NPO法人のリスク管理と事故対応|4つの備えと起きたときの順番

一般社団法人法
活動中の事故、情報の流出、金銭の不足。起きる前に決めておくことがあります。

NPO法人の活動には、事故や事件のリスクがつきものです。

起きてから考えるのでは、対応が遅れます。

あらかじめ決めておくことで、被害を小さくできます。

この記事では、備え方と起きたときの動き方を解説します。

POINT 結論:リスクは、けが・情報・金銭・評判の4つに整理すると考えやすくなります。起きたときに最も大切なのは、事実の把握と報告の速さです。誰に、いつまでに報告するかを事前に決めておくことが、いちばんの備えになります。

リスクを4つに整理する

リスクを漠然と心配しても、備えになりません。

4つに分けると、考えやすくなります。

第一が、けがや体調の事故です。

参加者、ボランティア、職員のいずれにも起こり得ます。

第二が、情報に関するものです。

名簿の紛失や、誤送信が典型です。

第三が、金銭に関するものです。

現金の不足や、私的な流用です。

第四が、評判に関するものです。

不適切な発言や、対応の遅れから生じます。

それぞれ、備え方が違います。

種類 典型的な場面 主な備え
けが・体調 活動中の転倒、熱中症 保険、下見、人員配置
情報 名簿の紛失、誤送信 取扱規程、持ち出しの制限
金銭 現金の不足、私的な流用 出納と承認の分離、監事の確認
評判 不適切な発言、対応の遅れ 窓口の一本化、報告の手順

保険で備える

けがに対する備えの中心は、保険です。

ボランティア活動保険は、社会福祉協議会で加入できます。

参加者を対象とする行事保険もあります。

対物や対人の賠償に備える保険も、必要に応じて検討します。

職員を雇っているなら、労働保険が別に必要です。

保険は、加入していれば済むものではありません。

対象になる人と、ならない人を把握しておきます。

見学者や飛び入りの参加者が、対象外のことがあります。

毎年の更新を、年間の予定表に入れておきましょう。

活動前の下見と人員配置

保険より前にできるのが、事前の準備です。

第一に、会場の下見をします。

段差、照明、避難経路を確認します。

第二に、参加者の人数に見合う人員を配置します。

手が足りないと、目が届かなくなります。

第三に、当日の役割を決めておきます。

誰が救急に対応するかを、事前に決めます。

第四に、緊急の連絡先を一覧にします。

第五に、参加者の緊急連絡先を把握しておきます。

子どもや高齢者が参加する活動では、特に重要です。

活動当日に用意しておくもの

  • 参加者名簿と緊急連絡先
  • 救急箱
  • 保険の加入内容が分かる資料
  • 緊急連絡先の一覧
  • 会場の避難経路の確認
  • 当日の役割分担表
  • 記録用のカメラまたは記録係
  • 雨天や高温のときの中止の基準
  • 事故が起きたときに動く順番を書いた紙
  • 当日の責任者と、不在のときの代理

中止の基準を決めておく

判断がいちばん難しいのが、中止の決定です。

当日になって迷うと、開催に流れがちです。

そこで、基準を先に決めておきます。

気温、警報、参加者の人数などで、線を引きます。

誰が決めるかも、はっきりさせます。

当日の責任者が決める形が、動きやすいものです。

中止の連絡の手順も、決めておきましょう。

電子メール、電話、ウェブサイトのどれで伝えるかです。

基準があれば、決断が遅れません。

事故が起きたときの順番

起きたときは、順番を守ることが大切です。

第一が、けが人の安全と手当てです。

必要なら、迷わず救急に連絡します。

第二が、ほかの参加者の安全確保です。

第三が、状況の記録です。

時刻、場所、状況、対応した人を書き留めます。

第四が、責任者への報告です。

第五が、家族への連絡です。

第六が、保険会社への連絡です。

順番を書いた紙を、当日の資料に入れておきましょう。

報告の速さが結果を分ける

対応の良し悪しは、報告の速さで決まります。

小さな出来事ほど、報告されずに埋もれがちです。

あとから大きくなって、はじめて発覚します。

そこで、報告の基準を決めておきます。

けががあれば軽重を問わず報告、といった形です。

報告した人が責められない雰囲気も、必要です。

叱られると分かっていれば、誰も報告しません。

報告を受けたら、まず事実を確認します。

推測で外部に説明すると、あとで訂正が必要になります。

情報の事故への備え

名簿の紛失や誤送信は、どの団体でも起こり得ます。

第一に、持ち出しを制限します。

紙の名簿を持ち歩く場面が、いちばん危険です。

第二に、電子メールの一斉送信の方法を統一します。

宛先の指定を誤ると、全員の連絡先が流出します。

第三に、共有の場所に置くファイルを整理します。

第四に、退任した人のアクセス権を消します。

第五に、起きたときの連絡の手順を決めておきます。

本人への連絡が、最優先になります。

隠すと、被害が広がります。

金銭に関する備え

金銭の事故は、団体の信用を大きく損ないます。

第一に、出納と承認を分けます。

一人が両方を担う状態を、避けます。

第二に、現金を持たない仕組みにします。

振込や電子決済にすれば、記録が残ります。

第三に、通帳と印鑑の保管者を分けます。

第四に、監事が定期的に確認します。

第五に、支出の決裁の基準を規程で決めます。

疑われない仕組みは、担当者を守るためのものです。

信頼しているから確認しない、という考えは危険です。

外部への説明

事故が外部に知られる場合、説明が必要になります。

窓口を、一本化しましょう。

複数の人が別々に話すと、内容が食い違います。

説明の内容は、確認できた事実に限ります。

分からないことは、分からないと伝えます。

推測を混ぜると、訂正することになります。

関係者への連絡を、外部の発表より先に行います。

被害を受けた人が、報道で知る事態は避けます。

会員や支援者にも、時期を見て説明しましょう。

起きたあとの見直し

対応が終わったら、必ず振り返ります。

理事会の議題に、あげましょう。

何が起きたか、なぜ起きたかを整理します。

個人の責任を追及する場には、しません。

仕組みのどこに穴があったかを、探します。

再発を防ぐ手立てを決め、記録に残します。

規程やマニュアルに、反映させます。

次に同じ場面が来たとき、判断できる形にします。

振り返らない団体は、同じ事故を繰り返します。

誰が何を決めるかを先に決める

事故のとき、いちばん困るのは判断の空白です。

責任者が不在で、誰も決められない状態です。

そこで、決める人を先に決めておきます。

当日の責任者を、活動ごとに指名する形が実用的です。

不在のときの代理も、決めておきます。

救急に連絡する判断は、現場の誰でもできる形にします。

迷ったら呼ぶ、を原則にしましょう。

費用や責任の心配で、通報が遅れてはいけません。

この方針を、事前に全員へ伝えておきます。

判断の基準があれば、現場が動けます。

ボランティアへの説明

ボランティアには、活動前に説明が必要です。

第一に、その日の役割と範囲を伝えます。

頼んでいないことまで、無理にやらせません。

第二に、危険がある作業を伝えます。

第三に、けがをしたときの連絡先を伝えます。

第四に、保険の加入状況を伝えます。

第五に、知り得た個人情報を口外しない約束をします。

第六に、写真の扱いについて確認します。

短い時間でも、口頭で伝えるだけで違います。

説明した記録を、残しておきましょう。

写真と記録の扱い

活動の写真は、広報にも報告にも使います。

一方で、扱いを誤ると事故になります。

撮影の可否を、参加の申込のときに確認しましょう。

子どもが写る場合は、保護者の意向を聞きます。

掲載を望まない人には、印をつけるなどの工夫をします。

当日に、撮影する旨を口頭でも伝えます。

掲載したあとで削除を求められたら、速やかに応じます。

過去の記事に残っている写真も、対象になります。

削除の求めに応じる窓口を、示しておきましょう。

弱い立場の人が関わる活動

子ども、高齢者、障害のある人が関わる活動では、備えが変わります。

第一に、二人以上で対応する原則を作ります。

一対一の場面を減らすことが、双方を守ります。

第二に、送迎の記録を残します。

第三に、身体に触れる場面の扱いを決めておきます。

第四に、相談を受けたときの報告の手順を作ります。

一人で抱え込ませない仕組みが、必要です。

第五に、関わる人の研修の機会を設けます。

第六に、記録の様式を統一します。

これらは、疑いをかけられたときに自分を守るものでもあります。

備えを規程に落とす

決めたことは、文書にしておきましょう。

頭の中にあるだけでは、人が代わると消えます。

大がかりな規程でなくてもかまいません。

1枚の手順書で、十分に機能します。

緊急時の連絡先、動く順番、決める人を書きます。

当日の資料に、必ず入れておきます。

年に一度は、内容を見直しましょう。

連絡先が古いまま、という失敗がよくあります。

見直しの時期を、年間の予定表に入れてください。

日ごろの点検

備えは、一度作って終わりではありません。

第一に、保険の加入内容を毎年確認します。

活動の中身が変われば、必要な保険も変わります。

第二に、緊急連絡先の一覧を更新します。

第三に、救急箱の中身を点検します。

使用期限の切れたものが、入っていることがあります。

第四に、名簿と緊急連絡先の情報を更新します。

第五に、会場の下見をやり直します。

同じ場所でも、状況は変わっています。

年に一度、理事会でまとめて確認しましょう。

点検した日と担当者を、記録に残しておきます。

記録があれば、備えを尽くしていたことを説明できます。

点検の担当は、複数人で分けておくと抜けが減ります。

リスク管理と事故対応のまとめ

リスクは、けが・情報・金銭・評判の4つに整理します。

けがへの備えは、保険だけでなく下見と人員配置が要です。

中止の基準と決める人を、先に決めておきましょう。

起きたときは、安全確保、記録、報告の順に動きます。

報告した人が責められない雰囲気が、いちばんの備えです。

情報の事故は、本人への連絡を最優先にします。

金銭は、出納と承認を分けることで防げます。

対応が終わったら、仕組みの穴を探して記録に残してください。

弱い立場の人が関わる活動では、二人以上で対応する原則を作ります。

決めたことは1枚の手順書にして、当日の資料に必ず入れておきます。

連絡先が古くならないよう、年に一度の見直しを予定表に入れてください。

よくある質問

Q. どんな保険に入ればいい?

A. ボランティア活動保険が基本で、社会福祉協議会で加入できます。参加者を対象とする行事保険や、対物・対人の賠償保険も必要に応じて検討してください。

Q. 保険に入っていれば安心?

A. いいえ。対象になる人とならない人があり、見学者や飛び入りの参加者が対象外のことがあります。加入内容を把握し、毎年の更新も忘れないでください。

Q. 事故が起きたら何から?

A. けが人の安全と手当てが最優先です。次にほかの参加者の安全確保、状況の記録、責任者への報告、家族への連絡、保険会社への連絡と進みます。

Q. 小さなけがも報告すべき?

A. すべきです。小さな出来事ほど埋もれ、あとから大きくなって発覚します。報告した人が責められない雰囲気を作ることが、いちばんの備えです。

Q. 名簿を紛失したら?

A. 本人への連絡を最優先にしてください。隠すと被害が広がります。あわせて、紙の名簿の持ち出しを制限する仕組みに見直しましょう。

Q. 金銭の事故はどう防ぐ?

A. 出納と承認を分けることです。現金を持たず振込や電子決済にする、通帳と印鑑の保管者を分ける、監事が定期的に確認する、といった仕組みで防げます。

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