NPO法人でいう社員とは、総会で議決権を持つ正会員のことです。
従業員のことではありません。ここを取り違えると、運営の設計を誤ります。
正会員のほかに、賛助会員などの区分を置く団体が多く見られます。
この記事では、会員の種類と入退会のルールを解説します。
社員とは従業員のことではない
NPO法人の文脈で社員というと、多くの人が従業員を思い浮かべます。
しかし法律上の社員は、総会で議決権を持つ構成員のことです。
一般には正会員と呼ばれる人たちが、これに当たります。
株式会社でいえば、株主に近い位置づけです。
雇われて働く人は、法律上は職員や従業員と呼びます。
この違いを理解していないと、定款の設計を誤ります。
社員が10人以上必要という要件も、正会員の話です。
職員が10人いても、要件を満たしたことにはなりません。
設立の準備では、まずこの点をメンバー全員で共有しましょう。
会員の種類は定款で決める
会員の区分は、法律で決まっているわけではありません。
定款で自由に設けることができます。
最も一般的なのが、正会員と賛助会員の2区分です。
正会員は議決権を持ち、総会で意思決定に参加します。
賛助会員は、活動を応援する立場で議決権を持ちません。
これに加えて、学生会員や団体会員を置く団体もあります。
会費の額を区分ごとに変えるのも一般的です。
ただし、議決権を持つのは正会員だけという整理は明確にしておきます。
曖昧にすると、総会の定足数の数え方で混乱します。
| 会員の種類 | 議決権 | 会費の目安 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 正会員(社員) | あり | 年3000〜10000円程度 | 総会で意思決定に参加する |
| 賛助会員 | なし | 正会員と同額かやや低め | 活動を資金面で応援する |
| 団体会員 | 定款で定める | 個人より高めが一般的 | 企業や他団体が加入する |
| 学生会員 | なし〜あり | 低めに設定 | 若い世代の参加を促す |
| 名誉会員 | なし | 免除が多い | 功労者への敬意を示す |
社員の資格に不当な条件を付けない
社員の資格については、法律に重要な制限があります。
不当な条件を付けてはならないという要件です。
特定の思想や信条を持つ人だけを社員にする定めは認められません。
入会に理事会の全員一致を要するような規定も、制限とみなされることがあります。
極端に高い入会金や年会費も、実質的に加入を妨げる要因と判断され得ます。
一方で、活動の趣旨に賛同することを要件にするのは通常問題ありません。
入会を承認制にすること自体も、合理的な範囲であれば認められます。
この条項は、認証申請の審査でよく見られる部分です。
事前相談で確認してもらうことを、強くおすすめします。
入会の手続き
入会の手続きは、定款と会員規程で定めます。
一般的な流れは、入会申込書の提出から始まります。
理事会または理事長が承認し、会費の納入をもって入会となります。
申込書には、氏名、住所、連絡先を記載してもらいます。
個人情報を扱うため、利用目的を明示しておきましょう。
団体会員の場合は、代表者と連絡担当者を分けて記載してもらうと実務が楽です。
入会を承認しない場合の扱いも、定めておくと安心です。
理由を示さずに拒否できる形にすると、不当な制限と見られる恐れがあります。
承認の基準は、できるだけ客観的にしておきましょう。
退会と会員資格の喪失
退会は、届出によっていつでもできるようにするのが通例です。
退会届の様式を用意しておくと、手続きが明確になります。
納入済みの会費を返還しない旨も、定款や規程に書いておきます。
会費を長期間滞納した場合の扱いも決めておきましょう。
一定期間の滞納で退会したものとみなす、という定め方が一般的です。
死亡や、団体会員の解散も、資格喪失の事由になります。
除名については、より慎重な手続きを定めます。
総会の決議を要件とし、本人に弁明の機会を与える形が望ましいでしょう。
除名は争いになりやすいので、手順を明文化しておくことが自分たちを守ります。
- 会員の種類と、それぞれの権利
- 入会の手続きと承認の基準
- 会費の額と納入の時期(定款ではなく規程に置くと変更が楽)
- 退会の手続き
- 会費滞納が続いた場合の取扱い
- 除名の事由と手続き(弁明の機会を含む)
- 会員名簿の管理方法と、個人情報の取扱い
- 会員への連絡方法(郵送・メールなど)
社員10人を維持する
社員が10人以上必要というのは、設立時だけの話ではありません。
設立後も、継続して維持する必要があります。
社員が1人もいなくなると、社員の欠亡として解散事由に該当します。
10人を下回った状態が続くことも、望ましくありません。
所轄庁への毎年の報告でも、社員名簿を提出します。
その機会に、人数を確認する習慣をつけましょう。
退会が続いたときは、早めに新しい社員を迎える動きが必要です。
賛助会員から正会員へ移ってもらう、という手もあります。
常に余裕を持った人数にしておくのが、安定した運営につながります。
会員名簿の管理
会員名簿は、運営の基盤となる情報です。
氏名、住所、連絡先、入会日、会費の納入状況を記録します。
正会員と賛助会員は、必ず分けて管理しましょう。
総会の招集や定足数の計算に、直接影響するためです。
所轄庁へ提出する社員名簿は、10人以上を記載する形式です。
毎年の提出に備えて、更新しやすい形にしておきます。
表計算ソフトで管理する団体が多く見られます。
個人情報を含むため、アクセスできる人を限定しましょう。
共有ドライブに置く場合も、権限の設定を確認してください。
会費の集め方
会費の集金は、意外と手間のかかる作業です。
銀行振込を基本とし、口座番号を案内する形が一般的です。
振込手数料を会員に負担してもらうか、こちらで持つかも決めておきます。
口座振替を導入すると、滞納が大きく減ります。
導入には手数料と手続きが必要なので、規模を見て判断しましょう。
オンライン決済を使えば、遠方の会員も入りやすくなります。
入金の確認は、月に1回など時期を決めて行うと漏れません。
未納の会員には、督促の前にまず案内を送ります。
事務的な文面ではなく、活動報告を添えると印象が変わります。
会員を増やす工夫
会員は、資金源であると同時に活動の担い手でもあります。
イベントの参加者に、その場で入会を案内するのが最も効果的です。
関心が高まっている瞬間を逃さないことが大切です。
入会申込書を、いつでも渡せるように持ち歩きましょう。
ウェブサイトに入会案内のページを置くことも欠かせません。
会費で何ができるのかを、具体的に書くと伝わります。
会報や活動報告を定期的に送ると、継続率が上がります。
総会を活動報告会と兼ねると、参加する意味が生まれます。
会員でいることの意味を、こちらから示し続けることが必要です。
会員でよくあるトラブル
第一に、社員と職員を取り違えているケースです。
定款の設計から見直しが必要になります。
第二に、賛助会員に議決権があるのか曖昧なケースです。
総会の定足数を数えるときに、必ず問題になります。
第三に、会費の額を定款に書いてしまったケースです。
変更のたびに定款変更の手続きが必要になります。
第四に、会員名簿が更新されていないケースです。
招集通知が届かず、総会が成立しないことがあります。
第五に、除名の手続きを定めていないケースです。
いざというときに、対応できず紛争が長引きます。
会員と支援者の違いを設計する
会員は、継続的に関わってくれる支援者です。
一度きりの寄付者とは、関係の深さが違います。
この違いを意識して、届ける情報を変えると効果が上がります。
会員には、会報や総会の案内など、内側の情報を届けます。
寄付者には、寄付がどう使われたかの報告を送ります。
イベントの参加者には、次の機会の案内が響きます。
すべてを同じ扱いにすると、どの層にも刺さらなくなります。
名簿の管理を分けておくと、この使い分けがしやすくなります。
まずは会員と寄付者を分けるところから始めましょう。
ボランティアは会員にすべきか
活動を手伝ってくれるボランティアを、会員にするかは悩みどころです。
会員にすると、総会の案内など事務が増えます。
一方で、当事者意識が高まり、定着しやすくなる面もあります。
会費の負担を求めることになる点も、考慮が必要です。
実務では、ボランティア登録という別の枠を設ける団体が多くあります。
登録者名簿を作り、活動のたびに声をかける形です。
関わりが深まった人に、会員への加入を案内します。
段階を用意しておくと、参加のハードルが下がります。
いきなり会員を求めると、断られてしまうことがあります。
会員規程を作っておく
会員に関する細かいルールは、定款とは別の規程に置きます。
定款に書き込むと、変更のたびに社員総会の決議が必要になるためです。
規程なら、理事会の決議で見直せる形にしておけます。
会費の額、納入の時期、区分ごとの権利をまとめます。
入会申込書と退会届の様式も、あわせて用意しましょう。
会員名簿の管理方法と、個人情報の取扱いも書いておきます。
規程があると、担当者が変わっても運用がぶれません。
会員から質問を受けたときも、根拠を示して答えられます。
設立の準備と同時に、たたき台だけでも作っておくと後が楽です。
入会案内の作り方
入会を増やすには、案内の分かりやすさが効きます。
何のための団体なのかを、最初の数行で伝えます。
会費がいくらで、何に使われるのかを具体的に書きます。
会員になると何ができるのかも、はっきり示しましょう。
総会に出られる、会報が届く、イベントに優先参加できるなどです。
申込みの方法は、できるだけ簡単にします。
紙の申込書と、オンラインのフォームの両方を用意すると幅が広がります。
記入する項目は、必要最小限に絞りましょう。
項目が多いほど、途中で離脱されやすくなります。
会員のまとめ
NPO法人の社員とは、総会で議決権を持つ正会員のことです。
従業員のことではありません。
設立にも運営にも、社員10人以上が必要です。
賛助会員などの区分は、定款で自由に設けられます。
社員の資格に不当な条件を付けることはできません。
会費の額は、定款ではなく規程に定めると変更が楽になります。
名簿は正会員と賛助会員を分けて管理し、毎年更新しましょう。
よくある質問
A. 社員は総会で議決権を持つ正会員のことで、法律上の構成員です。職員は雇われて働く人を指します。設立要件の10人以上は、社員(正会員)の人数です。
A. 通常はありません。定款で議決権を持たない区分として定めるのが一般的です。曖昧にすると総会の定足数の計算で混乱するため、明確に書いておきましょう。
A. 承認制にすること自体は、合理的な範囲であれば認められます。ただし社員の資格に不当な条件を付けることはできないため、承認の基準は客観的にしておきましょう。
A. 規程に定めることをおすすめします。定款に書くと、額を変えるたびに社員総会での定款変更が必要になります。
A. 社員が1人もいなくなると解散事由に該当します。下回った状態が続くのは望ましくないため、早めに新しい社員を迎えるか、賛助会員から移ってもらう対応が必要です。
A. 一定期間の滞納で退会したものとみなす、という定めを置くのが一般的です。督促の前に、まず活動報告を添えた案内を送るとよいでしょう。
📖 参考にした公的機関の情報


