NPO法人と株式会社の違い|目的・費用・税金・意思決定を一覧比較

一般社団法人法
NPO法人と株式会社は何が違うのか。目的、お金、意思決定の3つの軸で整理します。

NPO法人と株式会社の最大の違いは、利益を分配できるかどうかです。

どちらも事業を行い、収益を上げ、人を雇うことができます。

違うのは、そこで得た利益を誰のものにするかという設計です。

この記事では、設立、お金、税金、意思決定の順に、両者の違いを整理します。

POINT 結論:株式会社は利益を株主に分配する仕組み、NPO法人は利益を活動に還元する仕組みです。株式会社は登記だけで最短数日、NPO法人は認証に約3か月かかります。一方で法定費用は株式会社が約20万円以上、NPO法人はほぼ0円です。

目的の違いがすべての出発点

株式会社は、営利を目的とする法人です。

ここでいう営利とは、事業で得た利益を出資者である株主に分配することを指します。

NPO法人は、非営利の法人です。

利益を出してはいけないという意味ではなく、分配してはいけないという意味です。

NPO法人が得た剰余金は、次年度の活動費として団体に残ります。

この違いから、資金の集め方も、意思決定のしかたも変わってきます。

株式会社では、出資した株主が会社の所有者として意思決定に関わります。

NPO法人には出資という概念がなく、社員が1人1票で意思決定します。

つまり、お金を出した人が強い組織か、参加する人が対等な組織かという違いです。

設立手続きと期間の違い

株式会社は、定款を作り公証人の認証を受け、法務局へ登記すれば設立できます。

準備が整っていれば、1週間から2週間程度で成立します。

NPO法人は、所轄庁の認証が必要です。

申請後に1か月の縦覧期間があり、審査は受理から2か月以内とされています。

つまり、認証まで標準で約3か月かかります。

認証を受けてから2週間以内に登記をして、ようやく成立します。

準備期間を含めると、半年程度をみておくのが現実的です。

スピードを重視するなら、株式会社が圧倒的に有利です。

設立費用の違い

株式会社の法定費用は、20万円以上かかるのが一般的です。

内訳は、定款認証の手数料と、登録免許税の最低15万円です。

紙の定款で作成すると、収入印紙4万円が加わります。

NPO法人は、定款認証が不要で、登録免許税も非課税です。

そのため、法定費用はほぼ0円で設立できます。

実費は、証明書の取得費や印鑑の作成費など1万円前後です。

費用だけを比べれば、NPO法人の負担は圧倒的に軽くなります。

ただし、その分だけ設立に時間と人手がかかる構造です。

比較項目 NPO法人 株式会社
目的 非営利(利益を分配しない) 営利(利益を株主に分配)
設立の方法 所轄庁の認証+登記 登記のみ
設立までの期間 約3〜4か月 1〜2週間程度
法定費用 ほぼ0円 約20〜24万円
資本金 制度なし 1円から
必要な人数 社員10人以上・理事3人以上・監事1人以上 発起人1人・取締役1人から
事業内容 法定の20分野が主目的 適法なら自由
法人税 収益事業の所得のみ課税 すべての所得に課税
毎年の報告 所轄庁へ事業報告書等を提出 所轄庁への提出は不要
情報公開 義務あり 決算公告の義務あり

人数の要件が大きく違う

株式会社は、発起人1人、取締役1人でも設立できます。

実際、ひとり社長の会社は珍しくありません。

NPO法人は、社員10人以上が必要です。

さらに、理事3人以上と監事1人以上を置かなければなりません。

理事と監事は兼任できないため、役員だけで最低4人が必要です。

つまり、ひとりでNPO法人を作ることはできません。

この人数要件が、実務上いちばんの障壁になります。

仲間を集められないなら、株式会社か一般社団法人を検討することになります。

お金の集め方の違い

株式会社は、株式を発行して出資を受けられます。

投資家から大きな資金を調達できるのが強みです。

金融機関からの借入れも、事業計画次第で受けやすくなります。

NPO法人には、出資という仕組みがありません。

資金源は、会費、寄付、事業収入、補助金や助成金です。

認定NPO法人になれば、寄付者が税制優遇を受けられるため寄付を集めやすくなります。

行政からの委託事業を受託しやすいのも、NPO法人の特徴です。

融資については、日本政策金融公庫などNPO向けの制度を利用できます。

資金の性質が違うため、事業モデルの作り方も変わってきます。

税金の違い

株式会社は、すべての所得に法人税がかかります。

NPO法人は、法律で定められた34業種の収益事業から生じた所得にだけ課税されます。

会費、寄付、補助金だけで運営していれば、法人税は非課税です。

法人住民税の均等割は、どちらも原則としてかかります。

ただしNPO法人は、収益事業がなければ申請により減免される自治体が多くあります。

株式会社には、こうした減免制度はありません。

税務の面では、NPO法人のほうが有利になる場面が多いと言えます。

その代わり、収益事業と非収益事業を区分して経理する手間が発生します。

意思決定のしかたの違い

株式会社の最高意思決定機関は、株主総会です。

議決権は、原則として持ち株数に応じて割り当てられます。

多くの株を持つ人ほど、強い影響力を持つ仕組みです。

NPO法人の最高意思決定機関は、社員総会です。

議決権は、原則として社員1人につき1票です。

寄付を多くした人が強くなる、ということはありません。

この対等性が、NPO法人の民主的な運営を支えています。

一方で、意思決定に時間がかかりやすいという面もあります。

スピード経営を重視するなら、株式会社のほうが向いています。

情報公開と事務負担の違い

NPO法人は、毎事業年度の開始から3か月以内に事業報告書等を所轄庁へ提出します。

提出した書類は、所轄庁を通じて誰でも閲覧できる状態になります。

事務所にも、これらの書類を備え置く義務があります。

株式会社にも決算公告の義務がありますが、実際には行っていない会社も多く見られます。

NPO法人の報告は所轄庁への提出義務なので、怠ると改善命令の対象になります。

透明性が高い反面、事務負担は明らかにNPO法人のほうが重くなります。

担当者を決めて、毎年のルーティンとして回す体制が欠かせません。

この負担を許容できるかどうかが、選択の分かれ目のひとつです。

社会的な信用の違い

取引先や金融機関から見ると、株式会社は事業体として理解されやすい形です。

一般の企業と対等に取引しやすいという利点があります。

NPO法人は、公益的な活動を行う団体として認識されます。

行政や地域との連携、寄付やボランティアの募集では、この認識が強みになります。

ただし、事業規模が小さいと見られることもあります。

営利企業との取引が中心なら株式会社、行政や市民との連携が中心ならNPO法人です。

どちらが信用されるかではなく、誰から信用されたいかで考えるとよいでしょう。

どちらを選ぶかの判断軸

利益を自分や出資者の取り分にしたいなら、株式会社しかありません。

NPO法人では、剰余金を分配することが法律で禁じられています。

事業のスピードを優先するなら、株式会社です。

仲間が10人集まらないなら、そもそもNPO法人は選べません。

寄付や助成金、行政の委託を主な財源にするなら、NPO法人が有利です。

活動が20分野に当てはまらないなら、株式会社か一般社団法人になります。

費用を抑えつつ非営利で活動したいなら、NPO法人が最も適しています。

両者の中間として、一般社団法人という選択肢もあります。

一般社団法人は、非営利でありながら登記だけで早く設立できる形です。

選び方の目安

  • 利益を分配したい → 株式会社
  • とにかく早く始めたい → 株式会社または一般社団法人
  • ひとりで始めたい → 株式会社または一般社団法人
  • 費用をかけずに非営利で活動したい → NPO法人
  • 寄付や助成金を主な財源にしたい → NPO法人(将来は認定を目指す)
  • 行政からの委託を受けたい → NPO法人
  • 活動分野が20分野に入らない → 株式会社または一般社団法人

後から変更できるのか

株式会社をNPO法人に変更することはできません。

逆に、NPO法人を株式会社に組織変更することもできません。

法人格の種類を変えるには、新しい法人を設立し、古い法人を解散する必要があります。

解散と清算には時間も費用もかかります。

許認可を持っている場合は、取り直しが必要になることもあります。

したがって、最初にどちらを選ぶかは慎重に判断すべきです。

実際には、事業部分を株式会社、公益的な部分をNPO法人として、両方を持つ団体もあります。

役割を分けることで、それぞれの利点を活かす方法です。

ただし、両方の事務負担を抱えることになる点は理解しておきましょう。

従業員の雇用と労務の違い

雇用に関するルールは、NPO法人でも株式会社でも変わりません。

人を雇えば、労働基準法も最低賃金法も同じように適用されます。

労働保険への加入は、従業員を1人でも雇えば必要になります。

社会保険についても、法人であれば原則として強制適用です。

NPO法人だから社会保険に入らなくてよい、ということはありません。

就業規則の作成義務も、常時10人以上を使用すれば同じように発生します。

違いが出るのは、人件費の財源です。

株式会社は売上から支払いますが、NPO法人は助成金や委託費を充てることも多くあります。

財源によっては、年度をまたぐ雇用の安定性に課題が生じることがあります。

有期雇用が多くなりがちな点は、運営上の注意点として意識しておきましょう。

解散したときの財産の行き先

株式会社が解散して清算すると、残った財産は株主に分配されます。

出資した人が、最後に清算価値を受け取る仕組みです。

NPO法人では、残余財産を個人が受け取ることはできません。

定款で定めた帰属先へ渡すことになります。

帰属先にできるのは、他のNPO法人や国、地方公共団体など法律で認められた範囲です。

定款に定めがない場合は、国または地方公共団体に譲渡されます。

つまり、NPO法人に投じた財産は、最後まで公益のために使われます。

この点も、営利と非営利を分ける重要な違いです。

NPO法人と株式会社の違いのまとめ

最大の違いは、利益を分配できるかどうかです。

株式会社は登記だけで早く設立できますが、法定費用が20万円以上かかります。

NPO法人は法定費用がほぼ0円ですが、認証に約3か月と社員10人が必要です。

税金は、NPO法人が収益事業にだけ課税されるため有利です。

その代わり、毎年の所轄庁への報告と情報公開の義務があります。

意思決定は、株式会社が持ち株数、NPO法人が1人1票です。

後から法人格を変えることはできないので、最初の選択が重要です。

よくある質問

Q. NPO法人でも利益を出していい?

A. 出して構いません。禁止されているのは、利益を社員や役員に分配することです。剰余金は次年度の活動費として団体に残し、目的のために使います。

Q. ひとりでNPO法人は作れる?

A. 作れません。社員10人以上、理事3人以上と監事1人以上が必要です。ひとりで始めたい場合は、株式会社か一般社団法人を検討してください。

Q. NPO法人のほうが税金は安い?

A. 収益事業を行っていなければ法人税は非課税で、住民税の均等割も減免を受けられる自治体が多いため、有利です。収益事業を行う場合はその所得に課税されます。

Q. 株式会社からNPO法人に変更できる?

A. できません。法人格の種類を変える組織変更の制度がないため、新たにNPO法人を設立し、株式会社を解散するという手順が必要になります。

Q. どちらが信用される?

A. 相手によって変わります。企業間取引では株式会社、行政や地域・寄付者との関係ではNPO法人のほうが受け入れられやすい傾向があります。

Q. 両方作ることはできる?

A. できます。事業性の高い部分を株式会社、公益的な部分をNPO法人として運営する団体もあります。ただし両方の事務負担が発生します。

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