NPO法人に所轄庁の検査が入るとき|報告徴収・立入検査・改善命令・認証取消しの流れ

一般社団法人法
所轄庁の検査は、いきなり来るものではありません。

事業報告書を何年も出していない。

社員が10人を割ったまま活動を続けている。

NPO法人の運営がこうした状態になったとき、所轄庁は何ができるのでしょうか。

特定非営利活動促進法は、報告徴収と立入検査、改善命令、設立の認証の取消しという三段階の仕組みを用意しています。

どれも突然行われるものではなく、条文に要件と手順が定められています。

この記事では、法41条から43条までの条文に沿って、監督が入る場面とその流れを整理します。

POINT 結論:所轄庁が報告を求めたり立入検査をしたりできるのは、法令・行政庁の処分・定款に違反する疑いがあると認められる相当な理由があるときです(法41条1項)。次の段階が改善命令(法42条)で、認証の取消しはさらにその先です(法43条)。ただし、事業報告書等を3年以上提出していない場合は、改善命令を経ずに認証を取り消すことができます。

所轄庁の監督は三段階になっている

特定非営利活動促進法の監督の規定は、第四章に置かれています。

順番に並んでいるのは、法41条の報告及び検査、法42条の改善命令、法43条の設立の認証の取消しです。

この並び自体が、監督が軽いものから重いものへ進む構造になっていることを示しています。

まず状況を確かめ、次に直すよう命じ、それでも直らなければ認証を取り消すという流れです。

認証の取消しは、法人格そのものを失わせる処分です。

だからこそ、その前に確認と是正の機会が置かれています。

逆にいえば、確認や命令の段階で対応すれば、取消しまで進むことは通常ありません。

所轄庁から連絡が来た段階で向き合うことが、いちばんの防御になります。

法41条 報告徴収と立入検査|要件は「相当な理由」

法41条1項は、所轄庁が報告を求め、または立入検査をすることができる場合を定めています。

要件は、その法人が法令、法令に基づいてする行政庁の処分、または定款に違反する疑いがあると認められる相当な理由があるときです。

できることは二つで、業務または財産の状況に関して報告をさせることと、職員に事務所その他の施設へ立ち入って検査させることです。

検査の対象は、業務や財産の状況のほか、帳簿、書類その他の物件です。

ここで押さえておきたいのは、要件が疑いがあるというだけでは足りないことです。

条文は、疑いがあると認められる相当な理由があるとき、という書き方をしています。

定期的に全法人を回るような検査ではなく、具体的な端緒があってはじめて動く仕組みだということです。

なお、認定特定非営利活動法人と特例認定特定非営利活動法人は、この項の対象から除かれています。

検査を受けるときに確認できること

立入検査には、法人の側を守る手続きも定められています。

法41条2項は、検査をさせる場合には、検査をする職員に相当の理由を記載した書面を、あらかじめ役員等に提示させなければならないとしています。

つまり、なぜ検査に来たのかを書面で示すことが求められています。

さらに同項は、役員等がその書面の交付を要求したときは、これを交付させなければならないとしています。

求めれば書面をもらえるということです。

法41条3項は、検査をする職員に身分を示す証明書の携帯と、関係人への提示を義務づけています。

そして法41条4項は、この検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと明記しています。

検査は行政上の監督であって、捜査とは別のものだという線引きです。

法42条 改善命令|要件は三つある

次の段階が、法42条の改善命令です。

所轄庁が改善のために必要な措置を採るべきことを命ずることができるのは、次のいずれかに当たると認めるときです。

一つ目は、法12条1項2号、3号または4号に規定する要件を欠くに至ったと認めるときです。

二つ目は、その他法令、法令に基づいてする行政庁の処分もしくは定款に違反すると認めるときです。

三つ目は、その運営が著しく適正を欠くと認めるときです。

命令は期限を定めて行われます。

この三つ目の要件は、個別の条文違反を特定できなくても発動できる受け皿になっています。

運営が形骸化している状態が長く続けば、ここに当たると判断される余地があるということです。

見落としやすいのは「社員10人を割った」場合

法42条の一つ目の要件は、条番号だけが並んでいて分かりにくいところです。

引用されている法12条1項は、所轄庁が設立を認証しなければならない場合の基準を定めた条文です。

その2号は、法2条2項に規定する団体に該当することです。

3号は、暴力団、または暴力団もしくはその構成員等の統制の下にある団体に該当しないことです。

そして4号が、十人以上の社員を有するものであることです。

つまり、設立のときだけでなく、設立後も社員10人以上という状態を保つ必要があります。

社員が減って10人を割ったまま放置していれば、改善命令の要件を満たすことになります。

退会や連絡不通で社員数が細っている法人は、まずここを確認してください。

法43条 設立の認証の取消し|二つの入口

最も重いのが、法43条の設立の認証の取消しです。

1項が定めているのは二つの場合です。

一つは、法42条の改善命令に違反した場合であって、他の方法により監督の目的を達することができないときです。

もう一つは、3年以上にわたって法29条の規定による事業報告書等の提出を行わないときです。

後者には、改善命令が先に必要だという条件が付いていません。

報告を3年出さないというだけで、取消しの入口に立つということです。

さらに法43条2項は、法令に違反した場合において、改善命令によっては改善を期待できないことが明らかで、かつ他の方法により監督の目的を達することができないときは、命令を経ないでも取り消すことができるとしています。

段階を飛ばす道も用意されているということです。

取消しの前には聴聞がある

認証の取消しは、いきなり通知が届いて終わりというものではありません。

法43条3項は、取消しに係る聴聞の期日における審理について定めています。

当該法人から請求があったときは、公開により行うよう努めなければならないとされています。

努めなければならないという書き方なので、必ず公開されるわけではありません。

法43条4項は、請求があったのに公開により行わないときは、その理由を記載した書面を法人に交付しなければならないとしています。

公開しないなら理由を示せ、という仕組みです。

聴聞は、法人が自分の言い分を述べる場です。

通知が届いたら放置せず、事実関係を整理して臨むべき場面です。

そもそもの義務|毎年の提出と事務所への備置き

監督の話の前提にあるのが、法28条と法29条の義務です。

法29条は、都道府県または指定都市の条例で定めるところにより、毎事業年度一回、事業報告書等を所轄庁に提出しなければならないと定めています。

法28条1項は、毎事業年度初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書、計算書類、財産目録、年間役員名簿、そして前事業年度末日における社員のうち10人以上の者の氏名等を記載した書面を作成することを求めています。

作成した書類は、作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日までの間、事務所に備え置かなければなりません。

法28条2項は、役員名簿と定款等についても事務所への備置きを求めています。

法28条3項は、社員その他の利害関係人から閲覧の請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて閲覧させなければならないとしています。

閲覧の対象は、事業報告書等、役員名簿、定款等です。

この毎年の提出を止めてしまうことが、3年後に取消しの入口へつながります。

提出した書類は誰でも見られる

NPO法人の情報公開は、法人の事務所だけで完結しません。

法30条は、所轄庁が提出を受けた事業報告書等について、閲覧または謄写の請求があったときの扱いを定めています。

対象は過去5年間に提出を受けた事業報告書等、役員名簿、定款等です。

請求があったときは、条例で定めるところにより、これらを閲覧させ、または謄写させなければならないとされています。

ただし、事業報告書等と役員名簿については、個人の住所または居所に係る記載の部分を除いたものが対象です。

つまり、住所は伏せたうえで公開されます。

作った書類は外から見られることを前提にすべきだ、という話は、この条文から出ています。

寄付を検討する人や助成団体が、実際にこの仕組みで法人を確認しています。

所轄庁から連絡が来たときにすること

最初にすべきなのは、何を求められているのかを書面で確認することです。

報告を求められているのか、検査に来るのか、改善命令なのかで、置かれている段階が違います。

立入検査であれば、法41条2項により相当の理由を記載した書面の提示を受けられ、求めれば交付も受けられます。

次に、期限を確認します。

改善命令には期限が定められますので、その期限内に何をどこまで直すのかを決める必要があります。

そのうえで、未提出の事業報告書等があれば、過年度分をさかのぼって作成し提出するのが基本の対応です。

社員が10人を割っているなら、総会を開いて入会の手続きを進めることになります。

役員の任期が切れているなら、選任と登記も同時に必要です。

取り消されるとどうなるか

設立の認証が取り消されると、法人格を失います。

それまで法人名義で持っていた財産や契約の扱いを整理しなければなりません。

銀行口座や賃貸借契約、助成金の受け入れも影響を受けます。

活動を続けたい場合は、任意団体として続けるか、あらためて法人を作り直すかという選択になります。

どちらも、それまで積み上げた法人としての実績や信用を引き継げるとは限りません。

だからこそ、毎年の報告を止めないことが、いちばん安く確実な対策です。

活動が止まっている年でも、活動がなかったという内容で報告は出せます。

提出そのものを止めないことが、3年の取消し要件を回避する唯一の方法です。

認定NPO法人は扱いが違う

ここまで見てきた法41条1項は、対象から認定特定非営利活動法人と特例認定特定非営利活動法人を除いています。

認定を受けた法人には、別の監督の規定が用意されているためです。

認定は、法44条1項により、運営組織および事業活動が適正であって公益の増進に資する法人が所轄庁から受けられるものです。

法45条1項は認定の基準を定めており、広く市民からの支援を受けているかどうかの基準や、運営組織と経理に関する基準が並んでいます。

たとえば法45条1項3号イは、役員のうち親族等が占める割合を3分の1以下とすることを求めています。

同号ロは、各社員の表決権が平等であることを求めています。

同項5号は閲覧請求への対応を、6号は各事業年度において事業報告書等を法29条により提出していることを求めています。

認定を目指す法人にとっては、毎年の提出が基準そのものに組み込まれているということです。

段階 条文 要件 できること
報告徴収・立入検査 法41条1項 法令・行政庁の処分・定款に違反する疑いがあると認められる相当な理由があるとき 業務財産の報告をさせる/事務所等に立ち入り帳簿書類等を検査させる
改善命令 法42条 法12条1項2号3号4号の要件を欠くに至った/法令・処分・定款に違反する/運営が著しく適正を欠く 期限を定めて改善のために必要な措置を命ずる
認証の取消し(原則) 法43条1項 改善命令に違反し、他の方法により監督の目的を達することができないとき 設立の認証を取り消す
認証の取消し(報告未提出) 法43条1項 3年以上にわたって事業報告書等を提出しないとき 改善命令を経ずに設立の認証を取り消す
認証の取消し(緊急) 法43条2項 法令違反があり、改善命令では改善を期待できないことが明らかで、他の方法により目的を達せられないとき 改善命令を経ないで取り消す

そのほかのよくある質問

Q. 所轄庁の立入検査は抜き打ちで来ますか?

A. 法41条1項は、法令・行政庁の処分・定款に違反する疑いがあると認められる相当な理由があるときに限って検査ができるとしています。また同条2項により、検査をする職員は相当の理由を記載した書面をあらかじめ役員等に提示しなければならず、役員等が求めれば交付も受けられます。理由の分からないまま検査だけが進むことはありません。

Q. 事業報告書を何年出していないと認証を取り消されますか?

A. 法43条1項は、3年以上にわたって法29条の規定による事業報告書等の提出を行わないときを、認証の取消しができる場合として挙げています。この場合は改善命令を経る必要がありません。活動がなかった年でも、その内容で提出することはできます。

Q. 社員が10人を割ったらどうなりますか?

A. 法42条は、法12条1項4号の要件を欠くに至ったと認めるときを改善命令の要件としています。同号は十人以上の社員を有するものであることを求めていますので、社員が10人を割った状態は改善命令の対象になり得ます。総会を開いて入会手続きを進めるなどの対応が必要です。

Q. 立入検査は警察の捜査と同じものですか?

A. 違います。法41条4項は、この検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと明記しています。行政上の監督のための手続きであり、捜査とは制度上区別されています。

Q. 認証を取り消される前に言い分を述べる機会はありますか?

A. あります。法43条3項は、取消しに係る聴聞の期日における審理について、法人から請求があったときは公開により行うよう努めなければならないとしています。公開しない場合は、同条4項により理由を記載した書面が交付されます。通知が届いたら放置せず、事実関係を整理して臨んでください。

Q. 認定NPO法人にも立入検査はありますか?

A. 法41条1項の対象からは、認定特定非営利活動法人と特例認定特定非営利活動法人が除かれています。認定を受けた法人には別の監督の規定が用意されているためで、監督がなくなるという意味ではありません。


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