一般社団法人に顧問・相談役は置ける?法的な位置づけ・報酬・注意点を解説

一般社団法人法
顧問は置けます。ただし、法律上の機関ではありません。

前の理事長に顧問として残ってもらいたい。

専門家に相談役として関わってほしい。

一般社団法人の運営で、顧問・相談役を置きたい場面はよくあります。

ところが、法律には顧問や相談役の規定が一つもありません。

この記事では、顧問・相談役の法的な位置づけ、置き方、権限と報酬、そして注意すべき落とし穴を解説します。

POINT 結論:顧問・相談役は法律上の機関ではなく、法人が任意に置く役職です。定款や規程で自由に設けられ、登記もされません。業務執行権や議決権はなく、役割・任期・報酬はすべて法人が決めます。ただし実質的に経営を握らせると、責任や税務の扱いが変わり得るので注意が必要です。

顧問・相談役とは|法律上の機関ではない

一般社団法人の機関として法律が定めるのは、社員総会・理事・理事会・監事・会計監査人です。

顧問・相談役・参与といった役職は、法律のどこにも登場しません

つまり、置く義務もなければ、置いてはいけない決まりもない。

法人が自分の判断で自由に設計できる、任意の役職です。

法律上の役員ではないため、登記もされません。

登記事項証明書に顧問の名前が載ることはなく、対外的な代表権もありません。

任期・人数・選び方・報酬に法律の制約はなく、すべて法人の内部ルールで決めます。

自由度が高いぶん、設計を曖昧にすると後で揉める。それが顧問・相談役という役職の性格です。

どうやって置くか|定款と規程の二つの方法

置き方は、大きく二つあります。

一つ目は、定款に根拠を書く方法です。

「当法人は、理事会の決議により、顧問若干名を置くことができる」といった条項を入れます。

定款に書いておくと、役職の正当性が明確になり、対外的な説明もしやすくなります。

二つ目は、定款には書かず、理事会や社員総会の決議で顧問規程を作る方法です。

実は、顧問を置くために定款の定めは必須ではありません

任意の役職なので、内部の決議と規程だけでも設置できます。

すでに運営が始まっている法人では、定款変更の手間がいらない規程方式が現実的です。

どちらの場合も、選任と解任を誰が決めるのか(理事会か、代表理事か)を必ず決めておいてください。

規程の作り方の一般論は、規程と定款の使い分けの考え方が参考になります。

どんな人に頼むか|典型的な3パターン

実務で顧問・相談役に就くのは、だいたい次の三つのタイプです。

第一に、退任した理事長や創設者です。

経験と人脈を引き継ぎつつ、代替わりを進めるための役職として使われます。

第二に、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家です。

この場合は顧問契約という業務委託の形を取り、法人運営の相談相手になってもらいます。

第三に、地域の有力者や学識者に名誉職として就いてもらうパターンです。

団体の信用づけや後援の意味合いが強く、実務にはほとんど関与しません。

どのタイプかによって、報酬も関与の深さもまったく違います。

「うちの顧問はどのタイプか」を関係者全員で共有しておくことが、設計の第一歩です。

権限と責任|議決権はない

顧問・相談役には、法律上の権限がありません。

理事会で議決権を持つことはできず、業務を執行することもできません。

理事会に出席してもらう場合も、意見を述べるオブザーバーという位置づけになります。

議決の頭数には入れないよう、議事録の書き方にも注意してください。

一方で、責任がゼロというわけでもありません。

法人と顧問の関係は、委任または準委任の契約関係です。

引き受けた助言業務を著しく怠れば、契約上の責任を問われる余地はあります。

また、肩書きにかかわらず、実質的に法人の意思決定を支配していた人は、その関与に応じた責任を問われることがあり得ます。

「顧問だから何をしても責任がない」は通用しない、と理解しておくべきです。

報酬の決め方と税務の注意

顧問の報酬は、法律の制約がなく、法人が自由に決められます。

無報酬でも、月額の顧問料でも、会議ごとの謝礼でも構いません。

理事の報酬が定款または社員総会の決議で決められるのと違い、顧問報酬は業務委託費として理事会などの判断で決められます。

ただし、税務には重要な注意点があります。

肩書きが顧問でも、実質的に経営に従事していると評価されると、税法上は役員(みなし役員)として扱われることがあります。

みなし役員になると、報酬の損金算入に役員報酬のルールが及び、自由に増減できなくなります。

退任した理事長が顧問として実権を握り続けるケースが、まさにこの論点にあたります。

顧問報酬を設定するときは、職務の実態と金額のバランスを整理し、税理士に確認してください。

非営利型の法人では、特定の個人に特別の利益を与えていないかという観点からのチェックも必要です。

評議員・参与との違い

似た役職との違いも整理しておきます。

評議員は、一般財団法人などに置かれる法律上の機関です。

理事の選任・解任などの権限を持ち、登記や法律の規律の対象になります。

任意の役職である顧問とは、法的な重みがまったく違います。

一般社団法人が定款で任意に「評議員会」を置く例もありますが、その場合の評議員は顧問と同じく法律上の権限を持ちません。

参与は、主に公益法人の実務で使われてきた呼び名で、これも法定の機関ではありません。

呼び名が何であれ、判断の物差しは一つです。

法律に規定があるか、ないか。

規定のない役職は、すべて法人の設計次第だということです。

評議員の詳細は、評議員の解説記事をご覧ください。

対外的な肩書きの使い方に注意

顧問の名刺や肩書きの使い方には、注意が必要です。

顧問には代表権がありません。

それにもかかわらず、法人を代表するかのような振る舞いで契約や交渉をさせると、相手方との間でトラブルになります。

場合によっては、法人がその行為の責任を負わされる危険もあります。

「会長」「最高顧問」のような、代表者と紛らわしい呼称も避けるのが無難です。

対外的な文書への署名は代表理事に限る、顧問の名刺には法人の代表でない旨が分かる肩書きを使う。

この二つを決めておくだけで、リスクは大きく減ります。

代表権の仕組みは、代表理事の解説記事で詳しく説明しています。

顧問規程・顧問契約書に書くべきこと

最後に、顧問を置くときに文書化すべき項目を挙げます。

第一に、職務の内容です。何について助言するのか、範囲を具体的に書きます。

第二に、選任と解任の手続きです。理事会決議とするのが標準的です。

第三に、任期です。1年ごとの更新にしておくと、見直しの機会を確保できます。

第四に、報酬と経費の扱いです。無報酬なら無報酬と明記します。

第五に、守秘義務です。法人の内部情報に触れる立場だからです。

第六に、利益相反の扱いです。顧問が他の団体や会社の利害を代弁する場面に備えます。

専門家と結ぶ顧問契約なら、これに業務時間や相談方法の定めが加わります。

ひな形を一度作れば、顧問が代替わりしても使い回せます。

条項と決議の文例

そのまま使える文例を挙げておきます。

定款に入れる場合の条項例です。

「第○条 当法人は、理事会の決議により、顧問若干名を置くことができる。2 顧問は、理事会の諮問に応じ、当法人の運営に関し意見を述べることができる。3 顧問の報酬は、理事会の決議により定める。」

理事会で選任する場合の議事録の記載例です。

「第○号議案 顧問選任の件 議長は、前理事長山田太郎氏を当法人の顧問に選任したい旨を説明し、審議の結果、出席理事全員の賛成により原案のとおり承認可決した。なお、顧問の職務は理事会の諮問に対する助言とし、任期は1年、報酬は無償とする。」

ポイントは、職務・任期・報酬の三点を選任決議の中で確定させてしまうことです。

ここを「追って定める」にしたまま運用が始まると、後から揉める種になります。

株式会社・NPO法人の顧問との違い

顧問・相談役という役職は、株式会社にもNPO法人にもあります。

そして、どの法人でも法律上の機関ではない任意の役職という位置づけは共通です。

株式会社の相談役・顧問については、上場企業を中心に、役割や処遇の開示が求められる流れが強まっています。

経営への不透明な影響力が問題視されてきたためです。

一般社団法人は開示の義務こそありませんが、問題の構造は同じです。

非営利の団体は、会費や寄付で成り立つぶん、運営の透明性への期待はむしろ高いともいえます。

NPO法人でも扱いは同様で、定款や規程に基づく任意の役職として設けます。

法人格を問わず、「役割を文書で明確に」「実権は正規の機関に」という原則は変わりません。

顧問をお願いするときの実務

就任をお願いする場面にも、少しだけ作法があります。

依頼状には、期待する役割、関与の頻度、任期、報酬の有無を明記してください。

「名前だけ貸してほしい」という曖昧な依頼は、引き受ける側の不安のもとになります。

就任の承諾は、書面かメールで記録に残します。

対外的に公表する場合は、本人に公表の範囲を確認してから行ってください。

退任時も同じです。任期満了で更新しない判断をしたら、感謝を伝えたうえで、ウェブサイトやパンフレットの記載を確実に落とします。

記載が残ったままだと、本人にも法人にも迷惑がかかります。

就任から退任まで記録で管理する。任意の役職だからこそ、この丁寧さが効きます。

よくある失敗パターン

顧問・相談役をめぐる失敗には、型があります。

最も多いのは、退任した創設者が顧問として実権を握り続ける、いわゆる院政です。

理事会の決定が形だけになり、責任の所在が曖昧になります。

外から見たガバナンスの評価も下がり、公益認定を目指す場合には障害になり得ます。

二つ目は、役割を決めずに名誉職を乱発するパターンです。

顧問が10人いるのに誰も何もしていない、という状態は、組織の信用をかえって損ないます。

三つ目は、報酬の根拠が曖昧なまま支払いを続けるパターンです。

税務調査で職務の実態を問われたとき、説明できなければ否認のリスクを抱えます。

置くなら役割を明確に、役割がなくなったら廃止する。

顧問・相談役は、この原則さえ守れば有用な仕組みです。

よくある質問

Q. 一般社団法人に顧問を置くのは違法ではないですか?

A. 違法ではありません。顧問・相談役は法律に規定のない任意の役職で、法人が自由に設けられます。定款に根拠を書く方法と、理事会等の決議で顧問規程を作る方法があり、定款の定めは必須ではありません。

Q. 顧問は登記されますか?

A. されません。登記されるのは理事・代表理事・監事など法律上の役員です。顧問は登記事項証明書に載らず、対外的な代表権もありません。

Q. 顧問は理事会で議決権を持てますか?

A. 持てません。理事会で議決権を持つのは理事だけです。顧問に出席してもらう場合は意見を述べるオブザーバーとし、議事録でも議決に加わっていないことが分かるようにしてください。

Q. 顧問に報酬を払うときの注意は?

A. 金額や形式は自由ですが、実質的に経営に従事していると税法上のみなし役員と扱われ、役員報酬のルールが及ぶことがあります。職務の実態と金額の釣り合いを整理し、税理士に確認してください。

Q. 理事を退任した人がそのまま顧問になれますか?

A. なれます。実務でも多いパターンです。ただし退任後も実権を握り続けると、ガバナンス上も税務上も問題が生じやすくなります。助言に徹する役割であることを規程や契約で明確にしておきましょう。

Q. 顧問と評議員はどう違いますか?

A. 評議員は一般財団法人などに置かれる法律上の機関で、理事の選任・解任などの権限を持ちます。顧問は法律に規定のない任意の役職で、法的権限はありません。名前が似ていても法的な重みが全く異なります。


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