NPO法人の運営は、担う人がいて初めて回ります。
しかし、人材の確保と定着は、いちばん難しい課題です。
資金より、人で止まる団体のほうが多いといえます。
この記事では、人の集め方と続けてもらう工夫を解説します。
担い手には段階がある
団体を担う人には、いくつかの層があります。
第一が、役員です。
理事と監事が、これにあたります。
第二が、有給の職員です。
常勤の人も、短時間の人もいます。
第三が、有償のボランティアです。
交通費や謝金を受け取って、活動します。
第四が、無償のボランティアです。
それぞれ、期待できる関わりの深さが違います。
同じ扱いをすると、必ず無理が生じます。
| 層 | 関わりの深さ | 主な課題 |
|---|---|---|
| 役員 | 責任を負う | なり手が見つからない |
| 有給の職員 | 継続的・日常的 | 人件費が確保できない |
| 有償ボランティア | 限定的だが安定 | 役割の線引き |
| 無償ボランティア | 不定期 | 定着しにくい |
| 専門家の協力 | 特定の場面のみ | 依頼の窓口がない |
役割と範囲を決める
人が続かない最大の原因が、ここにあります。
何をやる人なのかが、決まっていないのです。
入ってみたら、際限なく仕事が広がります。
断りにくい空気があれば、なおさらです。
そして、疲れて離れていきます。
まず、役割を書き出しましょう。
やること、やらないことの両方を書きます。
時間の目安も、示します。
週に何時間くらいか、月に何回かです。
曖昧さを減らすことが、いちばんの定着策です。
募集の書き方
人を募るときは、正確に書きます。
第一に、何をする役割かを具体的に書きます。
手伝ってくださいでは、伝わりません。
第二に、必要な時間と頻度を書きます。
第三に、期間を書きます。
一度きりなのか、継続なのかです。
第四に、無償か有償かをはっきりさせます。
第五に、必要な経験や資格があれば書きます。
第六に、応募の方法と問い合わせ先を書きます。
曖昧な募集には、曖昧な人しか集まりません。
- 具体的な仕事の内容
- やらないことの範囲
- 必要な時間と頻度
- 期間(単発か継続か)
- 無償か有償か(額も)
- 交通費の扱い
- 必要な経験や資格
- 応募の方法と問い合わせ先
- 指示を出す人と相談先
- 活動する場所
職員を雇うということ
職員を雇うと、団体の性格が変わります。
毎月の人件費が、固定費になるためです。
収入が途切れても、支払いは続きます。
雇う前に、その財源が続くかを考えましょう。
委託事業の期間だけ雇う形も、あります。
その場合、期間の定めをはっきりさせます。
労働条件は、書面で示す必要があります。
労働時間、賃金、休日などが対象です。
雇用や社会保険の手続きは、社会保険労務士の業務範囲です。
判断に迷う点は、相談してください。
ボランティアと職員の線引き
実務でいちばん危ういのが、この線引きです。
ボランティアに、職員と同じ仕事を頼む場合があります。
時間も拘束し、指示にも従ってもらう形です。
これは、実質的に労働と評価される恐れがあります。
無償だから問題ない、とはなりません。
謝金を払っている場合は、なおさら注意が要ります。
線引きの基準を、あらかじめ決めておきましょう。
判断に迷う場合は、専門家に相談してください。
曖昧なまま続けるのが、いちばん危険です。
事務局長という役割
規模が大きくなると、事務局長を置く団体があります。
日常の実務を、統括する役割です。
理事長との役割分担を、明確にしましょう。
理事長が対外的な代表、事務局長が内部の統括という形です。
決裁の範囲も、規程で決めます。
ここが曖昧だと、指揮の系統が二重になります。
職員が、誰の指示に従えばよいか分からなくなります。
事務局長は、理事を兼ねることもできます。
ただし、報酬を受ける役員の割合には注意が要ります。
引き継げる形にする
人が代わることを、前提にしましょう。
第一に、手順を文書にします。
完璧なマニュアルでなくてかまいません。
1枚の手順書でも、あるとないとでは大違いです。
第二に、ファイルの置き場所を決めます。
個人の端末にしか無い状態を、なくします。
第三に、年間の予定表を共有します。
第四に、パスワードや鍵の管理を記録します。
第五に、関係先の一覧を作ります。
属人化を防ぐことが、団体を長持ちさせます。
無理をさせない
善意に頼りすぎる団体は、必ず行き詰まります。
一人が抱え込む状態を、放置しないでください。
本人は、頼まれれば断りにくいものです。
周りが気づいて、分担を提案する必要があります。
理事会で、業務量を確認する機会を作りましょう。
担当が休んだときに回るかも、点検します。
回らないなら、その時点で危ういということです。
無理を続けた人は、ある日いなくなります。
引き継ぎもないまま、抜けることになります。
専門家との関わり方
すべてを内部で抱える必要は、ありません。
専門的な部分は、外に頼る選択があります。
会計、労務、登記などが、その例です。
費用はかかりますが、事故を防げます。
毎月ではなく、必要なときだけ頼む形もあります。
地域の中間支援組織が、相談に乗ってくれることもあります。
無料の相談窓口を、設けている自治体もあります。
まず、どこに相談できるかを調べておきましょう。
困ってから探すのでは、間に合いません。
報酬をどう考えるか
無償を前提にすると、続けられる人が限られます。
時間に余裕のある人しか、関われなくなるためです。
結果として、担い手の層が狭まります。
少額でも、報酬を出せる形を目指しましょう。
交通費の実費だけでも、負担感は変わります。
謝金の基準を、規程で決めておきます。
人によって額が違うと、必ず不満が出ます。
役員の報酬には、割合の制限があります。
報酬を受ける役員は、3分の1以下です。
職員としての給与は、これとは別に扱われます。
人が辞めるとき
辞める人が出るのは、避けられません。
大切なのは、辞め方です。
第一に、引き継ぎの期間を確保します。
第二に、手順と資料を渡してもらいます。
第三に、関係先への挨拶を済ませます。
第四に、鍵やパスワードを回収します。
第五に、アクセス権を消します。
第六に、辞める理由を聞いて記録します。
同じ原因で、次の人も辞めていくためです。
円満に送り出せば、支援者として残ることもあります。
最初の一人をどう迎えるか
職員を初めて雇う場面は、団体の転換点です。
第一に、その人に何を任せるかを決めます。
事務なのか、事業の現場なのかで、求める人が変わります。
第二に、指示を出す人を決めます。
理事全員が別々に頼むと、混乱します。
第三に、働く場所と時間を決めます。
第四に、備品と経費の扱いを決めます。
自宅の通信費を、どう扱うかといった点です。
第五に、困ったときの相談先を示します。
一人職場は、孤立しやすいためです。
世代をつなぐ
設立した世代だけで、団体は続きません。
10年たてば、担い手も年を重ねます。
次の世代を、意識して迎えましょう。
第一に、若い人が入りやすい役割を作ります。
第二に、意思決定の場に加わってもらいます。
見ているだけの立場では、続きません。
第三に、やり方を任せる部分を作ります。
第四に、失敗しても責めない空気を保ちます。
第五に、設立の経緯を記録に残して伝えます。
なぜこの活動があるのかを、次の人が理解できる形にします。
会議のやり方を見直す
人が離れる原因に、会議の非効率があります。
長い、決まらない、結論が実行されない。
この三つが重なると、出る意味が失われます。
第一に、開始と終了の時刻を守ります。
第二に、議題と資料を事前に配ります。
第三に、決めることと報告することを分けます。
第四に、決めたら担当と期限を書きます。
第五に、次の会議で進み具合を確認します。
会議が変わると、関わる人の負担感が変わります。
時間を大切に扱う団体には、人が残ります。
外から人を呼ぶ方法
身内だけで探すと、いずれ尽きます。
外に向けた募集も、試してみましょう。
第一に、地域のボランティアセンターに登録します。
第二に、大学や専門学校に相談します。
実習や研究の受け入れが、きっかけになります。
第三に、企業の社会貢献の窓口に声をかけます。
第四に、地域の掲示板や広報紙を使います。
第五に、ウェブサイトに募集のページを常設します。
募集していることが分からなければ、応募は来ません。
常に開いている入口を、作っておきましょう。
感謝を仕組みにする
人が残る団体には、共通点があります。
感謝が、きちんと伝わっていることです。
当たり前と思われていると感じたら、人は離れます。
第一に、活動のたびに口頭で伝えます。
第二に、会報や報告書で名前を出します。
出してよいかは、本人に確認します。
第三に、年に一度の集まりで労をねぎらいます。
第四に、辞めるときにも礼を尽くします。
報酬が出せない団体ほど、この部分が効きます。
仕組みにしておけば、忘れることがありません。
事務局の人材のまとめ
担い手には、役員・職員・有償/無償ボランティアの層があります。
同じ扱いをすると、必ず無理が生じます。
人が続かない最大の原因は、役割と範囲の曖昧さです。
やること、やらないこと、時間の目安を書き出しましょう。
募集の案内も、具体的に書いてください。
ボランティアと職員の線引きは、あらかじめ基準を決めます。
人が代わることを前提に、手順と情報を引き継げる形にします。
雇用や社会保険の手続きは、社会保険労務士の業務範囲です。
初めて職員を雇うときは、指示を出す人を一人に決めてください。
理事全員が別々に頼むと、現場が混乱します。
身内だけで探すと尽きるため、常設の募集ページを作りましょう。
会議が長く決まらない団体からは、人が離れていきます。
設立の経緯を記録に残すことが、世代をつなぐ土台になります。
よくある質問
A. 役割と範囲が決まっていないためです。何をどこまでやる人なのかが曖昧だと、際限なく仕事が広がり、疲れて離れていきます。やらないことも書き出してください。
A. 具体的な仕事の内容、必要な時間と頻度、期間、無償か有償か、交通費の扱い、応募の方法です。曖昧な募集には、曖昧な人しか集まりません。
A. 注意が必要です。時間を拘束し指示にも従ってもらう形は、実質的に労働と評価される恐れがあります。無償だから問題ないとはなりません。
A. 人件費が固定費になる点です。収入が途切れても支払いは続きます。財源が続くかを確認し、委託事業の期間だけなら期間の定めをはっきりさせてください。
A. 周りが気づいて分担を提案してください。本人は頼まれれば断りにくいものです。担当が休んだときに回るかを点検し、回らないなら、その時点で危うい状態です。
A. 無償を前提にすると、時間に余裕のある人しか関われず担い手の層が狭まります。少額でも出せる形を目指し、謝金の基準を規程で決めておきましょう。
本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。
- 社会保険・労働保険の加入手続きは、社会保険労務士が取り扱う業務です。
📖 参考にした公的機関の情報


