NPO法人の運営で、理事が集まれない場面があります。
急ぎの判断が要るのに、日程が合いません。
そのための、書面による決議という方法があります。
この記事では、その使い方と注意点を解説します。
理事会は定款で置くもの
まず、前提を整理します。
NPO法人の理事会は、定款で置く機関です。
総会とは、性質が違います。
第一に、置くかどうかも定款によります。
第二に、権限の範囲も定款で決めます。
第三に、開き方や議決の要件も定款です。
第四に、書面による決議の可否も同じです。
他団体の運用は、そのまま当てはまりません。
必ず、自分の定款を読んでください。
定款に何と書いてあるか
確かめるべき箇所を、示します。
第一に、理事会の招集の方法です。
第二に、開催の要件です。
理事の何分の1以上の出席、といった定めです。
第三に、議決の要件です。
第四に、書面による決議の定めです。
この4つ目が、今回の本題になります。
第五に、電磁的方法の定めも見ます。
定めがなければ、その方法は使えません。
運用でごまかすと、決議の効力が問題になります。
| 方法 | 前提 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 集まって開く | 定款の招集の定め | 議論が必要な議案 |
| 接続で開く | 定款の定めを確認 | 遠方の理事がいるとき |
| 書面による決議 | 定款に定めがあること | 異論の出ない議案 |
| 電磁的方法 | 定款に定めがあること | 急ぎの判断 |
| 持ち回り | 定款の定めによる | 軽微な事項 |
書面による決議に向く議案
すべての議案に、向くわけではありません。
第一に、異論が出ない議案です。
第二に、期限が迫っている議案です。
第三に、内容が単純な議案です。
第四に、既に議論が済んでいる議案です。
前回の理事会で、方向が決まっている場合です。
第五に、形式的な確認の議案です。
一方、議論が必要な議案には向きません。
賛否が割れそうなものも、避けましょう。
書面では、意見の交換ができません。
- 定款に書面による決議の定めがあるか
- 対象にできる議案かどうか
- 必要な賛成の数
- 全員の同意が要る定めかどうか
- 議案の資料を添えたか
- 賛否を書く様式を用意したか
- 提出の期限を示したか
- 返送の方法を複数用意したか
- 議事録をどう作るか
- 次の理事会で報告するか
進め方の手順
実際の進め方を、順に見ます。
第一に、議案を作ります。
第二に、判断できる資料を添えます。
第三に、賛否を書く様式を用意します。
第四に、理事全員に送ります。
第五に、提出の期限を示します。
第六に、返送を集めます。
第七に、定款の要件を満たすかを確認します。
第八に、結果を全員に知らせます。
第九に、記録を残します。
手順を飛ばすと、後で争われます。
資料を十分に添える
書面の決議で、最も大切な点です。
集まる場と違い、質問ができません。
第一に、なぜこの議案かを書きます。
第二に、判断に必要な情報を全部入れます。
第三に、想定される疑問に先に答えます。
第四に、費用が絡むなら金額を示します。
第五に、期限の理由も書きます。
第六に、問い合わせ先を明記します。
情報が足りないと、賛成しづらくなります。
説明の質が、そのまま返送の速さになります。
全員の同意が要る場合
定款の書き方に、注意が要ります。
第一に、理事全員の同意を求める定めがあります。
第二に、その場合は一人でも欠けると成立しません。
第三に、多数で足りる定めもあります。
第四に、どちらかを必ず確認します。
第五に、返送のない理事の扱いも見ます。
返送がないことを、賛成と扱えるとは限りません。
第六に、判断に迷うなら集まって開きます。
無理に書面で通さないでください。
効力を争われると、やり直しになります。
記録の残し方
書面の決議も、記録が必要です。
第一に、議案の内容を書きます。
第二に、送った日と、期限を書きます。
第三に、理事の総数を書きます。
第四に、賛成と反対の数を書きます。
第五に、定款の要件を満たした旨を書きます。
第六に、返送された書面を保管します。
議事録としてまとめ、次の理事会で報告します。
登記や届出に使う場合は、様式も確認します。
手続きの詳細は、司法書士が取り扱う業務です。
総会の書面表決との違い
総会の書面表決とは、別のものです。
第一に、対象となる会議が違います。
総会は社員、理事会は理事です。
第二に、根拠も違います。
総会の書面表決は、法律に定めがあります。
理事会は、定款で決めるものです。
第三に、使える範囲も違います。
第四に、要件も別に定められています。
混同すると、手続きを誤ります。
それぞれの定めを、別に確認しましょう。
接続での開催という選択
書面のほかに、接続で開く方法もあります。
第一に、議論ができる点が大きな違いです。
第二に、質問にその場で答えられます。
第三に、遠方の理事も参加できます。
第四に、定款の定めを確認します。
出席の扱いを、定めている場合があります。
第五に、双方向でやり取りできる形が前提です。
第六に、記録も忘れず残します。
議論が必要な議案なら、こちらを選びましょう。
書面は、あくまで補助の手段です。
使いすぎない
便利ですが、頼りすぎないでください。
第一に、議論の機会が失われます。
第二に、異論が出にくくなります。
第三に、決めた経緯が残りません。
第四に、理事の関与が薄くなります。
第五に、いつの間にか決まっている状態になります。
第六に、責任の自覚も薄れます。
理事会は、判断を共有する場です。
年に数回は、集まって開きましょう。
書面は、例外として使う形が健全です。
定めがない場合
定款に定めがない団体も、多くあります。
第一に、その場合は書面で決議できません。
第二に、集まって開くしかありません。
第三に、接続での開催も定款を確認します。
第四に、必要なら定款変更を検討します。
第五に、定款変更には総会の議決が要ります。
定款に特別の定めがある場合を除き、社員総数の4分の3以上です。
第六に、所轄庁への手続きも生じます。
急ぎのときには、間に合いません。
平時のうちに、備えとして整えておきましょう。
定款を見直すなら
定款変更の機会に、あわせて考える点です。
第一に、書面による決議の定めを入れるか。
第二に、電磁的方法の定めも入れるか。
第三に、接続での開催の扱いを明確にするか。
第四に、要件をどう定めるか。
全員の同意か、多数かです。
第五に、対象とする議案を限るか。
第六に、他の条項との整合を確かめます。
所轄庁の手引きや、様式例も参考になります。
一度の定款変更で、まとめて整えましょう。
急ぎの判断が必要な場面
実際に、どんな場面で使うでしょうか。
第一に、助成金の申請の期限が迫ったときです。
第二に、契約の締結を求められたときです。
第三に、役員に欠員が生じたときです。
第四に、災害などで急な対応が要るときです。
第五に、行政からの照会に期限があるときです。
いずれも、次の理事会まで待てません。
第六に、こうした場面を想定して備えます。
起きてから定款を読むのでは、遅くなります。
一度、目を通しておきましょう。
小さな判断は任せる
書面の決議に頼る前に、考えることがあります。
そもそも理事会にかける必要があるか、です。
第一に、権限を規程で分けます。
第二に、額で線を引く方法があります。
一定額までは、担当が決められる形です。
第三に、代表理事に委ねる範囲も決めます。
第四に、決めたことは次の理事会で報告します。
第五に、定款との整合を確かめます。
権限が整理されていれば、急ぎの決議は減ります。
仕組みで、手間を減らしましょう。
返送を集める工夫
返送が集まらないと、成立しません。
第一に、期限を明記します。
第二に、返送の方法を複数用意します。
郵送、持参、電子などです。
第三に、返信の封筒を同封します。
第四に、期限の数日前に一度声をかけます。
第五に、担当を決めて進み具合を見ます。
第六に、届いたら受領を知らせます。
出したか分からない状態が、いちばん困ります。
一覧で管理すると、抜けがなくなります。
理事会を書面で決議するまとめ
理事会の書面による決議は、定款に定めがあってはじめて行えます。
まず自分の団体の定款を開き、定めの有無と要件を確かめてください。
理事会は定款で置く機関で、他団体の運用は当てはまりません。
向くのは、異論が出ず、内容が単純で、期限が迫っている議案です。
議論が必要な議案や、賛否が割れそうなものには使わないでください。
集まる場と違い質問ができないため、資料を十分に添えます。
全員の同意を求める定めか、多数で足りるかを必ず確認しましょう。
返送がないことを賛成と扱えるとは限りません。
議案・期限・理事の総数・賛否の数を、議事録に残します。
総会の書面表決とは根拠も要件も別のものです。混同しないでください。
助成金の期限や役員の欠員など、待てない場面を想定して備えます。
そもそも理事会にかける必要があるかを、権限の整理から見直しましょう。
返送は期限を明記し、方法を複数用意して、一覧で進み具合を管理します。
定めがないなら、平時のうちに定款変更を検討しておきましょう。
よくある質問
A. 定款に定めがあってはじめて行えます。理事会は定款で置く機関で、開き方や議決の要件も定款で決まります。まず自分の定款を確認してください。
A. 異論が出ない、内容が単純、期限が迫っている、既に議論が済んでいる議案です。議論が必要なものや賛否が割れそうなものには向きません。
A. 集まる場と違い質問ができません。なぜこの議案か、判断に必要な情報、想定される疑問への答え、費用、期限の理由、問い合わせ先まで入れてください。
A. 賛成と扱えるとは限りません。定款の定めを確認してください。全員の同意を求める定めなら、一人でも欠けると成立しません。判断に迷うなら集まって開きましょう。
A. 別のものです。総会の書面表決は法律に定めがあり、対象は社員です。理事会は定款で決めるもので、対象は理事です。要件も別に定められています。
A. 頼りすぎないでください。議論の機会が失われ、異論が出にくくなり、決めた経緯も残りません。年に数回は集まって開き、書面は例外として使いましょう。
A. 書面では決議できません。集まって開くか、定款変更を検討します。定款変更には総会の議決が必要で、急ぎのときには間に合いません。平時に備えておきましょう。
A. 助成金の申請の期限、契約の締結、役員の欠員、災害時の対応、行政からの期限つきの照会などです。いずれも次の理事会まで待てません。想定して備えておきましょう。
A. 権限を規程で整理すると減ります。一定額までは担当が決められる形にし、代表理事に委ねる範囲も決めます。決めたことは次の理事会で報告してください。
A. 期限を明記し、返送の方法を郵送・持参・電子など複数用意します。返信の封筒を同封し、期限の数日前に一度声をかけ、届いたら受領を知らせましょう。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
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