一般社団法人で会費を払わない会員への対処法|督促・退会・予防を解説

一般社団法人法
会費を払わない会員がいるとき、催促を続けるか、退会扱いにするか、請求するかで迷います。どこまでが法律で決まっていて、どこからが定款や規約の決めごとなのかを分けて説明します。

結論から申し上げます。

会費未払いへの対処は、「案内→督促→資格の整理→回収」の順に進めます。

最初に確かめるのは、その会員が法律上の「社員」かどうかです。

社員の会費は、定款を根拠とする支払義務です(一般法人法27条)。

賛助会員など社員でない会員の会費は、入会時の合意と会員規約が根拠になります。

社員の資格を失わせる方法は、定款で定めた退社事由(29条1号)と除名(30条)の2つです。

除名には、社員総会の特別決議と、1週間前までの通知・弁明の機会が必要です(30条1項・49条2項1号)。

退会や除名をしても、それまでに期限が来ていた会費の請求は別に考えます。

POINT 会費未払いの対処で効くのは「定款・規約に書いてあること」です。滞納時の資格喪失を定款の退社事由として書いておけば、除名の特別決議を経ずに資格を整理できます(一般法人法29条1号)。

最初に確認する:未払いの会員は「社員」か

最初に確認する:未払いの会員は「社員」か
図:最初に確認する:未払いの会員は「社員」か

一般法人法が支払義務を定めているのは、社員の経費の負担です。

27条は「社員は、定款で定めるところにより、一般社団法人に対し、経費を支払う義務を負う」と定めています。

ここでいう社員は従業員ではなく、社員総会で議決権を持つ法人の構成員です。

多くの法人では、定款で「正会員をもって一般法人法上の社員とする」と定めています。

賛助会員・名誉会員などは社員としないのが一般的です。

その場合、賛助会費は27条の経費ではなく、入会申込みと規約による約束にもとづく支払いです。

誰が社員かは、定款の「社員の資格の得喪に関する規定」で決まります(11条1項5号)。

項目 社員(正会員など) 社員でない会員(賛助会員など)
支払義務の根拠 定款の定め(27条) 入会時の合意・会員規約
資格を失わせる方法 定款の退社事由(29条1号)または除名(30条) 会員規約の定めによる
除名の手続 正当な事由・社員総会の特別決議・弁明の機会 規約の定めによる(30条は社員の規定)
名簿 社員名簿の作成義務あり(31条) 法律上の作成義務なし
いなくなった場合の影響 社員が欠けると解散事由(148条4号) 法人の存続には影響しない

自分の法人の定款で、未払いの会員がどちらに当たるかを先に確かめてください。

会員の種類の違いは賛助会員とは?正会員との違いで説明しています。

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定款と会員規約で確認する5つの項目

対処の根拠になるのは、定款と会員規約の文言です。

書いていないことを理由に資格を失わせたり、延滞金を取ったりすることはできません。

次の5項目が書かれているかを、未払いへの対応を始める前に確認します。

定款・会員規約のチェック項目

  • 会費の額・支払期限・支払方法(定款か、定款から委ねた規約のどちらか)
  • 会費を一定期間滞納したときに資格を失う旨の定め(定款の退社事由・29条1号)
  • 除名の事由に「会費の滞納」が含まれているか(30条1項の「正当な事由」の判断材料)
  • 退会時に既に払った会費を返さない旨、未払い分の扱い
  • 賛助会員など社員でない会員の資格喪失の定め(会員規約)

会費の額を定款に直接書いている法人もあります。

その場合、額を変えるには社員総会の特別決議による定款変更が必要です(146条・49条2項4号)。

規約の作り方は一般社団法人の会員規約の作り方で説明しています。

対処の全体の流れ

対処の全体の流れ
図:対処の全体の流れ

未払いへの対処は、軽い連絡から始めて、段階を上げていきます。

払い忘れや口座の変更など、連絡だけで済む原因も少なくないためです。

各段階でやりとりを書面やメールで残しておくと、後の資格喪失や請求の根拠になります。

1
支払状況を確認する
入金記録と会員名簿を突き合わせ、未払いの期間と金額を確定する
▼
2
支払いの案内を送る
期限が過ぎた旨と金額・振込先を伝える。払い忘れはこの段階で解消することが多い
▼
3
期限を示して督促する
督促状を書面やメールで送り、送付日と内容を記録する
▼
4
催告書を送る
内容証明郵便などで、最終の期限と応じない場合の扱いを伝える
▼
5
資格を整理する
定款の退社事由に当たるかを確認する。当たらなければ除名の手続を検討する
▼
6
回収の方法を決める
金額と手間を比べ、支払督促・少額訴訟などを検討する

資格の整理と回収は、別々に判断します。

資格を失わせても未払い分は請求できますし、請求をしないまま資格だけ整理することもできます。

督促状の書き方と記載例

督促状に書くのは、いつの分の会費が、いくら、いつまでにという事実です。

根拠となる定款や規約の条項も書いておくと、相手が支払義務を確かめられます。

期限は、相手が手続できる程度の日数をとって具体的な日付で示します。

感情的な表現や、規約にない不利益を示唆する書き方は避けます。

督促状の記載例

〇〇年〇月〇日 〇〇〇〇様

一般社団法人〇〇協会 代表理事 〇〇〇〇

件名:〇〇年度会費のお支払いについて(ご案内)

当法人定款第〇条及び会員規約第〇条に基づく〇〇年度の年会費〇〇円について、〇月〇日のお支払期限を過ぎてもご入金を確認できておりません。

〇月〇日までに、下記口座へお振込みくださいますようお願いいたします。

なお、定款第〇条により、会費を〇年以上滞納したときは会員資格を喪失します。

本状と行き違いでお支払い済みの場合は、ご容赦ください。

資格喪失の一文は、定款や規約に実際にその定めがある場合だけ書きます。定めがないのに書くと、根拠のない通知になります。

督促状のひな形は会員の名簿と同じ場所に保管し、送付日と送付方法を記録しておきます。

内容証明郵便と時効の関係

督促に応じない場合、内容証明郵便で催告書を送る方法があります。

内容証明は、郵便物の内容である文書の内容を日本郵便が証明する取扱いです(郵便法48条1項)。

配達証明を付けると、配達した事実も証明されます(同法47条)。

会費の請求権にも消滅時効があります。

権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で消滅します(民法166条1項)。

法人は会費の支払期限を知っているので、通常は支払期限から5年が目安になります。

催告をすると、その時から6か月間は時効が完成しません(民法150条1項)。

ただし、猶予中に重ねて催告しても、猶予は延びません(同条2項)。

6か月の間に、支払督促や訴えなどの手続をとる必要があります(民法147条1項)。

相手が未払いを認める書面を出した場合は、その時から時効が新たに進みます(民法152条1項)。

出来事 時効への影響 根拠
支払期限が来た その時から時効が進む(知った時から5年/行使できる時から10年) 民法166条1項
催告(督促状・内容証明) 6か月間は完成しない(再度の催告では延びない) 民法150条
支払督促・訴えの提起 手続が終わるまで完成しない。権利が確定すれば新たに進む 民法147条
会員が未払いを認めた(承認) その時から新たに進む 民法152条1項
一部を支払った 承認と扱われることがある 民法152条1項

未払いが数年分たまっている場合は、古い年度の分から時効の時期を確認しておきます。

個別の時効の判断は事実関係で変わるため、争いがあるときは弁護士に相談します。

会員資格を失わせる2つの方法:退社事由と除名

社員の資格を失わせる方法は、一般法人法に2つ用意されています。

1つは、定款で定めた退社事由の発生です(29条1号)。

定款に「会費を〇年以上滞納したときは資格を喪失する」と書いておけば、その事実が生じた時点で退社します。

もう1つは、除名です(29条4号・30条)。

除名は、正当な事由があるときに限り、社員総会の決議で行います(30条1項)。

この決議は、総社員の半数以上で、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要な特別決議です(49条2項1号)。

項目 定款の退社事由(29条1号) 除名(30条)
前提 定款に滞納時の資格喪失の定めがある 正当な事由がある
社員総会の決議 不要(事実の発生で退社) 必要(特別決議・49条2項1号)
本人への通知 法律上の定めはないが、確認の通知を送るのが実務 総会の1週間前までに通知し、弁明の機会を与える
効力 定款の事由が生じた時 決議の時。ただし通知しなければ本人に対抗できない(30条2項)
向いている場面 長期の滞納を機械的に整理したいとき 定款に定めがない、または滞納以外の事情もあるとき

定款の退社事由は、要件を客観的に書くことが大切です。

「理事会が相当と認めたとき」のような書き方では、事実の発生だけで退社したと言いにくくなります。

定款の資格喪失規定の記載例

滞納による資格喪失を定款に入れる場合の書き方の例です。

期間は、年会費なら「2年以上」、月会費なら「〇か月以上」のように、会費の単位に合わせて決めます。

定款に新しく入れる場合は、社員総会の特別決議による定款変更が必要です(146条・49条2項4号)。

定款の記載例(抜粋)

第〇条(経費の負担)社員は、当法人の事業活動に経常的に生じる費用に充てるため、社員総会において別に定める額を支払う義務を負う。

第〇条(資格の喪失)社員が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、その資格を喪失する。

(1)退社したとき (2)死亡し、又は解散したとき (3)総社員が同意したとき

(4)第〇条の支払義務を2年以上履行しなかったとき (5)除名されたとき

第〇条(除名)社員が次のいずれかに該当するときは、社員総会の決議によって当該社員を除名することができる。(1)この定款その他の規則に違反したとき(2)当法人の名誉を傷つけ、又は目的に反する行為をしたとき(3)その他除名すべき正当な事由があるとき

第〇条(拠出金品の不返還)既に納入した経費その他の拠出金品は、返還しない。

(4)が会費滞納による資格喪失の定めです。除名の決議要件は一般法人法49条2項1号の特別決議によります。実際の定款は、会費の単位や法人の運営に合わせて作ります。

資格を失った社員は、社員名簿から外す処理をします(31条)。

除名の手続(一般法人法30条)

定款に滞納時の資格喪失の定めがない場合は、除名を検討します。

除名には正当な事由が必要です。長期間の会費滞納は、その判断材料の一つになります。

30条1項は、社員総会の日から1週間前までに、その社員へ除名する旨を通知するよう求めています。

あわせて、社員総会で弁明する機会を与えなければなりません。

決議の後は、除名した社員にその旨を通知します。通知しなければ、除名をその社員に対抗できません(30条2項)。

理事会設置法人では、社員総会の招集は理事会が決めます。

1
除名の理由と経過を記録する
督促の日付・方法・相手の応答をまとめる
▼
2
社員総会の招集を決める
議題に「社員〇〇の除名の件」を入れる
▼
3
本人に除名する旨を通知する
総会の日から1週間前までに通知し、弁明できる旨を伝える(30条1項)
▼
4
社員総会で弁明の機会を与える
本人が出席すれば意見を述べてもらい、議事録に残す
▼
5
特別決議を行う
総社員の半数以上・総社員の議決権の3分の2以上(49条2項1号)
▼
6
除名した旨を本人に通知する
通知しないと本人に対抗できない(30条2項)。社員名簿を更新する

除名の要件の詳しい説明は一般社団法人の社員の除名にまとめています。

未払い会費を回収する法的手続

退社や除名によって、それまでに期限が来ていた会費の支払義務が当然に消えるという規定は、一般法人法にありません。

そのため、請求をするかどうかは、金額と手間を比べて判断します。

裁判所を使う手続には、支払督促と少額訴訟があります。

支払督促は、裁判所書記官が書類だけを審査して発する手続です(民事訴訟法382条・386条1項)。

申立先は、原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官です(同法383条1項)。

相手が受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、仮執行の宣言を申し立てられます(同法391条1項)。

異議が出ると、通常の訴訟に移ります(同法395条)。

少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払を求める訴えを、原則1回の期日で審理する手続です(同法368条1項・370条1項)。

手続 特徴 注意点
支払督促 書類審査のみ。裁判所に出向かずに進められる 相手の住所地の簡易裁判所。異議が出ると訴訟へ移る(395条)
少額訴訟 60万円以下。原則1回の期日で判決(368条・370条) 同じ簡易裁判所で年10回まで。控訴はできず異議のみ(377条・378条)
通常の訴訟 金額の上限なし 期日が複数回になり、時間と費用がかかる

少額訴訟では、判決で分割払いや支払猶予が定められることがあります(375条1項)。

申立ての手数料は請求額に応じて決まり、裁判所の「手数料早見表」で確認できます。

相手との交渉や訴訟の代理は、弁護士の業務です。

未払いを防ぐ仕組みづくり

未払いは、起きてからの対処より、起きにくい仕組みのほうが手間がかかりません。

入会の時点で、会費の額・期限・滞納時の扱いを書面で示し、同意を得ておきます。

口座振替やクレジットカード決済など、自動で引き落とされる方法を用意すると払い忘れが減ります。

請求のタイミングを毎年同じ時期にそろえると、会員も法人も管理しやすくなります。

社員名簿とは別に、支払状況の台帳を作っておくと、未払いをすぐに把握できます。

予防のチェックリスト

  • 入会申込書に会費の額・期限・滞納時の扱いを記載し、署名をもらっている
  • 定款または規約に、滞納時の資格喪失の定めがある
  • 自動引落しなど、手間のかからない支払方法がある
  • 毎年の請求時期と督促の時期を決めている
  • 支払状況の台帳を作り、担当者を決めている
  • 社員名簿(31条)と会費台帳を定期的に突き合わせている

社員名簿の記載事項は一般社団法人の社員名簿とはで説明しています。

対処するときの注意点

議決権の停止には注意が必要です。滞納中の社員の議決権を制限したいと考える法人もあります。

48条1項ただし書は、議決権の数について定款で別段の定めを置くことを認めています。

しかし、決議事項の全部について議決権を行使できないとする定款の定めは無効です(48条2項)。

そのため、議決権を止めるより、資格喪失や除名で整理する方が確実です。

社員の人数にも注意します。社員が欠けたことは解散事由です(148条4号)。

少人数の法人で除名や資格喪失を重ねると、社員がいなくなるおそれがあります。

社員名簿の閲覧も関係します。社員は理由を示して社員名簿の閲覧を請求できます(32条2項)。

滞納者の一覧を他の会員に回覧するなど、名簿の情報を本来の目的以外に使うことは避けます。

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よくある誤解

誤解1:会費を払わなければ自動的に退会になる。定款に滞納時の退社事由がなければ、自動的には退社しません(29条1号)。

誤解2:理事会で除名できる。社員の除名は社員総会の特別決議です(30条1項・49条2項1号)。

誤解3:除名の通知は決議の後だけでよい。総会の日の1週間前までの通知と、弁明の機会が必要です(30条1項)。

誤解4:退会すれば未払い分は請求できない。退社によって、期限が来ていた支払義務が当然に消える規定はありません。

誤解5:督促状を何度も送れば時効は止まり続ける。催告の猶予は6か月で、再度の催告では延びません(民法150条)。

誤解6:賛助会員も30条の手続で除名する。30条は社員についての規定です。社員でない会員は規約に従います。

会費を払わない会員への対処についてよくある質問

Q. 会費を払わない会員を退会させることはできますか?

A. 社員であれば、定款に滞納時の資格喪失を退社事由として定めていればその事実で退社します(一般法人法29条1号)。定めがなければ、正当な事由があるときに社員総会の特別決議で除名します(30条1項・49条2項1号)。

Q. 除名の前に本人に連絡する必要はありますか?

A. 必要です。社員総会の日から1週間前までに除名する旨を通知し、総会で弁明する機会を与えなければなりません。除名後も本人に通知しなければ、除名を本人に対抗できません(一般法人法30条1項・2項)。

Q. 退会した会員に未払いの会費を請求できますか?

A. 退社によって、それまでに支払期限が来ていた支払義務が当然に消えるという規定は一般法人法にありません。請求するかどうかは金額と手間を比べて判断します。時効にも注意が必要です(民法166条1項)。

Q. 会費の請求に時効はありますか?

A. あります。権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で消滅します(民法166条1項)。催告から6か月は完成が猶予されますが、再度の催告では延びません(民法150条)。

Q. 賛助会員の未払いはどう扱いますか?

A. 賛助会員を社員としない定款であれば、一般法人法27条や30条は適用されません。入会時の合意と会員規約に従って、資格喪失や請求を判断します。

Q. 滞納中の社員の議決権を止められますか?

A. 定款で議決権の数について別段の定めを置くことはできますが、決議事項の全部について議決権を行使できないとする定めは無効です(一般法人法48条1項・2項)。資格喪失や除名で整理する方が確実です。

Q. 少額訴訟と支払督促はどちらを使えばよいですか?

A. 相手が争わない見込みなら、書類審査だけの支払督促が使えます(民事訴訟法382条・386条1項)。争いがありそうで60万円以下なら、原則1回の期日で審理する少額訴訟があります(同法368条・370条)。

Q. 定款に滞納時の資格喪失の定めを追加するには?

A. 定款変更として、社員総会の特別決議が必要です(一般法人法146条・49条2項4号)。総社員の半数以上で、総社員の議決権の3分の2以上の賛成が要件です。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。