NPO法人の活動は、ボランティアの力に支えられています。
ただし、会員でも職員でもない立場なので、位置づけが曖昧になりがちです。
実態が労働に近づくと、法律上の扱いも変わります。
この記事では、ボランティアとの関わり方と、備えておくことを解説します。
ボランティアの位置づけを決める
まず、団体のなかでの立場を明確にしましょう。
会員は、会費を払い議決権を持つ構成員です。
職員は、雇用契約にもとづいて働く人です。
ボランティアは、そのどちらでもありません。
自発的に、無償で活動に参加する人という位置づけです。
この3つを混ぜてしまうと、後で整理がつかなくなります。
ボランティア登録という別の名簿を作るのが実務的です。
登録者には、活動の案内を送る形にします。
関わりが深まった人には、会員への加入を案内できます。
| 立場 | 議決権 | 報酬 | 主な位置づけ |
|---|---|---|---|
| 正会員(社員) | あり | 原則なし | 総会で意思決定に参加する |
| 賛助会員 | なし | なし | 会費で活動を応援する |
| 職員 | なし | 給与 | 雇用契約にもとづいて働く |
| ボランティア | なし | 原則なし(実費弁償は可) | 自発的に活動に参加する |
| 役員(理事・監事) | 社員なら あり | 3分の1以下に制限 | 運営と監査を担う |
労働者と扱われるかどうか
ボランティアと呼んでいても、実態で判断されます。
判断の要素は、指揮命令、時間の拘束、対価性の3つです。
第一に、業務の指示を受けて動いているかどうかです。
断る自由がなく、指示どおりに働く形なら労働に近づきます。
第二に、時間や場所を拘束されているかどうかです。
出勤時間が決まり、遅刻が問題にされる形なら同様です。
第三に、労務の対価としてお金を受け取っているかどうかです。
これらがそろうと、労働者と扱われる可能性が高まります。
労働者と判断されると、最低賃金や労働保険の問題が生じます。
呼び方ではなく、実態を整えることが大切です。
実費弁償と謝礼の違い
交通費などの実費を支払うことは、まったく問題ありません。
実際にかかった費用を、領収書などにもとづいて精算します。
これは報酬ではなく、立て替えた分の返金です。
一方、実費を超える金額を渡すと、性格が変わります。
一律に日額を支給する形も、対価性があると見られやすくなります。
有償ボランティアという言い方をしていても、実態で判断されます。
金額が高くなるほど、労働との境界は曖昧になります。
実費弁償として払うなら、その旨を規程に定めておきましょう。
精算の方法と上限額を決めておくと、運用がぶれません。
ボランティア保険
活動中の事故に、備えておく必要があります。
転倒してけがをする、物を壊してしまうといったことは起こり得ます。
社会福祉協議会が、ボランティア活動保険を扱っています。
年度ごとに加入する形で、保険料も比較的手ごろです。
団体で加入する行事保険もあります。
イベントの参加者を対象にできるものもあるので、内容を確認しましょう。
加入していないと、事故のときに個人が負担を抱えることになります。
団体としての責任が問われる場面も想定されます。
活動を始める前に、必ず検討してください。
加入手続きは、地域の社会福祉協議会に相談すると案内してもらえます。
- ボランティア登録の名簿を作る(会員名簿とは分ける)
- 活動の内容と時間の範囲を明示する
- 実費弁償の対象と上限を規程で定める
- ボランティア活動保険に加入する
- 事故が起きたときの連絡と対応の手順
- 個人情報を扱う場合の守秘義務の確認
- 活動中に知り得た情報の取扱いルール
- 当日の責任者を決めておく
募集のしかた
ボランティアを募るときは、条件を具体的に示しましょう。
活動の内容、日時、場所、必要な人数を書きます。
経験や資格が必要かどうかも、明記します。
交通費が出るかどうかは、応募の判断を左右します。
曖昧にせず、はっきり書いておきましょう。
募集の窓口は、社会福祉協議会やボランティアセンターが使えます。
地域の広報紙に掲載してもらえる場合もあります。
自団体のウェブサイトやSNSでの発信も欠かせません。
一度きりの参加でも歓迎する姿勢を示すと、入口が広がります。
受け入れの当日
当日は、まず責任者が全体を説明します。
活動の目的と、その日にやることを共有します。
注意すべき点や、危険がある作業も先に伝えます。
利用者と接する活動なら、守秘義務についても説明します。
写真を撮ってよいかどうかも、あらかじめ確認しておきましょう。
休憩の時間と場所も、最初に案内します。
終了後は、感想を聞く時間を短くても取ります。
次につながるかどうかは、この最後の数分で決まることがあります。
お礼を伝えることも、忘れないでください。
継続してもらう工夫
一度参加した人に、また来てもらうことが大切です。
活動の結果を、参加者に共有しましょう。
自分が関わったことが、どう役立ったのかが分かると次につながります。
定期的に活動の案内を送る仕組みを作ります。
メールやメッセージアプリでの連絡が、負担が少なくて済みます。
毎回来られなくても構わない、という空気を作ることも重要です。
義務感になると、足が遠のきます。
得意なことを活かせる役割を用意すると、定着しやすくなります。
写真が得意な人、事務が得意な人など、活かし方はいろいろあります。
ボランティアと職員の線引き
活動が広がると、ボランティアだけでは回らなくなります。
その段階で、職員を雇うことを検討します。
判断の目安は、継続的で責任のある業務があるかどうかです。
事務局の管理や、契約の履行に関わる仕事がこれに当たります。
ボランティアに頼り続けると、担い手が疲弊します。
一方、すべてを職員にすると人件費が重くなります。
継続的な業務は職員、単発の作業はボランティアという分け方が現実的です。
この線引きを、団体のなかで共有しておきましょう。
曖昧なまま責任だけが重くなると、ボランティアは離れていきます。
トラブルを防ぐために
第一に、活動の範囲を明確にすることです。
頼む内容が広がりすぎないよう、注意しましょう。
第二に、無理をさせないことです。
体力的にきつい作業は、年齢や体調を確認してから依頼します。
第三に、責任の所在をはっきりさせることです。
当日の責任者を決め、判断に迷ったら聞ける状態にします。
第四に、保険に加入しておくことです。
第五に、個人情報の扱いを説明しておくことです。
利用者の情報を知る立場になるなら、書面で確認を取りましょう。
第六に、記録を残すことです。誰がいつ参加したかを残しておきます。
ボランティアと会員の行き来
ボランティアと会員は、固定された関係ではありません。
何度か参加するうちに、団体への関心が深まる人がいます。
その段階で、会員への加入を案内しましょう。
逆に、会員が活動に参加する形もあります。
この場合は、会員でありボランティアでもあるという状態です。
名簿では、両方に登録されることになります。
重複を管理できる形にしておくと、後で困りません。
表計算ソフトなら、区分の列を分けて管理する方法があります。
会員の会費と、ボランティアの実費弁償も混同しないようにします。
学生や高校生を受け入れるとき
学生や高校生が参加を希望することもあります。
学校の授業やボランティア活動の一環として来る場合もあります。
未成年の場合は、保護者の了解を取っておきましょう。
緊急時の連絡先も、あわせて確認します。
作業の内容は、年齢と体力に見合ったものにします。
危険をともなう作業は、任せないようにしてください。
学校を通じた受け入れなら、学校側との連絡窓口も決めます。
証明書の発行を求められることもあります。
活動時間の記録を残しておくと、対応しやすくなります。
若い世代との接点は、将来の担い手につながる貴重な機会です。
ボランティアコーディネーターを置く
受け入れる人数が増えると、調整の仕事が生まれます。
誰にいつ何を頼むのか、当日の割り振りをどうするのかです。
この役割を担う人を、コーディネーターと呼びます。
専任でなくても、担当を決めておくだけで運営が変わります。
窓口が一本化されると、応募する側も相談しやすくなります。
担当がいないと、代表者にすべての連絡が集中します。
結果として、返信が遅れて応募者を逃すことになります。
登録者の得意分野を把握しておくと、依頼の精度も上がります。
簡単な記録でよいので、参加履歴を残しておきましょう。
次に声をかけるときの判断材料になります。
企業からの受け入れ
近年は、企業が社員のボランティア参加を後押しする例が増えています。
休暇制度を設けている会社もあります。
受け入れる側としては、大きな戦力になります。
一方で、単発の参加が中心になる点は理解しておきましょう。
短時間で成果が見える作業を、あらかじめ用意しておくと満足度が上がります。
清掃、仕分け、イベントの運営補助などが向いています。
企業側から、活動の証明や報告を求められることもあります。
写真の撮影について、事前に相談しておきましょう。
企業とのつながりは、寄付や協賛に発展することもあります。
最初の受け入れを丁寧に行うことが、次につながります。
受け入れ後にお礼と活動報告を送ると、翌年も声がかかりやすくなります。
ボランティアのまとめ
ボランティアは、会員とも職員とも違う立場として整理します。
指揮命令、時間の拘束、対価性がそろうと労働者と扱われる可能性があります。
交通費などの実費弁償は問題ありませんが、一律の日額支給は注意が必要です。
活動中の事故に備え、ボランティア活動保険を検討しましょう。
募集では、内容、日時、場所、交通費の有無を明示します。
継続してもらうには、活動の結果を共有することが効きます。
継続的で責任のある業務は、職員として雇う判断も必要になります。
よくある質問
A. 必ずしも必要ありません。ボランティア登録という別の枠を設ける団体が多く見られます。関わりが深まった人に、会員への加入を案内する形が自然です。
A. 実費であれば問題ありません。実際にかかった費用を精算する形にし、対象と上限を規程で定めておきましょう。実費を超える支給は性格が変わります。
A. 呼び方ではなく実態で判断されます。指揮命令を受け、時間を拘束され、労務の対価を得ている状態なら、労働者と扱われる可能性があります。
A. 加入を強くおすすめします。社会福祉協議会がボランティア活動保険を扱っており、比較的手ごろな保険料で加入できます。
A. 故意や重大な過失がなければ、通常は個人が大きな責任を負うことはありません。ただし団体としての責任が問われる場面はあるため、保険と手順の整備が必要です。
A. 継続的で責任のある業務は職員、単発の作業はボランティアという分け方が現実的です。線引きを団体で共有しておくと、負担の偏りを防げます。
📖 参考にした公的機関の情報


