NPO法人の認証申請では、事業計画書と活動予算書を2年分提出します。
設立初年度と、その翌年度の分です。
この2つは、内容が対応していないと必ず指摘を受けます。
この記事では、両方の書き方と、そろえ方のコツを解説します。
なぜ2年分が必要なのか
設立初年度は、認証と登記の期間が含まれます。
そのため、実際に活動できる期間が短くなります。
初年度だけを見ても、団体が継続的に活動できるかは判断できません。
そこで、翌年度分もあわせて提出することになっています。
初年度は控えめに、2年目に事業が広がる形にすると自然です。
初年度から大きな計画を立てると、実現性を疑われます。
認証が下りる時期を見込んで、期間を設定しましょう。
事業年度の始まりと終わりを、定款と一致させることも忘れないでください。
事業計画書に書くこと
事業計画書は、特定非営利活動に係る事業から書きます。
その他の事業を行う場合は、区分を分けて記載します。
各事業について、まず事業名を書きます。
定款に定めた事業の名称と、そろえておきましょう。
次に、事業の内容を具体的に書きます。
何を、どのように行うのかが分かる書き方にします。
実施予定日時、または実施の期間を書きます。
実施場所と、対象者も記載します。
参加予定人数などの見込みがあれば、あわせて書きます。
従事者の人数を書く様式もあるので、提出先の様式を確認してください。
- 事業名(定款の事業と名称をそろえる)
- 事業の内容(何をどのように行うか)
- 実施予定日時または実施期間
- 実施場所
- 対象者と、参加予定人数の見込み
- 従事者の人数(様式による)
- 特定非営利活動に係る事業と、その他の事業の区分
活動予算書に書くこと
活動予算書は、事業計画に対応する収支の見込みです。
収入は、会費、入会金、寄付金、助成金、事業収入などに分けます。
支出は、事業費と管理費に区分するのが基本の形です。
事業費は、活動に直接かかる費用です。
会場費、材料費、講師への謝金などが該当します。
管理費は、団体を維持するための費用です。
事務所の家賃、通信費、事務用品費などが入ります。
人件費は、従事する内容に応じて事業費と管理費に振り分けます。
収入と支出の合計が、大きく食い違わないように組み立てます。
計画と予算を対応させる
審査でいちばん見られるのが、計画と予算の対応関係です。
事業計画書に書いた事業が、予算に現れていないと指摘されます。
逆に、予算にあって計画にない支出も不整合になります。
事業ごとに、必要な費用を洗い出してから予算を組みましょう。
講座を開くなら、会場費と講師謝金が必要になります。
広報するなら、印刷費や通信費が発生します。
この対応が取れていれば、計画の実現性も伝わります。
書き上げたら、計画と予算を並べて突き合わせてください。
一人で作ると見落とすので、別の人に確認してもらうと確実です。
| 区分 | 主な科目 | 内容の例 |
|---|---|---|
| 収入 | 会費・入会金 | 正会員と賛助会員の会費 |
| 寄付金 | 個人や企業からの寄付 | |
| 助成金・補助金 | 応募予定の制度を想定して計上 | |
| 事業収入 | 講座の受講料、物品の販売 | |
| 支出(事業費) | 会場費・材料費 | 活動に直接かかる費用 |
| 謝金・旅費 | 講師や協力者への支払い | |
| 支出(管理費) | 家賃・通信費 | 団体の維持にかかる費用 |
| 事務用品費 | 文房具、印刷代など |
収入の見込みを説明できるようにする
収入の裏づけが乏しいと、実現性を疑われます。
会費なら、何人から、いくら集める予定かを説明できるようにします。
設立時の社員が10人なら、その人数を基礎に計算します。
寄付金は、過去の実績があればそれを参考にします。
実績がない場合は、控えめな数字にしておくのが無難です。
助成金は、応募予定の制度名を答えられるようにしておきましょう。
採択される前提で大きく計上すると、質問を受けます。
事業収入は、参加人数と単価の掛け算で示せると説得力があります。
数字の根拠を、メモとして手元に残しておくと相談のときに役立ちます。
支出の組み立て方
支出は、実際に必要な費用を積み上げて計算します。
会場を借りるなら、施設の使用料を調べて計上します。
印刷物を作るなら、部数と単価から見積もります。
交通費は、活動の頻度と距離から概算します。
設立初年度は、備品の購入など初期費用も見込んでおきます。
人件費を計上する場合は、何人分の何時間かを想定します。
予備費を置く形も、実務ではよく使われます。
ただし、予備費が支出の大半を占めるような組み方は避けましょう。
何にいくらかかるのかが見える予算が、良い予算です。
初年度の期間の設定
設立初年度の期間をどう取るかは、意外と迷うところです。
法人が成立するのは、設立登記をした日です。
認証から登記までの流れを見込んで、開始日を設定します。
終了日は、定款で定めた事業年度の末日にそろえます。
3月末を事業年度末とするなら、初年度は数か月だけになることもあります。
その場合、計画も予算もその期間に応じた規模にします。
短い期間なのに通年の計画を書くと、矛盾が生じます。
所轄庁によっては、期間の書き方に指定があります。
事前相談で確認しておくと確実です。
設立後は毎年作る
事業計画書と活動予算書は、設立のときだけの書類ではありません。
毎年、次の事業年度の分を作成します。
通常総会で承認を受けるのが一般的な流れです。
定款で、総会の決議事項として定めている団体がほとんどです。
年度が終われば、実績として事業報告書を作ります。
計画と報告が対応していると、運営の一貫性が伝わります。
前年の計画を土台にすると、作成の負担が軽くなります。
変わった部分だけを書き換える形で構いません。
助成金の申請でも、直近の事業計画書を求められることがあります。
よくある指摘
第一に、事業計画に書いた事業が予算にないケースです。
第二に、予算の収入合計と支出合計が大きくずれているケースです。
第三に、定款に定めのない事業を計画に書いてしまうケースです。
定款の事業に含まれていない活動は、実施できません。
第四に、事業の内容が抽象的で、何をするのか分からないケースです。
第五に、初年度の期間と計画の規模が合っていないケースです。
第六に、その他の事業を区分していないケースです。
第七に、収入の根拠がまったく説明できないケースです。
いずれも、提出前に見直せば防げるものばかりです。
作る順番
効率のよい順番があります。
まず、定款の事業の条文を確定させます。
次に、その事業ごとに何をするかを箇条書きにします。
それを事業計画書の形に整えます。
続けて、事業ごとに必要な費用を洗い出します。
その費用を、事業費と管理費に分けて予算に落とします。
最後に、収入の見込みを立てて全体のバランスを取ります。
収支が合わない場合は、事業の規模を調整します。
この順番で作ると、計画と予算の対応が自然に取れます。
人件費をどう扱うか
予算のなかで、扱いに迷いやすいのが人件費です。
活動に直接従事する分は、事業費として計上します。
事務や経理など、団体の維持に関わる分は管理費です。
同じ人が両方を担う場合は、時間の割合で振り分けます。
振り分けの基準を決めておくと、毎年同じやり方で計算できます。
設立初年度は、無償のボランティアだけで回す団体も多くあります。
その場合、人件費を計上しないという選択もあり得ます。
ただし、活動を続けるには人件費の確保が必要になります。
2年目以降の計画で、段階的に組み込んでいくとよいでしょう。
ボランティアへの交通費実費は、事業費のなかで別の科目にします。
備品や設備の計上
設立初年度は、備品の購入が集中しがちです。
パソコン、プリンター、机や椅子などが必要になります。
これらは、管理費のなかで備品費として計上します。
活動に直接使う道具であれば、事業費に入れることもあります。
高額な設備を購入する予定があるなら、資金の裏づけも示します。
助成金で購入する場合は、その旨が分かる形にしておきましょう。
中古品や寄贈品で済ませる計画なら、支出を抑えられます。
実態に合わない大きな備品費は、質問を受けやすい部分です。
本当に必要なものだけを、根拠を持って計上してください。
総会に諮るときの見せ方
設立後は、毎年の総会で計画と予算を承認してもらいます。
数字だけを配っても、会員には伝わりません。
前年からどう変わるのかを、一言添えると理解が進みます。
新しく始める事業があれば、なぜ始めるのかを説明します。
やめる事業があれば、その理由も述べましょう。
前年の実績と並べた資料を作ると、変化が一目で分かります。
会員から質問が出やすい部分を、あらかじめ想定しておきます。
会費の値上げを含む年は、特に丁寧な説明が必要です。
納得して承認された計画は、その後の協力も得やすくなります。
逆に、説明のないまま数字だけ通した年は、途中で協力が得にくくなります。
計画どおりにいかなかったとき
計画は、そのとおりに進まないことのほうが多いものです。
予定した事業が実施できなかった場合も、慌てる必要はありません。
事業報告書に、実施しなかった理由を書けば足ります。
実施しなかったこと自体より、説明がないことのほうが問題になります。
年度の途中で大きく変える場合は、総会に諮るのが丁寧です。
軽微な変更であれば、理事会の決定で進めて構いません。
どこまでを理事会に委ねるかは、定款や規程で決めておきましょう。
予算を大きく超える支出が見込まれるときも、同じ考え方です。
記録を残しておけば、後から経緯を説明できます。
事業計画書と活動予算書のまとめ
認証申請では、事業計画書と活動予算書を2年分そろえます。
事業計画書には、事業名、内容、日時、場所、対象者を書きます。
活動予算書は、収入を区分し、支出を事業費と管理費に分けます。
計画と予算が対応していないと、必ず指摘を受けます。
収入は、根拠を説明できる範囲で控えめに見積もりましょう。
初年度は期間が短くなるため、規模もそれに合わせます。
設立後も毎年作成し、総会の承認を受けます。
よくある質問
A. 設立初年度は認証と登記の期間が含まれ、活動期間が短くなるためです。翌年度分もあわせて見ることで、継続的に活動できるかを判断しています。
A. 事業名、事業の内容、実施予定日時または期間、実施場所、対象者を書きます。特定非営利活動に係る事業と、その他の事業は区分して記載します。
A. 収入を会費、寄付金、助成金、事業収入などに分け、支出を事業費と管理費に区分します。事業ごとに必要な費用を積み上げて計算しましょう。
A. 入れられますが、応募予定の制度名を説明できるようにしておきましょう。採択前提で大きく計上すると、実現性を疑われます。
A. 認証から登記までの流れを見込んで開始日を設定し、終了日は定款の事業年度末にそろえます。期間が短ければ、計画と予算の規模もそれに合わせます。
A. 毎年作成します。通常総会で承認を受けるのが一般的です。前年の計画を土台にすれば、作成の負担は軽くなります。
📖 参考にした公的機関の情報


