結論から申し上げます。
一般社団法人の名称には、「一般社団法人」という文字を必ず入れます(一般法人法5条1項)。
それ以外の部分は、法律に反しない範囲で自由に決められます。ローマ字やアラビア数字も登記できます。
登記で止められるのは、同じ名称で、主たる事務所の所在場所も同じ場合です(商業登記法27条・一般法人法330条)。
ただし、登記できても、他人の商標や広く知られた名称と紛らわしければ、別の法律で使用を止められることがあります。
一般法人法が定める名称のルール
法人の名称については、一般法人法の5条から8条にまとまった定めがあります。
一般社団法人は、名称中に「一般社団法人」の文字を用いなければなりません(5条1項)。
一般社団法人は、一般財団法人と誤認されるおそれのある文字を名称に使えません(5条2項)。
一般社団法人でない者が、一般社団法人と誤認されるおそれのある文字を名称や商号に使うことも禁止です(6条)。
不正の目的で、他の一般社団法人と誤認されるおそれのある名称を使うことも禁じられています(7条1項)。
これで利益を侵害される法人は、侵害の停止や予防を請求できます(7条2項)。
| ルール | 内容 | 違反したとき |
|---|---|---|
| 5条1項 | 名称に「一般社団法人」の文字を入れる | 法人の名称として認められない |
| 5条2項 | 一般財団法人と誤認される文字を入れない | 20万円以下の過料(344条1号) |
| 6条 | 一般社団法人でない者が誤認される文字を使わない | 20万円以下の過料(344条3号) |
| 7条1項 | 不正の目的で他の法人と誤認される名称を使わない | 20万円以下の過料(344条4号)・差止め(7条2項) |
| 8条 | 名称の使用を他人に許すと、取引の債務を連帯して負うことがある | 誤認して取引した相手に弁済責任 |
8条は見落としやすい規定です。
たとえば任意団体や個人に「〇〇協会」の名前で事業をさせると、法人が債務を負う場面があります。
名称は定款の必要的記載事項で(11条1項2号)、登記事項でもあります(301条2項2号)。
「一般社団法人」の位置と使える文字
「一般社団法人」の文字は、名称の前に付けても後ろに付けても構いません。
「一般社団法人〇〇協会」「〇〇協会一般社団法人」のどちらも、5条1項の要件を満たします。
実際には前に付ける例が多く、名刺や看板でも読みやすくなります。
名称の登記には、法務大臣が指定するローマ字その他の符号を使えます(商業登記規則50条)。
この規定は、一般社団法人等登記規則3条で一般社団法人の登記にも準用されています。
法務省の案内では、使える符号は次のとおりです。
| 使えるもの | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 漢字・ひらがな・カタカナ | 一般社団法人みらい育成協会 | ― |
| ローマ字(大文字・小文字) | 一般社団法人ABC Japan | 複数の単語を区切るときに限り空白を使える |
| アラビア数字 | 一般社団法人2030ネットワーク | 数字だけの部分があってもよい |
| 符号6種 | & ’ , ‐ . ・ | 字句を区切る場合に限る。先頭・末尾には使えない |
| ピリオドの例外 | 〇〇Assn. | 省略を表す「.」は末尾にも使える |
法務省は、法令で使用が義務付けられた文字をローマ字の略称に代えることはできないと説明しています。
そのため「一般社団法人」の部分を「General Incorporated Association」などに置き換えて登記することはできません。
- 「一般社団法人」の文字がない(例:〇〇協会)
- 「一般財団法人」と誤認される文字がある(例:一般社団法人〇〇財団)
- 符号が先頭や末尾にある(例:・〇〇協会、〇〇&)
- 指定外の記号を使っている(例:〇〇★クラブ、〇〇!協会)
- 「一般社団法人」を英語や略称に置き換えている(例:一社〇〇)
「一般社団法人〇〇財団」は、一般財団法人と誤認されるおそれがある名称の典型として避けます(5条2項)。
ほかの法律で使えない言葉

一般法人法のほかにも、業法が特定の言葉を名称に使うことを禁じています。
活動の分野を名称に入れるときは、その分野の法律を確認しておきます。
とくに注意したいのが、金融・法律・教育の分野の言葉です。
| 使えない言葉の例 | 禁止の内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 銀行 | 銀行でない者は、銀行であることを示す文字を使えない | 銀行法6条2項 |
| 保険会社 | 保険会社と誤認されるおそれのある文字を使えない | 保険業法7条2項 |
| 信託会社 | 信託会社と誤認されるおそれのある文字を使えない | 信託業法14条2項 |
| 法律事務所・弁護士 | 弁護士でない者は、弁護士や法律事務所の標示をしてはならない | 弁護士法74条1項 |
| 大学・高等学校などの学校名 | 1条の学校でない教育施設は、その名称を使えない | 学校教育法135条 |
| 公益社団法人 | 公益社団法人でない者は、誤認されるおそれのある文字を使えない | 公益認定法9条4項 |
弁護士法74条2項は、弁護士でない者が利益を得る目的で「法律相談」を取り扱う旨を標示することも禁じています。
「〇〇大学」「〇〇学院大学」のような名称で講座を開く団体は、学校教育法135条に当たらないかを確認します。
「協会」「機構」「学会」「連盟」「センター」などは、一般法人法に使用の制限はありません。
同じ名称の法人があるとどうなるか
商業登記法27条は、同じ商号で営業所の所在場所も同じ場合に登記できないと定めています。
一般法人法330条はこの条文を準用し、「商号」を「名称」、「本店」を「主たる事務所」と読み替えています。
つまり登記で止められるのは、名称が同一で、かつ主たる事務所の所在場所が同一の場合だけです。
住所が違えば、同じ名称の一般社団法人が登記されることもあり得ます。
ただし、登記できることと、使い続けてよいことは別の問題です。
不正の目的で他の法人と誤認される名称を使えば、一般法人法7条の差止めや過料の対象になります。
他人の名称が需要者の間に広く知られている場合、似た名称で混同を生じさせる行為は「不正競争」に当たります(不正競争防止法2条1項1号)。
| 状況 | 登記 | 使い続けるリスク |
|---|---|---|
| 同じ名称・同じ所在場所 | できない(商業登記法27条の準用) | ― |
| 同じ名称・違う所在場所 | できる | 活動地域や分野が重なると、取引先や会員が混同する |
| 似た名称・不正の目的あり | 登記の可否とは別 | 差止め・過料(一般法人法7条・344条4号) |
| 広く知られた名称と似ている | 登記の可否とは別 | 不正競争として差止めの対象になり得る |
同一の判断は、「一般社団法人」の文字を含めた名称全体で行われます。
会社の「株式会社〇〇」と「一般社団法人〇〇」は、名称が同一ではありません。
商標との関係
法人の名称を登記しても、その名称の商標権が得られるわけではありません。
商標権は、特許庁での設定の登録によって発生します(商標法18条1項)。
商標権者は、指定した商品や役務について登録商標を使用する権利を専有します(25条)。
自分の名称を普通に用いられる方法で表示する場合には、他人の商標権の効力は及びません(26条1項1号)。
ただし、相手の商標登録のあとに不正競争の目的で使う場合は、この例外が適用されません(26条2項)。
ロゴ化した名称を講座名やサービス名として使うと、「普通に用いられる方法」とはいえない場面もあります。
商標権の存続期間は設定登録の日から10年で、更新できます(19条1項・2項)。
- J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で、候補の名称と同じ・似た商標が登録されていないか
- 登録がある場合、その指定商品・指定役務が自分たちの活動と重なるか
- 名称を講座名・検定名・商品名としても使う予定があるか
- 自分たちで商標登録しておくべき名称か(認定資格・ブランド名など)
他人の名称を含む商標は、その他人の承諾がなければ原則として登録を受けられません(商標法4条1項8号)。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 商標の登録出願など特許庁への手続きは、弁理士が取り扱う業務です。
商標の考え方はNPO法人の名称と商標|登記だけでは名前を守れない理由でも説明しています。
伝わる名称にするための考え方
法律の条件を満たしたら、次は名称が団体の活動を伝えられるかを考えます。
活動の分野を入れると、名称だけで何をする団体かが伝わります。「〇〇料理研究協会」「〇〇介護人材育成機構」などです。
地域名を入れると、地域の団体であることが伝わります。ただし、将来活動地域を広げると名称と実態がずれます。
対象者を入れる方法もあります。「〇〇の保護者の会」「〇〇の若手経営者協会」などです。
「日本」「全国」「国際」などの語は法律上の制限はありませんが、活動の規模と合わないと信用を損ないます。
名称は定款変更をしないと変えられないため、5年後、10年後の活動も想像して決めます。
| 決め方の軸 | 名称の例 | 向いている団体 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 分野+組織の種類 | 一般社団法人日本〇〇協会 | 業界団体・資格認定団体 | 既存の団体と似やすい |
| 地域+分野 | 一般社団法人〇〇市まちづくり協議会 | 地域活動・観光・防災 | 活動地域を広げると実態とずれる |
| 理念を表す造語 | 一般社団法人〇〇(造語) | 社会的事業・ブランドを育てたい団体 | 何をする団体かは説明が要る |
| ローマ字・英語 | 一般社団法人〇〇 Japan | 国際交流・海外との連携 | 読み方を案内しておく |
名刺やWebサイトで略称を使う団体もありますが、契約書や申請書類では登記どおりの正式名称を使います。
英語表記と略称
英語の名称は、登記される名称とは別に、法人が決めて使うものです。
定款に英文名を書いておくと、法人として正式に決めた表記であることを示せます。
英文名の書き方に法律上の決まりはありません。
一般社団法人は「General Incorporated Association」と訳される例が多くあります。
「一社」という略称は通称で、登記上の名称の代わりには使えません。
一般財団法人の英語表記や略称は一般財団法人の名称と英語表記で説明しています。
第1条(名称)当法人は、一般社団法人〇〇協会と称する。
2 当法人の英文名は、〇〇 Association とする。
英文名の条項は任意です。登記されるのは第1条の名称だけです。
名称を決めるまでの手順

候補を出したら、次の順で確認していきます。
名称が同じ法人の有無は、国税庁の法人番号公表サイトで名称から検索できます。
主たる事務所の所在場所が同じかどうかは、ヒットした法人の所在地や登記事項証明書で確かめます。
商標はJ-PlatPatで、名称の文字と読み方の両方を調べます。
Webサイトのドメインや主要なSNSのアカウント名が取れるかも、この段階で確認しておくと後で困りません。
分野・地域・理念のどれを軸にするかを決める
使える符号か(商業登記規則50条)・業法の禁止語に当たらないか
法人番号公表サイトで検索し、同じ所在場所に同一名称がないか(商業登記法27条の準用)
広く知られた名称や登録商標と紛らわしくないか(不正競争防止法・商標法)
正式名称や略称で取得できるか
名称は定款の必要的記載事項(一般法人法11条1項2号)
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。
設立全体の流れは一般社団法人の設立の流れで確認できます。
設立後に名称を変えるとき
名称は定款の記載事項なので、変えるには定款変更が必要です。
定款変更は社員総会の決議で行います(146条)。
この決議は、総社員の半数以上で、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要な特別決議です(49条2項4号)。
名称は登記事項なので、変更から2週間以内に主たる事務所の所在地で変更の登記をします(303条)。
登録免許税は、登記事項の変更の登記として申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第一24号(一)ツ)。
公益認定を受けて「公益社団法人」に変わるときは、定款を変更したものとみなされます(公益認定法9条1項)。
この公益認定による名称変更の登記には、登録免許税を課さないとされています(登録免許税法5条14号)。
- 法人の印鑑(名称入りの代表者印を作り直す場合は、法務局への印鑑の提出も)
- 銀行口座の名義
- 税務署・都道府県・市町村への異動の届出
- 契約書のひな形・請求書・領収書
- Webサイト・名刺・パンフレット・看板
- 許認可を受けている事業があれば、所管庁への変更の届出
法人の印鑑は一般社団法人の印鑑(法人印)は何種類必要?で説明しています。
よくある誤解
誤解1:同じ名前の一般社団法人は全国に1つしかない。
登記で禁止されるのは、名称も主たる事務所の所在場所も同じ場合です(商業登記法27条・一般法人法330条)。
誤解2:登記できた名前なら自由に使える。
不正の目的があれば一般法人法7条、広く知られた名称と混同させれば不正競争防止法の問題になります。
誤解3:名称を登記すれば商標も守られる。商標権は特許庁での設定の登録で発生します(商標法18条1項)。
誤解4:英語やローマ字は登記できない。法務大臣が指定するローマ字・数字・符号は登記に使えます(商業登記規則50条)。
誤解5:「一般社団法人」は名称の前に付けなければならない。
名称中に文字があればよく、前でも後ろでも構いません(5条1項)。
一般社団法人の名称の決め方についてよくある質問
A. 必ず入れます。一般社団法人は、その名称中に一般社団法人という文字を用いなければなりません(一般法人法5条1項)。前でも後ろでも構いません。
A. 主たる事務所の所在場所が違えば、登記はできます。登記できないのは、名称が同一で所在場所も同一の場合です(商業登記法27条・一般法人法330条)。ただし紛らわしい名称は避けるのが安全です。
A. 使えます。ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字、&・’・,・‐・.・中点の6種の符号が使えます(商業登記規則50条・法務省の案内)。符号は先頭・末尾には使えません。
A. 避けるべきです。一般社団法人は、一般財団法人と誤認されるおそれのある文字を名称に使えません(一般法人法5条2項)。違反は20万円以下の過料の対象です(344条1号)。
A. 入れられません。学校教育法135条は1条の学校以外の教育施設が学校の名称を使うことを、銀行法6条2項は銀行でない者が銀行であることを示す文字を使うことを禁じています。
A. 社員総会の特別決議で定款を変更し(一般法人法146条・49条2項4号)、2週間以内に変更の登記をします(303条)。登録免許税は申請1件につき3万円です。
A. 名称の登記と商標権は別です。商標権は特許庁での設定の登録で発生します(商標法18条1項)。講座名や検定名などで使うなら、商標の確認と登録を検討します。
A. 英文名そのものは登記事項ではありません。定款に英文名を書いて使うことはできます。登記する名称にローマ字を使うことはできますが、「一般社団法人」の文字は省けません。
📖 参考にした公的機関の情報


