結論から申し上げます。
一般社団法人の社員は、設立時は2人以上必要です。
しかし設立後に1人になっても、法人は解散しません。
解散するのは、社員が0人になったときです(一般法人法148条4号)。
法務省の「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」も、同じ説明をしています。
ただし、0人になった法人は継続の決議で元に戻すことができません。
1人になった時点で、次の社員を迎える準備を始めるのが安全です。
ここでいう「社員」は従業員ではない
一般社団法人の「社員」は、法人の構成員として社員総会で議決権を持つ人のことです(48条1項)。
給料をもらって働く従業員は、法律上の社員ではありません。
従業員が何人いても、議決権を持つ社員が0人なら法人は解散します。
反対に、従業員がいなくても、社員が1人いれば法人は続きます。
誰が社員になるかは、定款の「社員の資格の得喪に関する規定」で決まります(11条1項5号)。
「正会員をもって法律上の社員とする」と定めている法人では、正会員の人数が社員の人数です。
会員の区分と社員の関係は賛助会員と正会員の違いで説明しています。
必要な人数は「設立時2人・設立後1人以上」
一般法人法10条1項は、設立時社員が「共同して」定款を作り、全員が署名または記名押印すると定めています。
「共同して」とあるため、設立時には2人以上の社員が必要と解されています。
法務省のQ&A(Q3)も「設立に当たっては、2人以上の社員が必要です」としています。
一方、設立後の社員の人数について、下限を定めた条文はありません。
解散事由として定められているのは「社員が欠けたこと」、つまり0人になることだけです(148条4号)。
このため、設立後は社員が1人でも法人は存続します。
| 場面 | 必要な社員の人数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設立のとき | 2人以上 | 一般法人法10条1項・法務省Q&A Q3 |
| 設立後の運営 | 1人以上(下限の条文なし) | 148条4号の反対解釈・法務省Q&A Q3 |
| 社員が0人になったとき | 解散(継続もできない) | 148条4号・150条 |
| 定款で下限を定めた場合 | 定款の人数を守る運営が必要 | 11条1項5号・12条 |
定款に「社員は〇名以上とする」と書いていても、それだけで解散事由になるわけではありません。
定款で解散の事由として定めていれば別で、その場合は148条2号の解散事由になります。
社員以外の機関に必要な人数

社員が1人になったとき、あわせて確かめたいのが理事・監事の人数です。
社員と役員は別の地位なので、社員が1人でも、役員の人数の決まりは変わりません。
どの人数が必要かは、理事会を置いているかどうかで決まります。
| 機関 | 理事会を置かない法人 | 理事会を置く法人 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 社員 | 1人以上(設立時は2人以上) | 1人以上(設立時は2人以上) | 10条1項・148条4号 |
| 理事 | 1人以上 | 3人以上 | 60条1項・65条3項 |
| 監事 | 置かなくてもよい | 1人以上必要 | 60条2項・61条 |
| 代表理事 | 置くかは任意 | 理事会で必ず選ぶ | 77条3項・90条3項 |
理事会を置かない法人なら、社員1人・理事1人という最小の形も法律上は可能です。
社員と理事を同じ人が兼ねることも禁止されていません。
ただし、法人は理事や監事になれません(65条1項1号)。法人社員を役員にすることはできない点に注意します。
理事会を置く法人では、社員が1人でも、理事3人以上と監事1人以上をそろえておく必要があります。
1人社員でも社員総会は開ける

社員が1人でも、社員総会という機関はなくなりません。
定時社員総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集する必要があります(36条1項)。
理事会を置かない法人では、社員総会は法人に関する一切の事項を決議できます(35条1項)。
理事会を置く法人では、法律と定款で定めた事項に限られます(35条2項)。
社員が1人なら、その1人の賛成でどの決議も成立します。特別決議(49条2項)も同じです。
実務でよく使うのが、社員総会の決議の省略(58条1項)です。
提案に社員の全員が書面か電磁的記録で同意すれば、可決の決議があったものとみなされます。
社員が1人なら、その1人が同意書に署名するだけで、総会を開かずに決議ができます。
例:「令和〇年度の計算書類の承認の件」
書面または電子メールなどの電磁的記録で同意する
定時総会の議題すべてが可決されれば、その時に定時総会も終結したものとみなされる(58条4項)
決議の内容・提案者・決議があったとみなされた日・作成者を書く(施行規則11条4項1号)
同意書は10年間(58条2項)、議事録も10年間(57条2項)、主たる事務所に置く
社員総会議事録
1 社員総会の決議があったものとみなされた事項の内容 第1号議案 令和〇年度計算書類承認の件
2 上記事項の提案をした者の氏名 代表理事 〇〇〇〇
3 社員総会の決議があったものとみなされた日 令和〇年〇月〇日
4 議事録の作成に係る職務を行った者の氏名 代表理事 〇〇〇〇
一般法人法施行規則11条4項1号が定める4つの事項を並べた形です。報告事項を省略した場合は、同項2号の事項を記載します。
報告事項についても、全員の同意で報告を省略できます(59条)。社員1人ならこれも簡単に使えます。
1人社員の法人で毎年必要になる決議
社員が1人でも、社員総会で決めなければならない事項は社員が多い法人と同じです。
代表的なのは、毎年の計算書類の承認と、任期ごとの役員の選任です。
計算書類は定時社員総会の承認を受けなければなりません(126条2項)。
事業報告は、その内容を定時社員総会に報告します(126条3項)。
理事の任期は、選任後2年以内に終わる事業年度の定時社員総会の終結時までが原則です(66条)。
理事は社員総会の決議で選任するため(63条1項)、任期が来たら同じ人でも選任の決議をし直します。
再任された場合も、理事の就任は登記事項の変更に当たり、2週間以内に登記をします(303条)。
| 時期 | 決めること・すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 毎事業年度の終了後 | 定時社員総会(決議の省略も可)で計算書類を承認する | 36条1項・126条2項・58条1項 |
| 同じ時期 | 事業報告の内容を報告する(報告の省略も可) | 126条3項・59条 |
| 提案の日から5年間 | 計算書類等を主たる事務所に備え置く | 129条1項 |
| 理事の任期満了時(原則2年ごと) | 理事を選任する(再任を含む) | 63条1項・66条 |
| 選任から2週間以内 | 役員の変更(重任)の登記をする | 303条 |
登記が5年間ないと、休眠法人としてみなし解散の対象になります(149条1項)。任期ごとの登記は、その予防にもなります。
1人社員の法人で注意したいこと
1人社員でも法人は動きますが、仕組みの上で弱い点がいくつかあります。
もっとも大きいのは、その1人が欠けた瞬間に解散が確定することです。
社員は死亡で退社します(29条3号)。法人社員なら、その法人の解散で退社します(同号)。
相続人が自動的に社員の地位を引き継ぐとは、条文に定められていません。
社員はいつでも退社でき(28条1項)、定款で制限してもやむを得ない事由があれば退社できます(同条2項)。
つまり、最後の1人の病気・死亡・退社のいずれでも、法人はその日に解散します。
- 最後の社員が亡くなり、その時点で解散事由が生じる(148条4号・29条3号)
- 最後の社員が退社届を出し、その日に解散する(28条1項)
- 社員が法人で、その法人が解散して退社となる(29条3号)
- 社員と理事が同じ1人で、理事の利益相反取引を承認するのもその本人になる(84条1項)
- 社員の交代を想定していない定款で、入社の手続がはっきりしない
理事と法人の取引(84条1項)は、理事会を置かない法人では社員総会の承認が必要です。
社員と理事が同じ1人だと、承認する人とされる人が同じになり、手続の透明性を説明しにくくなります。
0人になると解散し、元に戻せない
社員が0人になると、一般社団法人は解散します(148条4号)。
社員総会の決議も、登記も要りません。最後の社員がいなくなった時点で解散の効果が生じます。
解散した法人を元に戻す「継続」は150条に定めがあります。
しかし継続できるのは、存続期間の満了・定款の解散事由・社員総会の決議(148条1号〜3号)とみなし解散の場合だけです。
社員がいなくなったことによる解散は、継続の対象に入っていません。
そのため、0人になってから新しい社員を入れても、解散前の状態には戻せません。
解散事由の全体像は一般社団法人の解散事由で、7つの事由を一覧にしています。
解散後の清算の流れは解散・清算の流れで説明しています。
1人になったらやること
社員が1人になったら、法人が続いているうちに、新しい社員を迎える手続を進めます。
社員の入社は、定款の「社員の資格の得喪に関する規定」に従います(11条1項5号)。
「理事会の承認」「代表理事の承認」など、誰が入社を認めるかは定款によって違います。
最初に定款の該当条文を開き、手続を確認してください。
入社の資格・申込方法・承認する機関・入会金や会費の定めを確認する
活動の趣旨に賛同し、長く社員を続けられる人や法人を選ぶ
定款や規約の様式があればそれを使い、申込日を記録する
承認の議事録や決定書を残す
氏名または名称と住所を書き、主たる事務所に備え置く(31条・32条1項)
人数の下限や入社手続が実情に合わなければ、定款変更を検討する
社員は登記事項ではありません(301条2項に社員の項目はありません)。社員の増減だけなら登記は不要です。
ただし、新しい社員を理事に選ぶなど役員が変わる場合は、変更の登記が必要です。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
入社の手続の詳細は社員の入会・退会、名簿の作り方は会員名簿の作り方と管理で説明しています。
0人を防ぐための定款と体制の工夫
社員が少ない法人ほど、1人欠けたときに備えた設計が大切です。
法務省のQ&A(Q4)は、法人も一般社団法人の社員になれるとしています。
関係する会社や団体に社員になってもらうと、個人の死亡で社員が減る心配が一つ減ります。
ただし、法人社員もその法人の解散で退社します(29条3号)。支店や支部は社員になれない点も、同じQ&Aに書かれています。
定款で、社員の死亡や退社の後に後任を迎える流れを書いておく方法もあります。
入社の承認を理事会や代表理事に任せておけば、社員総会を開かずに新しい社員を迎えられます。
| 工夫 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 社員を3人以上にしておく | 1人欠けても1人社員の状態にならない | 会費や議決権の扱いを定款で決めておく |
| 法人に社員になってもらう | 個人の死亡による減少を避けられる | 法人は役員になれない(65条1項1号) |
| 入社の承認機関を理事会・代表理事にする | 社員総会を開かずに入社を認められる | 承認の記録を残す |
| 退社の予告期間を定款で定める | 急な退社で0人になるのを防ぐ時間ができる | やむを得ない事由があれば退社は止められない(28条2項) |
| 社員名簿を常に最新にする | 実際の人数をすぐ確認できる | 名簿の作成・備置きは法律上の義務(31条・32条1項) |
第〇条(入社)当法人の目的に賛同し、入社した者を社員とする。
2 社員として入社しようとする者は、理事会が別に定める入社申込書により申し込み、理事会の承認を受けなければならない。
第〇条(退社)社員は、〇か月前までに当法人に予告をして退社することができる。ただし、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。
退社の予告期間は28条1項ただし書の「別段の定め」に当たります。やむを得ない事由による退社は同条2項で認められているため、ただし書で明記しています。
定款の変更は社員総会の特別決議で行います(146条・49条2項4号)。社員1人なら、決議の省略で行うこともできます。
NPO法人・一般財団法人との違い
必要な人数の決まり方は、法人の種類で違います。
NPO法人は、10人以上の社員がいることが設立の認証の基準です(NPO法12条1項4号)。
一般社団法人のように「設立後は1人でもよい」とは考えないほうが安全です。
一般財団法人には社員がいません。財産を基礎にした法人で、評議員・評議員会が置かれます。
株式会社や合同会社は、出資者1人でも設立できます。一般社団法人の設立に2人以上が必要な点とは違います。
| 法人の種類 | 設立時の人数 | 設立後に構成員が0人になると |
|---|---|---|
| 一般社団法人 | 社員2人以上 | 解散(148条4号) |
| NPO法人 | 社員10人以上(認証の基準) | 解散(NPO法31条1項4号「社員の欠亡」) |
| 一般財団法人 | 社員はいない(設立者が財産を拠出) | ― |
NPO法人で社員が減ったときの扱いは社員の脱退・大量退会への対処法の後半でも触れています。
社員が1人になったときのよくある誤解
誤解1:社員が1人になったら解散する。解散するのは0人になったときです(148条4号)。1人でも法人は続きます。
誤解2:1人では社員総会が開けない。
1人でも社員総会は成り立ちます。
決議の省略(58条1項)を使えば、同意書1枚で決議できます。
誤解3:最後の社員の相続人が社員を引き継ぐ。
社員は死亡で退社します(29条3号)。
相続人を社員にするには入社の手続が必要です。
誤解4:0人になっても、あとから社員を入れれば戻せる。社員がいなくなったことによる解散は、150条の継続の対象外です。
誤解5:社員が減ったら登記が必要。社員は登記事項ではないので、社員の増減だけなら登記は要りません。
誤解6:従業員がいれば社員がいることになる。法律上の社員は議決権を持つ構成員で、従業員とは別です。
一般社団法人の社員が1人になったときのよくある質問
A. 設立時は2人以上必要です(一般法人法10条1項・法務省Q&A)。設立後の人数に下限の条文はなく、1人でも法人は存続します。0人になると解散します(148条4号)。
A. 社員は登記事項ではないため、社員が減っただけなら登記は不要です(301条2項)。ただし、同時に理事が退任したなど役員が変わった場合は、変更の登記が必要です。
A. できます。理事か社員の提案に社員全員が書面か電磁的記録で同意すれば、決議があったものとみなされます(一般法人法58条1項)。社員1人なら、その1人の同意で足ります。
A. 社員は死亡で退社し(29条3号)、社員が0人になるため法人は解散します(148条4号)。この解散は継続の決議で元に戻せません(150条)。
A. 兼ねられます。理事会を置かない法人なら、社員1人・理事1人の形も可能です(60条1項)。理事会を置く場合は理事3人以上と監事が必要です(65条3項・61条)。
A. できます。法務省のQ&Aも、法人が一般社団法人の社員になれるとしています。ただし法人は理事や監事にはなれません(65条1項1号)。
A. 定款で解散の事由として定めていなければ、下回っただけでは解散しません。定款の定めに沿って社員を補充します(148条2号・11条1項5号)。
A. 定款の社員の資格の得喪に関する規定に従って入社を承認し、社員名簿に氏名または名称と住所を記載します(11条1項5号・31条)。
📖 参考にした公的機関の情報


