法10条1項・13条1項)。
NPO法の活動分野には「地域安全活動」が挙げられています(NPO法別表9号)。
NPO法人の設立には、10人以上の社員が必要です(NPO法12条1項4号)。
| 項目 | 任意団体 | 認可地縁団体 | 一般社団法人 | NPO法人 |
|---|---|---|---|---|
| 成立の手続 | 規約を作るだけ | 市町村長の認可 | 定款認証+登記 | 所轄庁の認証+登記 |
| 構成員 | 自由 | 区域に住所がある人 | 社員2人以上 | 社員10人以上 |
| 活動の範囲 | 自由 | 地域的な共同活動 | 定款の目的の範囲 | 別表の20分野 |
| 設立の法定費用 | なし | なし | 定款認証5万円+登録免許税6万円 | なし |
| 向いている形 | 少人数で始める | 自治会がそのまま法人になる | 複数の町会や有志で広域に行う | 市民活動として仲間を広く集める |
自治会の法人化は認可地縁団体とは、NPO法人との比較は一般社団法人とNPO法人どっちを選ぶかで説明しています。
青色防犯パトロール(青パト)と法人格
自動車に青色回転灯を付けることは、通常は道路運送車両の保安基準に適合しません。
警察庁と国土交通省の取扱いにより、平成16年12月1日から、警察の証明を受けた団体は青色回転灯を付けた自主防犯パトロールができるようになりました。
長野県警察の案内では、証明の対象団体に「地域安全活動を目的として設立された一般社団法人」とNPO法人が含まれています。
自治体や警察署長などから防犯活動の委嘱を受けた団体、認可地縁団体なども対象です。
証明書の交付を受けたら、15日以内に運輸支局等で自動車検査証に「自主防犯活動用自動車」と記載を受けます。
要件の細部や申請先は都道府県警察ごとに案内されているので、管轄の警察署で確認します。
- 対象となる団体であること(地域安全活動を目的とする一般社団法人・NPO法人など)
- パトロールの実績と計画から、継続的な実施が見込まれること
- 青色防犯パトロール講習を受講していることなど、適切に対応できると認められること
- 回転灯は屋根に1個(1体)だけ付け、パトロール中以外は点灯しないこと
- 車体に団体名とパトロール中であることを表示すること
- 点灯して走るときは標章を掲示し、実施者はパトロール実施者証を携行すること
- 警察本部長が認めた地域以外では点灯してパトロールしないこと
警察庁は、青パトに上記以外の特別な権限が与えられるものではなく、道路交通法などの関係法令を守るよう案内しています。
青パトを予定しているなら、定款の目的に「地域安全活動」を明記しておくことが大切です。
一般社団法人の設立の流れと費用

設立時社員が共同して定款を作り、全員が署名または記名押印します(一般法人法10条1項)。
定款は電子データで作ることもできます(同条2項)。
定款には、目的・名称・主たる事務所の所在地・設立時社員の氏名と住所・社員の資格の得喪・公告方法・事業年度を必ず書きます(11条1項)。
定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません(13条)。
一般社団法人の定款認証の手数料は5万円です(公証人手数料令35条3号)。
設立登記の登録免許税は、1件につき6万円です(登録免許税法別表第一24号(一)ロ)。
法人の名称には「一般社団法人」の文字を入れます(一般法人法5条1項)。
設立時社員を2人以上、理事を1人以上決める(10条1項・60条1項)
目的に地域安全活動を明記する。必ず書く7項目をそろえる(11条1項)
手数料5万円(公証人手数料令35条3号)
登録免許税6万円。登記の日に法人が成立する(22条)
犯罪情報の提供、助成、青パトの証明申請の窓口を確認する
| 費目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 定款認証の手数料 | 5万円 | 公証人手数料令35条3号 |
| 設立登記の登録免許税 | 6万円 | 登録免許税法別表第一24号(一)ロ |
理事会を置く場合は、理事が3人以上必要です(一般法人法65条3項)。
拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わっていない人などは役員になれません(65条1項4号)。
手続の全体は一般社団法人の設立の流れで説明しています。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
定款の「目的」の書き方
定款の目的は、法人が何をするかを外に示す部分です(一般法人法11条1項1号)。
青パトの証明では、地域安全活動を目的として設立された法人かどうかが見られます。
「地域安全」「防犯」の文字が目的に入っていると、団体の性格が伝わります。
子どもや高齢者の見守り、防犯の啓発、防犯環境の点検など、続けて行う活動を事業に書いておきます。
社員に剰余金を分配する定めは、定款に書いても効力がありません(11条2項)。
第〇条(目的)当法人は、〇〇地域において住民と協力して地域安全活動を行い、犯罪の起きにくい安全なまちづくりに寄与することを目的とする。
第〇条(事業)当法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
(1)徒歩及び自動車による自主防犯パトロール
(2)児童の登下校時の見守り及び高齢者の見守り
(3)防犯灯・危険箇所の点検及び関係機関への情報提供
(4)防犯に関する講習会・広報活動
(5)その他当法人の目的を達成するために必要な事業
事業は実際の活動に合わせて選びます。防犯カメラの設置・管理を行う予定があれば、それも書いておきます。
パトロール中の安全と「権限はない」という前提
防犯ボランティアにも青パトにも、警察官のような職務上の権限はありません。
警察庁のQ&Aは、犯罪者や不審者に遭遇したら特徴や進行方向を速やかに警察に通報し、無理な追跡をしないよう求めています。
危険を感じたら、防犯ブザーやホイッスルで周りに知らせて避難します。
現に罪を行っている現行犯人は、誰でも逮捕状なしに逮捕できるとされています(刑事訴訟法212条1項・213条)。
逮捕した場合は、直ちに検察官か司法警察職員に引き渡さなければなりません(214条)。
ただし、取り押さえはけがや人違いの危険が大きく、団体として求める活動ではありません。
人違いで相手にけがをさせれば、損害賠償の責任を問われることもあります(民法709条)。
- 不審者・不審車両は特徴と進行方向をメモし、すぐに警察へ通報する
- 追いかけない。危険を感じたら防犯ブザーや笛で知らせて離れる
- 「パトロール中」のタスキや腕章で、活動中であることがわかるようにする
- 夜間は反射材・懐中電灯を使い、歩道を歩いて交通事故を防ぐ
- 日誌に気づいた場所を残し、次の担当者へ引き継ぐ
代表理事などが職務で第三者に損害を与えたときは、法人も賠償責任を負います(一般法人法78条)。
活動中のけがや賠償に備える保険はボランティア保険とはで説明しています。
防犯カメラを設置・管理するとき
特定の個人を識別できるカメラ画像は、個人情報に当たります(個人情報保護法2条1項、個人情報保護委員会Q&A Q1-41)。
画像を事業に使う団体は、法人でも任意団体でも個人情報取扱事業者に当たり得ます(16条2項)。
利用目的はできる限り特定し、その範囲内で画像を使います(17条1項)。
委員会のQ&Aは、設置状況から防犯目的が明らかなら、利用目的の通知・公表は不要と考えられるとしています(21条4項4号)。
一方で、撮影されていることを本人が容易に認識できない場合は、掲示などの措置が必要としています(20条1項)。
顔識別機能付きのカメラは、利用目的の通知か公表が必要になります(Q&A Q1-14)。
自治体によっては、防犯カメラの設置・運用について条例やガイドラインを定めています。
| 決めておくこと | 内容の例 |
|---|---|
| 設置場所と撮影範囲 | 公道・共用部分に限り、住宅の窓などを映さない向きにする |
| 掲示 | 「防犯カメラ作動中」と設置者名・問合せ先をカメラの近くに表示する |
| 管理責任者 | 画像を見られる人を限定し、名簿にしておく |
| 保存期間 | 一定期間で上書き・消去する期間を決める |
| 外部への提供 | 警察から法令に基づく照会があった場合などに限る手順を決める |
委員会のQ&Aは、犯罪行為が疑われる映像が映っただけでは、要配慮個人情報に当たらないとしています(Q1-31)。
見守り活動と個人情報・通報
見守りの対象者の名簿は、利用目的を決め、本人の同意を得て作るのが基本です(個人情報保護法17条1項)。
名簿を第三者に渡すときは、原則として本人の同意が必要です(27条1項)。
人の生命・身体・財産の保護のために必要で、本人の同意を得ることが困難なときは、同意なしで提供できます(27条1項2号)。
児童虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人は、市町村・福祉事務所・児童相談所などへ速やかに通告しなければなりません(児童虐待防止法6条1項)。
養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を見つけ、生命や身体に重大な危険が生じている場合は、市町村への通報が義務です(高齢者虐待防止法7条1項)。
それ以外の場合も、市町村へ通報するよう努めることとされています(同条2項)。
- 見守りの目的と、名簿を使う人の範囲を本人に説明する
- 緊急連絡先・かかりつけなど、必要な項目だけを集める
- 紙の名簿は施錠できる場所、データはパスワード付きで管理する
- 見守りをやめた人の情報は、決めた方法で廃棄する
名簿の扱いは一般社団法人・NPO法人の個人情報の取扱いで詳しく説明しています。
警備の仕事を引き受けるときの注意
警備業法の「警備業務」には、施設での盗難等の事故の警戒・防止や、雑踏での負傷等の事故の警戒・防止が含まれます(警備業法2条1項1号・2号)。
警備業務は、他人の需要に応じて行うものと定義されています(同項柱書)。
警備業務を行う営業が「警備業」で、営むには都道府県公安委員会の認定が必要です(2条2項・4条)。
地域の住民が自分たちのために行う自主防犯パトロールは、通常この形にはなりません。
一方、商店街やイベント主催者から対価を受けて、施設や会場の警戒を続けて請け負う場合は、警備業に当たる可能性があります。
依頼を受ける前に、管轄の警察署に業務の内容を伝えて確認しておきます。
活動資金と助成
警察庁のQ&Aは、地域によって警察・防犯協会・自治体による助成制度があると案内しています。
助成の対象例として、チラシの印刷費、懐中電灯・帽子・ジャンパー・腕章などの資機材、ボランティア保険の加入費が挙げられています。
資機材の支給や貸出しの制度もあります。
内容は地域で異なるため、最寄りの警察署(生活安全課)か防犯協会に問い合わせます。
警察庁のQ&Aは、規約や要綱があると助成や資機材の支援の申請に役立つ場合があるとしています。
| 財源 | 特徴 | 準備しておくもの |
|---|---|---|
| 警察・防犯協会・自治体の助成 | 資機材・保険料・印刷費など | 規約(定款)・活動計画・会計報告 |
| 会費 | 会員から毎年集める土台の収入 | 会員規約・会費の使い道 |
| 寄付・協賛 | 地元の事業者からの支援 | 受領の記録・お礼の方法 |
| 自治体からの委託 | 見守りや啓発の業務を受ける | 仕様書・契約書 |
補助金・助成金については一般社団法人は補助金・助成金を受けられるかで説明しています。
税金の基本(非営利型の一般社団法人)
一般社団法人には、法人税法上の「非営利型法人」の類型があります(法人税法2条9号の2)。
非営利型法人は、法人税法上の「公益法人等」に含まれます(2条6号)。
公益法人等は、収益事業を行う場合などに限って法人税の納税義務を負う仕組みです(4条1項ただし書)。
非営利型に当たらない一般社団法人は、株式会社と同じく全ての所得が対象になります。
非営利型になるには、定款の定めや理事の親族割合などの要件を満たす必要があります。
委託料や物品の販売の収入がどう扱われるかは、事業の実態で判断が分かれます。
非営利型の要件は非営利型一般社団法人とはで説明しています。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 税務の取扱いは、収入の性質や事業の実態によって結論が変わります。具体的な判定や税額の計算については、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
法人化した後に毎年かかる事務

事業年度ごとに、貸借対照表・損益計算書と事業報告を作ります(一般法人法123条2項)。
定時社員総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集します(36条1項)。
総会の後は、遅滞なく貸借対照表を公告します(128条1項)。
計算書類等は、主たる事務所に5年間備え置きます(129条1項)。
理事の任期は、選任後2年以内に終わる事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までです(66条)。
再任でも、理事の変更登記を2週間以内にする必要があります(303条)。
社員が1人もいなくなると、法人は解散します(148条4号)。
| 時期 | 事務 | 根拠 |
|---|---|---|
| 事業年度の終了後 | 計算書類・事業報告の作成 | 一般法人法123条2項 |
| 決算の後 | 定時社員総会の開催 | 36条1項 |
| 総会の後 | 貸借対照表の公告 | 128条1項 |
| 理事の任期満了ごと(最長約2年) | 役員の選任と変更登記(2週間以内) | 66条・303条 |
| 毎年 | 法人住民税などの申告 | 税務署・都道府県・市区町村 |
| 青パトの実施者 | 講習の再受講など、警察の定める手続 | 各都道府県警察の案内 |
公益社団法人を目指す場合、公益認定法の別表には「犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業」(10号)があります(公益認定法2条4号)。
よくある誤解
誤解1:防犯団体をつくったら警察に届け出なければならない。
届出の義務はありません。
ただし相談すると情報提供や支援を受けられる場合があります(警察庁Q&A Q3)。
誤解2:法人になれば不審者に職務質問できる。法人にも青パトにも特別な権限はありません。不審者は警察に通報します。
誤解3:防犯カメラなら何を映しても自由。
画像は個人情報に当たり得ます。
目的の特定や、撮影を認識できるようにする措置が必要です(個人情報保護法17条1項・20条1項)。
誤解4:ボランティアなら警備を請け負っても問題ない。
対価を受けて他人の施設を警戒する営業は、警備業として公安委員会の認定が必要になり得ます(警備業法4条)。
誤解5:一般社団法人ならどこでも青パトができる。警察本部長の証明が必要で、実績・計画・講習などの要件があります。
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防犯・見守りの団体づくりについてよくある質問
A. 設立時社員が2人以上いれば定款を作れます(一般法人法10条1項)。理事は1人以上必要で、理事会を置く場合は3人以上です(60条1項・65条3項)。
A. 届け出る義務はありません。警察庁は、警察や市町村と連携すると犯罪情報の提供や助成・資機材の支援を受けられる場合があると案内しています。
A. できる場合があります。長野県警察の案内では、地域安全活動を目的として設立された一般社団法人が証明の対象団体に含まれています。実績・計画・講習などの要件を満たし、警察本部長の証明を受ける必要があります。
A. 警察庁のQ&Aは、特徴や進行方向を速やかに警察に通報し、無理な追跡はしないよう求めています。危険を感じたら防犯ブザーなどで周りに知らせて避難します。
A. 個人情報保護委員会のQ&Aは、撮影されていることを本人が容易に認識できない場合は、掲示などの措置が必要としています(個人情報保護法20条1項)。認識できる場合も掲示が望ましいとされています。
A. 児童虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人は、市町村・福祉事務所・児童相談所などへ速やかに通告しなければなりません(児童虐待防止法6条1項)。
A. 他人の需要に応じて施設などの事故を警戒・防止する業務を営業として行うと警備業に当たり、公安委員会の認定が必要になり得ます(警備業法2条・4条)。事前に警察署へ確認してください。
A. 非営利型の一般社団法人は、収益事業を行う場合などに限って法人税の納税義務を負います(法人税法4条1項)。個別の収入の扱いは事業の実態で変わるため、税理士か税務署に確認してください。
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