一般社団法人の総会・理事会が定足数不足で成立しないときの対処法を解説

一般社団法人法
「総会に人が集まらない」「理事会が毎回ぎりぎり」という悩みは、社員総会と理事会で打てる手がまったく違います。条文で使える手と使えない手を分けて説明します。

結論から申し上げます。

社員総会は、書面・電磁的方法・代理人で議決権を行使した分も出席に数えられます(一般法人法50条〜52条)。

定足数そのものも、定款で引き下げることができます(49条1項)。

一方、理事会の定足数は「理事の過半数」で、定款では引き上げることしかできません(95条1項)。

理事会に代理人や委任状で出席する仕組みは、法律にありません。

理事会の出席が足りないときは、ウェブ会議での出席、決議の省略(96条)、理事の補充で対応します。

POINT 総会は「出席の数え方」を広げて解決、理事会は「理事本人が参加できる形」と「理事の数」で解決します。両者を混同して、理事会で委任状を集めても定足数には数えられません。

定足数とは:社員総会と理事会の基準の違い

定足数とは、会議で決議をするために出席していなければならない最低限の数です。

一般社団法人では、社員総会と理事会で基準の決め方が違います。

社員総会の普通決議は、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席者の議決権の過半数で決めます(49条1項)。

この要件は「定款に別段の定めがある場合を除き」とされており、定款で変えられます。

理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数が出席し、その過半数で決めます(95条1項)。

理事会のほうは「これを上回る割合を定款で定めた場合」だけが例外で、下げる方向には変えられません。

会議 定足数(法律の原則) 決議の要件 定款で変えられるか 根拠
社員総会(普通決議) 総社員の議決権の過半数の出席 出席者の議決権の過半数 変えられる(引下げも可) 49条1項
社員総会(特別決議) 定足数の形はとらない 総社員の半数以上かつ総社員の議決権の3分の2以上 上げることだけできる 49条2項
理事会 議決に加われる理事の過半数の出席 出席理事の過半数 上げることだけできる 95条1項

株式会社では、役員の選任・解任の決議の定足数は定款でも3分の1未満にできません(会社法341条)。

一般法人法49条1項には、このような下限の定めは置かれていません。

数字で確かめる:何人いれば成立するか

社員の議決権は、定款で別の定めをしない限り1人1個です(48条1項)。

この前提で、社員30人の法人を例に計算します。

普通決議の定足数は議決権30個の過半数なので、16個分の出席が必要です。

16人が出席すれば、そのうち9人の賛成で可決できます。

特別決議には定足数の考え方がなく、総社員を分母にして賛成の数を数えます。

社員30人なら、15人以上かつ議決権20個以上の賛成が必要です(49条2項)。

特別決議では、欠席した社員は反対したのと同じ結果になります。

社員数(1人1議決権) 普通決議の定足数 特別決議に必要な賛成
5人 3人分の出席 4人以上(3分の2以上)
10人 6人分の出席 7人以上(3分の2以上)
30人 16人分の出席 20人以上(3分の2以上)
100人 51人分の出席 67人以上(3分の2以上)

理事会は、理事5人なら3人の出席が定足数で、3人出席なら2人の賛成で可決です。

決議について特別の利害関係を持つ理事は議決に加われず(95条2項)、分母からも外れます。

理事5人のうち1人が特別利害関係人なら、残り4人の過半数である3人の出席が必要です。

特別決議が必要な事項には、社員の除名(30条1項)と定款の変更(146条)が含まれます(49条2項1号・4号)。

社員総会の出席が足りないときに使える5つの手

社員総会の出席が足りないときに使える5つの手
図:社員総会の出席が足りないときに使える5つの手

社員総会では、会場に来られない社員の議決権を出席に数える仕組みが法律にそろっています。

1つ目は代理人による議決権の行使です(50条1項)。いわゆる委任状がこれに当たります。

2つ目は書面による議決権の行使です。行使した議決権は出席に算入されます(51条2項)。

3つ目は電磁的方法(メールやウェブフォーム等)による行使で、これも出席に算入されます(52条3項)。

4つ目は決議の省略です。社員の全員が書面か電磁的記録で同意すれば、決議があったものとみなされます(58条1項)。

5つ目は、すでに招集した総会で延期・続行を決議する方法です。この場合、招集の決定と通知の規定は適用されません(56条)。

方法 事前に必要なこと 出席の扱い 主な根拠
代理人(委任状) 代理権を証明する書面の提出 代理人が出席して行使 50条1項
書面による行使 招集の決定で「書面で行使できる」と定める 出席に算入 38条1項3号・51条
電磁的方法による行使 招集の決定で「電磁的方法で行使できる」と定める 出席に算入 38条1項4号・52条
決議の省略 社員全員の書面等による同意 会議自体を開かない 58条1項
延期・続行 総会で延期・続行を決議 後日の会は新たな招集手続が不要 56条

代理人(委任状)で出席を確保するときの決まり

社員は、代理人によって議決権を行使できます(50条1項)。

社員か代理人は、代理権を証明する書面を法人に提出します(同項後段)。

代理権の授与は、社員総会ごとに行わなければなりません(50条2項)。

そのため「今後の総会はすべて〇〇に任せる」という包括的な委任状は使えません。

法人は、提出された代理権を証明する書面を、総会の日から3か月間、主たる事務所に備え置きます(50条5項)。

代理人の資格や人数を定款で決めていない場合は、招集の際にそれらを決めることができます(施行規則4条2号)。

委任状の様式に「受任者欄が空欄なら議長に委任する」と書いておく方法もあります。

委任状の記載例

委 任 状

一般社団法人〇〇協会 御中

私は、      を代理人と定め、次の権限を委任します。

令和〇年〇月〇日開催の一般社団法人〇〇協会 第〇回定時社員総会に出席し、議決権を行使する一切の権限

(受任者欄が空欄の場合は、議長に委任したものとします。)

令和〇年〇月〇日 住所 〇〇〇〇 氏名 〇〇〇〇

代理権の授与は総会ごとに行うため(50条2項)、開催日と回次を特定します。各議案への賛否を書く欄を設ける方法もあります。

書面・電磁的方法による議決権行使の段取り

書面や電磁的方法での行使を認めるかどうかは、総会を招集するときに決めます(38条1項3号・4号)。

理事会設置法人では、この決定は理事会の決議で行います(38条2項)。

書面行使を認めた場合、招集通知は総会の日の2週間前までに発します(39条1項ただし書)。

通常の1週間前より早くなる点に注意が必要です。

この場合の招集通知は書面で行い(39条2項1号)、承諾を得た社員には電磁的方法で送れます(39条3項)。

書面行使を定めたときは、通知とあわせて社員総会参考書類と議決権行使書面を交付します(41条1項)。

書面行使の期限は、原則として総会の日時の直前の業務時間の終了時です(施行規則8条)。

書面行使を定めた総会では、社員全員の同意による招集手続の省略(40条)は使えません。

議決権行使書面の記載例

議決権行使書

一般社団法人〇〇協会 御中

私は、令和〇年〇月〇日開催の第〇回定時社員総会の各議案について、次のとおり議決権を行使します。

第1号議案 令和〇年度計算書類承認の件 (賛・否)

第2号議案 理事〇名選任の件 (賛・否)

行使期限:令和〇年〇月〇日午後〇時到着分まで

社員氏名 〇〇〇〇

議決権行使書面には、議案ごとの賛否の欄・行使の期限・社員の氏名を記載します(施行規則7条)。

全員の同意で総会を開かずに決める(決議の省略)

理事か社員が総会の目的である事項を提案し、社員の全員が書面か電磁的記録で同意すれば、可決の決議があったとみなされます(58条1項)。

一人でも同意しない社員や返事のない社員がいれば、この方法は使えません。

そのため、社員数が少なく全員と連絡が取れる法人に向く方法です。

定時総会の目的事項のすべてが可決とみなされたときは、その時に定時総会が終わったものとみなされます(58条4項)。

同意書面は、決議があったとみなされた日から10年間、主たる事務所に備え置きます(58条2項)。

この場合も議事録は作り、みなされた事項・提案者・日付・作成者を記載します(施行規則11条4項1号)。

決議の省略の詳しい手順は、一般社団法人の書面決議(決議の省略)で説明しています。

定款の定足数を見直すときの注意

社員総会の普通決議の定足数は、定款に別段の定めを置けば変えられます(49条1項)。

たとえば「総社員の議決権の3分の1以上の出席」のように、定足数を下げる定めを置くことができます。

ただし、定款の変更そのものが特別決議です(146条・49条2項4号)。

総社員の半数以上かつ議決権の3分の2以上の賛成が必要なので、出席が少ない法人ほど変更も難しくなります。

定款変更の総会こそ、書面・電磁的方法による行使を定めて招集するのが現実的です。

特別決議の要件は定款で上げることしかできず(49条2項かっこ書き)、下げる定款の定めは置けません。

理事会の定足数(95条1項)も、定款で引き下げることはできません。

定款の記載例(社員総会の決議・抜粋)

第〇条(決議)社員総会の決議は、法令又はこの定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の議決権の3分の1以上を有する社員が出席し、出席した当該社員の議決権の過半数をもって行う。

2 前項の規定にかかわらず、次の決議は、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。(1)社員の除名 (2)監事の解任 (3)定款の変更 (4)解散 (5)その他法令で定められた事項

定足数の割合は法人の実情に合わせて決めます。第2項は一般法人法49条2項の要件で、定款で下げることはできません。

定款変更の進め方は、一般社団法人の定款を見直すべきケースと変更の進め方をご覧ください。

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この記事の位置づけ

本記事は、制度を一般的に説明したものです。個別の事案についての判断や手続きの代行を行うものではありません。

  • 設立登記など登記申請の手続きは司法書士が取り扱う業務です。ご自身で法務局へ申請することもできます。

役員の任期と重任登記は、一般社団法人の役員の重任登記とはをご覧ください。

次の総会・理事会で定足数を確保する段取り

次の総会・理事会で定足数を確保する段取り
図:次の総会・理事会で定足数を確保する段取り

定足数の不足は、招集の段階で手を打っておくほど防ぎやすくなります。

社員総会と理事会のそれぞれについて、準備の順番を示します。

1
社員名簿で総社員数と議決権数を確定する
定足数と特別決議の要件の分母を先に計算する(31条・48条1項)
▼
2
理事会で招集事項を決める
日時・場所・議題と、書面・電磁的方法での行使を認めるかを決議する(38条1項・2項)
▼
3
2週間前までに招集通知を発する
書面行使を認めるなら参考書類と議決権行使書面を同封する(39条1項・41条1項)
▼
4
委任状・議決権行使書の返送状況を数える
期限は原則として総会の直前の業務時間の終了時(施行規則8条)
▼
5
当日、開会時に出席議決権数を確認して宣言する
会場・ウェブ・書面・代理人の内訳を分けて数える
▼
6
議事録に出席数と行使の方法を記録する
議事録は10年間、委任状は3か月間備え置く(57条2項・50条5項)
理事会の定足数を守るための確認

  • 理事が3人以上いるか、欠員が出ていないか(65条3項)
  • 定款に決議の省略(96条)の定めがあるか
  • 招集期間を定款で短縮しているか(94条1項)
  • ウェブ会議で出席する理事の接続方法を事前に案内したか
  • 特別の利害関係がある理事を分母から外して計算したか(95条2項)

理事会の運営全体の流れは、理事会とは?役割・決議事項・運営の進め方で解説しています。

よくある誤解

誤解1:理事会でも委任状を出せば出席扱いになる。理事会に代理出席の仕組みはなく、委任状は定足数に数えられません。

誤解2:理事会の定足数も定款で下げられる。95条1項は上回る割合を定めることだけを認めています。

誤解3:特別決議も出席者の3分の2で決まる。

分母は総社員で、総社員の半数以上かつ議決権の3分の2以上の賛成が必要です(49条2項)。

誤解4:書面で賛否を出した社員は欠席扱い。

書面や電磁的方法で行使した議決権は出席に算入されます(51条2項・52条3項)。

誤解5:委任状は一度もらえば毎年使える。代理権の授与は総会ごとに行う必要があります(50条2項)。

誤解6:書面決議は過半数の同意でよい。

決議の省略には、社員総会なら社員全員、理事会なら議決に加われる理事全員の同意が必要です(58条1項・96条)。


総会・理事会の定足数不足についてよくある質問

Q. 社員総会の定足数は何人ですか?

A. 定款に別段の定めがなければ、総社員の議決権の過半数を有する社員の出席が必要です。1人1議決権で社員30人なら16人分の出席です(一般法人法49条1項・48条1項)。

Q. 委任状を出した社員は定足数に数えられますか?

A. 代理人が総会に出席して議決権を行使するため、その議決権は出席として扱われます。代理権を証明する書面の提出が必要で、授与は総会ごとに行います(50条1項・2項)。

Q. 書面で議決権を行使した社員は出席に数えますか?

A. 数えます。書面で行使した議決権の数は出席した社員の議決権の数に算入されます(51条2項)。電磁的方法による行使も同じです(52条3項)。

Q. 理事会で委任状による出席は認められますか?

A. 認められません。理事と法人の関係は委任に関する規定に従い(64条)、理事会に代理出席する仕組みは法律にありません。ウェブ会議での出席や、定款に定めがあれば決議の省略(96条)を使います。

Q. 理事会の定足数を定款で下げられますか?

A. 下げられません。理事会の決議は議決に加わることができる理事の過半数の出席が必要で、定款では上回る割合を定めることだけが認められています(95条1項)。

Q. 社員総会の定足数を定款で下げられますか?

A. 普通決議の定足数は定款に別段の定めを置いて変えられます(49条1項)。ただし定款の変更は特別決議が必要で(146条・49条2項4号)、特別決議の要件自体は下げられません。

Q. 出席が足りないまま決議したらどうなりますか?

A. 社員総会の決議は、決議の方法が法令や定款に違反するとして、決議の日から3か月以内に取消しの訴えの対象になります(266条1項1号)。出席不足がわかった時点で延期・続行(56条)や再招集に切り替えます。

Q. 理事が辞任して理事会が開けません。どうすればよいですか?

A. 任期満了か辞任で退任した理事は、後任が就任するまで理事としての権利義務を持ちます(75条1項)。早めに社員総会で後任を選び(63条1項)、選べない事情があれば裁判所に一時理事の選任を申し立てられます(75条2項)。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、正確性・最新性に配慮していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。法令・制度・税制は改正される場合があり、個別の事情により取り扱いが異なることもあります。本記事の情報を利用して行われた一切の行為およびその結果について、当サイトおよび筆者は責任を負いかねます。実際のお手続きや判断にあたっては、必ず公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。