NPO法人について最も多い誤解が、儲けてはいけないというものです。
実際には、事業で利益を出すことも、職員に給与を払うことも認められています。
禁止されているのは、利益を分配することだけです。
この記事では、お金の扱いについて誤解されやすい点を、ひとつずつ解きほぐします。
非営利という言葉の本当の意味
非営利は、もうけを出さないという意味ではありません。
法律上の営利とは、事業で得た利益を出資者に分配することを指します。
したがって非営利とは、利益を分配しないという意味になります。
株式会社は、利益が出れば株主に配当を出します。
NPO法人には出資も株主もいないため、配当という概念がありません。
利益が出たら、それは団体の財産として残り、翌年度の活動に使われます。
この違いだけが、営利と非営利を分ける本質です。
事業の中身が儲かるかどうかは、まったく別の話だと理解してください。
利益を出しても問題ない
NPO法人が事業で利益を出すことは、まったく問題ありません。
むしろ、活動を継続するためには一定の利益が必要です。
毎年ぎりぎりの収支では、設備の更新も人員の増強もできません。
実際、多くのNPO法人が黒字で運営されています。
所轄庁も、黒字であること自体を問題視することはありません。
注意が必要なのは、その利益の使い道です。
社員や役員に分配すれば、法律違反になります。
内部に留保して、翌年度の活動に使うぶんには何の問題もありません。
将来の事業のために積み立てておくことも認められています。
職員に給料は払える
NPO法人は、職員を雇用して給与を払うことができます。
常勤の事務局長やスタッフを置いている団体は数多くあります。
給与は、労働の対価であって利益の分配ではありません。
したがって、非営利の原則に反しません。
雇用すれば、労働基準法や最低賃金法が当然に適用されます。
労働保険や社会保険の加入手続きも必要になります。
源泉徴収と年末調整の義務も生じます。
株式会社と同じ雇用主としての責任を負うということです。
ボランティアだけで運営しなければならない、という決まりはありません。
役員報酬には人数の制限がある
役員に報酬を払うこともできますが、ここには特有の制限があります。
報酬を受ける役員は、役員総数の3分の1以下でなければなりません。
たとえば役員が4人なら、報酬を受けられるのは1人までです。
役員が6人なら2人まで、9人なら3人までという計算になります。
この制限は、NPO法人の運営が特定の人の利益になることを防ぐための規定です。
ここでいう報酬は、役員としての職務に対する報酬を指します。
理事が職員として実際に働いている場合、その労働に対する給与は別に支払えます。
ただし、実態のない名目だけの給与は問題になります。
勤務実態を記録し、給与規程にもとづいて支給する体制を整えましょう。
| 支払いの種類 | 可否 | 注意点 |
|---|---|---|
| 職員への給与 | ○ | 労働保険・社会保険・源泉徴収が必要 |
| 役員としての報酬 | ○(人数制限あり) | 報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下 |
| 理事が職員として働く分の給与 | ○ | 勤務実態と給与規程が必要 |
| ボランティアへの交通費実費 | ○ | 実費を超えると謝金とみなされる |
| 社員・役員への剰余金の分配 | × | 法律違反となる |
| 解散時の残余財産の個人への帰属 | × | 定款で定めた法定の範囲へ帰属 |
会費と寄付の扱い
会費は、社員としての地位にもとづいて納めるお金です。
通常の会費には対価性がないため、税務上も収益事業には当たりません。
寄付は、見返りを求めない拠出です。
どちらも、団体の活動費として自由に使えます。
ただし、認定NPO法人を目指すなら、会費と寄付は明確に区別して管理する必要があります。
パブリック・サポート・テストで、通常の会費は原則として寄付に含められないためです。
会員に特典を用意すると、会費に対価性が生じて扱いが変わることがあります。
会費の設計は、将来の認定を見据えて考えておくと安心です。
儲かる事業をやってもいいのか
収益性の高い事業を行うこと自体は禁止されていません。
ただし、あくまで特定非営利活動が主たる目的でなければなりません。
収益的な事業は、その他の事業として定款に定めて行います。
その他の事業で得た利益は、特定非営利活動に係る事業へ繰り入れます。
会計も、両者を区分して経理する必要があります。
その他の事業のほうが規模で上回る状態は、原則として認められません。
本来の活動を支えるための事業という位置づけを崩さないことが大切です。
収益事業に当たる場合は、法人税の申告も必要になります。
税務署への収益事業開始届出書の提出も忘れないでください。
お金の使い方で問題になるケース
第一に、剰余金を役員に分配してしまうケースです。
これは明確な法律違反で、認証の取消しにつながります。
第二に、勤務実態のない役員に給与を払うケースです。
実質的な利益分配とみなされる可能性があります。
第三に、役員報酬の3分の1ルールを超えてしまうケースです。
役員が減ったときに、気づかず超過していることがあります。
第四に、特定の個人や企業に有利な取引を行うケースです。
役員の関係会社との取引は、価格の妥当性を説明できるようにしておきましょう。
第五に、区分経理をせずに収益事業の所得を計算しているケースです。
いずれも、記録と規程を整えておけば防げる問題です。
ボランティアと有償スタッフの線引き
活動を支えてくれるボランティアに、交通費の実費を渡すことは問題ありません。
実費の範囲であれば、給与にも謝金にも当たらないと整理できます。
ただし、実費を明らかに超える金額を渡すと、謝金とみなされることがあります。
謝金であれば、源泉徴収の対象になります。
一律に日額を支給する形も、実質的に報酬と判断されやすくなります。
有償ボランティアという言い方をしていても、実態が労働なら労働者と扱われます。
指揮命令を受け、時間や場所を拘束されているなら、雇用に近い関係です。
その場合は最低賃金や労働保険の適用が問題になります。
関わってもらう形を、最初にきちんと決めておくことがトラブルの予防になります。
ボランティア、有償スタッフ、職員の三層で整理すると運用しやすくなります。
報酬や給与の決め方
給与や報酬は、規程にもとづいて決めるのが基本です。
役員報酬規程と給与規程を作り、総会や理事会で承認を受けます。
認定NPO法人を目指す場合、役員報酬規程は申請の添付書類にもなります。
金額の水準は、同種同規模の団体や地域の相場を参考にします。
極端に高額な報酬は、不適切な運営と判断されることがあります。
情報公開の対象になるため、説明できる根拠を持っておくことが大切です。
役員名簿には、報酬を受けているかどうかを記載します。
毎年の事業報告書等で公開されることも意識しておきましょう。
情報公開されることを前提に設計する
NPO法人の事業報告書等は、所轄庁を通じて誰でも見られる状態になります。
役員名簿には、報酬を受けているかどうかも記載されます。
つまり、お金の使い方は外から見られることが前提の制度です。
この点を負担と捉えるか、信頼の材料と捉えるかで運営の姿勢が変わります。
説明できる根拠を持って支出していれば、公開は強みになります。
寄付者や助成元も、公開情報を見て判断することが少なくありません。
規程を整え、議事録を残し、支出の意思決定を記録に残しておきましょう。
事務作業は増えますが、団体を守る仕組みでもあります。
無理にボランティアにしない
設立当初は、全員が無償で活動する団体も多くあります。
しかし、無償のままでは活動を長く続けられません。
担い手が疲弊し、事業を縮小せざるを得なくなる例は少なくありません。
必要な人件費を事業計画に組み込むことは、健全な運営の第一歩です。
助成金の多くも、人件費を対象経費として認めています。
委託事業の見積りにも、適正な人件費を計上してかまいません。
安く引き受けることが公益ではない、という視点を持ちましょう。
持続可能な体制を作ることが、結果として社会への貢献につながります。
助成金や委託費で人件費は出せるか
多くの助成金は、人件費を対象経費として認めています。
事業に直接従事する時間分を、根拠を示して計上します。
従事時間の記録を残しておくと、実績報告のときに困りません。
行政からの委託事業でも、積算に人件費が含まれているのが通常です。
安く見積もりすぎると、団体の体力を削るだけになります。
適正な人件費を計上することは、けっして後ろめたいことではありません。
一方で、助成金は単年度で終わることが多い点に注意が必要です。
助成金だけに依存すると、翌年度に雇用を維持できなくなる恐れがあります。
会費、寄付、事業収入を組み合わせて、複数の財源を持つことが安定につながります。
内部留保はどこまで持ってよいか
NPO法人が剰余金を内部に留保することは、法律上まったく問題ありません。
将来の設備投資や、収入が落ち込んだときの備えとして必要です。
目安として、数か月分の運営費を持っておくと安心です。
ただし、活動をせずに資金だけを積み上げる状態は望ましくありません。
事業報告書等は公開されるため、留保の理由を説明できるようにしておきましょう。
特定の目的のために積み立てるなら、特定資産として区分して表示します。
目的を明示しておけば、外部から見ても納得感のある財務になります。
認定NPO法人を目指す場合も、財務の説明力は重要な要素になります。
お金まわりのまとめ
NPO法人は、利益を出しても、職員に給与を払っても問題ありません。
禁止されているのは、利益を社員や役員に分配することだけです。
役員報酬については、報酬を受ける役員が役員総数の3分の1以下という制限があります。
理事が職員として働く分の給与は、この制限とは別に支払えます。
収益性の高い事業は、その他の事業として定款に定め、区分経理を行います。
規程を整え、記録を残し、情報公開に耐える形にしておくことが大切です。
無理な無償運営ではなく、続けられる体制を作りましょう。
よくある質問
A. 誤解です。事業で利益を出すことは問題ありません。禁止されているのは、利益を社員や役員に配当として分配することです。利益は次年度の活動費として団体に残します。
A. もらえます。職員として雇用されれば、労働の対価として給与が支払われます。労働基準法が適用され、社会保険や源泉徴収の対象にもなります。
A. もらえますが、報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下という制限があります。役員4人なら1人までです。理事が職員として働く分の給与は、この制限とは別に支払えます。
A. なりません。むしろ活動を継続するには一定の利益が必要です。剰余金を分配せず、翌年度の活動費や将来の事業のために内部に留保するぶんには問題ありません。
A. 行えます。ただし特定非営利活動が主たる目的である必要があり、収益的な事業はその他の事業として定款に定め、会計を区分して経理します。利益は本来の活動へ繰り入れます。
A. 残余財産を個人が受け取ることはできません。定款で定めた他のNPO法人や国、地方公共団体など、法律で認められた範囲へ帰属します。
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